現在は、元々どこかにあった大仏様の首を峠の向かいまで運ぶことになっていた。
その寺から寺に運ぶ仕事をしている時、アヤと出会った。
スピカの友人が結婚して生まれた子供だった。
2人は遠くに行かねばならなかったが、アヤを連れて行くには危険な旅だった。
だから、スピカに任せた。
捨てた訳ではない。
仕事の途中、モノではないなにかと戦わなければいけないことになったのだ。
アヤを危険な目に遭わせるわけにはいかない。
なので、タックを組むことにした。
秋で、山々の木々が紅や黄色に葉っぱを変えて、冬に備えている山道をゴトゴトと大八車が行く。
大八車や大仏様の頭に乗っている人物達。
目の見えない瞽女衆もいるが、一番戦力になると目論んでいるのは、大仏様の頭の上に乗っている赤いマントの鬼。
まいったことに赤い鬼はアヤと仲良くなってしまったため、2人で大仏様の頭に乗って足をふらふらさせている。
あと2人、戦力と踏んでいるのは大八車の一番後ろの真ん中に乗っている2人、青い髪の毛の女の人と、目の見えない杖を持ってマントを着た女の人だ。
仏様の顔の周りにたくさんの女の人がいる訳である。
「うーん。男の人にとっての天国はこんなようなところかもしれないなぁ。」
この男は煩悩にまみれた一言を言った。
さて、この大八車がどこに向かっているのかと言うと、山の中腹にある関所である。
この世界の関所は、モノが人間奴隷を逃さないようにするため、また、旅人の人間からお金を巻き上げるためにモノどもが大昔に見た関所を復活させたのだ。
ただ、ここのところ少し違うことが起きていた。
モノが追い出されたのだ。
代わりになんだかわからないものが関所に入っていた。
ただ、これがおかしい。
モノが取り返そうと関所に行ったのだが帰ってこない。
それどころか、モノがどうなったのか調べるモノが行ったのにそれも帰って来なかったのだ。
そして、関所を使うモノも人間もいなくなっていたのだ。
そんななか、変な大八車が関所に向かって行ったのだ。
関所は山道の街道に面するようにある総二階建ての建物だった。
もっとお城のような大きな建物だと思っていただけに面食らった。
それだけでなく、いままであった山道の集落にあった建物とさほど違いがない。
昔超えた、箱根の関所を想像していただけにスピカは黙って辺りを見渡してしまった。
ただ作戦は続行しないといけない。
渓谷が、山がまるでなにかに引っ張り込まれているように谷をつくっている。
大八車が関所の敷地にはいる。
すると、瞽女衆と青髪、赤マントも降りてくる。
スピカを先頭に玄関から声をかける。
「こんにちわ!」
「はいぃ。」
なにかいるようだ。
「いかがしたかな?」
目の見える人は驚いた。
猿ではないにせよ、今度は羊みたいな顔のものが出てきた。
「いかがしたかな?」
「あぁ、実は、この関所を通りたいと思い、あいさつにあがりました。」
「なに?ここを通りたいと?…少々お待ちを。」
なにやらいそいそと羊の顔は下がった。
「海美。」
スピカが青髪に話しかける。
「なに?」
「さっきの羊、なにか笑ってなかったか?」
「…そう?」
「口元も。『また獲物がかかった。』と言うふうに動いている気がした。気をつけろ。」
「はい。」
「お待たせしました。」
「うっ…」
目の見える人はまた驚いた。
人間の頭にもう一つ頭みたいなのがある。
しかも赤くてブヨブヨしている。
まるで鶏の鶏冠のようだ。
「1人づつ見ますので、奥の間へどうぞ。」
コブの男が言う。
「はい。」
スピカが入っていく。それに続いて、目の見えないイチ、青髪の海美、赤雄鬼のまつり、アヤ、そして瞽女衆が続く。
玄関に入ると左側に部屋があり、そこに着物を着たさっきの羊とこぶがいる。
「……。」
スピカはゆっくり部屋を見渡す。
あと1人いるはずだが…
「では、通行手形を出せ。」
羊が言う。
「あの、お二人の他の方はいらっしゃらないのですか?」
「ただいま来客中じゃ。」
「そうでしたか。妻に持たせていますので少々お待ちを。」
そう言うと、海美は持ち物をゴソゴソいじりだした。