仁田忠常「やれば、できる!」
猿の部下がどこから盗んできたのか、寺の鐘をガンガン鳴らして、観客を静かにしている。
「さぁ皆さま、本日はこれで終わりません。なんと飛び入り参加者の入場です!」
「おー!」
「いいぞいいぞ!」
「待ってました!」
「人間の飛び入り参加、ここにいるものを全て倒せば賞金はあなたのものです。では、ご紹介しましょう。チャレンジャーの海美さんです。」
海美がゆっくり土俵にあがる。
女であることを隠しているから誰からも文句をされない。
「おー!」
「おい。チャレンジャー!お前さんにうんと賭けたんだ負けるなよ!」
「チャレンジャーのほうが配当が良いんだ。負けるなよ!」
「天狗面負けるなよ!」
言い忘れたが、後頭部にまつりから借りた面をつけている。
土俵の向かいには三人上がっている。
ただ、1人は竹馬、1人はヨーヨー、1人はフラフープを持っている。
そして各人、猫、犬、猿の面をつけて素顔は見えなくなっている。
「はじめ!」
呼び出しが叫び、鐘をバシン!と一回鳴らす。
「行け!チャレンジャー!」
「飛び道具を使え!」
「バカ!そう言ったら敵にバレちゃうだろ!」
海美は、しまった!と思った。
本来出る予定だった、早切りの侍は、小刀を投げることが得意だったのに、私はなにも持ってないじゃん!
そんなことを考えている暇はない。
真正面からヨーヨーが飛んでくる。
「危な…」
慌てて杖でかわ…
いや、
無理なほど上体を反らして避けた。
杖を頭の上から地面に刺して、体はイナバウワーのようになった。
「なんだあの避け方は!」
「面白いチャレンジャーだ!」
杖を軸にして、もう一度構え直す。
アッハハハ
アッハハハ
と海美は笑われた。
一番後ろの観客席では赤鬼が震えている。
「………。」
「赤鬼のお嬢さん。怒ってはいけないよ。」
「えっ?」
「あのヨーヨーな。糸もメチャクチャ強くての。まともに巻き付かれたら、切るのはほぼ不可能だ。だからあれで良い。」
チャレンジするはずだった侍もコクコクと頷いている。
「…なんで私が女だと気づいたの?」
まつりは、海美と違い、刀とマントで自分が女だと気づかれないように工夫しているのだが、それが見破られた。
女だと気づかれるとは、忌みものにされることを意味しているのは、まつりは知っている。
経験があるからだ。
「それはの。俺が猪とのハーフで鼻が効くからな。六道の男女どちらかわかるよ。…鬼のお嬢さん。」
「………。…!」
今、鬼と言った。
わざと?
それとも本当?
私、鬼なの?