仲間由紀恵さんが豊臣秀吉の正室の役でした。
綺麗すぎて、徳川家康役の高橋英樹さんがどんどん白髪が増えるのに最終回のシーンまで美しく、八百比丘尼かと思いました。
さて、話はクライマックスです。
ぜひ、この猿がどうなるか見ていってください。
「………。」
(そうね。わたしには。)
ドアノブを女の人が回した瞬間、
ベガン!
と、扉が音を立てた。
立てただけでなく、扉からなにか生えて、猿の左胸になにか突き刺さっている。
「ぐっ…」
猿は慌ててその生えたものに手をつける。
ただ、掴んだ指がポタリポタリと落ちた。
「…刀!」
刀だ。しかも長い。
扉と猿に1mぐらい間があったが、刀は猿の毛を貫通して、背中から剣先が出ている。
ギュイン、ギュインと扉が下に切れていく。
同時に猿の体も切れていく。
「…なんと……お前らなに見てるんだ、はやく刀をとれ!」
猿も慌てる。
自分の命がなくなっているところを見ているのだ。
「………。」
「………。」
ふたりの女の人は動かない。
ドアノブに手をかけていた人もビックリして一歩下がっているから傷つかない。
刀が止まり、今度は右側に切れ始めた。
「チッ…誰か!誰かいないか!?」
猿が声をあげる。
誰も傍観してるだけで動かない。
意図して動かないのか、怖くて動けないのかは分からない。
刀がある程度、身体を横に切ったら今度は真上に刃が上がり始めた。
「誰か!誰かいないか!俺は、この辺を治めるファミリーなんだぞ!早く助けろよ!」
誰も動かない。
いや、動こうとした人はいた。
ただ、そう言ったのが悪かったのか癪に触ったのか、一歩下がってしまった。
「と、言うか、誰だ…こんな…俺に向かって…こんなこと許されると思ってるのか!?…」
結局、上半身を四角に切断された。
刀がニュルンと身体から抜けて、キリキリキリと鉄の扉からも抜けていった。
「あぁ…」
猿が膝から崩れ落ち、前に倒れた。
その時、鉄の扉がドタン!と外れて、猿の上に落ちた。
水の入った風船が撥ねたように赤い水がブシャ!と広がった。
「……あ。」
「死んだ…」
観客が呆気に取られている。
「………。」
海美が猿だったモノの上、いや、鉄板の上を歩いて穴の空いた扉に向かう。
「…まつり?」
初めて出会った時のように頭の上からすっぽりマントを被り、顔は見えない。
ただ、マントの左下に刀の剣先が覗いている。
猪の親分が後ろに立っている。
「あなたが焚きつけたのね?」
「…これで良かったのだ。これであの子たちは自由だ。ただ、鬼のお嬢さんに辛いことをさせてしまった。」
「…楽屋だか、医務室かを見せたのね?」
「そうだ。」
猪の親分が正座をする。
「気に入らなくてワシを殺したいなら好きにしろ。お嬢さんの苦しみ、受けてあの世に行く。」
海美は猪の親分から目を外し、まつりに話しかける。
手のひらを見せてからゆっくり頭の上に持っていく。
小さく震えている。
「…ありがとう。みんな助かった。泣いていいよ。私がここにいるから。」
そう言うと見えない顔から鼻水をすする音が聞こえてきた。
「猪の親分さん。みなさんを家に帰して、近くのお寺からお坊さんを呼んできて葬儀をして。みなさんが圧政に苦しんでいたなら天人が助けに来ると思いますよ。」
「ワシも救われるのか?」
「…まつり?ひどいことをしたのは猿の男?それとも騙した猪の親分?」
「…猿だけ。猪の親分さんは、悪くないと思う。」
「猪の親分があなたに教えなければこんなことしなかったんじゃない?」
「…あの子たちが可哀想。」
「そうね。」
海美は猪の親分を見る。
「猪の親分さん。まつりはあなたを悪者だと思ってないみたい。あなたが今後は半径1kmを守ったら?」
「ワシが?」
「だって、この子たちを助けたらやりたいことあったんでしょ?」
「ま、…まぁ。お…いや、海美さんが言ったように天人を迎えようかと、それはもちろん、子分たちにも言ってあることだが。」
「…私は、手助けをしただけ。これからが大変よ。」
「覚悟はしてあるさ。そうでもなきゃ、こんなところでヤクザ行為はしてないよ。まずやるのは…選挙だな。指導者が必要だ。ワシは選挙管理委員じゃ。」
「「えっ!親分がやらないんですか?」」
子分たちが親分を囲む。
「考え直して、出馬してください親分。」
「いや、ワシは新しい指導者を監視せにゃならん。」
「親分なら誰も反対しませんよ。」
「いや、ワシはいままで日陰や夜を渡ってきた。ワシはふさわしくない。ワシが出来るのは道理を通すだけじゃ。お前たち、出たいなら自由にしろ。」
「「そんな…親分!」」
子分たちが親分を囲み、思いとどまるよう説得をしている。
海美はまつりを抱き寄せる。
まつりは肩で息をしている。もう泣いてはいないようだ。
「まつり。…子どもたちのところに連れってて。謝りたい。」
「うん。」
まつりは歩き始めた。
これからの希望や戸惑い、明日に希望を持っている後ろに比べて、元気がなく、真っ直ぐ、今を絶望して歩くまつりが、哀れだと思った。