金剛杖物語~雄鬼のまつりの章~   作:仲村大輝

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この話は中国にも


第9章 第六部 高篠山のわらび女長者

「ということは、私の家族三人は失敗した訳ね。」

春の高篠山の山頂に真っ赤な絨毯を敷いて、重箱にぎっしり詰まった弁当を食べ、読んだ雅楽団に音楽をさせて、人間に舞を舞わせて、ナンバー4は、まつりとしゃべっている。

 

まつりは穏やかに女郎蜘蛛と背の高い女にやられてしまったことと、そばで溶けてしまったことを報告した。

しかし、こんな豪華なのはこの間の夢の中のようだ。

しかし、豪華ばかりではない。

山の中腹では人間たちがせっせとなにか採っている。

「もたもたするな!」

と、ナンバー4に媚びを売っているものや人間がなにか採っているモノや人を叩いている。

まつり…というか、紘我がナンバー4に出した難問は、

この高篠地域のわらびを太陽が出ている間に採り尽くせというものであった。

この時、高篠山はわらびが全然生えていないから、ナンバー4は仲間や自分のファミリーのランキングが低い連中を集めて、悠々とわらびを採り、弁当に舌鼓を打っていたというわけだ。

しかし、他の高篠の人たちは大変です。

高篠は元々わらびがたくさん生えるものだから、採っても採っても全然減りません。

それどころか、採ったわらびは、女長者屋敷に全部運び込んでいるのに、もう蔵も倉庫も屋敷の中にまで運び込まれているのにまだまだ、地区の半分も終わっていない状況です。

しかもそんなことであれこれしているうちに、太陽がもう西の山に少しかかって、今日を終えようとしている。

「まだあんなところにいるのか?」

ナンバー4は、よく働くモノに赤い羽織を着せて、どこにいるのか把握していたのに、まだ下を向いてせっせとなにか採っている。

「なかなか終わりそうにありませんね。」

まつりはゆっくり丁寧にしゃべる。

「これでは、あなたも…」

「いいや!そんなことはさせないわ。見てなさい。」

ナンバー4は大きい体を立たせると、扇をバッ!と開いた。

まつりは、「あの扇、なにか見覚えがある柄だな」と思っていた。

するとナンバー4は太陽に向かって扇を向けると、

「太陽よ!もう一度上がれ!」

と、怒鳴りながら、扇を振り上げた。

それを3回やった。

怒鳴った大声は山々をこだまして消えた。

しかし、見ていた人たちの顔は見る見るうちに紅く染まった。

もう、三日月ぐらいにしか見えなかった太陽がじわじわと見え始めたのだ。

西からおひさまが登り始めたのだ。

そして、頭の上まで太陽が登り、また昼間になった。

「これは…」

人間もモノも呆気に取られていた。

まさかナンバー4はこれほどの能力を持っているとは思っていなかったのだ。

ただ、その太陽のほかにこんなことが起きた。

実は、3回振って太陽があがったが、1回目と2回目でも奇跡が起きていた。

それは、1回目の扇で、屋敷に運ばれたわらびがみんな飛び出し、高篠山めがけて飛んでいったのだ。

蔵から、屋敷の中、庭に積んであったわらびが、籠から飛び出し、宙を舞い、高篠山に突き刺さり、また生えたのである。

「ややっ!?」

高篠山からも、高篠中からも驚きの声が上がった。

しかしすぐ高篠の人たちは喜んだ。

今回の命令は、

「高篠山以外の全てのわらびを取り尽くせ」

だったので、やることが全部終わったわけだ。

それに引き換え困ったのは高篠山をやっていたナンバー4と、ファミリーである。

なにせ他の植物が生える隙間もないほどわらびがみっしりと生えまくっている訳で、とてもとてもナンバー4と数名のファミリーでは追いつかない。

「人間どもは何をしている!?」

ナンバー4は山の下を見た。

なんということだ。

人間とモノが手を取り合いバンザイをして、握手をしてとっとと帰っている。

「ちょっと待て!私を助けろ!」

ナンバー4は怒鳴った。

しかし、怒鳴っても届かない。

さっきは太陽まで届いたはずの声が、山の下にいる人やモノに届かない。

「そんな、他の者に助けを求める前に、あなたがやったらどうですか?」

まつりが正論を言う。

ナンバー4は慌ててわらびを収穫し始めるが、高篠山に小さい籠しか持ってきてなかったからすぐ籠がいっぱいになり、美しい赤い絨毯にバラバラとわらびを乗せ始めた。

「やれやれ、少しゆっくりしますか。」

まつりは、演奏をしている人たちと座り直して談笑し始めた。

「なにやってんだ!まつり!お前も手伝え!」

「人をそうお前呼ばわりする人とは一緒になりたくないので、拒否します。」

「きさ…」

「だって、私、まだあなたのものになるのかは決まってないんですから。」

