カイドウ♀になった話   作:ぼほの

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描いて分かった。私戦闘描写ニガテ。
 


4話

 正気を感じさせない目をしたビッグマムに、私は武器を持って対峙していた。

 

 その武器とは金棒―――ではなく、太刀と見違う長さの刀である。

 

 この刀の名は『村正』。

 不吉な名前が付けられているが、刀と言ったらこれくらいしか思いつかなかったのだ。それにあながちこの名前も間違ってはいないかもしれない。

 何故かというと、長年これを持って戦い続けたせいなのか、ここ最近刀から気配がするようになったのだ。

 さらに、前に刀を盗もうとした部下が居たのだが、刀に触れて少し経つと、その部下の様子がだんだんおかしくなっていくのを見たことがある。

 うん。これは間違いない。

 完全に愛刀が妖刀になっている。私に何か害があるわけではないのでさほど気にしてはいないが。

 

 刀を握っていると言ったが、今の私は人獣型である。

 そうである理由は主に二つ。

 一つは、ビッグマム相手に出し惜しみをするわけにはいかないから。

 二つは、武器を持つ事が可能かつ空に立てる形態が人獣型しか無いから。

 前者の説明は簡単だ。相手は自分と同じ四皇の座に君臨する者。当然その実力は拮抗している。相手が正気を失っている今、情を求めても無駄だろう。

 ならば本気で戦うまで。舐めプして勝とうなどと思わない。もしそれで勝てるのなら、とっくの昔に彼女らを傘下に置いているか排除している。

 後者はただ私が武器を―――刀を持って戦いたいだけ。

 しかしそのためには人の形をしてなければならず、かと言って人型では飛べず全力を出せる形態では無い。獣型は辺りに焔雲を出して、それを掴む事によって浮くことが出来るが、武器が持てない。

 でも、そのどちらも両立可能である。そう、人獣型ならね。

 

 

 

 「威国!!!!」

 

 

 

 ―――と、そんなこと言ってる場合じゃないな。

 

 絶賛食いわずらい発症中のビッグマムが、二角帽が変形して出来た巨剣を振るう。

 それによって、巨人族が二人で放つ『覇国』の一人専用バージョンである『威国』という規格外の斬撃を飛ばし、凄まじい速度で私へ迫ってくる。

 それは肉眼で捉えるには厳しく、とてもじゃないが「見てから回避余裕でした」とは言えたものではない。

 

 しかし見聞色で彼女が威国を放つ()()()()()()()ので、愛刀には既に武装色と覇王色を纏わせてある。

 後はこの大砲と見違う斬撃を斬るべく刀を振り抜くだけで対処可能だ。

 

 

 

 「………ン゛ッ!!」

 

 

 

 技名も何も付いていない、ただ刀を振るうだけの攻撃が威国を襲う。それだけで威国は真っ二つになり、私の両隣を通り過ぎていった。

 たとえ威国などと名前が付いていようと、その本質は覇気を纏えない斬撃。ある程度の力と技術があれば容易く切断する事が出来るのだ。

 今回は結構力ずくなところが多かったが、対処出来たのでヨシとしよう。

 

 そう自分を納得させ、今度は自分の番だと村正を握り直す。

 

 私は息をふぅと吐いてから刀を一度鞘に戻し、柄に手を添えながらビッグマムを見据える。

 彼女は巨剣に炎を纒わせ、その剣で私を切り裂かんとする殺意を放ちながら雷雲ゼウスに乗って迫ってきていた。

 雲に乗って移動する。字面だけならメルヘンチックだが、実際は火を纏いし(つるぎ)を構えた怪物おばさんが、雷雲に乗ってこちらに来ているのである。 

 

 そんな彼女が刀の間合いに入るまで、私はただこの世にも恐ろしい光景を見つめるのみ。

 

 ―――そして間合いに入った瞬間、一瞬にも等しい速度で刀を引き抜く。

 

 

 

 倶利伽羅(くりから)

 

 

 

 それは思いっきりぶった切る、それだけを重視した剣技。

 斬る事にだけ重点を置いただけあって、その切れ味はたとえビッグマムの皮膚を以ってしても防げない。

 

