読んでるだけでヒシヒシと伝わる熱意が半端ではなく、コミカライズであの熱を吹き込めるのは相当だなと。
特に翔子の心情を深掘りした部分は、アニメ派からすればとてつもなく嬉しいのでは? ネタバレ防止で語れないけどなぁ!!
これでよかった。この結末に救いはないけれど、それでも誰しもが絶望は受け取らない。苦しいことは起こらない。本当の意味で、この世界から痛みは消えた。そして最後に残った咎人も、島から生まれた存在が消してくれた。
これでよかった。
これでよかった。これこそが の選んだ答えだ。
自分の信じたかった答えではなかったけれど、この道が正しいと信じられたからこそ成し遂げることができた。
「――ごめん」
せめてと謝ったところで、誰にも声は届かない。
何が悪かったのだろう。誰が悪かったのだろう。みんな必死だった。生きるために、未来を繋ぐために、努力を続けて積み重ねていただけだったのだ。
嘘を――――とても酷い嘘を吐かれてたのはショックだった。でも、それが仕方のないことだったことぐらいは でも分かる。千景が意味もなく、人を傷つける嘘を使うことなどあり得ない。もしかしたらそう信じたいだけなのかもしれないが。
もう、怒る事にも疲れた。憎しみを振り回し続けるのも疲れた――――憎しみを千景へ向け続けることも、耐え切れなかった。
でももう、いい。
「ごめん、みんな」
誰に告げるのかさえ疲れ果てて。
「ごめん、なさい、千景さん」
後悔などしているわけがない。
振り返る戻り道などどこにもない。
選び直すことなど、できやしない。
その選択を、無かったことに出来たらなどと考えるのは無意味なことだ。
「でもこれしか……っ、ない、からっっ……!!」
だから望まない。
刹那に意識が溶けていく間際にも、諦めだけを言い聞かせて消えていく。
「だから、ごめん――――ごめんな、みんな……!」
そうして世界は、本当の意味で終わりを告げて――――――――
――――――――耳障りを黙らせたくなって、その意志に従い人からは更に外れ――――人以外の要素が、ファフナーの右腕が増えた。歪な巨腕、その紫を基調とした凶悪なカタチを、郡千景は知っていた。頼りになる力だった。でも今、その力の指向は自分へと向かっている。
起点は、 の胸の中心から始まった。
虚無の証である暗黒のドームが広がっていく。紫紺の両手に込めた力場が、物質の悉くを吞み込んでは無へ返していく。
「え………………?」
「カズキ!!!!」
さながらブラックホールのように、膨張は止まらず。
「――――――――きえてくれ」
聞きたくないし聞こえない声を、虚無に消した。
根も、大地も、壁も、結界も、神樹も、当然勇者たちも。
全部、全部、全部が無に帰る。
樹海はもう溶けた。そして解けてもいる。そのフィールドを保つ大本が消えているのだから、それによる力も勿論消え去る。そして、四国があった場所は大きく抉られて、尚もワームスフィアは広がり続け――――――――四国だった全てを吞み込み、破裂した。
全部を無に帰す、終焉と諦観の祝福。
――――――――人以外の要素が、ファフナーの右腕が増えた。歪な巨腕、その紫を基調とした凶悪なカタチを、郡千景は知っていた。頼りになる力だった。でも今、その力の指向は自分へと向かっている。
起点は、 の胸の中心から始まった。
虚無の証である暗黒のドームが広がっていく。紫紺の両手に込めた力場が、物質の悉くを吞み込んでは無へ返していく。
「…………」
「カズキ!!!!」
さながらブラックホールのように、膨張は止まらず。
「――――――――きえてくれ……!」
聞きたくないし聞こえない声を、虚無に消した。
根も、大地も、壁も、結界も、神樹も、当然勇者たちも。
全部、全部、全部が無に帰る。