そりゃそうだ。

いまは赤の他人だ。

ナンバー4は唇を噛み、せっせと作業に戻る。

まつりは雅楽の人たちと談笑する。

麓では人間とモノが遊んでいる。

ちなみに助けにこようとしている人間とモノは一人もいない。

実は、まつり、高篠に戻ってきて、3人が死んだことをナンバー4に報告する前に、3人を殺したことを高篠の人たちに言いまくり、信用を得て、こんなことを言っていた。

「高篠周辺でこれからワラビ取りの指示がナンバー4自らの指示でくる。だけど、なにをしろと指示があってから動け。自発的に絶対に動いてはいけない。なによりナンバー4が指示するまで、どんな天変地異が起きても、屈してはダメです。とにかく指示されたことだけやって、終わったら遊んでください。」

結論から言うとこれは大成功であった。

誰もナンバー4の言うことを聞かず、まつりの言うことを聞いて、みんな遊んでいる。

「誰か、高篠山に手伝いに来るよう伝えなさい!」

ファミリーの順位が下のやつが山を下る。

少しして戻ってくる。

「人間もモノも言うことを聞きません。」

「なぜ?」

「高篠山以外の全てのわらびを取り尽くせとナンバー4様から言われたのに、命令を破ることは出来ません。命令を変えたければナンバー4様の口からお聞きしたい。と」

「ちッ…あいつら…」

ナンバー4が立ち上がる。

「はやく手を動かさないと終わりませんよ。」

まつりがすかさず言う。

「人手を増やします!」

そういうと、ナンバー4は急いで山を下っていった。

またしばらくして人間を引きずるように戻ってきた。

「人間どもは私の言うことを聞いていればいいのだ!」

殴られたのか傷だらけになっている人もいる。

その人たちもせっせと手伝いに始めた。

「まつりよ。これでお前は私のものだな。」

「そうかもしれないけど、太陽を見なさいよ。」

太陽はまた山に沈みそうになっている。

「任せなさい。」

そういうと、ナンバー4はまた扇を取り出して、太陽に向けて構えた。

「太陽よ!あがれ!」

しーん…

「太陽よ!あがれ!」

しーん…

「太陽よ!あがれ!」

しーん…

人も、モノも、ファミリーも、ナンバー4も太陽を見ていたがちっとも動かなかった。

「ほら。もう沈みますよ。」

太陽が、最後の輝きを見せて、山に隠れた。

「太陽よ!そして天の神よ!天人よ!私はファミリーナンバー4だ!私に逆らうことは許されない!早々に太陽を、空に戻せ!これは命令だ!」

そう叫び、また

「太陽よ!戻れ!」

と、怒鳴りながら、扇を振った。

すると、1回目に、女長者屋敷の蔵と庭の木がブゥン!と、天空に飛び去った。

2回目に、振ると、今度は屋敷自体が飛び去った。

そして、3回目。

今度は、ファミリーとナンバー4の体が浮かぶと、山すその、太陽が沈んだ辺りに飛んでいった。

そして、ファミリーナンバーがいなくなった。

すると、天から高篠山に声が聞こえてきた。

「まつりよ。そして紘我、高篠の者たちよ。私は観音菩薩です。」

「観音様のお告げだ!」

人やモノは首を下げた。

「まつりよ。お前は見事、実質ナンバー2の強さであったナンバー4を見事に葬ってくれた。それにともない、4人いや、9人のファミリーも葬ってくれたことを天界を代表してお礼申し上げる。なにか褒美をくれたいところだが、なにかあるか?」

「……。」

まつりはなにも言わない。

紘我の指示を待っている。

「紘我よ。お前の望みも聞くゆえ、まつりに指示するなよ。」

「は、はい!」

まつりが答える。

「これはまつりが望んでいることを答えるんだ。」

まつりが言った。

「紘我、まつりに、私が言うことを全て言いなさい。とでも言ったのですね?」

「そうです。」

まつりが答える。

「よろしい。ならば…」

観音様は目を閉じて、まつりが何を考えているのか探った。

「なるほど。自分を守ってくれた人を探したい。」

「はい。」

「分かりました。…うぅぅ…んと。この紙を使いなさい。地図があるから紘我に聞きなさい。」

「分かりました。」

「紘我、あなたは…」

「俺は、大体わかると思いますが…」

「大体分かります。それでお願いします。」

「はい。」

そんな話と共に、高篠には平穏が戻った。

天人が管轄し、人が戻ってきた。

人は働けば豊かになり、サボれば貧相になる正常な状態に戻った。

そして、女長者屋敷の跡はただの跡地になり、誰からも忘れ去られた。

そして、高篠山はわらびの産地になり、春になると高篠中の人たちがわらび取りに出かける名所になった。

これが高篠山のわらびの話である。

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