郡カズキは英雄である   作:真の柿の種(偽)

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 帰りたい。
 守りたい。
 でも帰る場所がない。
 でも守り続けることはできない。
 命が足りない。時間が足りない。資格が足りない。権利が足りない。
 そんな自分を受け入れてくれる存在なんて、どこにもないのだと信じていた。差し伸べられる手は虚偽に満ちているモノ。差し出される居場所の席は自分のものではない間借りのモノ。
 本当の自分など、どこにもいないのだと思い知らされて。
 ――――でも、この海に沈む直前に見えた救いは、真実だった、ような気が、して。
 ――――――――ああ、でも、この手には、生温くて熱くて、ぬめついた厭な感覚が、ずっと張り付いたままで。
 ――――――――――――そんな自分が、帰りたいなどと。
 ――――――――――――そんな自分が、守りたいなどと。
 己を否定するだけの心に身を委ねて、でもどこかで身に余る贅沢を望む自分が、本当に小さな望みがあって。
 ずっと、そんな繰り返しの海の中で、己を責め続けていた。


fly me to the sky

「…………ぃ、ゃ……か……ず、きぃ……」

『――げ』

 

 希望が砕け散った。

 真壁一騎、皆城総士。

 遠見真矢、羽佐間カノン、皆城乙姫、皆城織姫。

 春日井甲洋、近藤剣司、近藤咲良、小楯衞、羽佐間翔子。

 来栖操、堂馬広登、立上芹、西尾暉、西尾里奈、御門零央、水鏡美三香、鏑木彗。

 真壁史彦、遠見千鶴、溝口恭介、羽佐間容子、要澄美、小楯保、西尾行美――――島の子供達、島の大人達。

 ――――高嶋友奈。

 乃木若葉、上里ひなた、土居球子、伊予島杏――――戦友達。

 彼ら彼女らから託された、未来を紡ぐための希望。そして、それ以上に。

 

「どうして……わたしは、だれも…………――――っッッ」

『――――景!』

 

 今度こそと誓った、その証明の存在。

 今度こそ、二度と悲劇では終わらせない。絶望に暮れたまま、無へと還るような結末にはしてたまるかと、誓った。

 その少年が人間的に育つ姿を見守るのは、心が安まる平穏そのものだ。

 穏やかな芯根のままに、彼が彼のままに、健やかな人としての育ちを獲得していく様子は、見ているだけで柔らかな満足感を得られていた。

 勇者部で起きた出来事を、ぽつりぽつりと語って聞かせてくれた日があった。部活動の最中で衝動的に引き取った子犬を、飼ってもいいかとびくびくしながら、けれど硬い意思で聞いてきた日もあった。料理を教えて欲しいと言われて、拙い手際の自分の姿から、懸命に学ぼうと熱心でいてくれるのが嬉しかった日もあった。

 充足していた、とも言えるのだろう。負い目にも近い気後れを纏う彼はともかく、少なくとも私はそんな日々が、たまらなく嬉しかった。彼の心が育つ様子を間近で見守り続けられる日々が、何よりも喜ばしかった。

 まともな家族と言える関係性に乏しかった私に、そんな役割が本当に担えるのかは疑問視していた。けど、彼はそんな私を、心底から慕う目で見てくれていた。

 本当の家族のようになりたかった。

 本当の姉弟のようになれれば、彼にとって帰る場所にだって、きっとなれるって。

 

「もう、、ぃやっ、なのっに、なんで――――――――……どうして――――」

『千景ェ!!!!』

「――――――――え?」

 

 絶望に暮れる思考の他所で、倒れ伏す彼を、その視界は捉えていた。

 砕け散っていたのは紫紺の双腕。五体から欠けた三体を投げ出して、力無く()()()()()を、俯瞰する全てを見通す視界は確と捉えていた。

 

『まだそこにいる!』

 

 うつ伏せの体は刻むように、されど小さく震える様子は全身に異常をきたしていると一目で分かる痛々しさ。

 でも、命はそこにあった。

 存在全てが霧散したと、あまりのショックで幻覚を目の当たりにしただけだった。

 

「…………カズ、キ?」

『カズくんはまだそこにいるよ、ちーちゃん!!』

 

 そんな意識の無いカズキを、つまみ上げる黒い鉄の指。

 頭部のクリアパーツが紅に鳴動して、こちらを一瞥する。その意図は是が否かを判じていたのだ。

 英雄の器だけでなく、島の戦士達の力すらも奪取が可能かどうか。

 そして欲を出しすぎるのは辞めたのか、拾い上げたカズキを手のひらへ乱雑に納めて、ワインレッドの姿をしたその機体は踵を返した。

 

『――! カズキの力を喰い切れてないんだ! このままじゃカズキごと奪われるぞ!!』

「――――かずき」

 

 行ってしまう。遠く、私の大切な希望が連れて行かれてしまう。

 それは、どれほどに残酷なことだろう。

 

『止めなきゃっ……! ミノさん私達も……!!』

『園子! 端的に聞くわよ!』

「――――カズ、き……っ」

 

 ――許せない。

 遠く離れる濃い赤色の背中を、ツヴォルフを語ったその背を、千景の『多次元視界』は鮮明に捉え続ける。

 適切な距離を測り、対象の重量を計り、正確にその力を図り、彼の情報を量り、行使する対象の全てを洗い出す。

 

「カズキ――――ッッ!!!!」

『あの赤いのは敵っ!?』

『敵!!』

 

 ――許さない、許せない。

 手を伸ばして、翳す。その力を、『増幅』によって一つの力を、更に引き上げた。

 SDP――『引き寄せ』。その力は、その名の通りに引き寄せる。

 有機物も、無機物も、例えばそれが人でも、望んだ物をその手元へと『引き寄せ』る力。

 

『カズキを連れて行かせちゃだめだ!!』

『って事らしいけど風っ』

『細かいところは分からんけど、大事な部分は了解したぁ!!』

 

 でも有無も言わさず引き摺り寄せるだなんて、私には出来ない。酷く傷つけた彼を、これ以上無理矢理なんて出来ない。

 だからイメージしたのは、差し伸べる手。

 

『みんなっ! あのバカズキを連れ戻すわよ!!』

『了解ッ!!』

『うんっ!!』

『郡くん――今、助けるよ!!』

『ムカつく奴だし世話が焼けるわねホントに!!』

 

  引っ張り上げるなんて強制は、それ以外を選べないような選択は、もう二度とさせたくないから。

 ――――救いを求める兆しを見せてくれた彼なら、きっとこの手を握り返してくれる。

 そんな自分勝手を信じている。

 

『んでもってゲンコツよゲンコツゥ!! 誰にも言わず抱え込んでばかりのあのバカにはね、『悩んだら相談』って発想が無いのよ! 全員でタコ殴りの刑に処すんだから!!!!』

『そ、そこまでは……でも、少しだけ私も…………ちょっ、チョップくらいなら……』

『蹴りは?』

『暴力ならオールオッケー!! 部長権限で何でも許しますっ!!』

『木刀もアリか』

『あはは…………私も、伝えなきゃいけない事があるからね……』

『友奈ちゃん……』

 

 彼の家族になりたい。

 郡カズキの帰る場所で在りたい。

 他でも無い私が望むのは、お門違いにも程がある。

 

『私達も、……っ――――行こう!!』

『なりふり構ってなんかいられない……! 必ず止めるぞ!!』

 

 カズキの兄とも呼べる存在達を、私は何度この手で引き裂いた? 私は何度この声で、カズキの兄とも呼べる命達を死地へと追い込んだ?

