ムンクさんが出てきたところです。
「そうだ。あいつもワシの子分だが、猿の動きと、子供たちの治療をさせるんで、猿の部下もやらせてた。内情は良く分かってるだろうよ。」
「…あの人は良い人なの?」
「人間らしいし、モノを倒すのも御手のものらしい。ワシを殺しに来たらしいが、ワシのこの考えを言ったら二重スパイをやってくれたんだ。ただ、あの猿はただのモノではないって言っていたな。詳しく聞いてみたらどうだ?」
「…そうします。」
骸骨は子どもたちを気遣いながら歩いている。
悪い人ではないと思うが、なんであの人は私の左手を持ったのだろうか?
杖を奪おうとしたのではないと思う。
杖から剣が出なかったから。
じゃあ、なんで彼は私の手を取ったの?
いろいろ考えて、ある仮説を立てたとき、一団が目の前までやってきた。
「みんな。これからは、自由に好きなところに行きなさい。もしなにか心配事があるなら、ワシの手伝いをしてもらいたいんだ。」
猪の親分がなにかみんなに指示出している。
骸骨の男も子どもたちの近くにいるが、なにかソワソワしている。
骸骨の男は、なにか、なにか、気が変になりそうだった。
あの左頬の感覚がやけに気になる。
もう一度、話が出来ないものだろうか?
「あの…」
左肩を、ポンポンと叩かれた。
振り返る。
青い髪の女の人だった。
「あっ…」
「ちょっと、2人で話せませんか?」
「えっ…あっ!良いでしょう。久しぶりに…」
「同じくらいの人と話せそうで良かった。」
「…あっ、はい。」
少し、親分の屋敷から離れる。
裏が坂になっていて、そこを登り切ると静かな森のある神社があった。
本殿、社務所、神楽殿まである。
ただ、管理する人も、神様もどっかに行ってしまったのが、埃だらけになっている。
海美は、本殿の階段に腰掛けようとした。
「待って。」
と骸骨の男が止めて、左腰に吊るしてあった手ぬぐいで、海美が座ろうとしたところを拭いてやった。
海美は不思議そうに彼の顔を見た。
骸骨の男はまた手拭いを左腰に突っ込みながらしゃべる。
「女の人に対して、いつもやってたことだ。こんな顔になる前は普通にやっていたんだ。」
この骸骨の男。
たしかに顔は美形だ。
右手で左側の顔を隠す癖みたいなのがあるが、本当に隠すとかっこいい。
右腕もおかしなことに気がついた。
「…あなた、右手にロープが。」
「あぁ、これ?これは、これと繋がっているんだ。」
左腰にナタが差してある。
それを撫でてみせる。
そのナタも持ち手(つかがしら)にロープだか、手拭いの切れ端だかで結んである。
その結んだ端が右腕に巻いてある。
「俺は片腕しかないから、このくらいの長さのナタで充分だ。最悪投げても、これなら腕を振り回せば、回収出来るしね。」
ツカを撫でてみせる。
「あなたはなんであそこにいたの?」
海美は話しやすいだろう話から始めた。
「実は、あの猿を殺そうとしてて…」
骸骨の男は座って足をゆっくり組みながらこっちを見ないで言った。
「あの猿は、『人間だったモノらしい』」
「人間なの?」
「人間ではない。だからって、モノでもない。」
「どういうこと?」