 彼女もそれが分かっているのか巨剣で防ごうとするが、時既に遅し。次の瞬間には、彼女の腹に一線の浅い切れ目が出来ていた。

 

 そう、()()切れ目である。

 斬る事にだけ重点を置いておいてそれだけなのかとツッコミが入りそうだが、これは私の想定した通りの結果である。

 

 そもそも私は何のためにここに来たのかを思い出してほしい。

 そう、私はビッグマムに子育て相談するために来たのである。しかし来てみたのは良いものの、彼女が暴走状態だったので足止めをしている、というのが今の私の状況だ。

 だというのに、相談相手に生死を彷徨うような状態にさせるのは本末転倒。

 だから私は浅く切れる程度に抑えたのである。あと単純に彼女の皮膚が予想以上に硬かった。彼女、本当に人間か?

 

 

 「カ〜イ〜ド〜ウ〜ッ!!!」

 

 

 何て考えていると、腹を切られた事にキレたビッグマムが真っ黒に変色した拳を振るってくる。

 私はそれを刀で受け止め、もう何度目か分からない覇王色の衝突を肌で感じながら

 

 

 「名前を呼べるのならもう正気でしょう!?セムラが出来上がるまでそこで正座しててください!!」

 

 

 と叫ぶ。

 しかしそれで言うことを聞いてくれるのなら苦労しない。

 

 彼女は黒化した手で刀を掴み、もう片方の手で太陽プロメテウスを持つ。そして刀を掴まれ動けない私に向かって叩きつけてきた。

 

 

 「!!」

 

 

 彼女の怪力による打撃とプロメテウスによる灼熱が同時に襲いかかる。

 普通であれば打撃によって骨を砕かれた後に全身を焦がされるという即死コンボなのだが、私にとっては顔を歪める程度のダメージでしかない。

 そんなことよりも、私としてはさっさと刀を離してもらいたい気分で一杯だ。

 

 そのため私はその不満をぶつけるように、そして早く正気に戻れよという微かな苛立ちを発散する為に反撃に出る。

 

 私は一旦刀から手を離し、腰にかけてあった金棒『八斎戒』を代わりに握る。

 そしてそれを両手で持ち、彼女の顔を破壊する気で思いっきり振りかぶった。

 

 

 「離しなさい!!」

 「!!!うぐッ」

 

 

 吹っ飛んでいくビッグマムを尻目に、私は彼女の手から離れた村正を回収する。

 覇気を纏わせてあったため心配は無用だろうが、一応刃こぼれしていないか確認し、問題が無いのを見てホッとする。

 

 やはり刀で彼女と戦うにはまだ鍛錬が足りない。

 見聞色の極致である未来視が毎回発動するわけではないのも改善点だ。その証拠に、あのとき彼女に刀を掴まれてしまった。

 

 次に彼女と戦う時までには未来視を安定させようと決意し、私は刀を鞘に戻した。

 

 

 

 ………そういえば、セムラの方はどうなっているのだろうか。

 というか、戦いを始めてからどれだけ経っただろうか。

 戦闘をしているとつい楽しくなって時間感覚を忘れてしまう。まぁ、今回は尋ねに来た要件もあってかいつもよりは楽しめなかったが。それでも時を忘れてしまう程度には楽しい。

 ここに時計は無いので分からないが、月の傾き加減を見るに3時間は経っていそうである。

 

 そう見積もりを立てると、懐に入れてある電伝虫が鳴った。

 一体誰からと疑問に思いながら電話に出る。

 

 

 『カイドウさん、俺だ』

 「おや、キング。どうしたのですか?」

 

 

 相手は、ワノ国以降ずっと何かを言いたそうにしていながらも、放ったらかしにし続けていたキングだった。

 いい加減俺の話を聞けとケチつけにきたのだろうか。

 

 

 『セムラが出来上がったそうだ。ビッグマムに食べさせるから連れてきてくれないか?』

 「おお、そうですか!あー、しかし―――」

 

 

 ビッグマムを連れてきたら街に被害が出るのでは?

