郡カズキは英雄である   作:真の柿の種(偽)

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 滅相もない……安穏そのもの、暖かくてポカポカな日常回でございますれば……


牧歌的な日々を送る(優しげに香る甘い絆)

 仰向けの姿を眺めながら、ちょっと聞いてみた。

 

「千景さん、調子はどうだ」

「悪くはない。……本当よ?」

 

 携帯ゲーム機を両手に、しかしその生物は動こうという気概を感じさせはしない。むしろその逆、何が何でもその居場所からは、例え梃子が相手だろうがアザゼル型が相手だろうが、絶対に退かないという意思だけが宿っていた。

 炬燵接続式蝸牛────いわゆるコタツムリと化した千景は、負担を感じさせない声色で、格闘ゲームに没頭している。

 

「中身がどうあれ、普段通りを簡単にこなせるくらいには楽」

「……自覚症状を麻痺させて?」

「ええ。もう手遅れの段階にある私には、同化現象の緩和や治療は意味が無い」

 

 先日に引き起こされた同化現象、それによる千景の昏倒の一件は、団欒を繰り広げようとしていた矢先に差し込まれた絶望そのものだった。

 まだ大丈夫だと、まだ末期の一歩手前で、取り返せる状態なのだと誰よりも信じたいカズキが、それこそ他の誰よりも理解している。千景が倒れたその場で治療を施した張本人が、その過程で分かってしまった。

 三百年と抱え込んだ島の力、それは簡単に奮える代物でもなく、代償を支払わずに用いれる程に都合の良い力でも無い。進行は微々たるものだとしても、負債は確実に蓄積されていく、それが同化現象というもの。

 年月相応の蓄積はあった──そして郡カズキの代で負債は更に、加速度的に積み上がっていたことだろう。

 

「だったらいっそ、末路までの苦痛を麻痺させる方が、日常に支障は出ないもの」

 

 達観しながらも結末をしっかりと見据えて、自暴自棄を選ぶことなく、千景は安らかに微笑んでいた。

 終末期と医学用語では呼ばれる段階にあると、当の本人も自覚している。

 記憶にある過去とは真逆に思えて、その時の自分が、いかに他人を慮る余裕に欠けていたのかが理解できた。

 

「…………」

「もう、私だけが笑ってる」

 

 カズキでは決して真似出来ない、柔くとも、芯の強い微笑みだった。

 彼女の言は、間違いではないのだろう。実際、勇者部の活動にも顔を出せる。激しい運動となれば避けようとするが、それでも日常生活を送る上での障害は表へと出ないようになっているのだろう。

 ただし、これも本人が言っているが、決して症状が治ったなんて話では全くない。

 お茶を濁しているだけ。制限時間は依然として近い。どうしても短いその時までの猶予を伸ばせてなどいない。

 寿命という結末から目を逸らして、苦痛が少ない痩せ我慢をしやすいやうにしているだけだ。

 

「あと、何度…………いや、何でもないです」

「残り2、かしら」

 

 言い淀んだカズキに被せて、千景はスラリと答えてみせる。

 それを聞き、ホッとした自分がいて────すぐに罪悪感が、脳髄をガツンと殴ったような気がした。

 

「っご、ごめんなさい……俺、一瞬でも、っ、くそっ、……ごめんなさい」

「『間に合う』って、誰だって考えるでしょう。私も考えていたから、大丈夫」

 

 千景は仰向けの状態から、携帯ゲーム機を卓上へと置いて、カズキに向き直った。

 真っ直ぐ、瞳を逸らさず、彼女は優しさを限りなく込めた声はふわりと告げる。

 

()()()が来ても、私の心はいつもカズキの傍にいる。約束させてね」

 

 嬉しさと悲しさが迎合して、胸が内から棘に痛まされる。

 こうして、面と向かって互いの親愛を伝え合えるのは良い。悪いなんてことはない。すれ違い、対話の機会を躱し、尖った激情をぶつけるしかなかった頃からすれば大きな進歩で、大きな喜びですらある。

 けれど、やはりカズキは、溢れ出す嬉色と同じくらいに、とめどなく胸が痛いのだ。

 

「……俺は、島に帰って、それで……その先の未来を創りたいのに……でもっっ、、」

 

 ────その為に俺は、千景さんを────

 

「カズキの涙脆いところ、嫌いじゃないわよ?」

「っっ、そんなっ、こと、言ってる場合じゃないだろ……!?」

 