樹海はもう溶けた。そして解けてもいる。そのフィールドを保つ大本が消えているのだから、それによる力も勿論消え去る。そして、四国があった場所は大きく抉られて、尚もワームスフィアは広がり続け――――――――四国だった全てを吞み込み、破裂した。
全部を無に帰す、終焉と諦観の祝福。
――――――――歪な巨腕、その紫を基調とした凶悪なカタチを、郡千景は知っていた。頼りになる力だった。でも今、その力の指向は自分へと向かっている。
起点は、 の胸の中心から始まった。
虚無の証である暗黒のドームが広がっていく。紫紺の両手に込めた力場が、物質の悉くを吞み込んでは無へ返していく。
「なんだ、これ……!?」
「カズキ!!!!」
さながらブラックホールのように、膨張は止まらず。
「――――――――っ! きえろって……!!!!」
聞きたくないし聞こえない声を、虚無に消した。
根も、大地も、壁も、結界も、神樹も、当然勇者たちも。
全部、全部、全部が無に帰る。
樹海はもう溶けた。そして解けてもいる。そのフィールドを保つ大本が消えているのだから、それによる力も勿論消え去る。そして、四国があった場所は大きく抉られて、尚もワームスフィアは広がり続け――――――――四国だった全てを吞み込み、破裂した。
全部を無に帰す、終焉と諦観の祝福。
――――――――起点は、 の胸の中心から始まった。
虚無の証である暗黒のドームが広がっていく。紫紺の両手に込めた力場が、物質の悉くを吞み込んでは無へ返していく。
「ッ、なんなんだよ、これはっっ!!??」
「カズキ!!!!」
さながらブラックホールのように、膨張は止まらず。
「もうきえろよ!!!!」
聞きたくないし聞こえない声を、虚無に消した。
根も、大地も、壁も、結界も、神樹も、当然勇者たちも。
全部、全部、全部が無に帰る。
樹海はもう溶けた。そして解けてもいる。そのフィールドを保つ大本が消えているのだから、それによる力も勿論消え去る。そして、四国があった場所は大きく抉られて、尚もワームスフィアは広がり続け――――――――四国だった全てを吞み込み、破裂した。
全部を無に帰す、終焉と諦観の祝福。
――――――――虚無の証である暗黒のドームが広がっていく。紫紺の両手に込めた力場が、物質の悉くを吞み込んでは無へ返していく。
「もうやめろ!! いい加減にしてくれ!!!!」
「カズキ!?」
さながらブラックホールのように、膨張は止まらず。
「ぜんぶ、なにもかも――――ッッッ!!!!!!!!」
聞きたくないし聞こえない声を、虚無に消した。
根も、大地も、壁も、結界も、神樹も、当然勇者たちも。
全部、全部、全部が無に帰る。
樹海はもう溶けた。そして解けてもいる。そのフィールドを保つ大本が消えているのだから、それによる力も勿論消え去る。そして、四国があった場所は大きく抉られて、尚もワームスフィアは広がり続け――――――――四国だった全てを吞み込み、破裂した。
全部を無に帰す、終焉と諦観の祝福。
全部を無に帰す、終焉と諦観の祝福。
――無に帰す、終焉と諦観の祝福。
――――、終焉と諦観の祝福。
――――――と諦観の祝福。
――――――――の祝福。
――――――――――。
四国をこの手で無に帰した。大切な人の命を奪った。百に届きそうな回数を重ねて、この身体にはその実感と記憶が降り積もって。月並みな表現かもしれないが、ようは気が狂いそうだった。
人の命を何度奪えばいいのだろう。何度奪っても終わりには辿り着かない。出口の塞がれた迷路で行き詰まって、どこにも行けずに絶望だけを彷徨って――――唐突に始まった繰り返しは、いつ終わりを告げるのだろうか。本当に、終わるのだろうか。
何故、自分なのか。何故、今になってこんな意味の分からない現象が。何故、何の意思が、何のためにこんな光景を見せつけ続けるのだろう。
結城を、千景を、みんなを、その命を、何度この手で奪えばいい。
