金剛杖物語~雄鬼のまつりの章~   作:仲村大輝

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最近見た映画だと、浅見光彦シリーズの映画を見ました。
石坂浩二さん、加藤武さんなどなど、金田一耕助シリーズを彷彿させる俳優だけでなく、役者の演技、カメラワーク、OPまで、金田一耕助シリーズに似てるなあと思ったら、監督が市川崑監督で、
角川春樹さんが、「金田一を超える作品をつくろう!」と監督に話を持って行って実現した作品らしいです。


第二章第八部 化け物のすそ

「いいですか、海美さん。」

お坊さんが梁の上から覗く。

「大丈夫ですよ。」

海美は布団をかかり、上を向いてお坊さんと話す。

隣にはまつりが寝ている。

敷布団と掛け布団を重ねて2人で寝ている。

もちろん杖を抱き枕代わりに、まつりは服装を乱さずそのままにしてある。

「なにかあれば私も塩と味噌で…」

「ありがとうございますお坊さん。じゃあおやすみなさい。」

「ありがとうございます。おやすみなさいませ。」

フッと火が消えて真っ暗になる。

いや、月明かりが障子にあたりそんなに暗くならない。

 

しばらく、する間もなく、

ドシン!ドシン!

という音が聞こえてきた。

「来た…」

お坊さんがしゃべる。

「よし!」

海美は頭まで布団をかぶった。

まつりにもきちんと布団をかけた。

「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」

お坊さんがお経を唱えてくれる。

ドシン!ドシン!

という音と共に壁をすり抜け、なにか出てきた。

お坊さんに言われた通り、笠を被り、白い服を着ている。

そしてあのでかい足。

「これか…」

海美はお坊さんからいただいた道具を取り出す。

凧揚げに使う糸どころじゃなく長い糸と、先端に針がついている。

そしてその針を杖の上にある赤い球にくっつける。

「これで準備完了。」

その時、女の人の声でなにか聞こえる。

「………ぅカネ」

しゃべるモノだな。

「うーん…」まつりが唸った。

「いまはやめて!」

まつりの口を覆う。

「うーん!?」

声が発せず、まつりが唸る。

「しー!…いまお化けが来てるの。」

海美は素早くまつりに耳打ちする。

「ウワゥ!」

まつりはうまくしゃべれないが、顔を上下させる。

「シオトミソオッカネ」

明らかに近づいてきた。

布団の隙間から海美が見る。

「よし。」

海美は自分の杖を構える。

「シオトミソオッカネ。」

明らかにこいつらから声が聞こえた。

「今だ。」

海美は布団から杖を突き出す。しゃべってる化け物に向かって針のついた杖が伸びる。

服の裾にパシっと針が刺さり、裾が赤くなる。

杖が猫の面に使ったくっつく能力だ。

海美は素早く布団の中に杖を回収する。

針についた糸がシュルシュルと出ていく。

壁を通り抜け、寺の外に出たようだ。

シュルシュルシュルシュルと糸が出て行く。

「海美…」

まつりが手を払い退けてしゃべる。

「もう大丈夫。なに?」

「……びっくりしただけ。」

「………。」

海美はまつりの頭を撫でた。

「明日、この糸を手繰らないといけないからもう寝て。」

「うん。」

なにげに、この足音は怖さがなければ心地よい。

まつりはすぐ寝てしまった。

「……。そう…」

なんかまつりがモゾモゾしゃべった。

なにか夢でも見ているようだった。

ちなみに、お坊さんは一生懸命お経を唱えてくれている。

あたりが明るくなってきたかな?

と思ったら、化け物が来なくなり、足が遠ざかっていった。

遠ざかると、糸も動かなくなった。

「終わった…」

海美も力尽きて寝た。


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