 私、郡千景という存在は、彼にとっては死神と何が違う。

 

「こっちへ、カズキ!」

 

 ――ああ、でも、なんて浅はかだったのだろう。

 この期に及んで、三百年間のうのうと生き永らえておきながら。

 まだ私は、自分を許容してくれるだけの余地があると思い違えていた。

 

「カズ――――『いやだ』――キ…………?」

 

 強く振り払われたその手。

 拒絶の意志を込めて、手を掴むことを恐れて。カズキは私の手を拒んだ。そして――――敵の手の中にいることを望んだ?

 

「…………ぇ…………っ……?」

 

 もう一度、信じられない信じたくない事実を確かめる。

 掴んでくれたなら二度と離しはしないと誓って、もう一度手を伸ばす。

 

「そっちを、選んだらっっ、ダメ――!!」

 

 遠退いていくカズキへ手を伸ばす。

 

「いなくなるだけなのにっ、どうしてっっ」

 

 意識も無いのに、それでも私という存在を拒み続ける。

 それがナニを意味するのか、考えないようにしながら手を伸ばし。

 

「いっっ!?!」

 

 伸ばした腕を突き刺す、赤く鋭い痛み。

 右手を劈く紅の結晶が、肉の内から飛び出て血を流させる。

 肉体の結晶化による同化現象――しかし千景の同化への許容が溢れるにはまだ早い。

 これは、この現象は、外からの働きかけによる現象。それも千景の力を通り越す、大きな力の影響だ。

 同化して取り込もうとする力ではない。突き刺し拒絶する、否定するための力。

 流れる血こそが、拒む心をこれ以上ないほどに示していた。

 

「カズ、、キ」

 

 もう一度力を使えば、突き刺す鋭角な痛みの数は増える。先ほどよりも拒む力はより強く、肌の色を埋めるように棘が肉の内から生えては傷つけていく。

 与えられる痛みが、彼の意志を浮き彫りにする。

 受け取った痛みが、私の致した裏切りを自覚させる。

 

「――ぁ、――――ぅっぐっっ、、か、ズキ……っ」

 

 手を振り払われた心の痛み。腹部で響き続ける穴の開いた痛み。拒絶された胸の痛み。振り払われた腕の痛み。自分よりも敵の方に身を置くことを選んだ痛み。カズキから受け取る痛みが、心を何度でも抉っては殺そうとする。

 でも、それら全てをひっくるめても、一番に痛みを受けたのは私じゃない。

 裏切られたのは、傷ついたのは、私なんかじゃない。

 取り返しのできない嘘を吐いた代償を、本当の意味で私は理解した。

 

「――――渡さない」

 

 理解したけれど、でも譲れない。

 離れた場所へ手放していた鎌を、手元へ『引き寄せ』る。

 腹に開いた傷を治せる力は無いが、多少は無視していても動ける身体なのは幸いだ。

 惜しみはない。惜しまずこの体に或る全てを使う。負担など何一つも考えない。託された全てを使い切っても、それでも尚取り戻す。

 だってまだ、私は一方的に謝っただけだ。

 赦しも罰も、何一つとして彼の声を聞いてはいない。ただ拒まれてそのまま終わるだなんて、納得などできるものか。

 

「貴方をそっち側には――――行かせない!!!!」

 

 ――――――――もしも。

 もしも、連れ戻せないのなら。頑なに、こちら側へ戻る意思を見せてはくれなかったのなら。

 敵の手に渡るぐらいなら、私がこの手で―――――――――――――――本当に、それでいいのか。

 それを、私は本気で選ぶのか。

 もしくは、選べるのか。

 

 

 樹海化の波は、神樹が選んだ勇者を除いて人々を呑み込んでいた。

 その存在達を一時的に曖昧にして、戦闘の被害から身を守護させていく。そのための加護であり、人であるのなら瞬く間にその守護が機能して、人が作り、発展させた建造物すらも包み込む。

 戦う者以外に、人の身で例外はどこにもない。

 ――なら、人智を超えた存在は? はたまた、神樹のような大いなる存在を凌駕しかねないほどの力を持った存在なら?

 

 ――――、――。

 ――――。――、――――。

 

 時は経た。気が遠くなるには容易いくらい、時は無情に積み上げられた。

 錆びつきはしない。けれどそこに残された心は日々薄れて、今ではもう見る影もなく掻き消えたと、言い切れてしまう濃度だけが漂流している。

 その力は、平和な世界を求めて作られた力。可能性という名の新たな扉を開くべく。そのために救済の器を作り上げ、相応しい担い手へと受け渡される運命を辿り。

 その力は、敵のいない世界を求めて作られた力。敵の可能性を否定しては閉ざすべく。そのために救済の器を作り上げ、相応しい担い手へと巡り廻る運命を辿り。

 けど全てを受け入れる器には成れない。

 犠牲を否定する器に生まれ変わらない。

 そこにあるのは死んだも同然の器。次のモノを生み出すため、力の残滓を必死に掬い上げては、まだその力を有用な物として執拗に拘りを続ける。そこにいた存在はもういないも同然、しかしかつて自分達を守護してくれていた象徴へ救いを求めて、縋ることを続けさせる偶像だった。

 何かできることなど、一つたりとてそんな選択肢は剥奪された。

 ああ――けど。

 

 ――……、――――、……?

 

 言葉に意味を含められるくらい意識の残量は非ず、意思を示せる行動も取れやしない――――だけど。

 

 ――――。……――――、――。

 ……! …………。……――――!

 

 存在の側から、無へと境界線を越える一方通行しか選べず、着実に消えていく――――――それでも。

 消えかけているその存在は、逆接の限りを尽くす。

 樹海化のフィルターでは捉えきれないほど大きな、強大なその存在が。

 兆しの灯が、水と橙に淡く揺らぎ、確かな光は煌めく。

 それはまるで、対を成す()()のように。

 

 

『迂闊に触れないように気をつけろ!! カズキの意識を奪えるほどの力だ、アタシ達じゃ抵抗出来ずに喰われるぞ!!』

 

 遠目にもはっきりと見える機体のカラーが、滑走して鮮やかに近づいて来る。

 その握り込まれた左拳の中に、彼はいるのだろう。

 

『え゛っ』

『どっ、どうやって戦えば……?』

『喰われるよりも先に斬れば済む話だけど。……友奈と風は下がってなさい!!』

『アタシが重くてどん臭いデブでのろまだとでも!?』

『んなこと言ってないってば……っ!』

『! 来たよみんなっ!!』

 

 手に持った武装は無くとも、謂わば装甲のそれ自体がもはや武器だ。ワームスフィアー現象を引き起こしたと見られる、首部の剣角もまだ顕在。あの機体からすれば戦闘行動に移る余地は、まだまだ充分に残されている。

 それらを見て優先すべきは――――一つ。

 

「風先輩! 壁をっっ!!」

『へっ、壁? ……なるほど心得――てもいいの?』

『樹海へのダメージを考えられる状況じゃない! カズキを奪われたら全部が終わりだ!!』

 

