金剛杖物語~雄鬼のまつりの章~   作:仲村大輝

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鮮明に覚えている昔話の一つです。
でんでん太鼓が恐怖心を煽ります。


第四章 第三部 関所の化物

気味が悪くなったまつりは、大刀をいつも通り股下に縛ると、マントを着たまま、海美の隣に寝てしまった。

ただ、横になって目はつぶったはいいが、でんでん太鼓の音が耳に残っていて、どうも寝られない。

でんでんでんでん

でんでんでんでん

そして、思い起こしてしまうあの赤ん坊の顔。

目が離れて口が小さく、変な踊りをしてまとわりついてきていた。

でんでんでんでん

これは困ったと思っていたら、運悪くトイレに行きたくなった。

「海美が起きないかな?」

と思っていたが、そんな都合よく海美も起きはしないだろう。

ふっと目を開けると変なことに気づいた。

海美の顔と同じあたりで寝たのに、海美の足が見える。

海美が寝ながら反転したのか、それとも自分がゴロゴロしてたら反転したのか…

「どうしたのかな?」

そう言いながら、上半身を起こした。

すると、

体が海美から離れるように引っ張られた。

「えっ?」

布団の上に大の字で広がる。

ただ体は海美から離れるように。

そしてなにかに引っ張られるように離れていく。

「えっ…あっ。海美!」

海美は起きない。

そうとう疲れているのか…

そうこうしている間にも体は引っ張られて、さっきの部屋に引っ張られて、囲炉裏の脇を通り、女が引っ込んでいった方へ引っ張られていく。

「なに?」

まつりは、持っていた火箸を床に突き刺す。

体は止まる。

しかし、なにかすごい力で引っ張られている。

「あっ!」

力がすごくて火箸の手を離してしまった。

そのまま廊下に転がる。

すると、今度は廊下をつつーっと滑るかたちで引っ張られていく。

「どこへ連れて行かれるんだ…」

廊下は暗く、どこへ繋がっているか分からない。

しかし、ある瞬間、まつりは刀を抜くと壁に突き刺して、自分の体を止めた。

絶対に引っ張られてはダメだと理解した。

でんでんでんでん

と音が聞こえていた。

 

…このままだと、あの女に引き摺り込まれる。

もう必死に刀にしがみついた。

しかし、壁がポロポロ崩れ始める。

「このままだと結局あの女に負ける…あの赤ちゃん…私になにをした?…あぁ、眠くて頭が動かない…」

太鼓の音が大きくなったような気がした。

それと、なんか声が聞こえる。

引っ張られると一緒に、

「「よいちょ!よいちょ!」」

と声が聞こえる。

「あの、赤ちゃんか…」

引っ張られるタイミングと違いこんな声も聞こえる。

「あの訳の解らぬコブと羊に母を殺された悲しみ。ここで晴らしてくれる。」

「…あの女の声。」

また力が増した気がする。

壁がポロポロからボロボロ崩れる。

「……そうだ、あの赤ちゃん、私の上に登ったっけ。」

まつりは片手を刀から離して、マントに手をかける。

しかし、手が止まる。

このマントはとても大切なものだ。

自分が駅の屋根に潜んでいた時、優しそうな母子を殺してしまったとき、母親が着ていたものだ。

あの親子のものであり、申し訳ないという気持ちと、親のいない自分を満たしてくれるものだ。

しかし、あの女の声がまた聞こえる。

「あの訳の解らぬコブと羊に母を殺された悲しみ。ここで晴らしてくれる。」

幻聴なのか、本当にまた言ったのかは分からない。

ただ、あの女も苦労しているのではないか、もっと甘えたかったのではないか。

理不尽に身内が何者か分からぬものに殺されることにイライラがつのっていたのか。

「分かったよ。」

まつりはマントを止めるボタンを外す。

するとマントは、ブワッと広がりながら廊下の奥に飛んでいった。

ひらひらと誰かの肩に乗っているようだった。

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