ひょっとしたら一生、このままどこにも進まないままだとしたら。そんなことを考えてしまって。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
ブツリと音が鳴った。
決定的で大切な何かが、千切れる音を契機に崩れ去っていく。
「カズ、キ……?」
全部を終わらせる決意が、音を立ててほどけていく。まるで絡まり尽くした糸を、鋏で無理に切り落としたような。
「で…………なん……どう……して」
「カズキ貴方、どうした――――
「…………、……なんで、まだ、いる」
『バカズキ!! アンタいい加減にしときなさいよ!!』
「お願いもうやめて! これ以上力を使ったら……!!」
消したはずの声が、どうしてまだ聞こえる。
触れる小さな手のひらが、どうしてまだここに感じられる。
消えろと願って、周辺の空間を見境なく抉る。
「なんで、まだ、みんながそこにいる」
「……カズキっ」
「なんで、だれも、きえないんだよ――――!!!!」
網の如き紫電を『壁』が塞ぐ。無の虚穴が回避する先へ先回りしようと、空間の隙間へ『消失』の力が千景を送り込む。
飛翔と跳躍を繰り返す背へ負けて、ただ愚直に、戦略も何も考えずに、紫紺のアンカーが追い立てる。
――何のための、覚悟だった。
――何のために、 は憎しみのままに暴れたのか。
「――――いのちをつらぬけば、きえるのか」
「っ! カズキお願い! 戻ってきて!!」
ワームスフィアを変化させ、暗闇色の輪が音を立てて、その回転数の激しさを表し。
放たれた円環は同一を複製し――何十と増加した斬撃が、少女を引き裂くために殺到する。
「それとも――――きざめばきえるのか」
「っ! こんなに、力が強くなって――――!??」
何十と分かれた虚無の円環が、更に増え、尚更に増え――――その数は千をいとも簡単に越して、ついには壁とも称せる密度へ変貌を遂げる。
千景なら回避は出来るだろうが、その選択を は既に奪っていた。
彼女の背には、この箱庭を保っている結界の大元が。
一射や二射程度なら影響は少ないだろうが、それが万へ届きかねない数だとすれば、千景には無視することができない。その状況に気が付いたのも偶然だったが、 にとっては至極好都合だった。
「……水鏡さん、貴方の勇気を――――」
断裂の壁が、進行上に存在する根を断ち飛ばし。
迫る断裂を、翡翠の『壁』が迎え撃つ。
――ギャ、リリリリリリリリリリリリリィィィィ!!!!!
「――――私にも!!!!」
――ギャリギャリギャリギャリギャリリリリリッッッッ!!!!!
耳を塞ぎたくなる音が背筋を引き攣らせて、それでも発する力は微塵も緩ませない。
その渾身を揺るがせようと、 は小規模のワームスフィアを発生させては、その『壁』を小刻みに揺らしていく。
『千景!!』
「もんっ、題ない、わ……!! それよりっ、貴女たちは、呼びかけてあげて……――――きゃっ?!!」
業を煮やした が衝突し、その両腕で直接壁を叩き割らんと暴威を吐き出した。
「おしえてくれ、ちか―さん」
「っ、カズ」
「ぜんぶ
殴る。尖った爪先を突き立てる。殴る。手の平で爆発させた紫電が『壁』を削る。殴り、引き裂く。殴る、殴るれば、反発する力が空間を乱暴に焼いていく、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る。その命を否定するため、肉を薄紙のように破り裂ける凶腕で、骨をスポンジみたく握り締められる死の手で、生を笑えるくらい易く終わらせられる両腕で。
透き通る『壁』の向こうで苦しむ、その尊い命を引き裂こうと殴りつけて、漏れる余波が周囲を絶対零度へ近づける。吹き荒れる余波が空気を焼いていく。
ふと、胸元に違和感を覚えて――でも気にせず殴れば、首元から、尖った石のような感触を無視した。
「同化、現象……!? ――――やってくれたわねへスター……!!」
驚愕の声と瞳を無視した。
