ソロ以外は僕には苦痛です   作:S1nO

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待たせたくせに短いです
現在と過去を繋ぐ間話です


残火

 2月15日、日は沈み月が昇る。暗闇を照らす月明かり。水面に反射してもう一つの月を創り出す。

 玉狛支部へ導くコンクリートの橋。その真ん中に僕はいる。防衛任務の帰り。まだドアを開けることはない。彼の真剣な眼差し。僕はそれを分かっていても受け止めなければならない。そして否定……いや、拒絶しなきゃいけない。

 

「若宮先輩、僕たちのチームに。玉狛第二に入ってもらえませんか」

 

本気だ。三雲君は今日のことを重く受け止めている。自分の、自分たちの弱点を分からされた試合。逃げることを許さない結果が残っている。戦術も技術もセンスも。全てのレベルが違ったと。強いという言葉だけでは済ませられない程。上位と中位の壁を感じている。実際そうだ。あの2つ(中位と上位)は1つのステータスが突出しているだけで変わるレベルじゃない。主観だが、上位は平均ステータス8.0以上の隊ばかり。二宮、影浦の2トップは8.7程度はある。玉狛第二はよくて7.0。厳しいのは当たり前だ。個人の技量を伸ばしている時間はない。手っ取り早くチームレベルを引き上げるには人員を増やす。だから迅さんや僕みたいな個人力の高い人を入れたいわけと……。ずいぶん簡単にいうじゃないの……。それが通るなら僕も迅さんもどこかの隊に入ってますよ。

 

「お断りさせていただきます」

 

「予想はできてました。でもどうしてですか。理由を」

 

「三雲君は僕を活かすことができますか」

 

「……やってみせます」

 

気合いだけだ。具体的なイメージができてない。それもそうか。あの10セットで気づいてるはず。

 

「無理ですよ。今日の試合で得たことは自分たちの実力と相手の実力だけですか」

 

「……」

 

「早く終わらせて戻りましょう。まだ冷えますから。では僕の言いたいことを。相手のエースは司令塔です。これは強い者が上に立って仲間を引き連れているということです。所謂将軍タイプです。一方玉狛第二(君たち)は頭脳担当が指示しています。これは軍師タイプです」

 

「僕たちも将軍タイプにしろってことですか」

 

「そんなことはありません。それぞれいい点がありますが今回は関係ないので結構です。僕が玉狛第二に入ったら三雲君が僕を動かすより、僕が1人で動いた方がいいと思いませんか」

 

「それは……その通りです。ですが、僕は若宮先輩を上手く扱えるよう努力します。だから

 

「そんな努力をするよりも大事なことがあるんじゃないですか。三雲君、貴方のポジションはなんですか。オペレーターでも観測者(スポッター)でもありません。射手。敵を撃ち落とすことです。だから今貴方が考えるべきは『仲間の扱い方』ではありません。『どこまで自分が追いつけるか』です。自分に足りていないから要求していることの難易度が高いんです。だから窮屈な試合になっています。2人に追いつくにつれ、扱い方が上達するんじゃありませんか」

 

「……はい」

 

「話はこれで終わりです。早く戻りましょう。心配してる人もいるかもしれないですし」

 

適当な理由を並べているだけの逃げ腰野郎だ

 

 

 

 

 

「アンタ迅だけじゃなくて幹斗にも同じこと言ったの⁉︎」

 

「はい、でもしっかり断られました」

 

「でしょうね。それで、アイツはなんて言ったのよ」

 

「三雲君に必要なのは他人を上手く扱うことじゃなくて実力アップですよ。って言われました」

 

「生意気なこと言うのね、アイツ」

 

「でも幹斗の言ってることは間違ってない。現に俺もそう思う。幹斗からの課題を乗り越えられれば目に見えて成長してるはずだ」

 

「若宮先輩の指摘は結構的を得てますよ。若宮先輩のおかげで何ランク戦で勝てるようになったって言う報告もあるし、俺もその1人なんで」

 

「そういえばそうね。でもアイツの指摘ってアドバイスって言うには具体的じゃないでしょ?」

 

「それは幹斗なりの最善だろ。俺たちがとやかく言えることじゃない」

 

「色んな人に聞いてみます。僕なりの成長を見つけてみます」

 

 

 

 

 黒江双葉は感じていた。どうして追いつけないのか。どうしてあんなにノーマルトリガーを上手く扱えるのか。

『若宮先輩……どうして……』

彼のログの観察。圧倒的に数が少ない。だが気になる部分がいくつか見られる。射手トリガーしか使っていなかった時、孤月二刀流だった時、スコーピオン使いだった時。様々なトリガーを握ってきている。今の万能手とは違って使用するトリガーが定まっていない。ある日は孤月を。その次の日は射手トリガーを。1戦目は射手、2戦目はスコーピオンの日もある。その実力は最上位までは行かないものの上位に余裕で食い込むほど。洗練された動き。無理な態勢でも立て直すフィジカル。隙を見逃さない目。今の彼はこの頃から完成していた。逆に彼に合うトリガーがなかったと言えるほど今と比べて物足りなさを感じる。

 

「双葉、何を見てるのかしら?」

 

「加古さん」

 

「あら、昔の若宮君じゃない。懐かしいわね、目を合わせただけで切られそうになる風格。確かまだ玉狛第一に入る前かしら」

 

黒江がボーダー隊員になったのは1年ほど前。その頃にはもうすでに彼はA級だった。そして1人だった。今よりも深い負のオーラ。近づいただけで呑まれてしまいそうだ。玉狛第一、A級皆んなが彼を避けていた。

 

「加古さん、昔の若宮先輩について教えてください」

 

「いいわよ。入隊したてはそこまで目立った活躍はなかったかしらーーーーー」




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