ありがとうございました。
とか、なんとかいった感じだが、ナポレオンがわかるのは正門に連れて行かれたとこほまでなので、ナポレオンは海美がファミリーに連れてきた行かれたと思っている訳だ。
「ナポレオン。ありがとう。もうしゃべらなくて良い。辛そうで見てられない。あとは任せて。」
おやっつぁんがしゃべる。
「まつり。ごめん…」
そう言うとナポレオンは泣きながら黙った。
「さて、」
おやっつぁんは立ち上がる。
医療班が緊急で刀の摘出手術を行うからと、みんな追い出されてしまった。
「最悪な状況だ。だが、全然諦めてない。だろ?ルッコラ?」
「もちろん。」
そう言うとルッコラは出ていった。
「アバジャ。今回は俺が指揮を取るぞ。」
「分かってる。まつり、来て。」
「うん。」
アバジャはマントを着てまつりと外に出る。
アリーナもレース場もモノで溢れている。
「状況は?」
おやっつぁんが部下に確認する。
「人がいなかったので三階は制圧されました。二階が撤退戦中なのと、一階はレース場から入ってくるモノで激戦になっています。」
「了解。アバジャ、ルッコラ。あれを使う。使ったら総員突撃で、押し返す。」
「了解。準備する。」
ルッコラが一階に入っていく。
「分かった。まつり。」
そう言うとアバジャは正門と逆の方向にまつりを連れていった。
モノは正門トンネルの方向に殺到しているからこっちはガラ空きで、明かりも人もモノもいない。
「あなたは海美を追いかけなさい。」
「えっ?」
「ぼやぼやしてると海美さんが殺されちゃうかもしれない。あなたは追いかけて。」
「アバジャは?」
「私はここを死守する。みんないるから。あなたは、あなたの大切なものを守りに行きなさい。」
アバジャがまつりに目線を合わせる。
遠く、建物の中で銃撃戦になっている音、モノを集める太鼓の音が聞こえる。
「いっしょに行くことが出来なくてごめんなさい。代わりに、これを」
アバジャは頭に巻いてある額当てを取るとまつりに巻いてあげる。
「これは、頭を守ってくれるだけじゃなく、力も湧いてくる防具だから。あなたを守ってくれるわ。」
「…ありがとうアバジャ。じゃあこれを。」
まつりは頭に巻いてあるお面をアバジャに渡す。
「これは、穴が空いてるけど、頭に巻くと良いかも…」
「!…ありがとうまつり。大事にするわ。」
アバジャは受け取ると、お面を額に巻きつけた。
「どう?」
「似合ってる。そっちのほうが好き。」
「そう。」
「じゃあ、行きます。」
「いってらっしゃい。足場が悪いけど、すぐ明るくなるから、明かりを目当てにすぐ進んでね。それと大きい音が鳴るけどそれも無視して進むのよ。」
「分かった。」
「じゃあ、行って。」
「うん。」
まつりは真っ暗闇の土手みたいなところに走り出した。
アバジャは暗闇でも見える。
アバジャの道具の一つ、透視メガネの影響だ。コンタクトのようにしているため、アバジャの目は赤く見えるのだが、実はアバジャは暗くても、霧でもずっと遠くが見えているのだ。
それで、ここぐらいまで逃げれば大丈夫だと思うところまでまつりが逃げたら、建物に戻った。
建物は二階、三階が制圧されて、おやっつぁんが最前線にいる。
モノは、アリーナ側から一階に押し寄せようとしているが、それを死守している。
「おやっつぁん。」
「アバジャか。まつりちゃんは逃げたか?」
「えぇ。」
「良し。実はもう、敵さん、主力っぽいものがレース場にいるんだ。ルッコラ!」
おやっつぁんは、ほっかむりで連絡を取る。
「応よ。」
「やれ!」
「了解!」
5秒ほどすると、火薬によるドカン!ドカン!という音がレース場から聞こえてきた。
高いピューピュー!という音も聞こえる。
モノが後ろを振り向く。
鮮やかな閃光が目に入っているのだろうか、足が止まっている。
「総員、一斉発射だ!」
おやっつぁんが言うと、鉄砲ではない、バレーボールほどある黒い玉がモノどもに飛んで行く。
そのバレーボールも爆発して綺麗な色を発射させている。
「みんな、絶対顔を出すなよ!」
おやっつぁんが必死に叫ぶ。
そりゃそうだ。
顔出したら人間もモノも死ぬ。
モノも死ぬ。
モノに隠れる場所はない。
バレーボールみたいな球の攻撃とレース場の火薬の爆発は15分近くぶっ続けで行われ、モノの大半が巻き込まれた。
うまく隠れたモノもいるが、こちらにはルッコラの集合フェロモンと、おやっつぁんと死を恐れぬ勇者たち、そして一騎当千いや一騎当万のアバジャがいるので、この花火の後、攻略するのは不可能である。
建物の中の花火に参ったモノは一気にレース場に撤退した。
アバジャとおやっつぁんは追いかける。
レース場の生き残ったモノも急いで正面に逃げていくが、おやっつぁんの部下たちが逃がすわけがない。
少しでも動けばどんどん傘で撃たれていく。
「………。」
「どうした?アバジャ?こいつらか?」
おやっつぁんが、傘を振りかぶりながら聞く。
「いや、まつりちゃんが…」
「うまく逃してやったんだろう?」
「多分、あそこまで逃げれば大丈夫。しかも彼女は強いから。」
「じゃあ、信じてやるんだな。この村は…」
もう一回花火が上がる。
色もなく、ただ光ってバチバチバチバチ!と音がするのみだった。
「去る者は追わず、気持ち良くだろ?」
「そうね。また今日も忙しくなるわね。」
考えてみればいまは朝の4時近く。
全体的に青みがかった風景が訪れつつあった。