『婆ちゃんから拮抗薬を貰ってたんだろ!? まさかっ、効いてないのか!??』
『やっぱりず――――彼はもう限界だよちーちゃん!!』
『止まってください先輩っ! これ以上戦ったら先輩が……!!』
身体の重さを誤魔化すように、この器の扱える出力を更に引き上げていく。
鉄と鉄を打ち鳴らしたような轟音は、淀みなく聞く者の腹に響いていく。
『頑固者め! 聞く耳くらいあんでしょうが!?』
『実力行使で早いところ止めないと不味いわよ千景!!』
「分かっってる、けど……!!!!」
二重の『増幅』を注いだ『壁』だとしても、両方とも同じ島から生まれた力だとしても、
の牙を、■景の力では防ぎ切れない事を示すように、シールドへ刻まれた揺らぎが大きくなっていく。
「たのむ おねがいだ 、 きえてくれ」
「っ――!!」
本心からの願いだったのに、泣きそうな顔で彼女は拒んだ。
手で触れて『薬』の癒しを齎そうとしていたのに、今度は が手を伸ばせば彼女は拒んでしまう。
から千■へ手を伸ばしたのに、やっぱり彼女は受け入れてはくれなかった。だからなのかどうかはしらない。そもそも今になって期待なんてしていなかった。自分は彼女にとってそういう存在だと、知っていたのだから何も思わない。
でも、 は、とても息をしづらくなって。心臓があるハズの場所に、おおきなあなが、あいたようないたみにおそわれて。
ならなんだというのか。くるしいと、つらいとでも言えばよかったのか。たすけてと、彼女へ言えば、言えたなら――――――――口に出せば、楽になれるのだろうか。
もう、その手が本心かどうかも分からない。でも、もう一度だけ、その灯りを求めて良いのだろうか。
『先輩っ!!』
『カズキ!!』
『郡!!』
呼ばれている。呼んでくれている。
――ほんとうに?
『カズキ君!!』
『カズキ!!』
『――――カズくん!!』
冷たく暗い海の底へ沈んでいく自分を、呼び起こそうと必死になった声がする。灯りから差し伸べられた手が、その温もりが、寒気のする闇を明るく色づけていく。
だから自分はその手をとっていいのだと――……
――ほんとうに……………………?
「…………ち■げ、さん」
「! カズキ!!」
――ほんとうに、
「たす、 け」
『――――郡くん!!』
――――――――――――――――声が、聞こえた。
――――その声は、かつては帰る場所への指針だった。
――――その声は、いつか自分をあるべき存在へ戻してくれるはずだった。
その声は、その声は――――今ではもう、『自分には帰る場所が無い』ことを示す、何よりの証だった。
「■■き、ゆう■」
いつも、こうだ。
求めたから、裏切られる。欲しくなれば、手元から消えていく。
楽になれると希望を抱くから、こうして現実に苛まれる。
この世界は、どこへ向いても絶望の色をしていて、なのにどこへ行っても絡みついて、 が存在している事実そのものを責め立てる。何故そこにいる。何のためにそこにいる。何を望んでそこにいる。何を成すためにそこにいる。
どうして、人形が、心という高尚を宿している。取り付けた約束も、埋め込まれた役割も果たせない欠陥品が、どうすれば救いを求められよう。
「――――そう、だよな」
自分が救いを求めることは不相応だと、その優しい声は教えてくれた。
自分の役割を自覚して、心だったものが寒く冷たく遠退いていく。自分には心など必要が無い。人と同じ振る舞いなど贅沢だ。替わりの用意できる、ただの人形だということを強く自覚した。
この苦しみも、叫びも、悲しみも、見せかけの物。どこも存在していない、空虚な心――ですらない。
「違う! カズキ、そっち側には何も無いのよ!!」
「おれはどこにもいない」
灯りから目を逸らしたい。
手に入れてはならないとどこまでも思い知らされた風景を、どうして視界へ入れ続けなければならない。
「だめ――――っっカズキ!! そっちには行かないで!!!!」
