〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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ワンピースの最新刊を買ったんですけど……ロックス、我が推しよ、お前4メートル越えの身長だったんだな……。


第127話〝新たな伝説〟

 神の騎士団と遭遇したラカムは、すぐさま情報共有を行った。

「ええ!? シャムロックと軍子ちゃん来てんの!?」

「どうする? ビッグ・マム海賊団がこっちに向かってる上、不死身のゴミクズも紛れ込んでるぞ。シャムロックはロキの勧誘が目的と言ってたが、どうもきな(くせ)ェ…それだけで終わらせるような潔い連中とは思えねェ」

 まさかの組織の介入に、エマは困惑。

 ラカムとしても、前回のエッグヘッドと同等かそれ以上の未曽有の事態に頭を悩ませていた。

「神の騎士団でも、おれ達と本気で潰し合う気はねェはずだ。余程の援軍が来なければ進んで攻撃はしてこねェたァ思うが…」

「それは希望的観測だろ? 五老星が援軍できたら勢いづくぞ」

「かと言って、そう何度もマリージョアを離れるわけにもいくまい。海軍も手一杯な今、神の従刃の派遣も惜しいはず」

「ならば我らは神の騎士団よりリンリンをどうするか考えるべきだ。艦隊で来られたら全面戦争にもなりかねん」

 クロエ海賊団の面々は、今後の方針を決めかねていた。

 するとエマは現状把握として、船長不在の緊急作戦会議を開く事にした。

「まずこっちの()()を確認しよう」

 エルバフ側の戦力は、「麦わらの一味」「クロエ海賊団」「巨人族」「〝山喰らい〟スコッパー・ギャバン」。〝呪いの王子〟ロキはジョーカー扱いだ。

 敵となる勢力は「ビッグ・マム海賊団」と「神の騎士団」。

 過去の経験上、ビッグ・マム海賊団がリンリン直々の出撃の場合、最高幹部である将星は必ず一人だった。自身のナワバリを手薄にすれば、黒ひげやカイドウなどの大海賊の侵略に遭うからで、その為には最強の将星であるカタクリを残すはず。おそらく8億越え(クラッカー)9億越え(スムージー)のどちらかだろう。だが基本的に子供達は幹部なので、油断はできない。

 そして神の騎士団は、そもそもイムの私兵団のような組織で、個々の戦闘力もかなり高い。だが再生能力を無効化できる覇王色の覇気を扱える者がエルバフ側に7人もいるので、各個撃破すれば勝機はある。

「ふむ……では一度、宴は中断すべきか?」

「出ていくまでは警戒すべきだね。リンリンさんはクロエが食い止めてくれるだろうけど……」

 尋ねてくるヤルルにエマが答えた、その時! 

 

 ドォン!

 

『!!?』

「何だ、敵襲か!?」

 突如轟音が響き、それと共にビリビリと強い覇気を感じ取る一同。

 方角は〝戦士の泉〟だ。

「――おい、(つえ)ェのが来たぞ!!!」

 ルフィは一筋の汗を流す。

 世界最強の女も一目置く若き大海賊の様子を見て、巨人族は一斉に動き出す。

「あそこは確か、ヤーさんが向かってった場所だ!!」

「子供達を安全な所へ!!」

「ドリー!! ブロギー!!」

「「よし、来た!!」」

 麦わらの一味やクロエ海賊団だけでなく、巨兵海賊団の二大頭目が出陣の準備をする。

 しかし、その場で唯一様子が違う者がいた。エマである。

「これって……まさか!!」

「おい、エマ!!?」

 どこか嬉々とした様子で駆け抜けるエマ。

 スピードが速すぎるのか、一瞬で姿が掻き消えた。

「おい、追いかけるぞ!!」

「今度は何だよ…!!」

 

 

 戦士の泉。

 そこでは、ギャバンがある男と斧をぶつけ合っていた。

「てめェ、今更何しに来やがった!?」

「んなモン決まってんだろ。あのクソ野郎をぶっ飛ばした麦わらの小僧に用があんだ」

 そう言いながら、男は得物の巨大な斧を振るい、二斧流のギャバンと渡り合う。

 胸に刺青を入れた、短髪と両刃の斧のデザインをあしらった和装が目立つ巨漢だ。

 齢七十を超えた老人だ。けれども、引き締まった肉体は全盛期をとうに過ぎても強健そのもので、使い込まれた筋肉はまるで鋼の束。バツ印の入ったサングラスをかけた顔はシワが目立つが、そのシワ一つ一つがくぐり抜けてきた修羅場の数を物語っていた。