 敵と目される赤色の機体の移動速度は高い。勇者の私達が走って追いかけようとも、追いつけずに逃げ仰られてしまうだろう。

 しかし敵はあくまでも、地を走って移動しているのだ。

 千景先輩のように空間をテレポートしての移動もしない、もしくは出来ない。力があるのなら、その力を使ってこの場から未だに離脱していないのがその答えだ。

 だったら物理的に、行き先を壁で塞いでしまえば。

 

『どぅぅぅおぉおおおおらぁあああああああああっっっっ』

 

 地へと叩きつけられる大剣。

 

『いっけぇええええええっっ、女子力ゥううう!!!!!!!』

 

 叩きつけた大剣が、地響きを伴ってその大きさを規格外な物へと変化していく。

 私達の背丈をすぐさま超えて、横幅も刃渡りも向かってくる機体の大きさも超えて――――。

 

『ふーみん先輩! 樹海の端っこまで広げられる!?』

『ふんがぁあああああ!! やってやろうじゃない!!!!!!』

 

 天蓋へと行き着かんとする横幅へ。柄と刃先は決壊の壁へと行き着き。

 敵にとっての結界外への最短距離――私達をすり抜ける道を塞ぎ、そして。

 

「流石です先輩!」

『これで挟める!!』

『ふおぉ……こんな力がアタシにはあったのね』

 

 濃く赤い背中を追い立てる、彼岸の色をした軌跡が樹海を突き進む。

 

 ――逃がさない……!!!!!!!!

『――――』

 

 上へは無理だ。低空飛行は出来るようだが、その離脱を許さないほどに巨剣は上を通り越した。横へ抜けようにも地平線とばかりに剣の腹の風景は続く。

 横へ後ろへと抜けようとするなら、それ許さない戦士がここぞとばかりに大鎌を構えて、意気込んだままにその刃を奮うだろう。

 挟み込まれる形となった敵の判断は――より打倒が容易い方を、強引に押し開ける選択。

 少しだけ壁を見て、一瞬の逡巡の後に踏み込んでくる。

 私達を脅威とは見做さず、踏み潰して越えようと敵は迫ってきた。

 

『きっ、来ます!!』

『アタシが前に――『()()ッッ!!!!』――夏凜!?』

 

 大小の怯えや戸惑いを各々が抱きながら――――赤い皐月の華が、()()の背で大きく咲き誇る。

 背から伸びる四つの義腕、それらが握り締める鮮血のような赤刀。夏凜ちゃん自身の握る二本の刀も、塗りたくったような赤色。神々しい後光を背負い、神の力をその身に降ろすその行為。

 散ることへの怯えは見せない。人の部分を失くすことを躊躇わない。躊躇の欠片をおくびに出さない。

 重たい切り札の行使へ、夏凜ちゃんは迷いなく踏み切った。

 

『かっ、夏凜ちゃんっ!?』

『打ち合うのは私っ! 援護頼むわよ――――!!』

『アンタ……っ! なんてことしてんのよ!!』

 

 機体の背に備えられた角が展開し、上空から強襲する夏凜ちゃんを迎え撃つファフナー。

 紅に染まる刃を振り翳し、頭上から振り下ろす。通せば致命となりえる一撃へ、下から突き上げられるのはエネルギーを纏った刃角(ショットガンホーン)。 

 ――金属と電磁の弾ける音が、私達の耳へと鋭く届いた。

 

『夏凜ちゃん!!!!』

『っ――――切りっ、替えろ友奈! 須美っ、夏凜の動きから目を離すなよ!!』

「分かって、いるけど……!!」

 

 満開後に必ず訪れる、神の力を奮うことへの大きな代償。人としての機能の剥奪。

 恐ろしくない筈が無い。私という実際の症例が在って、身体の機能だけじゃなく記憶すらも奪い去られてしまうことを知って、それでも満開を扱う決意へ踏み切るのは、一体どれほどの覚悟を抱いて――――。

 

『武器の無いふーみん先輩は下がって! イッつんはわっしーと一緒に、()()()()を見逃さないでね!!』

『っ、はいっ!!』

『――――っ!? 園子ぉ!』

 

 端末が夥しく震え続ける。けたたましく、いっそ悍ましさすら感じられるくらいに震えて、万人の耳に障るであろう不況異音を鳴らした。

 夏凜ちゃんが鍔迫り合う最中の隙間に問うた叫びは、そんな警告音とほぼ同時だった。

 

『なんかっっ! へんっ、、なのがぁっっっ!! ――()に!!!!』

 

 何も無い、静寂のような存在感。搭乗者を前提とした兵器だと聞いていたのに、そこには誰もいないと感じられる、空虚な佇まい。

 夏凜ちゃんの感じた方へ、私自身も感じるままにスコープを向けて――――絶句した。

 

『結界が――――!!??』

『なんであっち側!?』

 

 私達が陣取っていた側では無い。その真逆の方向に、その機体はあった。

 世界に穴が空いたような――――()()()では無いのだ。それは、この四国という世界に開いた穴だ。壁を溶かすように、丸く巨大な穴を開いて、その機体はそこにいた。

 黒――黒一色――――まるでそこには誰もいないと示すような、漆黒の機体色。共有であろう肩部や頭部は無機質に紅に光って、それが闇のような色をより一層に際立てて。

 手に持つ白い槍は知っているサイズ感を――カズ君の扱っていた長槍を――思えば控えめに見えるが、それも実物の大きさともなれば、私達のような小さな少女の体などはひとたまりもなく挽肉に出来てしまうだろう。

 

『ファフナーが、もう一機……』

『アレも、敵なの……?』

「――――結界を壊したなら、おそらく」

 

 結界が砂糖菓子のように溶かされた動揺と、対処を忙く心の焦燥。そして濃赤の機体と同型が――――カズキ君を即座に無力化した存在が、新たに現れた事実に対する小匙ばかりの絶望。

 

『アレも園子は知らないの……?』

『どうして……島の機体はみんな、味方なんじゃ……!?』

 

 そうして数秒。私達の足を数秒だけ、数々の思案が止めた。

 

 ガ――――ガガガガガガギャギャギャッッッッッッ。

 

 そんな私達の活動を再開させたのは、夏凜ちゃんの頑張る音。

 二度目になる、大きな鍔迫りの衝撃。弾ける音が響くたび、大きさが違い過ぎる二つの赤色は弾かれるように離れて、再びぶつかり合えばまたビリビリと肌を震わせて。

 

『出てきたんならやるしかないでしょ!! せめてコイツは私と千景で抑え――――いやっ!! 仕留める!!!!』

『夏凜アンタ――――っよく言った夏凜っっ!! それでこそ勇者部よ!!』

 

 敵もさることながら、夏凜ちゃんもどれほど死力を尽くしているのか。

 その気概を、誰よりも早くその手段を迷わなかった勇気を、受け取れない者はこの場にはいない。

 迷いを捨て置き、疾く全員が行動に移した。

 

「千景先輩! あっち側の敵を知っていますか!?」

『ツっ、、ヴァイ!!!!』

『千景……?』

 

 剥き出しの怒りが、思考の波を漂ってその感情の色だけを共有させる。

 かと思えば、押し込めるようにして怒りは閉じていく。

 

