金剛杖物語~雄鬼のまつりの章~   作:仲村大輝

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ここからまた違う昔話が始まります。
お楽しみに


第四章 第四部 脱出

でんでん太鼓の音も聞こえなくなった。

「よいちょ。よいちょ。」

という声も聞こえなくなった。

「…海美。」

まつりは、刀を引き抜くと、一目散に海美のところへ戻った。

引っ張られている最中も暴れたため、囲炉裏から灰がこぼれて、火箸で床が傷だらけになっている。

海美はまだ寝てる。

「海美!」

まつりは海美の肩を叩く。

「冷たい!」

服を触ったのだが、絞った雑巾みたいな感じだった。

寝汗だ。

「……父さん…」

「?」

なんか寝ながらしゃべってる。

まつりは海美の口元に耳を傾ける。

「父さん…にぃ…そら…」

息が浅く苦しそう。

「海美!」

また肩を叩く。

「わたしも、一緒に…」

「………。」

このまま寝かせといたほうが良いのではないか?

と思った。

しかし、どこからともなく、いや、幻聴かもしれない。

てんてんてんてん…

あの音が、まつりに聞こえる。

本当に女が追いかけて来て鳴らしているのか、耳に残っているのが鳴っているのかは分からない。

「海美!」

意を決して、まつりは海美を強く揺さぶる。

「ふぇ!」

海美がガッと目を開ける。

「そら?…まつり?」

「海美!ここにいちゃダメだ。早く逃げよう。」

「逃げる?」

「関所にいたのはファミリーだけじゃない。先住者がいた。しかも怪物。」

「モノ?」

「分からない。ただ、糸みたいなので引っ張られて、どこかへ連れて行かれる。」

「…分かった。すぐ出発しましょ。」

海美は提灯を準備する。

まつりも荷物を持つ。

夜中なので灯りが重宝される。

囲炉裏の間にとりあえず雪洞をつけようと海美が試みている。

とりあえず一つ付く。

まつりは、ついた光で隣の部屋の海美の布団を見る。

なんと、人型に布団がべっとり濡れている。

「まつり。」

「海美!」

2人同時にしゃべる?

「なに?」

「いや、先に。」

「いいよ。なに?」

「本当に大丈夫?汗とか…」

「…ここが安全じゃないなら、ここで寝るべきじゃないわ。起きてたあなたも引きずられたんじゃ。」

「うん…」

なにか言ってやりたかったが、言ったところで海美が無理するだけだと思ったのでやめた。

「ところで、まつり。この床は?」

「ああ、これが糸で引っ張られた証拠。」

「だいぶ強い力ね。」

まつりは床と海美を交互に見る。

「……詳しくは外でしゃべるから行こう。」

「えぇ。」

そう言って2人は関所を後にして、先、まだ行ったことのない方向へ歩き始めた。

関所は、もうでんでん太鼓の音は聞こえない。

すすり泣く、悲しげな音が虫が鳴くように聞こえていた。

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