金剛杖物語~雄鬼のまつりの章~   作:仲村大輝

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第8章 第ニ部 目覚め

なので、祠の裏側に隠れてウトウトし始めた。

 

 

 

「しずか!」

誰かに呼ばれて起きる。

起きるというか、立ったまま、目をつぶっていた状態から、揺さぶられて目を開けたようなもんだ。

「鯨船は?」

「まだ浮かんでる。」

アヤが芭蕉扇を背中につける。

「しずか。」

「お父さん。…」

大炊御門尊正

「また、別の記憶があるしずかと入れ替わったのかい?」

「はい。…」

「一つお願いがある。」

「なに?」

「私をあの鯨船まで連れて行ってくれ。」

「えっ?」

「実は吸血鬼との話には続きがあって、鯨船のコントロール方法を吸血鬼から教えてもらっていたのだ。これを制御すれば鯨船は暴れるのをやめる。」

「それは本当?」

「本当だ。吸血鬼もその方法で国会議事堂まで船を動かした。」

「…分かった。」

「よろしく頼む。」

周りの人の力を借りて、尊正はしずかを背負う形で体を固定させた。

空に飛んだら、しずかが尊正をひっぱり上げるというより、尊正がしずかを押し上げる型になるよう、準備が進められた。

「よし、みんな下がってくれ。」

尊正が指示を出す。

みんなが下がる。

みんなが注目している。

不安そうな人

これでなんとか被害を食い止めて欲しいと思っている人

なんとかなるという自信がある人

アヤもいる

しかし、ふと、しずかは、こう思った。

この作戦に失敗したら、この世界の尊正は、悪者になってしまうのではないか。

そう思ったら急に怖くなった。

「しずか。」

「はい。」

尊正さんが笑ってこっちを見た。

すごい優しい顔だ。

「やめるかい?」

「………。」

なんで分かった?

「急に足をグッと締めたろ。なにか不安があると、しずかは小さくなるからな。」

「だけど、このままだとお父さんが。」

「気にするな。また、この騒ぎも吸血鬼がどっかで見てるんじゃないか?」

「…だけど、このままだとお父さんが、悪者に。」

「政治家はいつだって悪者扱いだよ。いくら良いことをしても2割ぐらいの人には賛同されないからね。」

「違う。」

そんな次元の話じゃない。しずかいや、まつりが生きている世界は、2割どころか、2人も尊正氏を良く言う人はいない。

「いやぁ、しかし、自分の娘のことになるとこうにも甘くなるのか尊正よ。」

尊正さんが独り言を言う。

そのとき、

「世界を壊して、親父を振り向かせてやる!」

草むらからなにかいや、宇宙が飛び出した。

まだあの竹竿を持っていたらしいし、まだあの飛行道具は生きていたらしい。

「あの野郎!」

尊正としずかを取り囲んで見ていた人たちのうち、動きが早そうだった人たちが、落ちていた石を宇宙に投げ始めた。

「世界を平和にするのを邪魔するな!」

石どころか、持っていた手拭いや、縄、枝などとにかくみんな空にいや、宇宙に投げる。

宇宙も宇宙で真っ直ぐ飛んで行かない。

あっちへこっちへフラフラしている。

「多分、飛行道具がやられて真っ直ぐ飛べないんだ。」

「お父さん、行こう。」

「いいのかい?」

「いまやらないとみんな不幸になる。」

「分かっ…」

尊正が言い終わるより早く、しずかはまた飛んだ。

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