 薄らとした涙は滲んでくれるのに、『犠牲にする』と、先に続く言葉を表に出すのは憚られた。

 

「家族が……いっ、いなっ、、いなくなる、んだぞ……!」

「────ええ、その痛みは()()()()。……辛い思いをさせて、ごめんなさい」

 

 形にするだけで、目の前がぐらついてしまうだろう。

 口から放たれただけで、吐き気が途端に襲いくるだろう。

 考えただけでも、カズキは心が重たく汚れて、悲壮の思考に支配されて、残されるのは底無しの絶望感だけだ。

 誰かがいなくなる可能性が、それだけ怖い。

 

「迷ってくれてありがとう、でも気にしないで……なんて、カズキには無理よね」

「…………俺の願いに巻き込んでおいてこのザマだ、自分が……情けなくて、しかたない……」

「いいのよ、それはもう。……貴方の願いは既に、貴方だけのものじゃない。カズキがカズキの命の使い方を決めたように、私も私の命の使い方を決めている」

 

 穏やかな顔つきで、悲惨に思える末路を想うのは。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()、けれど、未来の始まりを創る事なら出来るかもしれない……閉塞の今を壊した果ての可能性に、私は私の命を賭けてみたい。……それに」

 

 カズキには真似できない心境だ。押し殺そうとして、どうしても漏れ出してしまうカズキとは違って、彼女は本心から、その覚悟を決めている。

 恐れは感じる。厭いも感じる。動揺とて皆無とは言い切れず、本人ですら否定しないだろうが。

 けれど彼女の決心からは、揺らぐ色味の一切が無い。

 

「『助けてくれ』ってそのたった一言が嬉しかったの。……ずっと聞きたかった、()()()()()()……それが、今の私の祝福」

「…………選ばせたことに、後悔は、させないから」

「ならそんな顔をしないで」

 

 頑ななまでの瞳はそのままに、千景はふにゃりと、ちょびっとだけぎこちなく笑った。

 

「近い未来まで、ひとときの平和は続く。貴方はそれを心の底から謳歌していないとだめ。貴方の心が曇れば、それに気づいてまた心を翳らせる子達もいるのよ」

「……ああ」

 

 みんなを思い浮かべていれば、着いて回る微笑ましき想い出たち。

 きっと千景の言葉を、今の自分は意識せずとも達することが出来るだろう。日常の中で心へ刺し込むのが、未来への暗がりではなく、過去からの光なのがその証拠。

 千景もそれをしていながら、再確認のための言葉をくれた。

 未来への兆しを創るのは、何の為か。

 ──()()を忘れるなと言ってくれている。

 そしてカズキは、素直にその意味を信じていられる。

 

「時間が少ないからこそ私達は、笑えるだけの今を目一杯に感じないと、ね」

「うん……」

 

 危機感は、拭えない。状況が焦燥を伴って、絶対的な安寧をカズキへ届けてはくれない。

 だが、それは決して、絶望と共に過ごすことしか手立てが無い訳ではない。

 平穏が限られていることを知っているから、その尊さをより強く感じていられるのだ。命の刻限が尽きる瞬間が肉薄している、そういった運命を感じているからこそ、日常の景色が美しいのだ。

 混乱と絶望ではない───未来への希望を抱いて見上げた空は、きっと蒼く瞳に映るハズだから。

 昔のみんなも、こんな風に過ごしていたのだろうか。

 ()()()()()と同じ心意気で居られているのならと、カズキはそう願った。

 

「……じゃあ、わがままを、言っても、いい……ですか?」

「私にできることならなんでも」

「今日の晩御飯は……作ってくれたりとかって、……だめかな」

「もちろん────」

 

 続く口の動きは承諾だ。この『真壁一騎』の動体視力が断言する、「もちろん」と述べた後には絶対に「いいわよ」と言おうとしていた。即答の速度で、カズキのおねだりを聞こうとしてくれてはいた。でもきっと、そのゾーンから抜け出ようとして、すぐに気がついたのだろう。

 ぬくぬくへと差し込む、冷たい空気に彼女は恐れをなしたのだ。

 その無限の引力から抜け出す選択肢を、己の意志だけでは決断し切れなかった、その結果。

 

「────もちろん、じゃんけんで決めましょう」

「……面倒くさがりめ」

 

