恐れ多くも、若山富三郎と勝新太郎兄弟対決のシーンです。
青髪はゆっくり畳から鎌を抜くと杖に刃を戻して言った。
「…親分さん。」
「………。」
「親分さん!」
「おっ!おう。おい!あれ…あれもってこいだ。」
自分も目の前で起きたことが信じられないのと、冷静になってもこの青髪は強すぎると思い、親分は動けなかった。
そして我に戻った彼は子分にすぐ財宝を持ってくるよう指示したのだ。
よいしょよいしょと子分数人で千両箱を持ってくる。
「親分、どうぞ。」
子分が親分の前に千両箱を置く。
「おう!お嬢さん。これを…」
子分がやっとこさ持ってきた千両箱を親分はヒョイっと持ち上げて、海美の前に置いた。
「それじゃ。」
そう言うと海美は、千両箱を開けた。
黄金に輝く大判小判、金の塊などがぎっしり入っていた。
それを海美は一掴み。そしてもう一掴み。手ぬぐいに置くと、パタンパタンと手ぬぐいでくるんで懐に入れた。
「まつり。行こう。」
海美は赤鬼に話しかけると立ち上がった。
「ちょっとお待ち。」
親分に話しかけられる。
「はい?」
「これはなんじゃい?」
まだたっぷり残っている千両箱を指さす。まだどっさりと黄金がある。
「あぁ。おにぎりと饅頭代です。」
「一個だけでこんなにかかるわけないだろう。」
親分が自分の太ももを叩く。
バシン!
と良い音がする。
「しかし…そんなに貰っても。」
「…ちょっとお待ちなさい。…だったら、とっとと上がれば良かったものを…これじゃ、私の面目が立たないではないか。」
周りの観客も親分に不振の目を向けている。
「だって、そうすれば、あなたが不正に儲けることが出来なくなるでしょう?良いことだけじゃない。」
「なんだと!」
「こいつ!」
たしかにそういう声が上がることは予想ついた。
しかし、変わったことがあった。
その声をあげたのは、まさかの観客だった。
あれ? 空気がおかしい。
海美は、こういう場をこういう空気にするのが好きだ。
悪趣味かもしれないが、賭博などいかに相手をだまくらかして儲けるかの場所だ。
真っ当に生きている人間がスッて自殺などするのはとんでもないと思っていたので、海美はこんなことをやって賭博場を仕切るモノの信用を削ぎ落とし、その街にモノをいられなくすることもやっているのだ。
そして、親分と子分が狼狽して、一般の人がポカンとしているカオスな状況で出て行くのが通例だが、今回は違った。
親分子分が冷静で、一般の方の方が我々に怒っているようだった。
お客さんたちに壁際に追い詰められて、親分と子分が困ったようにそれを見て、ソワソワしている。
「どこが気に障ったんでしょう?」
まつりが海美の服を掴む。
ガリガリ!
親分が後頭部を掻く。
「…じゃじゃじゃあ。こうしましょう。」
親分が言う。
一同、親分を見る。
「あんたにはこのままあることをやってもらう。それに勝ったら、このまま立ち去ってください。ただ、負けたら。この千両箱は全部あなたのもんで、どうでしょう?」
「…それなら、」
「言いましたね?」
「…なにをするんですか?」
「逃げたら、千両箱はあなたのものですからね。」
「…はぁ?…い。」
「………。