『…………力を、無に帰す。カズキのようなファフナー由来の力も、神樹由来の勇者の力も、例外なく無力化させる。バリアや変身自体だって解かされる。生身で影響を受ければ、生命機能すら停止しかねないでしょうね』

『はぁ!? なんてチートよそれ!! ……友奈、銀、園子、アンタ達に頼める?』

 

 樹ちゃんと私は、この場で触れずに攻撃へ移れる唯一の二人だ。この場で夏凜ちゃんの援護に努めて、カズキ君の奪還へ集中する。風先輩はむざむざツヴァイの方へ向かって、無力化でもされてしまえば敵へ退路を明け渡す羽目にもなる。

 戦力的な面を見れば、徒手空拳で戦闘を行う友奈ちゃんでは、この場での戦力にはなり辛い。攻撃の際には接触せざるを得ない銀も同様だ。

 

『…………郡くん、は』

「信じて、友奈ちゃん」

『…………うん、あっちの敵を止めてくるね!!』

 

 筆舌には尽くせない感情の羅列が、のたうち回ってクロッシングを駆け巡った。後悔の残響が大多数である心の内は、きっと大時化である事だろう。でも、後悔も反省も、謝罪も恩赦も、与えようと与えられようと未来が無くては始まらない。

 まず世界を守らなくては、些細なすれ違いすらも正せないのがこの世界なのだから。

 こんな悩みを背負わなくてはならない辺り、この世界の行き止まり様をつくづく実感する。カズキ君だって絶望の一つや二つは抱くだろう。何故自分が、自分達がこの場に立って戦うのか。勇者部のみんながそうは思ったことが無い、となどとは言い切れない。

 でも、だからと言って未来を諦めるのは、また違う。

 ――――もしかしたら、カズキ君のように神樹を絶やそうとしたのは、自分だっだかもしれない。

 そんなもしもすら、一つ掛け違えたら在り得た()()()なのだ。

 知らされなかった憤りだって当然にある。騙されていたと衝撃も受けた。それでもまだ私が守る側に立てているのは、皮肉な事にカズキ君のお陰でもあった。

 

「大丈夫よ友奈ちゃん」

『……?』

「カズキ君は……私たちのためにも、ものすごく怒っていた」

『……うん。きっとそうだよ』

「そんな優しい彼は、何としても私たちの日常に戻してあげないと、ね?」

『――うんっ!!』

 

 大赦の意向は郡カズキの処分――つまり彼の命を奪わなくては、世界は危機に晒されると、私達へ卑劣なまでに選択肢の無い天秤を押し付けていた。

 でもそれに逆らう、これ以上ないメッセージ。

 今の私は守るためにここにいる。日常を守るために戦うべく、ここにいる。そんな私達の日常は、誰一人の欠けも許してはいけないのだ。

 

 ――そのために私は今、ここにいる。

 

 ツヴァイと呼称される機体の方へ、銀と友奈ちゃんが迷いなく走り出す。そのっちは銀が抱えて、友奈ちゃんに続いている。

 そのっちは私達と同タイミングで樹海内へ召されたものの、未だに変身すらしていないが、本当に戦えるのだろうか。

 

『? ……ああ、大丈夫だよわっしー。私、すっごく強いんだから』

「……ええ、知ってる」

『だよね~。うんうん、任せてね〜……みんな――――カズくんを、お願い』

 

 主に彼女から感じ取れるのは――罪悪感、だろうか。

 その謝罪も、それを受け取って彼がどんな答えを出すのかも。全ては戦いを終えてからでないと決着はつかない。

 だから私はこう返した。

 

「一緒に謝りましょう。()()にでも」

『――――だね~!』

 

 さて――――未来はさておこう。今の対処に思考も体も注ぐ。

 でなければこの難所へ足を掛ける事すら出来ず、努力も覚悟も水泡へ帰しかねない。

 

『敵のフィールドは影響が及ぶ前に目視が可能。……躱せば大した事のない相手よ』

『そんな簡単に言いますか……』

『SDPを――その力を使う際にはツヴァイ自身が行動を制限される。だから喰らわないように気をつければ、隙は必ず訪れるの』

 

 言うが易しではある。ファフナーはそれなりに巨大であり、そこから放たれる力なんてもののスケールとてそれなりの強大さを誇ると考えてもいいはずだ。そもそもがフェストゥム=バーテックスへの対抗策なのだから、想定される規模は巨大でなければ拍子すら抜ける。

 

『当たらなければどうと言うことは……って感じですねっ!?』

『ええそうね、結城さんは賢いのね』

『えへっ、ありがとうごさいます!』

 

 賢い。賢いとは何だ。物理で全てを回避して解決するのが賢いのか。

 

『ツヴァイの対処には結城さんと……三ノ輪さんに乃木さんかしら』

『うん、途中までお願いちーちゃん』

『……ええ――――三人とも、抗わないでそのまま進みなさい』

 

 そして友奈ちゃんとそのっちと銀の三名は、嘘のように背を消した。

 すると此方へ猛速で向かう千景先輩とすれ違うように、友奈ちゃん達の姿が現れる。あれも千景先輩の持つ力なのだろうか。

 そういえば千景先輩には瞬間移動を可能にする力があった筈だが、使うそぶりもてんで見せない。

 

「千景先輩、転移で跳んで来ない理由は?」

『ツヴォルフの形をしたそのファフナーの前で、『消失』の力は使えない――使ったらダメなの』

「……そうですか」

 

 使えない理由はあったらしい。説明をしている余裕を省くが、概ねの予想もできよう。

 使えばダメ、それは使えば敵の理になるからだ。今現在敵にとっての理とは、この場から脱する事。脱するためには移動方法か、障害の排除が必須となる。そして私達は敵へ後者を選ばせた。

 前者を選ぶ事が可能になる何かがある。もしかしたら後者を助長させる結果にもなる、なんて事もあるかもしれないが。

 ――――ガッッッギギィッッッッィィィ。

 いつの間にか敵の手に握られていた電磁の剣が、十字に構えた四つの大剣を弾き、弾け飛んだ夏凜ちゃんが大剣の壁を揺さぶる。

 

『いっっったいわね……!!』

「夏凜ちゃん! 大丈夫!?」

『どうなってんのよコイツ! 斬っても斬っても元に戻るんだけど……!?』

『……ツヴォルフの力は『再生』、機体の蘇生と強力な同化能力。多分、コアを潰しても倒せない』

 

 不死身、その三文字が脳裏をよぎる。

 なるほど敵陣へ単騎で切り込むにはもってこいの力ではある。ただの不死だけでは留まらないのが、これまた厄介極まりない。

 

『カズキもそうだけど、ファフナーってのはどれもこれもぶっ飛んだ強さしてるって訳……?』

『このままじゃジリ貧です……!』

『……とにかく貴女達が死なないように努めなさい』

 

 言っている間にも、千景先輩の速力は揺らがず、最大速度を保って進み続ける。

 

『急ぎなさいよ千景……! アンタが戦う分、残ってるか知らないけ――――どッッッ!!!!』

 