 彼もまた、ギャバンがよく知る超大物。かつて、あの〝金獅子のシキ〟のライバルとして知られた大海賊の――

(きょう)さん!!!」

「「!!」」

 男の名を呼ぶ女の声が響き、二人はピタリと戦いを止めた。

 視線の先には、頭に巻いたバンダナと右頬の切り傷が目立つ、黒髪のミディアムボブ風の長身女性が。

「エマか…!」

「懐かしい気配と覇気を感じたから……まさか凶さんだなんて……!!」

「おう、久しいな」

 凶と呼ばれた男は、年相応の柔和な表情を浮かべた。

 

 男の正体は、元ロックス海賊団の船員(メンバー)の一人で、殺し屋とも呼ばれた古豪。

 極道・凶――〝(ぎん)()〟の異名で恐れられる、40年以上前から海にその名を轟かせ、大海賊に上り詰めた猛者だ。

 

「シャッキーんトコの店でバイトしてたチビが、ここまで成長するとはな……人生わかったもんじゃねェな」

「凶さん、どうしてエルバフ(ここ)に?」

「ギャバンの野郎にも言ったんだ…おれはシキのクソッタレをぶっ飛ばしたガキに興味が湧いたってな」

「あー、シキさんと仲悪かったもんね……」

 サングラスをかけ直す凶に、エマは苦笑いする。

 金獅子と銀斧――この二人の大海賊、カイドウとビッグ・マムくらい仲が悪く、ロックス海賊団に入ってからもしょっちゅう揉めていた。

 幼い頃のエマも、酔っ払った二人にどっちが強いか絡まれ、返答に困ってしまう事もあった。

「……そういう意味で来たんじゃねェなら、いい」

 エルバフを荒らしに来たのではないなら戦う理由は無いと、ギャバンは矛を収める。

 するとそこへ、二人の抗争を知って駆けつけたルフィ達が現れる。

「よかった…どうやら学校や図書館、子供達は無事だな」

「? あのおっさん、誰だ?」

「斧ジジイが二人……」

 すでにギャバンの正体を知らされてるルフィ達は、もう一人に興味津々だ。

「おい、バッテンのおっさん!! (おも)(しれ)ェサングラスしてんな!!」

「! てめェがモンキー・D・ルフィか…(わけ)ェ割には骨がある野郎だってのが見ただけでわかるな。ガープの孫なだけある」

「おっさん、じいちゃん知ってんのか!!?」

「昔はよくあの拳骨野郎に追いかけ回されたもんだ…ニューゲートやカイドウ、リンリンだって昔は正面から奴と戦うのは避けてたからな」

 凶は懐かしそうに「あの頃の海」を思い返す。

 その片隅では、エマとラカムが言葉を交わしていた。

「おいおい……マジか!? あのハゲニワトリのライバルまで来たのか」

「これで戦力が増えたね!!」

「?」

 まさかビッグ・マム海賊団が向かっているとは知らない凶は、ラカムとエマのやり取りに首を傾げるのだった……。

 

 

 一方、冥界では――

「流石に頑丈だったな、骨が折れた……」

「てめェ、本当にあとで覚えてろよ……!!」

 いい汗をかいたと言わんばかりのクロエに、ロキは憤慨する。

 錠の鍵がないからと彼を縛る海楼石の錠を破壊する事にしたのだが、いつ自分ごとぶった斬られるかわかったものではなかったので、ロキは終始ヒヤヒヤしていたのである。ロキの巨体を縛っているため、海楼石もデカければ頑丈なのだ。

「まァいいじゃないか、ちゃんと自由になれたんだ」

「て、てめェ……!!」

 ケラケラと笑うクロエに、顔中に青筋を浮かべるロキ。

 それを木陰から人影二つ――シャムロックと軍子が眺めていた。

「〝鬼の女中〟…!! まさかここにいたとは」

「どうする、団長…?」

「……あの女が去るまで待機だ。それまで気配を消して――」

 

 ズバァン!!