「いなく なりたい」
望んだ瞬間、度を越した倦怠感が全身を突き刺してその場で硬直させる。
それを見た■■は、 へ震える手を伸ばして、『壁』を取り払って。朦朧と混濁の意識を無我夢中を押し退けて、必死に伸ばされた手を は取って、 の中にいる怨念達は理解してしまった――――――ああ、これは、明確な隙だ。
ニヒトの因子が繋ぎ合う手を通して流し込まれて、■■の動きを蝕み止めて、その差し出されたも同然な身体を、憎しみと悲哀の凶腕が、あっけないくらい簡単に。
ぞぷりと、柔らかいお腹を
「――――」
「? ……、 …………?」
「か、、き……か、ずき」
噴水のようには噴き出さなかった。けど栓を開き切った蛇口のように、止まることはなく滴り落ちて。
ほとばしる重くて赤い液体に流されて、中に納まっていた柔らかい固形がこぼれていく。鉄の匂いのする水分が、似た色の装束を一気に濡らして黒く染め上げていく。
――――貫いた当の本人は、惚けた顔でその色を眺めていた。
――――貫かれた当の本人は、受け入れたように泣いていて、後悔を雫として落としていき。
―――― が、■■を泣かせた。
バーテックスやフェストゥムとも違う柔らかな感触が、赤黒く濡らした腕に伝わり、脳までじっくりと鮮明に情報を伝える。装束を焼いて、肌を裂いて、肉に穴をあけて、骨を素通りするように砕いて。
右腕は■■の身体の向こうで、空気を涼し気に浴びている。
なのに少女は、慈しむように人ではない紫紺の腕を、自分の腹から伸びる異物を、白い両手で包み込んだ。
「ごめ、ん……なさい」
「、……だれ 、だっけ」
「――――っ、ぶふっ、、……ごめん、なさい。ごめっん、なさいっ、カズキぃ……」
逆流した液が、口から赤色の絵の具をコポコポと湧かせている。喋り辛そうだなと、まるで他人事のように俯瞰していた。
薄れていく命の暖かさを伝えようと、エメラルドの装甲部分を力なく握ろうと振り絞って。
■■の手が、 の頬へと力無く触れた。
「 どうして あやまるんだ」
「ずっと、あやまりたかった、の……!」
――――背を向けた灯りが、目を背けた命が、急速に揺らいでいく。
「もっと、はやく、いえればよかったのに…………どう、して、わたしはいつも、こんなにおそいの……っ……」
「……………………」
「ごめん、ね……ごめん、なさいっっ……たたかわ、せて……っ……ごめん、なさい…………カズ、……き――――――」
ずるりと音を立てて、人肌の温度が失せていく身体から引き抜かれる凶腕。
その湿った光景を、モザイクだらけの視界が何となしに眺めて。
は、意識が暗く沈んでいく。冷たく暗いその海へ、逃げ込むように飛び込んだ。
『カズキ君、なんてことを!?』
『千景ェ!!!!』
『ちーちゃん!!!!』
互いに滞空すらもままならなくなって、二人同時に、けれど離れていくように墜ちていく。
■■は赤く染まる意識の中でも、それでも へ手を伸ばしてくれて。でも、
「……■■、っさん――――って、……だれ だっけ」
その手を掴むのは、とても怖かった。
誰の手かも分からないのに、その恐ろしさだけが、強く残っていた。
『カズキは……人としては、生まれてこなかった』
全てを、話した。
『戦うために、人ではない機能を備えて、人の形を模して生まれてきた』
全てを、話された。
『以前に結城さんと知り合っていた存在は…………もういない。東郷さん達と共に戦ったあの子は…………どこにもっ、いない……のよ』
勇者の力の裏にある真実――すなわち、満開と散華のメカニズム。
払うべき代償を、誰がどのようにして帳尻を無理に合わせたのかすら知らされた。
『カズキは、その、記憶喪失なんかじゃなくて……新しく、生まれて』
それだけではない。火に包まれた外界のことも、勇者部の者達は知った。
千景は三百年前より生き続ける存在であることも、千景は知らせた。