 言った本人が、誰よりも決着を急くように懐へ飛び出す。

 夏凜ちゃんからは焦りの感情を感じ取りながらも、敵の行動を阻害するための狙撃へ移行した。

 電磁の刃を防ぐ――動作も無く、括った髪を一房切り落とされながら、懐へと潜り込む。肌スレスレ、半歩違えば身体を真っ二つにされていた可能性を回避して、その赤刃計六本の向かう先は――――カズキ君を握り締めた、左腕の付け根。

 

『オッッラァァッッッ!!!!!』

 

 ――――ザッッッッッッジュッッ。

 そのあからさまな斬撃を、曝け出した胴へと当ててズラすファフナー。噴き出る血液のような液体を一身に浴びて、渾身の手応えが腕に伝う。

 深く食い込む六撃も、しかし瞬時に結晶が覆って砕ければ元通り。死を掻い潜った先の必至の一撃を、まばたき一回の時間で無かったことにされてしまう。

 夏凜ちゃんは舌打ちを一つ。その華奢を握り同化して潰そうと迫る右腕だが、冷静にその指を青色が狙撃し弾く。

 して、状況は振り出しへ戻った。

 

『あ、あっぶな!! アンタ今死ぬとこだったでしょ!!』

「バリアは通じないのよ! もっと慎重になって夏凜ちゃん!」

『そんな時間は無いっっっ!!!!!!』

 

 全員へと言い聞かせるように叫び、再び赤い刃を、赤い機体と交わらせる。

 

「っ、夏凜、ちゃん……!」

 

 夏凜ちゃんが焦る理由に、私達は心当たりがある。

 咲き誇っていられる時間は有限であり、散る瞬間が刻々と迫っている。満開だからこそ、この拮抗状態は維持できる。綱渡りのような、苦しい時間稼ぎを可能としているのだ。

 

 ――なら、次は私。

 

 夏凜ちゃんの勇気を、意思を、覚悟を無駄にはさせない。

 そのために、私は犠牲となる覚悟と、生きて帰る覚悟を決める。

 友達を取り戻し、この世界を守り、日常へと帰るその覚悟。

 

 ――……三回くらいで済めばいいな。

 

 スコープの先で敵の関節部を撃ち抜き、夏凜ちゃんの援護をこなす一方で思考を広げていく。

 みんなの事をもう二度と忘れたくない。勇者部で過ごした日も、友奈ちゃんと出会った日々も。何もかもが消えて無くなってしまうと知って、改めてその恐ろしさを知る。知らないままの方が幸せだったのかもしれないと、そんな事すらふと考え込む。

 どこを奪われるのかはわからない。もしかすれば、運が悪ければもう二度と、人として生きる事も難しくなるかもしれない。そこへ上乗せして、記憶が無くなりでもすれば、今度こそ自分はどうなってしまうのだろう。

 ――そのっちも、銀も、それだけじゃなく勇者部のみんなも、友奈ちゃんも、忘れてしまったなら。

 

「カズキ君も、こんな風に……こんなにも、怖いのね」

 

 自分がいなくなる恐怖。人として生きた日常が遠のいていく悍ましさ。歩けなくなるだけではないかもしれない。光も音も、味も匂いも温度すらも、何も感じられなくなる可能性だってある。そんな静寂が支配する無味無臭の暗闇へ置き去りにされて、怯えずに居るなんて私にはきっとできない。

 そんな恐怖をただ独り抱いて、みんなの痛みを――満開の対価すら誰にも言わずに背負い。それでも戦い続けることを止めなかったなんて、それは、その心は、どれほどの勇気と覚悟があれば保てるのだろう。

 命の残量は、刻一刻と減る一方の毎日。次の日の朝には目は開かず、閉じたままかもしれない。昼にふと眠気に誘われて、そのままいなくなるかもしれない。夜の就寝を最後に、目覚める権利を永遠に剥奪されていたかもしれない。そんな可能性が現実的な距離を保って、常に隣に置き続ける。私だったら――――なんて仮定ですら追いつかないほど、考えたくもない痛みの可能性。

 でも仲間として、その一端でも理解できたなら。カズキ君の感じた痛みを、少しでも共有できたなら。

 なら失う価値もきっとある。彼の背負う痛みを、私も触れることができるかもしれないのなら、そうすることで彼を取り戻せるのなら、彼という寂しさが常に纏わりつく存在を知れたのなら。

 

「必ず貴方を連れ戻す」

 

 そんな祈りを捧げて、指先は再び引き金を弾いた。

 

 

 青色の弾丸が頭部に風穴を開ける。そして二つ目の風穴と同時――結晶が穴を塞ぎ治る。

 緑色の断糸が左手首を切り飛ばす。そしてずるりと手首は落ち――る前にすぐさま治る。

 赤色の絶刃が関節部を斬り刻み。そしてその全てを――――翡翠が片端から治していく。

 消耗するだけのイタチごっこを続けて、拮抗の時間は残り僅かとなってしまった。

 

『チッッ!! キリがっ、無いっての!!!!』

「……っ」

 

 彼女の焦りが顕著に伝わってくる。満開を遂げてから経過した時間を鑑みれば、華が散る瞬間まで残り僅かだ。

 夏凜ちゃん自身自覚もしているのだ。

 

『グッッ!?』

『夏凜!!』

『風はっ、下がってなさい!!』

 

 痛み呻く感情が、クロッシングに漂う。

 細かく小さなな傷は開戦してから加速度的に増えていく。大雑把で大きな傷もまた、焦りによる動きの鈍化によって負わされそうになっていく。

 危機を息絶え絶えの渦中で翻す安堵を、何度クロッシング内で感じたのだろう。

 

『樹ちゃん足をっっっ!!』

『っ! すぐに治って、足止めさえ……っ!? 夏――凜さん躱してぇええ!!!!!』

『ぁ、ヤバっ』

 

 地響きのみならず、空気すら揺らす響き。

 また一つ、樹海に満ちた根は崩れて瓦礫同然と化していく。

 

『夏凜! ……ちょっ夏凜!!? 踏み潰されて無いでしょうね!!!???』

『生――きてるわよ!! こっ、のぉぉお!!!!』

『――――』

 

 鉄と電磁の弾ける衝突音は、距離を離してもよく届く。

 振り向きたい。そしてあの戦いに参じて、夏凜ちゃん達の力になりたい。

 みんなと一緒なら大丈夫だった。

 でもその『みんな』の数が少なくなるだけで、私の勇気はこんなにも小さくなる。

 多勢だから気が大きくなるかどうかではない。例えば見知らぬ人が何人も集まってくれても、他ならぬ勇者部の『みんな』とは安心感の質が違う。

 底から滲む焦りは、じきに心を脅かす不安へと成り替わるだろう。

 前を先導する二人が頼りないのではない。それ以上に二つ、後ろを任せるしかない重たさ、戦線を共にした友のいない心細さ。

 

『大丈夫だよ〜ゆーゆー』

「え……?」

『ゆーゆーが不安がる方がね、むしろみんな気になっちゃうんよ』

『クロッシングって便利だしありがたいけどさ、この辺が悪いとこでもあるよな』

「……ぁ」

 

 一人の不安はみんなに伝わるのだ。

 戦う痛みを分かち合って、痛みの怖さを共有して、みんなで一緒に背負って守り合う。そのためにこの機能はなくてはならないものだ。距離だけでは語りきれない、この並んで戦う実感を再度心に得ていけば、私たちは孤独ではないのだと教えてくれている。

