ちなみに、最近は剣客商売と、里見浩太朗さんの水戸黄門を見てます。
スピカはアヤを抱っこして、海美はまつりを抱えて歩きだした。
秋の虫がやかましい。
月が雲に乗っかっている。
2人は寺に向かって歩く。
「で、スピカはどうしてここにきたの?」
「あぁ。実は、この寺の先の山の上に関所があるだろう。」
「うん。たしかモノが人間から物品を奪うために復活させたんだよね。」
「しかし、そこに変な家族が住み始めたらしい。」
「…家族。」
「なんでも、モノを追い出して、人間からだけでなく、その周辺の村まで支配し始めたらしい。モノはそんなことしてなかった。」
「…村ではなくそこに住んでいるの?」
「防衛に優れているからな。村に住む気はないらしい。」
「…そう。」
「それで、その家族を殺しに行くんだ。」
「なんで?あなたに関係ないでしょ?」
「なんでとは?…そのあたりの生き物が困っているんじゃ助けないと。」
「あなたは優しいのね。」
「…それが人間だろう。困ってる人やことがあれば助けないと。」
「…そうね。…2人で?」
「そのつもりだが、もしかしたら寺にアヤは置いていこうかと。」
「…死ぬ気なの?」
「死ぬことはないだろうけど、その家族は容赦なくアヤに手を出すだろうからな。」
「…私も手伝うよ。」
「なに?」
「猿は、家族の三十位の強さだったらしい。あれが三人でも面倒なのに、下手したら猿より強い可能性もある。」
「だけど、良いんかい?」
「私も人間だから。」
「…そうか。」
「そのさくせん。」
後ろから声がした。
2人は振り向く。
月が隠れててよく見えない。
「誰?」
「わたしよ。」
月が雲から顔を出した。
「ここよ。」
「「あ!あなたは。」」
さっき、平家物語を歌っていた1人だけマントを着ていた瞽女さんだ。
三味線を左手で担ぎ、右手に杖をついている。
「あなた…」
「へへへ。私も連れてってください。」
「…そう言っても、遊びに行くんじゃないし。」
「そんじゃ…」
そういうと、地面の石を右手で拾い、上に投げた。
ガサガサ!と音がする。木が上にあるらしい。
どうもあの参道の林まで歩いてきていたらしい。
枝がパラパラと落ちてくる。
「ふぐぅ」
杖を左脇で抱える。
そして杖を引っ張るとキラリと光った。
「仕込み杖…」
そう声に海美が出した時、
月の光をわずかに浴びる仕込み杖が落ちてくる枝を払う。
刀の刃を逆手持ちで戦うというより、新体操やフィギュアスケートのような華麗な動きだった。
「…音を聞いたのか。」
瞽女さんは前屈みになりながら杖を閉まった。
「どうです?」
「…他の瞽女さんが承知しないだろう。」
「いいえ。逆に私たちの道を邪魔するものならどんなものにも容赦しません。私たちは帰りたいところがあるんです。」
「でも、」
「どうかお願いします。」
「…ちなみにこの声は海美と言うんだけど、あなたは?」
「わたしは、イチともうします。」
「イチさん。さっきも話したけど、いま、モノじゃない凶悪ななんだか分からないものがいるの。その訳の分からないものには関わらないほうが良いわ。なんだか分かってきてから触れたんでも…」
「うみさん。わたしたちはね。見えないからとても損をしているとおもうの。」
イチは海美じゃなくスピカを見る。
「そんな中でも、優しくしてくれる人がいるからこういうふうに旅がつづけられるの。」
いや、スピカを見ているんじゃない。耳を海美の正面にむけているんだ。
「わたしたちはそんな期待に応えたいし、その土地でいきるひとを応援したい。そのなんだかわからないもので、わたしたちを歓迎してくれるひとたちが困っているなら、わたしたちはいって励ます義務があるし、恩返ししたいの。」
「イチ…」
「おねがい。わたしにも手伝わせて。というか、関所が封鎖されてるなら、結局私たちは戦って通る羽目になったんだけど…」
「…そう。」
「…海美さん。イチさん。ここまで戦力が増えたんじゃなんとかなるんじゃないですか?今日は戻ってなにか考えてみますよ。」
「戻って…あぁ!そうだ!」
「どうしました?」
「今日の夜、お坊さんとやることがあるんだった。早く戻らないと!」
「じゃあ、各々、明日の朝…」
「あっ!…朝はだめ。」
「なぜ?」
「朝からやることがあるの。」
「そうですか…じゃあ、イチさんと瞽女衆のみなさんで作戦を考えます。」
「すみません。」
「いえいえ。」
「ところで、イチさん。他の方は?」
「もう先に戻っているわ。若い子の指導だって。」
「そう。」
「そういえば、さっきから海美さん。杖で地面を突いたりはなしたりしてますが…」
「すみません。もうまつりが限界みたいで…」
「そうですか。じゃあ早く戻りましょう。
まつりを海美はイチの力も借りて寺まで持ってきた。
イチは目が見えないのに手際良く海美を手伝った。
そして、各々自分の部屋に引き上げたとき、寺の奥の山からドシン!ドシン!と音が迫ってきていた。