「な…なんだこれ?」
「俺が運んでいる途中だったんだけど、瞽女の集団が気になってな。助ける途中だったんだ。」
2人は大仏様の頭に釘付けになっている。
「へぇ。あなた優しいのね。」
2人は振り向く。
なんと、男は瞽女全員を乗せて坂の八分目を登っていた。
「あの短時間で…」
「文字数や時間をショートカットさせてもらった。」と男は言った。
とにかく、瞽女さんたちを乗せてその大八車の男は上がってきた。
なんと、男は大八車に大仏の頭も乗せた。
大八車の梃子の原理で器用に乗せると、頭の周りに瞽女さんたちを乗せて、お寺に向かって歩き始めた。
こんな大荷物で動くのか?とまつりは思ったが、辺りにギイィと音を立てて大八車が動き出したときは「おぉ!」とため息が出た。
「…大変じゃないの?」
まつりは男に話しかける。
「俺は大丈夫。お二人を歩かせて申し訳ない。」
「いいよ。そんなに疲れてないし。」
「と、言ってももうあの森の奥が寺だし、この住宅地はもう寺の敷地内だよ。」
「ここが?」
まつりは辺りを見渡す。
確かに今歩いているまっすぐな道。後ろの奥の方、さっき合流した交差点よりもっと奥まで真っ直ぐに続いている。
その奥の方の交差点らしいところに赤い建物がある。
「あれは?」
「あれは、お稲荷さんよ。」
男ではなく、男のすぐ後ろの荷台部分にちょこんと腰掛けている女の子がしゃべる。
「あなたは…」
「アヤ。鬼さんは?」
「…まつり。あなたは目が見えるの?」
「アヤは俺と旅しているから見えてるよ。」
男が答える。
アヤがしゃべる。
「あの赤いお稲荷さんよりこっちにはモノは入ってこれないんだよ。狐さんが守っているから。」
「なるほどねぇ。」
「まつりちゃんは人間だね?」
「ギクっ…なんで分かったの?」
「お稲荷さんが怒ってないから。」
「…そうだった。」
ちなみに、土俵の話を海美がしているとき、まつりが黙って海美の袖を引っ張ったのは、話が難しいのもあったが、なにかに見られている気がしたからだ。
「お姉ちゃんも今日一緒だね。」
「うん。」
「悪いね。相手してもらって。」
男の人がしゃべる。
「いいえ…」
まつりは急に海美に掴まりたくなったが、近くにいなかった。
「あれ?」
立ち止まり、大八車をやり過ごすと、後ろに回り込む。
海美か誰かと喋ってる。
一番後ろの真ん中に座っている女の人だ。
海美より歳が上みたいだ。
この女の人だけ茶色いマントみたいなのを着て、杖一本を足に絡めて、三味線の弦をいじっている。
海美はその目の前で大八車を押しながらなにかしゃべっている。
まつりは走って海美の腕に抱きつく。
「危な…どうしたの?」
「ううん…なんでもない。」
「そう…」
「どうしたの?」
女の人がしゃべる。
「いいえ、一緒に旅をしてる子が抱きついただけ。」
「そう。」
「で、さっきの続きなんだけど、」
「いや…後にしよう。この大八車の男もなにかありそうだ。」
「そう。」
謎の会話があったあと、
「ところで、その腕に抱きついてきた子はどんな子なの?」
という話になってしまった。