 そして共有されるのは、何もネガティブな感情だけじゃ無い。

 

『その調子だよゆーゆー』

「……うん。後ろはみんなを信じる。そして私は前を見る!!」

『ああ、あの敵を倒すぞ!!』

『お〜っ!』

 

 発破を掛け合って、励まし合って、手を差し伸べ合って、相互を助け続けるのが私たちの戦い。それを改めて自覚した時、それは起こった。

 目の前の延長線上の景色に、その機械仕掛けの巨人はいた。

 走ればまだまだ掛かるだろうけど、神樹へ辿り着く前には会敵できそうな距離感を私は視認している。

 

『っ!? コイツっ、形が変わっッッッ!!!??』

『空を飛びましたぁっ!?』

『武装も変化して……っ、射撃に気をつけて夏凜ちゃん!!』

 

 後方からロケットのような、ジェットが吹き出す音が聞こえた。

 でもみんなを信じて、ただ進む。

 

『千景これは!?』

『何故アマテラスに――――まさかっ!?』

 

 漆黒の機体へ目掛けて走っていた。

 光の届かない海の底の色を塗りたくったような、闇色の深淵もかくやと称せる真っ暗闇。

 まだまだ遠かった。まだ、遠かった。結城友奈と三ノ輪銀と乃木園子、その三人がその敵と思しき機体へと辿り着くには、()()()()()()

 

『っ!? 友奈、ちゃん!?!』

「――――え?」

 

 背後に親友の肉声を受け取って、頭はクエスチョンで満たされた。

 

「私、なんで」

「……ちーちゃんと、同じ、力」

『――――』

 

 残り三歩進めば、その脚先に手は届く。急いでいた全身は動きを止めて、茫然とその機体を見て。

 目に映る景色は一変し、眼前には漆黒の色彩。暗闇の色に良く映えるのは、各所で発光する紅のクリアパーツ。生体とは決定的な差を示す、各部位をつなげる白いボルト。

 ふと、人で言う胸に当たる部分に一つと、腿に当たる部分に二つ備わっていた回転体が露出して、ギュリリリと音を立て、高速で赤い残影を残して回り。

 これは良くないなと、直感した。

 

『みんな離れッ

 

 近づいていたのではない。近づかれたとも少し違う。

 飛ばされたのではない。()()()()()()()。赤い機体の姿はいつのまにか変わっていた。真っ白の全身にこれまた白い機械の翼を携えた、別の形のファフナー。きっとその機体が、私達三人を東郷さん達の元へと集わせて、勇者を一箇所に纏めて、漆黒の機体も引き寄せて。

 一網打尽とは、これが正しい使い方なのだろう。

 先ほど千景先輩が私達へ用いた、引き寄せる力。その力を使われた。その事実へ思い至った時には、もう遅い。

 赤いフィールドを伴って、赤透明な波紋がその場に広がっていく。

 嫌な気配がこれでもかと漂うその力の出所は、漆黒の機体。吐き出すように千景先輩が口にした名前、ツヴァイの左手を中心として広がっていく。

 その場にいた勇者全員が例外なく、既に射程圏内の内側に合った。

 

『何よこれっ……!』

『力が、抜けて……っ!?』

 

 勇者だった証が――――衣服が武器が、人を超えた膂力が、神樹から宿された力が、剥がれるように散っていく。

 

『満開がっ、消えていく……!!』

『変身が解け――

 

 思念での会話すら阻むように、システム自体が無に帰る。

 勇者の力を失って、風先輩の作り出した壁は光の粒になって消えていく。

 

「誰か動けるひ――――かっ、、息、っぁ」

「園子!? っ、園子!!」

 

 加護によって命を保たれていたなら、支えとなるそれを失えばどうなるのか。

 分かりやすい実例を目の前にして、混乱が更に深まる。

 

「えほっ、ごぶっ、、……、か、、くん」

「園ちゃんっ、しっかりして!」

「カズキに謝るんだろ!? 園子!!」

 

 声帯だけが動いて、呼吸をしている気配が感じられない。吸って吐いての二動作を全くさせず、胸が、肺が、人の重要な中身が仕事をしていなくて。

 その代わりを果たしていた神樹の力は、もうとっくに消えている。

 

「…… ご……め …………、」

「園ちゃん! だめっ、園ちゃんっっ!!!!」

「めん……ね……  ―― か  、 く ……ん」

「……――――その、ちゃ、ん」

 

 人として死んだ部分は、容赦なくその意味を全身へと行き渡らせようと、園ちゃんを急速に蝕んでいく。

 本当に簡単に、奇跡があるかどうなんて話にすらならず、祈る暇さえくれない。

 生の介在しない部分が、その意味で園ちゃんを蝕み尽くして、もう終わる。

 

「……園、子?」

「――――――――」

「…………おい、園子……冗談は」

「――――――――」

「……………………――――うそだ…………」

 

 そうして私達は戦場の中心で、戦うための術を剥奪された。

 敵を、とても巨大で強大な敵を二つ。

 明確な脅威を目の前にして、抵抗のために必要だった力を失ったなら。

 

「……ぁ」

 

 後はもう、踏み潰されるだけ。

 後はもう、逃げていく背中を眺めるだけ。

 後はもう、敗北するだけ。

 それだけが、私達に赦された、最後の選択肢。

 

「……」

「っ…………園子、一人には、させないからな……」

 

 漆黒の機体は何故か動かない。今なら蟻を踏み潰すようなことだって成す術がないのに、指先一つ程度の手間さえ――――ああ、そういえば千景先輩は、力を使う間は動かないと言っていた。

 助言はこうして無駄になった訳だけど。

 

「友奈ちゃん!! 銀!! そのっち!!」

 

 走り出す大親友の声。その声の方へと、白い機体が銃のような剣のような、そんな武器の矛先を向けた。

 敵からすれば、もう順番などは関係がない。千景先輩が到着するにはまだかかる。少なくとも、ただの人間を七人――――ちゃんと生きている人間を()()処分するのなんて、その手間は順番程度では変わらないほど、もうどうしようもない。

 

「東郷――――さんっ、」

 

 諦めたくはない。でも、だって、それならどうすればいいか。

 たったの一手で戦況がひっくり返された。直接ぶつかり合うのも、策を巡らせるのも、全ては勇者の力が前提にあってこそだ。

 戦う力がないのなら、立ち向かう勇気を奮えばいい。でも目の前で命が()()()。みんなとならどうにかできるだなんて幻想を、冷たく非情な現実を目の前にして、どうやって抱けばいい。

 立ち上がる方法なんて忘れてしまう。

 ――銃剣が、縦に割れた。

 郡くんの扱う槍に似た機能を持っているであろうそれは、二又に割れた剣身を銃身に、青白い光で敵を焼き尽くそうと。

 人である私達なんて、抗う事もできない威力を持っていそうだ。身体なんて形を残さず、蒸発してこの世界から消える。

 なのに心を満たしていたのは、恐怖よりも強い空白のような、淡白な絶望感。それがより強く支配していたのは、雪崩のような事実をぶつけられて、困惑していた部分もある。

 諦めたくはない。本当に、諦めずに立ち上がって、戦うことをまた選んで――――でも、手段が絶望的に見当たらない。

 

