金剛杖物語~雄鬼のまつりの章~   作:仲村大輝

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さっき、歴史を教えてくれる90歳のおじいさんから
「地元にかつてあった遊郭のお店の名前が載っている地図が手に入ったから取りに来い。」
って電話があり、
「今、吉原神社で、吉原の変遷をまとめた地図見てるんで、無理です。」
と、言って一週間後にアポを取った。


第8章 第三部 朝

宇宙とは違う。

真っ直ぐ、力強く、安定して飛んだ。

「あっ!待て!」

あっという間に宇宙を抜き去る。

「このやろ!」

宇宙が竹槍に点火させる。

「世界を滅ぼすのは、このおれだ!」

投げた。

「この!」

しずかはクルッと向きを変える。

宇宙を見下ろす。

「あなたのお父さんは、いや、お兄さんとお姉さんは。」

扇が開いて背中にくっついていた状態から、扇が閉じる。

「まただ…」

宇宙がつぶやく。

「あなたを心配してるし、気遣っているに」

扇が空に向かって一直線状に伸びる。

原理は分からない。

どうしてそう動いたのかもよく分からない。

ただ、あれを止めようと思っただけだ。

「ちっ…」

 

「決まってるでしょ!」

扇を振り下ろす。

竹槍はあっけなく叩き落とされ、そこで爆発した。

宇宙の頭の上にも扇が迫る。

「ちくしょう!」

宇宙は無理矢理体をひねる。

翼がバッキリ破れる。

「そのまま、」

扇は、素早く伸びた状態から畳まれた状態に戻り、また開くとそのまま宇宙に向かって飛んだ。

尊正は特になにも言わない。

恐怖はあるが、有権者そして、なにより娘の前でカッコ悪いことは出来ない。

「家族のところに帰れ!」

開かれた芭蕉扇で、回し蹴りの要領で思いっきり宇宙を叩き飛ばした。

きりもみの状態で森の中へ吸い込まれていった。

「よし!」

しずかは上を向き、鯨船の位置を確認すると、また真っ直ぐ飛び上がった。

そして難なく鯨船の上まで飛び、屋敷の2階テラスに着地した。

「よし、行ってくる。」

尊正は、装備を慌てて外すと走って中に入った。

するとまもなく、尊正が出てきた。

「うまくいった。まもなく、船はゆっくり地上に降りる。」

「………。」

「しずか。」

良かった。

この世界のこの人は少なくとも悪名が轟くことはないだろうと思った。

そしたら、この芭蕉扇はこんなにも重いものだと感じた。

思わずよろけた。

それをお父さんが支えてくれた。

「お父さん、わたしは、あなたを助けに」

「分かってる。助けに来てくれてありがとう。こんな未来もあるんじゃないかと思っていたよ。」

鯨船がゆっくり地上に降りる。

「…ところで、しずかはどうして何度もこの世界に来たんだい?」

「そこまで分かっているの?」

「おそらく、今のしずかはいつもと違って快活だからそうだと思ったんだ…君は、こんなにも身体が強くなる未来もあったんだね。」

尊正はなんか遠い目をした。

「…それは、なんとか。」

「…医者は、もうサジを投げている。かわいそうだけど。」

「…「けれど、」」

尊正の目に輝きが戻る。

「けれど、その瞬間が来るまで、私はしずかを大切にしたいと思っている。君の世界の私はどうだい?」

「………。」

しずか、いや、まつりは答えられない。

私は気がついた時には駅の屋根裏にいました。

と言ったらショックを受けるかもしれない。

「……とても、大切にしてもらいました。」

「本当は?」

「えっ?」

間髪入らなかった。

「自分の娘が嘘をつく時の癖を知らないと思う?」

「…実は分かりません。私の世界は。(以下略)」

「なるほど。多分、私もそうすると思う。それは、なにがなんでもし…君に生きてほしいからだ。」

「…あんな地獄みたいな世界でも?」

「地獄みたいな世界でも、地獄よりかは楽しいことや喜ばしいこと、そしてなにより大切な人と出会う経験が出来る。だから、私も生きてほしいから逃すと思う。」

「私は、愛されていたの。」

「当たり前だ。だって、私は君が生まれた時、「この呪われて、理不尽で、最悪で、幸福で、美しく、最高の世界へよく来てくれた。君が最高の人生を送れるように頑張るからね。」と誓ったんだから。それは、どの世界線の私でも言っていると信じている。」

まつりは、ずっと思っていたことがある。

果たして、自分は生きていてもいいのか。

駅の屋根裏で強盗みたいなことをしていたのなら、さほど自分は必要なかったのではないかと思っていた。

しかし、この尊正のことで救われた。

自分は、生きて欲しくてあの屋根裏に隠されたのだ。

そう思えば、感情がぐちゃぐちゃになり、泣いた。

「…そりゃ泣くよな。」

尊正もなにも言わなかった。

鯨船はゆっくり空を泳いだ。

そしてゆっくり、ゆっくり地上に降りた。

もう朝になってしまっていた。

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