あらゆるものがおいてあるほんやさんがあるらしい。

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ほんやさん

 スコットランド、ネス湖の西南から少し離れたところ。

 そこには地図に絶対に描き込まれない本屋があるらしい。

 なんでもそこには童話から絶版した稀覯本まで、ありとあらゆる品ぞろえがあるそうだ。

 そんな噂を聞いたのだ。

 誰から聞いたのかもどこで聞いたのかも覚えてない。

 

 あやふやだ。

 疑わしい。

 取るに足らない。

 

 まったくもってそう思う。

 

 なので来てみた。

 

「いらっしゃい。……きっと今までの来店者全員にアンケートをとっても君のような来店理由はないだろうね」

 

 初老のおっさんが木編みの椅子に腰掛けて新聞を読んでいる。

 初対面の相手に喧嘩を売るのはいかがなものだろうか。それに私にはしっかりとココに来た理由があるのだ。

 腕を組んだ私は、すごくわかりやすいjavaの入門書をくれと頼んでみた。

 どうだ、雑な来店理由などではないだろう。

 

 おっさんは新聞を読む手を止めて、口をぽかんと開けてこちらを見てきた。きっと驚いているのだ。そうに違いない。

 ふふんと鼻を鳴らして、キメ顔をすると呆れ顔された。なぜだ。

 

「……………………いや、ね。そうか、そうだな。こういうケースもあるのだな。

 なんでもある……確かになんでもあるし、そういうものも置いているとも。安心したまえ。

 他に面白いものも沢山ある。ゆっくり見ていってくれ」

 

 おっさんが新聞を畳んで、裏に引っ込んでしまった。

 javaの勉強本を買いに来ただけで、小説も学術書も買う予定もその気もない私は案内してもらってさっさと購入してしまいたかったが仕方ない。

 面倒だが探してみるとしよう。

 

 とてもあらゆる本があるとは思えない、商店街の古本屋より少しあるかないか程度の蔵書たちと向き合った。

 ホントにただの噂だったのではないだろうか。

 これでプログラミングの入門書のプの時もなかったらどうしてくれようか。

 

 不親切にも案内の板も何もないので近くにあった棚を上の段から順に見ていくことにした。

 

 ……『むかしばなしがいっぱい』『〇〇大学第三回文化祭パンフレット』『サルでもわかるさんすう』『分数初心者へ』『こわーい学校の怪談』『漢字ドリル』。

 

 妹が私の本を借りたあとのように順番がごちゃごちゃだ。

 そもそもこのラインナップで仮に私の求めているものがあったとしても、たどり着けるのだろうか。

 いや無理だろ。

 面倒になったので棚の前で腕を組み、本屋で求めてるものを探してる頭良さげな感じを装ってみた。

 

「棚一つ分くらい見てくれてもバチは当たらないぞ」

 

 いつの間にかおっさんが私の真後ろに突っ立っていた。

 なんだ。背後に現れる系統の幽霊かな。

 めちゃくちゃビビって飛び上がってしまった。

 

「驚いた猫みたいなことをする」

 

 違うが?? 

 せっかくなので私は徹底的に反論する道を選んでみた。

 

 は、はー? 私は飛び退いたわけじゃないが。

 反射的に飛び下がる練習をしたくなっただけだが。

 この間この動きが健康にいいとかテレビでやってた気がする。

 きっとやってた。

 そうだ。やってたに違いないのだ。

 

「……で、どうだ見つかりそうか」

 

 私の言葉に対する完全無視を決め込んだらしい心の狭いおっさんは、話題を転換してきた。

 

 今どきこんな雑な並べ順、小学生でもやらないぞ。

 おっさんが自分にしかわからない本の順番でイキり散らしてるので私は右手でおっさんの胸ぐらを掴んでみた。

 

「…………そうだな。とっとと説明してしまおう。

 ここにある本は全て、君のこころを映し、きっと読みたくなるものが並んでいる。

 君に必要なものは…………うん、素晴らしいね。見た目通りに成人してる?」

 

 いやあ、だと思ってたぜおっさん。

 この本棚、よく見てみれば私の素晴らしく尊い心を映しているじゃないか。すごいぞおっさん。こんなすごい本屋の店主な君はきっとすごくこころの広い人なんだろうな。うんうん、わかるよー。わかっちゃうよー。

 アレ、私の右手は何故胸ぐらを……。

 酷いことをする右手もいるものだ。いやあ困っちゃうよね。

 後で右手にはキツく叱っておくよハッハッハ。

 私はパッと胸ぐらから右手を放して、代わりに肩を叩いた。

 

 うんうん、さあ一緒に探そうぜ。教養の詰まった私のスペシャルなブレインの表層はこのくらい基礎の学問が並んでいるってワケさ。

 きっと奥には私の求める知識があるはずだ。

 よく見りゃこの並びすっごいわかりやすいな。

 特にこの『ももたろう』の横に『算数ドリル』があるのとかすっげぇ美的かつ芸術的なセンスを感じる気がする。

 

「君は手のひらをパンジャンドラムにでも改造してるのか?」

 

 高笑いをしていたらおっさんが小さな声でボソボソと何かを言っていた。

 聞こえん。

 全く聞こえん。

 しかし問題はないのだ。

 この先にはきっと知識の深奥が待っている。

 共に真理を見届けようではないか! 

 

 

 

 

 

 

 残りの棚全部からっぽだった。




3秒で構成して1時間で書いた。
前半あたりが気に入らないけど期限まであと2分……誤字チェックもできない……死……。

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