やっぱり、スーパーマリオのほうが良かったか
「しずか。アヤ。大丈夫だったのか?」
外に出ると、そこは屋敷の広場みたいになっているところで、お父さんがいた。
「申し訳ございません旦那様、しずかさんが…」
「この爆発からよく2人とも大怪我もなく外に出られたな。」
「原因は?」
「ソラの攻撃だ。」
「そら…」
さっきもアヤから聞いたけど、そらってのが気になる。
「また来るぞ。みんな伏せろ!」
お父さんの指示で2人はしゃがむ。
上を見る。
たしかに、白みがかった空をなにか翼の生えたようなものが飛んでいる。
その飛んでいるものは、盛んにこれまたアヤが持っているような棒を屋敷に投げつけている。
それが建物に当たり、1秒ぐらいすると火薬による爆発が起きている。
「爆発が止むのは、ソラが旋回して、攻撃体制を整えるからだったのか…」
この建物がどんな場所にあるのか説明をしていなかった。
なんと、この建物は街の中にある。
この屋敷に塀や門、木々があるだけで、近くには、住宅地があった。
「あんなのが、これ以上暴れたら、市民を守りきれない。」
尊正の一声で、花火のようなものが集められて、天空に打ち上げられる。
オート村から逃げる時、後ろで光っていたのはこういうものか?
と、しずかは思った。
だが、空に浮かんでいるやつは強い。
花火の爆発をわかっているかのように、火花を避けて飛行する。
「結局、また来るぞ!」
「俺が狙いなら、俺はここだぞ!」
尊正さんは、庭の方に走り、花火を一発あげる。
飛行物の目の前で花火が爆発したが、それは関係なしに、建物を攻撃した。
「どうやら、建物に御用のようだ。市民を逃さないと!」
尊正さんは手伝いの人、集まった警察、消防団に事情を説明して、市民を逃す方向にシフトした。
「おじょ…しずかさんも早く!」
アヤが呼ぶ。
「待って。」
空に浮かんでいるものをじっと観察する。
「間違いない、ソラ、ソラってみんな言ってたけど、空からの攻撃じゃなくて、本当に、ソラが攻撃している。」
アヤから、棒をひったくると、
「ちょっと言ってくる。」
と、言った。
「ちょ…なにを…」
しずかは、背中の芭蕉扇を撫でる。
「私を、あそこまで連れてって。」
芭蕉扇が動く。
今度は背中についた状態で扇が開く。
しずかを前から見ると、仏様のように、頭の裏から後光がさしているように見える。
芭蕉扇が、急に下に向かってあおがれる。
すると、しずかの体は浮き上がり、目にも止まらぬ速さで、天空に打ち上がった。
「「あっ!」」
尊正やアヤの驚く声より早くしずかは、その攻撃対象と同じ位置まで上昇した。
驚いたのは攻撃しているほう。
また体制を立て直し、屋敷を攻撃しようとしたら目の前に空を飛ぶ人間が現れたのだ。
「やめなさい!」
しずかは言う。
芭蕉扇は、常に仰がれていることにより、天空でも止まっている。
攻撃していたものは、しずかの周りをぐるぐる回る。
止まれないらしい。
「お前は何者だ?」
「私はしずか。」
「知らないなぁ…」
「もしくは、まつり!」
「まつり……」
なにか沈黙があった。
「あなたは?」
「俺は天空のそら。宇宙と書いてソラだ。」
やはり、宇宙だった。
アヤちゃ…アヤさんや、お父さんの言ってたのは上空からの攻撃という意味で行ったのかもしれないけど、宇宙(そら)の攻撃だった。
「あなた、まつりなら分かるんだね?なんでこんなことするの?」
「まさか、俺は…天才の俺はこんなことをしていたのか…」
宇宙は、武器を思わず落とす。
火がついていなかったので、おそらく爆発はしない。
「なにをしていたの?」
