「千客万来。私の好きな言葉です。」
「海美…それと、」
「赤鬼のお嬢さん…もしあれだったら、犬、猫、猿の面の控室を見てきたらどうだい?」
猪の親分は熱狂する観客の声援に消されないよう、まつりの耳元で話しかけた。
「あなたは?」
「わしは、表彰式を見てくる。もし表彰式を見たけりゃわしの部下に聞けぃな。」
誰かついていってやれ。
と、部下に檄を飛ばした。
「行きましょう。」
と、部下の1人がまつりに声をかけて、まつりも、「うん。」とついていった。
海美は、格闘技場が見下ろせる中二階みたいな空間の部屋に通された。
海美は土俵を背にして、正面に、向かいで異性を囲って甘いものを食べていた猿みたいなモノと、その部下っぽい、モノにお菓子をあげていた女の人がいる。
モノの背には、鉄で出来ているのか、黒い装飾がついた大きな扉がある。
「やあやあ。よく勝ってくれました。お陰で観客も大盛り上がり。今回の興行も大成功です。お陰で次回もますます盛り上がることでしょう。」
典型文みたいな褒め言葉をもらった。
これが少しでもカッコいい顔ならまだ嬉しいが、猿のように長い髪の毛、長い髭を振り乱し、清潔なら良いが、お菓子の破片などが髭や髪の毛についているから汚い。
「さぁ、遠慮はいりません。ここから半径1km以内にあるものならなんでも差し上げますよ。」
「半径1km以内のなんでも?」
「ええ。なんでも。……生首千個でも、人皮人衣千枚でも、人骨で出来た家千棟などなど。なんなら、人間を放ちますから、納得するまで殺しまくるでも。逃げられないように柵はしますし、その杖以外の武器ならなんでもお貸ししますよ。」
「………。」
海美はある呪いを食らっているため、このモノと同じ種族に見えているらしい。
海美は人間をそんな風に捉えているモノと同じように見られているのが悲しかった。
しかし、ここで慌ててはこいつを殺すことは出来ない。
グッと我慢してこう答えた。
「…なら、今回賭けられた全金額を。」
「…なに?……」
「私と、あの動物の面に賭けられた懸賞金額を。用意できないの?1kmどころか、100m以内にあるものなのに。」
「……し、してやるわい。おい!」
モノが言うと、女の人が土俵際に降りて、なにやら袋を持ってきた。
サンタクロースや大黒様が持っているような大きな袋だ。
それが三つもある。
「ひ、一口は紙幣一枚でやるんだ…今回はこれで全額だ。」
「…払い戻しは済んだの?」
「………。」
なにかイラついたのか、ブツブツなにか言った。
ガツン!と、杖で床を突いた。