音符で戦う音楽家をつくるか
「あっ!」
ルッコラは、また三階を見ていた。
アバジャが旗を上下に振っている。
「突破される可能性がある。まつりちゃん、ナポレオン。すぐ脱いで。…ナポレオン!」
ナポレオンは狂ったように匂いを追いかけている。
ルッコラがナポレオンの鼻を摘み、匂いを嗅がせないようにした。
すると、
「あれ?」
すぐ元に戻った。
慌てて花笠を外し、そこに置いた。
途中、絡まった紐はナポレオンが素早く懐の刀で切ってくれた。
三人は大慌てで建物に逃げる。
「こっちに来てみろ!」
まつりは奥に逃げようとしたが、ルッコラに2階に上がるよう言われる。
「なんでですか?」
「まつりちゃん、すまないが、この後の展開で突破されたかここで食い止めるぞ。」
「…はい。」
花笠を置いたコンクリートの庭から、半円になっている建物に入った訳だが、コンクリートの庭を向くかたちで、いすがずらっと並び、段々の観客席になっている。
その観客席から建物の内側に入るには、階段を使うわけだが、その階段の前にはコンクリートで塀が出来て、正面から直進出来ないようになっている。
元々、なにかから階段を防ぐように造られていると思うが、それがなにかは分からない。
ルッコラは半円の建物に一番近いところにあったコンクリートに隠れて、まつりとナポレオンもそのコンクリートに隠れた。
「モノどもら、あの花笠に集まるから、おやっつぁんがなんとかしてくれるだろう。」
そうルッコラが言った瞬間、チャチャチャチャチャチャチャーン!と音楽が鳴った。
「あのトンネルのところの退去命令だ。来るぞ。」
5秒もしないうちに、モノどもが走って花笠に到達し始める。
人間を襲うわけではなく、ナポレオンのように匂いを嗅いでいる。
ナポレオンが獅子頭を元の頭の上に戻しながらしゃべる。
「あれはもうサザラを鳴らしてないのだから、まさに残り香を楽しんでいる訳だ。」
「………。」
「……。」
まつりはまさにその通りだと思っていたが、ルッコラはお前が言うな。と思いつつ、ナポレオンの鼻を摘んだ人差し指、中指、親指を擦り合わせた。
ボーン!
太く、腹に響く鈍い音が聞こえたと思うと、軽い「カーン!」という音と共に、花笠に群がるモノどもの真上でなにか爆発した。
その爆発したものは、無数の線になり、花笠に群がるモノどもに降り注ぐ。
「なに?」
まつりは肩をすくめて驚いた。
しかし、すぐ腹に響く音が鳴り出す。
その音は絶え間なく、連続して音を出している。
まつりはコンクリートの裏側に隠れているのでなにが起きたのか分かっていない。
「まつり!」
ナポレオンに呼ばれる。
「これは?」
「銃で反撃してるんだ。この音を立ててるのは味方だ。」
「味方。」
まつりはコンクリートからグラウンド方向を見ているルッコラを見る。
ルッコラの後ろから覗き込むようにグラウンドの方向を見る。
すると、グラウンド側を向いていた座席のありとあらゆるところから、花笠のところにいるモノどもに向かって、明るい光が吸い込まれている。
「おやっつぁんが、またあれを撃つぞ。」
ルッコラがグラウンドを見つつ、左手でまつりを隠そうとした。
また腹に響く音。
そして、その爆発したものは、花笠の牛ではなく、入口付近で、また白い線が降り注いでいる。
その線に触れるモノは動きを止めたり、逆にこちらに向かってきているモノもいる。
「あれは?」
「あれは、おやっつぁんの最終兵器、爆発すると、ねばねばした紐状の状態になる爆誕だ。
あれを浴びるとネバネバして自由に動けなくなる。
そこを、おやっつぁんの部下たちが攻撃するっていう戦法だ。」
「うん。」
「二発目は、逃げそうだったから逃げないようにしたんだ。今回はおやっつぁんは、ご機嫌だな。」
まつりは左の、椅子の下に隠れている2人を見る。
傘に見える銃を構えている。
狙いを定めて撃つ。
2人一組らしく、片方に撃った傘を渡して、もう1人が持っていた傘を借りて撃つ。
またその繰り返し。
敵がいても強いが、敵がいなかったら飽きそうだと思った。
そうこう考えている間に、さっきまで流れなかった爽やかな曲が聴こえてきた。
「どうも危険が去ったようだ。」
ルッコラがつぶやくと、まつりはあたりが暗くなり始めて、花笠が夕日でオレンジなのか、モノの血なのか分からなくなっていた。