「こっちの俺には、居場所がなかった。」
「えっ?」
「親父もお袋も、兄貴も姉さんも健在で家族だった。だけど、親父は俺の天才性に気づいてるのに、無視していた…それに嫉妬した俺は、ここに俺たちの魂が来る前から、こういう風に政治家や宗教を狙ったテロ行為をしていたらしい。」
「あなたが来たのなら、辞めればよかったじゃない?」
「そうもいかない。俺は組織の上の方の立場らしい。」
「テロリストや革命家も大変なのね。けど、下を見なさい。これはどうするの?」
「この世界の俺は、俺を認めない連中に復讐するために、こんなことをしているらしい。
こっちの俺の都合は知らないが、こんなテロ行為は良くない。
だから、このテロ組織を壊滅させてやろうと思ったわけだ。
大炊御門尊正氏は公正公平な政治を目指されている方だ。この方を攻撃したとなれば、テロ組織も名声は落ちる。そうすれば、こっちの世界の俺もこの組織に居場所がなくなって、親父たちのところに戻るだろう。」
「とはいえ、私は死にかけたし、大勢避難してるのよ。」
「いや、実は、組織としてもここは攻撃したがっていたんだ。俺がやらなくてもそのうち誰かやったはず。」
「どういうこと?」
「すなわち、問題はここの屋敷の地下深くだ。」
ソラはもう一本、棒を取り出す。
「この屋敷の地下には、封印された怪物がいるはずだ。」
棒に火をつける。
「それを復活させる。」
ソラが屋敷に向かってスピードをあげる。
「やめなさい!」
しずかも追う。
だけど、翼と芭蕉扇では話にならない。
「これで、復活しろ!」
右手に持った棒を思いっきり引いた。
もう投げる。
「芭蕉扇!なんとかして!あの棒を叩き落として!」
また驚くことが起きた。
背中に背負っていた芭蕉扇が畳まれて、背中を抜け出し、一直線にソラに向かっていった。
しかし、しずかは落ちる。
「きゃあ!」
「あっ!お嬢様!」
「しずか!」
屋敷が燃えて、人々が逃げ回っているなかを尊正とアヤは警察官と共に誘導していた。
もちろん、しずかが、ソラを足止めしているのをチャンスと見ていたから、素早く、周囲から人を遠ざけていった。
あとは、警察官が背負って逃げられる人しかいなくなったとき、しずかが落ちてきたのだ。
後ろでなにが起きてようが関係ない。
ソラは棒を投げた。
芭蕉扇は止まらない。
芭蕉扇は、扇を開くのではなく、扇の骨が一本ずつ前に出るかたちで、一本の長い棒になってゆく。
長さとしては、ソラが使っている棒を爪楊枝とすれば、菜箸のように長い。
屋敷に、ソラの棒が当たる寸前、芭蕉扇が、ソラの棒を上から叩き落とした。
爆発したが、建物脇の地面が爆発しただけで被害などないような感じだった。
「なに!」
ソラは、しずかと棒の直線上から退避していたため、叩き落とされることはなかったが、その様子を見て、唖然としてしまい、気が抜けてしまった。
それが、芭蕉扇にとっての好奇だった。
細長くなった芭蕉扇は、その状態のままソラの方向に回転して、また叩き落とそうとした。
「あっ!」
流石の天才ソラ
迫り来る芭蕉扇を宙返りで避ける。
しかし、すごい風圧を発生させている。
うまく風をとらえきれず、そのまま低空飛行に入った。
芭蕉扇は素早く棒から扇子に戻ると、一直線にしずかに飛んで行った。
「しずか!」
尊正さんがしずかの真下に入る。
とはいえ、受け止めても、2人とも大怪我するはずだ。
「お父さん逃げて!」
「だめだ!」
芭蕉扇がしずかの背中に到着する。
芭蕉扇がバッ!と開く。
するとしずかは空気抵抗で落下速度が下がる。
「…しずか!」
尊正は冷静に落下点に入るとゆっくりしずかを受け止めた。