石坂浩二さん、加藤武さんなどなど、金田一耕助シリーズを彷彿させる俳優だけでなく、役者の演技、カメラワーク、OPまで、金田一耕助シリーズに似てるなあと思ったら、監督が市川崑監督で、
角川春樹さんが、「金田一を超える作品をつくろう!」と監督に話を持って行って実現した作品らしいです。
「いいですか、海美さん。」
お坊さんが梁の上から覗く。
「大丈夫ですよ。」
海美は布団をかかり、上を向いてお坊さんと話す。
隣にはまつりが寝ている。
敷布団と掛け布団を重ねて2人で寝ている。
もちろん杖を抱き枕代わりに、まつりは服装を乱さずそのままにしてある。
「なにかあれば私も塩と味噌で…」
「ありがとうございますお坊さん。じゃあおやすみなさい。」
「ありがとうございます。おやすみなさいませ。」
フッと火が消えて真っ暗になる。
いや、月明かりが障子にあたりそんなに暗くならない。
しばらく、する間もなく、
ドシン!ドシン!
という音が聞こえてきた。
「来た…」
お坊さんがしゃべる。
「よし!」
海美は頭まで布団をかぶった。
まつりにもきちんと布団をかけた。
「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」
お坊さんがお経を唱えてくれる。
ドシン!ドシン!
という音と共に壁をすり抜け、なにか出てきた。
お坊さんに言われた通り、笠を被り、白い服を着ている。
そしてあのでかい足。
「これか…」
海美はお坊さんからいただいた道具を取り出す。
凧揚げに使う糸どころじゃなく長い糸と、先端に針がついている。
そしてその針を杖の上にある赤い球にくっつける。
「これで準備完了。」
その時、女の人の声でなにか聞こえる。
「………ぅカネ」
しゃべるモノだな。
「うーん…」まつりが唸った。
「いまはやめて!」
まつりの口を覆う。
「うーん!?」
声が発せず、まつりが唸る。
「しー!…いまお化けが来てるの。」
海美は素早くまつりに耳打ちする。
「ウワゥ!」
まつりはうまくしゃべれないが、顔を上下させる。
「シオトミソオッカネ」
明らかに近づいてきた。
布団の隙間から海美が見る。
「よし。」
海美は自分の杖を構える。
「シオトミソオッカネ。」
明らかにこいつらから声が聞こえた。
「今だ。」
海美は布団から杖を突き出す。しゃべってる化け物に向かって針のついた杖が伸びる。
服の裾にパシっと針が刺さり、裾が赤くなる。
杖が猫の面に使ったくっつく能力だ。
海美は素早く布団の中に杖を回収する。
針についた糸がシュルシュルと出ていく。
壁を通り抜け、寺の外に出たようだ。
シュルシュルシュルシュルと糸が出て行く。
「海美…」
まつりが手を払い退けてしゃべる。
「もう大丈夫。なに?」
「……びっくりしただけ。」
「………。」
海美はまつりの頭を撫でた。
「明日、この糸を手繰らないといけないからもう寝て。」
「うん。」
なにげに、この足音は怖さがなければ心地よい。
まつりはすぐ寝てしまった。
「……。そう…」
なんかまつりがモゾモゾしゃべった。
なにか夢でも見ているようだった。
ちなみに、お坊さんは一生懸命お経を唱えてくれている。
あたりが明るくなってきたかな?
と思ったら、化け物が来なくなり、足が遠ざかっていった。
遠ざかると、糸も動かなくなった。
「終わった…」
海美も力尽きて寝た。