「友奈ちゃん! 銀! その――――………………その、っち……?」

「――――もう、いなくなるよ」

「ぁ…………神樹の、力が、消えたから――――」

「…………流石須美、理解が、早いっっ……な」

「そのっち……そんな…………なんで」

 

 命が、危ぶまれた瞬間は確かにあった。

 でもこうして、灯火が消えようとする瞬間を、私達は初めて見た。

『命を賭けて戦う』ことの意味を、心に突き刺さる痛みと共に初めて思い知らされた。

 

「――――……終わり、なのかしら」

「少なくとも、アタシ達には……」

「手立てはっ……何も、無いの!?」

「何もっ! ……なにも、みつからないんだ、須美……!!」

 

 動かない園ちゃんを抱きしめて、『いなくなった』と判断していいくらいには消えた園ちゃんを、滂沱と共に力を込めて、縋り付く銀ちゃん。

 けれど情を感じられない動きで――――銃剣の引き鉄に、人を模した機械の指が添えられた。

 青白い電磁が漏れて、解き放たれた熱線は、じきに私達三人もここからいなくなるのだ。

 

「…………東郷さん」

「……友奈ちゃん」

「私、謝れなかった」

 

 白い熱線は、瞬きよりも早く到達する。

 

「ごめんねって、言えなかった……!」

 

 走り辛そうにこちらへ駆けてくる夏凜ちゃんと、夏凜ちゃんを支えながら駆け寄ってくる風先輩と樹ちゃん。そんな三人の表情も、暗くて、悲しそうで、それでも出来ることを探ろうとして。

 ――――奇跡へ縋ろうと探し求める色は、みんな一緒らしかった。

 

「郡くんにっ、ごめんなさいってっっ!! それでっっ、その後にまたっ、みんなでっっ――――!!!!」

「友奈ちゃん……。っっ、口惜しいのは、私も……!」

 

 その一筋の光線を避けることが出来ない。もうこれは、覆す要素がまるでどこにも存在しない、確定ですらある未来となる。

 仮に、覆すなら、その可能性を私達は所持していた。

 

「……せめて、傍にいましょう」

「……うん、ありがとう東郷さん…………――――郡くんも、一緒が良かったのに」

「…………そうね、本当に……酷い、運命だったわね」

 

 諦めた心のまま、東郷さんと手を繋ぐ。暖かい。

 惚けたような銀ちゃんを、東郷さんと一緒に引き寄せる。暖かい。

 心を感じられない園ちゃんを、三人で抱きしめる。霧散していく暖かさを、()()()()()まで留めようと必死になって。

 勇者なら、きっとこんな苦境をモノともしない。戦士なら、耐え忍んで奮戦を続行する。()()なら、奇跡のような力をもって、味方を、ひいては世界を救済する。

 そんな時間は切れた。最後の慟哭も終わった。千景先輩も届かない。

 

「……やだよ……もっと、みんなと、一緒が良かった、のに……っ」

「文化祭も、出来なくなっちゃったね」

「園子の言う希望ってのも……見れなくなっちまった」

 

 希望は潰えた。

 なら命が終わる時間は、もうすぐに。

 叫び声が聞こえる。「逃げて」とか、「走りなさい」とか、泣き出す声すらもする。一秒よりも短い時間が経過するごとに、そんな声はより鬼気迫って届られる。

 

「……………………ありがとう、東郷さん」

「…………私も、友達でいてくれて、ありがとう……友奈ちゃん」

「うんっ! ……ずっと、私たちは」

「……私たちは、ずっと――――――――」

 

 放たれる白い一射――――その弾道は私達へ辿り着き、抗うことなく通り過ぎて、肉なんて全部を溶かして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っっっ…………?」

「……………………友奈、ちゃん」

 

 ――――救世主のような、()()なら、きっと。

 

「…………アンカー?」

 

 同化アンカー。郡カズキの用いた武装の一つ。

 用途は敵への刺突。その他、アンカーと繋がるケーブルを通して、郡カズキの力を流し込む。もしくはケーブル越しに、敵を同化し殲滅せしめる。

 郡カズキの使っていたソレらは、おおよそ直径70センチ。人の体の大きさに合わせて作られ、細かな制動で遥かに大きなフェストゥムを砕いていた。

 ならアレは――銃剣の横へ突き刺さる、ファフナーの半身分には見て取れるあのアンカーは。

 

「…………郡、くん?」

「……違う。カズキ君のアンカーと同じだけど、大きさが――」

「…………ニヒ、ト?」

 

 ファフナーが扱うためのサイズ。けれど私は、私に限らず他のみんなも、そのアンカーを直に見たことがある。

 大橋の地下深く、英雄二人の眠る『泉』と呼ばれるその場所で、英雄の駆っていた愛機。その片割れとなる、禍々しい紫紺とエメラルド。

 美しさすら浮かぶ配色を台無しするような、暴虐を表現したそのデザインだが、それすらにも不思議と魅了される力の籠った――――無の象徴。

 その背に携えた、八つの鋭い翼爪。

 どこからか、遠くから伸びたケーブルの先は分からない。けれど、更にどこかから射出されたアンカーは、一つのみならず八つが白い機体へと殺到する。

 背部のスラスターを全開に逃げ惑う白い機体。白い機体には心なんて感じられない。なのに捉われたらお終いだと、そんな判断が伝わるような必死さ。アンカーを使う存在は、間違いなく敵にとって脅威なのだ。

 

「私たちを、助けてくれた……?」

「……誰が、動かしているの……?」

 

 終わりだと決めつけて、実際に終わりの際だっただけに、僅かな希望の灯火が心に点火される。

 

「でも、私たちにはもう……戦う術が……」

「……見てることしか、できない、な」

「…………そっか」

 

 こうしている今も、紫のアンカーは白い機体を攻め立てる。追われる側の白いファフナーは、その高い機動力を上空で披露して、触れる事を何よりも嫌って、どんどんと回避の道を断たれていく。

 見ていることしか、本当に出来ないのだろうか。

 

「…………見て、るかっ……園子。……島の力がっ、アタシ達を……守って、くれてっっ……!」

 

 ――――無理難題を吹き飛ばし、不可能とされた困難を叩き壊し、不可逆の不条理を振り払う。

 

「ずっと、カッコいいって、動くところが見たいって! ……言ってただろ……っ」

「……銀」

「なのにどうしてっっ、お前は目を閉じてっっ!! 園子!!!」

「銀ちゃ――――へ?」

 

 翡翠の結晶が、樹海を埋め尽くしていたのに気がついたのは、その波が迫ってからようやくだった。

 地を這うその波は、根を伝い、地を伝い、ただのひとである風先輩たちや私たちも呑み込み。

 

「東郷さんっ!!」

「同化結晶!? なんで……っ!」

 

 漆黒のファフナーは、呑み込まれるのを嫌ったのか、足下まで迫る結晶群から跳び離れる。

 

 ――――そんな奇跡の存在を、人々は英雄と呼ぶ。

 

 結晶が砕け散る。

 いなくなったモノはいない。ひょっとしたらと敵の可能性を考えたが、それも違った。

 周りを急いで見渡して、目に付いたのは、眠たげに背伸びをする()()()()()()()