 

「「!!?」」

 刹那、巨大な飛ぶ斬撃が二人を襲い、両者は上半身と下半身を両断されてしまう。

 斬撃は背後の木々を斬り倒し、そびえる山に深々と痕を残した。

「……久しぶりだな、シャムロック、軍子。神の騎士団がエルバフに何の用だ?」

「……!!」

「クロエ・D・リード…!!」

 バリバリと覇王色を漲らせるクロエに、二人は肉体を元通りにしながら顔を強張らせる。

「貴様ら、マリージョアがどういう状況かわかってるのか? 雰囲気的にロキに用事があるようだが……優先順位間違ってる気がするぞ?」

「ドガハハハ!! つまりそいつら天竜人か!? 成程、何となくわかってきたぜ!! この世に生を受けてわざわざゴミになれってんなら断る!!!」

「だろうな。それが()()()()だ」

 二人の侵入者の正体が天竜人と知り、ロキは豪快に笑いながら拒否し、クロエも同意する。

「〝神〟に昇格できるチャンスを棒に振るに飽き足らず、侮辱するか…!!!」

「止せ、軍子!!」

 軍子は服の袖や包帯を矢印に変化させ、アロアロの能力で攻撃を仕掛けた。

 しかし、すでに知れた手の内。クロエは見聞色で的確に躱すと、化血とその鞘を構えて武装硬化した上に覇王色を纏わせた。

「〝神凪斎王〟」

「!!?」

 

 ドガガガガ!!

 

 何度も斬撃と打撃を軍子に浴びせるクロエ。

 再生を阻害する覇王色の連撃に、軍子も反撃できず一方的に蹂躙される。

「……!!」

「っ…〝ケルベロス〟!!」

 シャムロックは腰に差した剣を抜く。

 すると剣があっという間にケルベロスに変化した。悪魔の実の能力が宿った武器だろうか。動物(ゾオン)系特有の覚醒時に見られる羽衣状の蒸気も纏っている辺り、能力は覚醒段階に至っているかもしれない。

「〝緊急発進(スクランブル)〟」

「〝閃電娘娘(せんでんにゃんにゃん)〟!!」

 シャムロックが唱えると、ケルベロスの口から刃が出現。首輪がグルグルと高速回転を始め、首がミサイルの様に飛んだ。

 三つの首はクロエを狙って急降下するが、それを読んでいたのか軍子から離れ、化血を掲げて刀身から覇気の雷を無数に放って撃墜していく。

 世界最強の女の強さを目の当たりにしたロキは、愕然とする。

「まだ()る気なら受けて立つぞ。五老星を討ち取れなかったからムカムカしてたんでな」

「くっ…!!」

「もう止せ、軍子。――貴様も、エルバフの肩を持つか?」

 再生に手間取る軍子を諫め、シャムロックは問う。

 その問いかけに対し、海の黒き女王は口を開いた。

「時と場合による…とだけ言っておく。貴様らがここで手を引くなら、追撃はしない。私とてポリシーはある」

 クロエは化血を納刀する。

 海のように気まぐれで風のように奔放と称される彼女の真意を測りかねるシャムロック。

「……軍子、作戦を変えるぞ」

「だが…!」

「〝鬼の女中〟がいる以上、止むを得まい」

「……わかった」

 これ以上の応戦は骨折り損のくたびれ儲けと判断したか、シャムロックは撤退を選択。

 軍子はそれに従い、矢印を実体化させて鳥の形に変えて飛んでいく。

「……あの野郎、何者だ? あそこまで顔が似てて〝赤髪〟と無関係ってのはねェよな」

「双子の兄弟で、シャムロックは兄の方だ」

「じゃあ、〝赤髪〟は天竜人の血筋って事か」

「シャンクスはそれを忌々しく思ってる。……あいつと初めて会うまで、素性は知らなかった。興味なかったのもあるが」

 クロエから〝五皇〟と〝天竜人〟という世界の対極にいる兄弟の話を聞き、ロキは「(おも)(しれ)ェ話もあるもんだ」と呟くのだった。




次回からビッグ・マム海賊団が来るかもしれません。(笑)

そしてまさかの凶君登場。本作ではシキをぶっ飛ばして名をさらに轟かせたルフィに興味を持つ形で登場。ただビッグ・マム海賊団が迫ってる事と神の騎士団が来てる事は知らないです。
要するに「またしても何も知らない凶」です。
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