 炬燵の中から片腕だけを掲げし黒髪のカタツムリを見ながら、呆れられるだけの今を幸せに思う。

 いずれ壊れ、必ず砕け、いつかは引き裂かれる平和の瞬間。目には見えない終末は迫っている。仮初の箱庭を、根付く信仰も、静かなる自滅への道も、全てが例外なく途絶える瞬間は一度でも来る。

 でも、きっとこの瞬間は何よりも大切な時間だった。

 自分がいなくなるその時まで、この暖かな世界を忘れることはない。

 

「……ちょっと、千景さん」

「遠見さんの眼があれば無敵ね」

「こんな事にSDPを使うのかよ……」

「影響が少ない使い方をしたから大丈夫」

 

 平和の中で、小さく争えるこの奇跡を、カズキは絶対に忘れない。

 

「そういう話じゃないだろ……まったく」

「……そう言えばカズキ、敬語が少しづつ抜けてきたわね」

「え? …………そ、そうですか?」

「あ、戻った(……口に出したのは失敗かしら)」

 

 

 

 

 神樹による加護。

 祝福として授かった、外界の敵と戦うための力。謂わば神樹の力の一部に過ぎない借り物、それがこれまでの勇者システム。

 

『大赦による開発によって完成したそれは、今となっては『神樹の力』とは言えない代物へ成り代わっています。勇者と神樹との繋がりは、かなり薄れた状態であると……神樹によって選ばれた彼女らの今は、大赦からすれば、神樹の影響下の外にあるも同じ』

 

 要因は一つ、たった一つ、されど大きな一つ。

 先に引き起こされた、郡カズキの暴走を発端とする大戦──その終わりに施された、郡カズキによる()()()()()()()()()()()

 

『かの決戦時、幾度と満開を繰り返した勇者たち──結城友奈、東郷美森、三好夏凜、犬吠埼風、犬吠埼樹。それ以前に満開を繰り返した勇者たち──乃木園子、三ノ輪銀』

 

 これは、精査された情報の共有に過ぎない。前提条件の確認でしかない。

 だが、それは何よりも大切なことだ。それを疎かにしてしまえば、すれ違う認識はやがて不和を呼び込み、遂には破滅をも引き連れてくる。それを予防する為には、徹底した現状の共有とは大切なのだ。

 

『彼女等が既に供物として捧げていた散華の部位は、神樹によって新たなパーツを造られ、その後に宛がわれる可能性がありました。これは乃木園子による未来視からの報告と、大赦の巫女たちによる見解のすり合わせからして、かなり確実性の高い可能性だったことでしょう』

 

 ──予定されていた未来を押し退け、覆した郡カズキは、喪失した存在部位を、己の存在を以て補完した。

 

『肉体の負傷を癒した『一代前の真壁一騎』ならともかく、『郡カズキ』が癒したのは散華による代償。……この違いの大きさは、理解できるかと思います』

 

 だが、勇者達の蘇生、樹海の修復とを簡単に行えるよう余裕などあの瞬間にはなかった。

 迫る肉体の刻限、深刻へと進む戦況の極致化、あの場面に余裕と一口で言い切れる暇など、誰もが持ちあわせることが出来ない極限の最中。

『パペット:Sal』からの共有。つまり、存在と虚無のザルヴァートル・モデルの命を切り取り、彼女らの一部として与えたのではないかという仮説。

 

『……その後にカズキ君本人からも聞かせてもらい、結論は出ました』

 

 ────勇者達が失った部位は今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()────

 

 

 

 

 景色が少しずつ、雪色へと置き換わっていく。

 仮初の空から、結晶の雨が優しく降り注ぐ。

 鈍色の雲は、しかし重苦しさを感じさせない、しんしんとした美しさを、四国の地へと齎してくれる祝福にも感じられる事だろう。

 

「積もったね~」

 

 白銀に染まった住宅街の真ん中で、桜色のシルエットが此方へ向けて心境を投げる。 

 

「嬉しそうだな」

 

 除雪の依頼を二件終えて、その次へと向かう道中だった。

 

「だって雪合戦に雪だるまに、かまくらも作ってー……やっぱり色々と楽しいと思うんだ!」

「そっか。……依頼を終わらせて、みんなと集まってから、だな」

「うん!」

 

 見た目だけの美しさと知っている。彼女も、勇者部の者達も、常識として、非常識な裏側を知り得ている。

 偽物の世界、取り繕った歪な世界、平穏という蓋が凄惨な真実を閉じ込めた世界、それがこの箱庭。

 それを知っているのに──知っても尚、そこでの日常の謳歌をやめないのだろう。

 