 

「――――ふわぁ〜」

「うん…………?」

「え…………?」

「へ…………?」

「んぅ〜っと、よく寝てスッキリ園子さーん、なのでした〜」

 

 呑気な顔でそう言って、欠伸一つを見せつけたのだった。

 

「はぁーーーーーっ!!!!! お前はっっ、おまっっ、お前はほんとにぃいいい!!!!!!!」

「――――そ、そのっちらしいわね」

「心配させるなあぁあああーーーーー!!!!!!!!!」

 

 そんな園ちゃんに泣きべそを見せつけて、銀ちゃんは飛び込むように抱きついた。

 

「園ちゃんっっ、良かった……!!」

「ビビらせるなよぉ!!!! そんなドッキリいらないってばぁ!!!!」

「えへ〜、死んじゃったと思った? ごめんね三人とも〜……――心をね、感じたんだ」

「心……?」

「うん。…………カズくんとよく似て、優しい心だった」

 

 慈しむように、感謝の限りを込めて、園ちゃんは言った。

 

「境界を越えかけた私の命を、()が、島の存在が引き上げてくれた」

「そっか……やっぱり島ってすごいんだな!」

 

 三百年経過した今でも、今生きている私達の助けになってくれている。

 言葉にならない頼もしさと、同じくらいの嬉しさが心にあった。

 

「散華した部分は戻せなかったようだけど、彼等も消えかけてたから……そこまでは流石に頼めないよね」

「彼等……そのっちその、助けてくれた人達を知って……まさかっ?」

「どうだろ、確信は掴めなかったけど……でも、そんなとってもすごい人達の助けもこれっきり。――――だから後は、今を生きる私たちでがんばろ〜」

 

 朗らかな声で言い放ち、二機のファフナーを睨みつけた。

 その手には、園ちゃんの端末が収められて。

 戦う意志を、今にも示そうとしていた。

 

「! ……そうか、あの黒いのが動いたから!」

「神樹様との繋がりを阻害していた力が止まったからね」

「なら私達はまだ戦える――――まだ諦めないでいられる、そうでしょう友奈ちゃん!」

「――――うん、行こう!!!!」

 

 一息で、再び勇者になる私達勇者部。

 まあ、現実的な話として、このまま意気込んでもさっきと同じ結果になる可能性は、どうしても高い。郡くんを欠いた勇者部には、主軸となる戦力が乏しい。

 

『――――時間も惜しいから諸々省くけど……みんなは、まだ、戦える?』

当然っ!!!!

『そう。……カズキのために、ありがとう』

 

 期せずしてハモる。つまり意志の統合はバッチリだ。

 助けられる力があるのなら、私たちは諦めずに戦い続けるだろう。

 友達のためなら、どこまでも。

 

『バーテックスもそろそろ入ってくる頃だし、急ぐわよ』

『あ……! そういえばバーテックス!! ……てか遅すぎじゃない?』

「今はメッチャ助かりますので置いときましょう!!」

『……ともあれ真正面からぶつかる誰がが必要、でしょ』

 

 なら、掴む手段は一つ。

 みんなの心は、同じだった。

 

『私が使う』

「ダメだよ夏凜ちゃん!!」

『そうよ夏凜ちゃん。もう一人で矢面には立たせませんっ』

『……なーんだ、友奈も東郷も同じこと考えてたのね』

『なら、きっと大丈夫ですっ! むしろ心強いくらい!!』

 

 迷いはない。その迷いが引き起こした敗北は、さっき覆ったばかりだ。

 故にこそ、踏み出すことに迷いはない。

 

『いいやここは私がっ』

「『誰が』じゃないよ夏凜ちゃん。『みんなで一緒』に――私も戦う」

 

 誰かの痛みを背負い、誰かを痛みから庇い、みんなの恐怖をみんなで払い飛ばす。

 みんなでみんなの命を守る。それが私たちの戦い方。

 

『でもっ…………ま、言っても引かないものね』

『あらまぁ! 分かってきたわねこの子も』

『ふっふっふ……調教の賜物がありましたね』

『いつの間にそんなことされてたのよ……!?』

 

 談笑の雰囲気が漏れる。

 状況は未だ切羽詰まって、なのに気分はどこか清々しく。

 

「東郷さん……怖い?」

『ええ、とっても怖いわ』

「……そうだよね」

 

 東郷さんは二年前に経験していた、らしい。

 その記憶すらも無いのは、果たしてどれほどの恐怖を持ち得ているのだろうか。そんな痛みを繰り返す行為をこれから自分の意思で選んで、それは、どんなに。きっと私なんかの想像よりも、遥かに恐ろしいはずだ。

 でも。

 

『けれど大丈夫』

 

 そう言って、私の親友は笑った。

 革張りなんて当たり前。手が震えるのはみんなが共通している。

 でも、それでも、未来を捨てずに東郷さんは笑ったのだ。

 

『みんなと一緒だもん』

「うん。……みんなでなら、乗り越えられるよね!」

 

 何度だって立ち向かう。何度だって諦めないで。

 どんなに苦しくても、どんなに辛くても。

 みんなと一緒なら、なんだってやり遂げられるその証明をここに――――!!

 

「――っ、満開!!」

 

 咲き誇る5つの華達。

 思いのままに、この瞬間のために。

 

『満開!!』

『満開!!』

 

 全てを賭けて、無限の星も霞む勇気を心に秘めて。

 今、この瞬間を生きるために。一瞬の全てに全霊を尽くして。

 

『満開!!』

『満開!!』

 

『みんなと一緒』、そんな未来を掴み取るために。

 私達は――――5色の勇気が乱れ咲く。

 

『おっしゃー!! 『みんなで一緒』の最後のピース、必ず取り戻すわよそんでもってあのイケメン面をぼっこぼこにぃー!!』

『バイオレンス!!』

「でもしょうがないよね!!」

『友奈ちゃんに同じく!!』

『異論なし!!』

 

 敵となる漆黒と白の巨人へ向かって、高く、飛び立つ。

 勇気とゆう言葉を胸の深みから叫ばせて。

 行先が闇でも、未来という光を求める。進むことをやめないと、私達は選んだんだ。

 

『讃州中学生勇者部っ! ファイトー!!!!』

おーっ!!!!

 

 彼方へと、私達は飛び立った。




 戦闘描写むっずいよぉ……Dieジェストで終わらせたい。柿の種は単に、オリ主の精神を過酷な世界でゴリゴリってさ、綺麗な鏡面になるまでヤスリがけしたかっただけなんよ。なのになんで戦場で重要人物になってんのこの二歳児はさぁ……。オリ主が追い詰められた心理描写の時はエグいくらい文字数が加速するのに……戦い始めると鈍化の呪いに蝕まれる。なんでさ。


 ともあれこの作品の仮タイトルもそろそろ替え時か。
 前々から「これだっ!」ってのを「ここだぁっ!」ってタイミングで挿げ替えたかったのんね。


消失(ロスト)』『(ウォール)』『引き寄せ(アポート)』『増幅(アクセル)』『再生(リバース)』までは分かるのに……。
『薬』に『多次元視界』にその他の読み方が訳ワカメェ……どっかに載ってっかなぁ……? それともまんま読みでええんか……??
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