なので、祠の裏側に隠れてウトウトし始めた。
「しずか!」
誰かに呼ばれて起きる。
起きるというか、立ったまま、目をつぶっていた状態から、揺さぶられて目を開けたようなもんだ。
「鯨船は?」
「まだ浮かんでる。」
アヤが芭蕉扇を背中につける。
「しずか。」
「お父さん。…」
大炊御門尊正
「また、別の記憶があるしずかと入れ替わったのかい?」
「はい。…」
「一つお願いがある。」
「なに?」
「私をあの鯨船まで連れて行ってくれ。」
「えっ?」
「実は吸血鬼との話には続きがあって、鯨船のコントロール方法を吸血鬼から教えてもらっていたのだ。これを制御すれば鯨船は暴れるのをやめる。」
「それは本当?」
「本当だ。吸血鬼もその方法で国会議事堂まで船を動かした。」
「…分かった。」
「よろしく頼む。」
周りの人の力を借りて、尊正はしずかを背負う形で体を固定させた。
空に飛んだら、しずかが尊正をひっぱり上げるというより、尊正がしずかを押し上げる型になるよう、準備が進められた。
「よし、みんな下がってくれ。」
尊正が指示を出す。
みんなが下がる。
みんなが注目している。
不安そうな人
これでなんとか被害を食い止めて欲しいと思っている人
なんとかなるという自信がある人
アヤもいる
しかし、ふと、しずかは、こう思った。
この作戦に失敗したら、この世界の尊正は、悪者になってしまうのではないか。
そう思ったら急に怖くなった。
「しずか。」
「はい。」
尊正さんが笑ってこっちを見た。
すごい優しい顔だ。
「やめるかい?」
「………。」
なんで分かった?
「急に足をグッと締めたろ。なにか不安があると、しずかは小さくなるからな。」
「だけど、このままだとお父さんが。」
「気にするな。また、この騒ぎも吸血鬼がどっかで見てるんじゃないか?」
「…だけど、このままだとお父さんが、悪者に。」
「政治家はいつだって悪者扱いだよ。いくら良いことをしても2割ぐらいの人には賛同されないからね。」
「違う。」
そんな次元の話じゃない。しずかいや、まつりが生きている世界は、2割どころか、2人も尊正氏を良く言う人はいない。
「いやぁ、しかし、自分の娘のことになるとこうにも甘くなるのか尊正よ。」
尊正さんが独り言を言う。
そのとき、
「世界を壊して、親父を振り向かせてやる!」
草むらからなにかいや、宇宙が飛び出した。
まだあの竹竿を持っていたらしいし、まだあの飛行道具は生きていたらしい。
「あの野郎!」
尊正としずかを取り囲んで見ていた人たちのうち、動きが早そうだった人たちが、落ちていた石を宇宙に投げ始めた。
「世界を平和にするのを邪魔するな!」
石どころか、持っていた手拭いや、縄、枝などとにかくみんな空にいや、宇宙に投げる。
宇宙も宇宙で真っ直ぐ飛んで行かない。
あっちへこっちへフラフラしている。
「多分、飛行道具がやられて真っ直ぐ飛べないんだ。」
「お父さん、行こう。」
「いいのかい?」
「いまやらないとみんな不幸になる。」
「分かっ…」
尊正が言い終わるより早く、しずかはまた飛んだ。