「寒さは大丈夫か?」

「手袋にマフラー、そしてたっぷりのカイロと防寒はばっちりです! カズキくんの方こそ……大丈夫? 重たくない?」

 

 牧歌を進ませ、日々を暮らし、安穏とした未来を思い描く事をやめない。

 形だけだ、壁を一枚隔てた先には、煉獄が如き灼熱の世界で埋め尽くされている。

 それでもやはり、それに意味ならあると示すように。

 

「スコップだけだぞ? 大袈裟だろ」

「でも……」

「調子自体は好調だ。……この後の雪合戦も、手は抜かないからな」

「……そっかそっか! 今年は負けないからね!!」

 

 一秒前を懐かしみ、一秒後へ思いを馳せる。

 炎獄の包みは依然と引き剥がせない。本当の空を見れずとも、今を生きるこの一瞬を無駄にはしない選択を進んでいく。

 そんな在り方が、カズキは好きだった。

 

「……ねぇ、カズキくん」

 

 ──聞きたげな顔には、つまづくことのない即答を返す。

 ちょうど昨晩目撃した珍生物を口に出して茶を濁そう。

 

「千景さんも意外と元気に……ああ、あれだ、元気にコタツムリしてるよ」

 

 悲哀と嘆きに繋がる事実は、まだ伝えるべきではないだろう。

 今はまだ、あと少し。残り短い期間だとしても、猶予はまだある。そしてカズキと千景は、末路までの過程は少しでも華やかにしたい。だから、牧歌を謳える内は、せめて。

 

「…………こたつむりの千景先輩! 写真欲しいかもー」

「今度、撮って送るよ」

 

 新雪の積もった道の上を、ゆっくりと歩いていく。

 吐いた息は白い。溶けていく風景の色は、もっと白い。

 降り注ぐ雪は、世界の音を吸い取って、普段以上の静寂を世界へと齎している。

 静かな世界を、友奈とカズキの二人で歩く。通行人の姿すら真新しく見えるほど、自分達以外の人影は珍しい。この空気感の中で、以前なら、気まずさの一つや二つも感じていただろうか。

 

「新雪を踏む感触って、ちょっと楽しいよな」

「分かるよーその気持ち。ざくざくって、こう、贅沢な感じがするよね!」

 

 談笑を交わす今を、大切に、楽しみつくすことが出来る。

 これもまた、忘れはしない思い出の一つ。

 カズキが最期の時、壮絶だろうと、静謐であろうと、今際の際に思い返すことができる柔らかな名残りとなるのだろう。

 

「あと二ヵ所だ」

「だね、冬へ負けずに張り切っていこー!!」

 

 今は、けれど、ただ。

 その後の悲しみを考えないようにして、今日もカズキは『いま』を生きる。

 そうしたいから、そうするだけだ。

 

 

「ただいま」

 

 横引きの玄関を、もはや慣れた様子で上がり込む気配を感じて、カズキは急いで出迎えに行く。

 きっと無意識だろうが、普段からカズキにはぶっきらぼうな()()がそう感じてくれた証拠だ、嬉しさを覚えないカズキはいない。自然と、その方へ向かう足も少し跳ねそうになるというもの。

 

()()()()、楠、国土、千景さん」

「ええ、ただいまカズキ。……へえ?」

 

 カズキに言われて、千景に少しの驚愕の眼差しを向けられて、微笑ましそうな笑顔を亜耶に向けられて、ようやく芽吹は己の発言を自覚したらしい。

 若干のバツが悪そうな芽吹から感じられる心の波紋は、しかしカズキに悪いとは思えない暖かみが満ちていた。少なくとも、カズキはそう信じたい。

 

「はいっ、ただいま帰りましたカズキさん」

 

 ニコニコと満面で、それでいて淑やかな印象を与える亜耶。犬だ犬だと最近のカズキはそう称されることも多いが、亜耶だって負けじと雪遊びから帰ってきた犬みたいだと、カズキは思った。

 彼女の笑顔を見ているだけで、釣られてこちらも心から朗らかになっていく。やはり友奈にも通ずるタイプかもしれない。

 

「…………れ、連絡した通り、だから」

 

 あらぬ方向を見つめながら、芽吹は言った。

 それを皮切りに、後ろからはゾロゾロと女の子達が玄関へと入ってくる

 