『でも私は……あの子を人として、生きさせたかった』
そして、郡 の真実も、皆に話した。
『…………ここにある機体の総称は、ファフナー。思考制御・体感操縦式、有人兵器ファフナー。これらの機体は全て島で生まれた力。本質的にはカズキと同じ存在を埋め込んで、フェストゥム達へ対抗する力を備えている』
願わくば、 の居場所になってはくれないかと、泣きそうな顔で願いもした。
『あの子は――――人の形をしたファフナーとして、生まれたの』
話す単語の一つ一つを言葉にするたび、嫌悪と罪悪に塗れた顔色を濃くしていく。
驚きの連続。衝撃も何度か受けただろう。けれど彼女らは厭わない。否まない。勇者部の日常には、誰一人の欠けも許されてはならないと、彼女達は伝えようとしていた。
結城友奈も、その一人だった。
赤をより濃密にした、ワインレッドの塗装色。
「ぐっっぅ、ぅっっ……」
『千景! 無事!? 生きてる!?!?』
「……私、より……っ、カズキをっ……!」
所々が木炭のように黒く灼けた大地を気にした風もなく、滑るようにソレは現れた。前触れなどどこにも見当たらず、突如としてその巨人は樹海の内へと姿を現したのだ。
勇者達のアプリへ報せはない。その瞬間は誰の一人も気が付いていなかったが、その存在を示す名称は、確かにアプリの樹海マップへと記されていた。
記された機体コードは――――Mk.XII。
アラートが出ない理由は、その存在を神樹は敵ではないと判じたから。勇者達がその瞬間を目撃できなかったのは、結界の穴から入り込む星屑の対処に追われていたから。
『!? ……あれって……えっと、ふぁ、ふぁー……』
『……ファフナー、でしょ』
濃厚な赤色をしたファフナーが、荒れた根の大地を通り抜けていく。
『そうそれ! 橋の地下で見たものとおんなじやつ!!』
『で、でもっ、乗れる人はもういないって、千景先輩は……っ!』
『……島の機体なら敵じゃないことは確かだ。今はそれよりも、二人の元に急ぐぞ……っ!!』
故に、少女達がその機体の存在を認めた頃には、
疑問に答えを出す間もなく、殺到する星屑を散らしながら、状況は刻々と進み続ける。
『――――知らない』
『そのっち……?』
『あんな色の機体は、泉には無かった……!!』
その機体が向かう先は、地へと墜落した英雄の器へと目掛けて。
迎えに来た。
『牛鬼?』
――!!!! っっっ!!!!!!
『どうかしたの……?』
島で生まれた力が、英雄を迎えに来た。
「どう、して……ツヴォルフ、が、ここに…………!? ……っくっっ…………――――
『――――』
「本当に……? ほんとうっに……!? 島がっ、来てっくれた……の……!??」
その機体は、物を喋らなかった。クロッシングを繋げようにも、能動的に遮られて通じなかった。意思の疎通は断線したように、その存在の魂を図ることが出来なかった。
けれどもその機体は――――マークツヴォルフの姿をしたその存在は、不乱に の元へと駆けて行く。それが、それだけを達するために、その存在はこの場所へ送り込まれたのだ。
全ては、英雄の器となる郡 を、連れて行くべくして、そのファフナーはここにいた。
島ならきっと、少年を救える。千景はそう考えた。
勇者部は、事情を深く飲み込めないためか、千景の反応を見て、その存在が悪い物では無いと考えた。ある程度の事情を知る側の三ノ輪銀は、最優先とする行動を間違えようとはせず、二人の元へと急いだ。
事情を知る側であり、竜宮島の影響を一番に受けた乃木園子は、その機体を知らず、だからこそ訝しんだ。
は、末期症状の負荷へ抗いながら、間近で朧げに大雑把に島の力を感じて、その方へと無意識に手を伸ばした。
「…………しま、……たつみ、や…………じま」
『――――』
「あ、あぁ……ぁぁぁっ……! …………おれの、ほんとうの、かえるっ…………ば、しょ」