 

 そんな事をスイートシティを見下ろしながら言おうとしたが、何とか原型を留めているホールケーキ城以外倒壊しており、お菓子と瓦礫の山ぐらいしか見当たらなかった。

 

 あれ、私の知らぬ間に街が壊滅してる。全然気が付かなかった。

 ……なら問題無いな!

 

 

 『何か問題でも?』

 「―――いえ、何でもありません。では、場所を教えてくれませんか?リンリンをそこに誘導します」

 『分かった。ビッグマムの子供(ガキ)が目印を立てるそうだからそこに向かってくれ』

 

 

 私はキングのその言葉を後に電話を切ると、その目印とやらが何処にあるのかを探す。

 すると少し経つと飴で出来た塔のようなものが突如としてそびえ立った。あら、分かりやすい。

 あれは確かシャーロットキッズ長男のペロスペローの『ペロペロの実』の能力。巨塔を作るぐらい造作もない事か。

 

 ならば後は吹っ飛んでいったビッグマムをあそこに連れて行くだけだ。

 さて、ではビッグマムは今何処に居るのだろうか。踏ん張りようの無い空中で思いっきりふっ飛ばしたので、結構な距離飛んでいるはずだ。

 まさか海に落ちているなんて事は無い……はず。

 

 何てことを心配していると、ふっ飛ばしたビッグマムが戻ってきた。しかもただ戻ってきただけでなく、髪が凄まじい業火に包み込まれていた。

 あれは太陽プロメテウスを髪に宿らせたもの。つまり、彼女も本気を出したという事だろう。ブチギレである。

 

 ただまぁ、あっちが食いわずらいを起こさなければこうはならなかったのだ。私は悪くない。

 相手の首都を壊滅させておいてそれとは、とんだド畜生女郎だなと言われても結構。もとより海賊とはそんなもんである。

 

 と、私は自分を正当化しながら、飴の巨塔へ鬼の形相をしたビッグマムを引き連れていく。

 食いわずらい発症から時間が経っているせいでビッグマムは痩せ細り、そのおかげか俊敏さが増していた。そのせいで何度か追いつかれそうになるもそのたびに加速して振り切った。

 

 巨塔の根本にはセムラの山が置かれており、ビッグマムの腹を満たすには十分な量があった。

 急接近してくる悪魔のようなビッグマムを見て、彼女の子供と部下達は震え上がっていた。いや、ひょっとしたら私を見てのことかも知れない。

 そんな彼らを無視しながら私はその場に降り立ち、セムラの山から幾つか取って、ビッグマムに向かって投げる。

 

 

 「セェムラァァァァァアアアアアアアア―――ッ!!」

 

 

 それらのお菓子はお菓子の名を叫ぶ彼女の口に向かっていき、すっぽりと入っていく。

 

 

 「ッッッ!!!!」

 

 

 目を見開いた彼女は少しの間硬直し―――

 

 

 「お……おっ……」

 

 

 小刻みに震えたかと思えば

 

 

 「お〜〜いし〜〜〜い♡♡♡」

 

 

 ―――と、その美味に笑みを浮かべた。

 

 心底嬉しそうな表情で目をハートにしながら、セムラの山にがっつくビッグマム。

 セムラがまるで濁流の如く彼女の口に流れ込んでいき、瞬く間にセムラは無くなってしまった。

 

 とても満足そうな彼女を見て食いわずらいが終わった事を悟り、緊張が解けたのかビッグマム海賊団の者達はガクリと座り込んだ。

 

 

 「はぁ〜終わったぁー……」

 

 

 誰が言ったのか分からないが、そんな言葉が聞こえる。

 それに皆はうんうんと頷き、私もそれに心の中で同意する。

 

 本当に。終わって良かった。

 やっと相談出来るよ。

 

 

 

 




オリジナル技
 『倶利伽羅』
 高い切断力を持つ技。刀版雷鳴八卦。


あまり戦闘描写を書くと文字数がえげつない上にテンポが悪くなるので結構省きました。

自分で書いておいてなんですが、今更ながらビックマムとカイドウを戦わせたのを後悔してます。

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