その機体に残された意思へ語り掛けようと、クロッシングの要請を試みても繋がらない。繋がることを拒むように、いっそ徹底的なまで遮断されて、何一つの情報も共有できなかった。
「ぇ――――違う……! カズキ!!!!」
千景は先程までの思慮を覆した。
「かえり、たいよ…………かえる、ばしょが……ほしい」
「その手を取ってもっっ…………っつぅ……っ!!」
SDP――超次元現象を行使しようと手を翳した千景へと――――ツヴォルフは、手に持っていたレヴィンソードを投げ飛ばした。
「ぐぅっッッ!!?」
用いる力を咄嗟に『消失』から『壁』へと切り替えさせられて、身の丈を遥かに越え過ぎたその一刀は、『壁』越しにも空気が震える重たさを響かせた。
腹部の傷が、少し開いた。
『はっ!? 味方なんじゃないの!?!』
『千景さん!!』
「カズッ、キっっ……!!!!」
『――――』
止まることなく進み続ける機体の首裏から、一本の角が頭上に展開する。と同時に嵐のようなワームスフィアー現象が、千景を覆い尽くした。
『壁』の力で猛攻を凌ぐも、その
視界も塞がれた最中で、滑るような移動音が止んだことに、千景は気がついた。
「……ッ、カズキ!!!!!!」
「…………そこに、いて……くれてるの、か……?」
『――――』
はもう耳が見えない。目の前も見えない。
ただ、自分のルーツとよく似た気配を、ファフナーに存在しているコアの存在を、感じ取っていた。
だから、伸ばした手は引っ込めず、更に伸ばした。
「かえりたい」
「カズキッッ、だめぇっっ!!!!」
「しまに、かえりたい」
「ソレはっっ、島のファフナーじゃない!!!!」
の指先が、その何十倍以上に大きな機械の指先に触れて。
「敵なのよ――――!!!!」
の全身は、誰しもがもはや見慣れた美しい色に包まれた。
――翡翠の結晶、それが意味するのは。
「ぁ」
『――――』
「ぁ、、、っ、、あぁぁっあ」
千景の視界を塞いでいたワームの嵐は、もう止んでいた。
そして千景は、 の命を急速に吸い尽くす結晶を、その目で直接見た。
「ずき……っ! カズキぃィィィっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
端から徐々にではない。全身に生えた結晶が、軒並み一斉に砕け散ろうとしている。 の残り僅かだった命を、容赦なく喰らい尽くそうとした証。
マークツヴォルフの力――SDPは、『再生』。読んで字の如く、自機の損傷を修復し、死の淵からすらも蘇る力。それだけでなく、頭部に備えられたショットガンホーンと呼ばれる武装から、ワームスフィアー現象を発生させもする。そして、そして。
他の命を同化して喰らう。それが、マークツヴォルフの持つ力。
命を喰らう際には、例外なくその対象は結晶に包まれる。
今の のように。
「あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!??? いやぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」
叫ぶ。叫んで、がむしゃらに髪を振り乱して、乱暴な力を使い尽くして、その瞬間だけは止めようと、渾身の力を注ぎ込もうとして。
その手を伸ばした眼前で、呆気なく散る。
「あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁっっっ、カズッッッっっっ、っっっあぁァァァッッあああああっぁぁあぁ――――――――――――!!!!??!!???!!」
食べカスのように、
皮肉にもその光景を、千景は綺麗だと、茫然とした感想を無感動に抱いて。その瞬間の有り様を、千景に宿る島の力はまざまざと、千景の目へと鮮明に見せつけた。
慟哭を叫び――――郡千景の希望は消え去った。
〜例の二番歌詞イントロ〜あたし行かなくちゃ 時は止まるはずも(rya