「お邪魔しますわ」

「……これが、郡カズキの家……」

「だっ、大丈夫? 上がり込んだ途端に砕かれちゃったり……!?」

 

 防人、それも芽吹と亜耶の戦友にして友達。持て成さない選択肢はあり得ないのだ。

 国土に付いて、洗面台へと向かう防人の子たち。そのすがら、芽吹に聞いてみる。

 

「昼飯、外で食べてきたのか?」

「まだだけど」

「そっか。……サンドイッチでも持って行こうか?」

「ん、お願い」

「……召使いか何かかしら?」

 

 失礼なことを言われたような気もしたカズキだが、芽吹とのやりとりは大体がこんなものである為か、さほど気に留めなかった。

 

「ロールプレイングゲーム、格闘ゲーム、シミレーションにシューティング……何にしようかしら」

「どれがどんなゲームなのか俺には分からないぞ。……ああ、俺達はゲームしてるから、何かあれば遠慮なく呼んでくれ」

「……何でも……焼きそばパン買ってきてとかでも……?」

「しずくさん……流石にそれはいくら何でも」

「分かった。千景さん、少し留守を頼む」

「分かっちゃう人なんだ……!?」

 

 迷うことなくカズキは即答した。

 冷蔵庫の中身は、隅から隅までを把握できている。だが我が家の現在状況で焼きそばパンを作るには、要となる炭水化物が致命的に足りないのだ。

 買い物用の手提げ袋を持って来て、一団とすれ違いに靴を履いて外に出る用意をするカズキ。

 

「む、カズキと遊べる(とき)が減ってしまう……」

「最近の千景さんって、なんか子供っぽく感じる」

「ものすごい年上なのよ?」

「知ってる」

 

 呆れながらの言葉にすら、喜色が僅かでも漏れてしまうのは見逃して欲しい。

 姉弟みたいなやりとりは、やはり────。

 

「バンズと麺だけ足りないから、買ってくる時間を貰うぞ」

「……まさか、自作のつもりですの?」

「……ごめん……冗談だった」

「? 別に遠慮しなくても良いんだけど……」

 

「冗談が通じないヤツ」みたいな目線を向けられながら、芽吹の部屋へと彼女達は向かう。

 こうして、カズキの休日、千景との郡家ゲーム大会は始まったのだった──────そして、三十分後。

 

「つ、強い……」

 

 カズキの操るアバターが、力なく宙を舞う。

 千景の操るアバターが、勝ち誇った笑みをプレイヤーへと明け渡す。

 それを尻目にスローモーションで倒れていく演出は、敗北感をカズキへと押し付けていく。ただし、ただの敗北感だけでは無いのだ。これは、この納得のいかない感じは、もっとこう理不尽に憤る感じだ。

 

「経験値の差よ、落ち込まないで」

 

 いや本当に、経験値の差はえげつないことになっていそうだ。

 とはいえ、初心者狩りで得意げな顔を見せるこの齢300超えのお姉さんには、実年齢一桁の初心者の意地で痛い目を見せたい。

 ぎゃふんと、よりにもよって彼女の一番の得意分野で凌駕してやりたくなったのだ。

 

「っ……よし────(ガード後の硬直はお互い同じ条件な筈、けど千景さんだけの硬直時間が少ない、そういうキャラを使っている訳でもない、俺との分かりやすい相違点はガード発生時の音と光、俺の時にも偶然と呼べる確率で起こっていたが、もしこれが偶発的でなく技術で起こせるシステムならタイミングを掴んでモノにするまでの試行時間は欲しい、じゃあ次のラウンドは捨てよう、その際に新たな課題も出るだろうが試合毎に課題点を潰していけばいい、反応も反射も速度自体はこっちが上、であれば合致させるべきは刹那のミクロ視点)────1フレーム単位での修正が必要だ」

「えっと、まだやるって事でいいのよね」

「もちろん。……っとその前に、お昼ご飯はサンドイッチでいいよな」

 

 防人達のも含めての昼食後──────そして、もう三十分後と、二十戦後。

 カズキの分身が画面の中で、勝利の雄たけびを響かせる。

 

「っ……っっ! ……よし! ようやく勝てた……!」

 

 達成感に満たされるカズキを他所に、歴戦なハズの千景は俯き震えて、その顔色は前髪で隠れて伺えない。

 

「……次よ、コントローラーを握りなさいカズキ」

「ガードのタイミングは完璧だった……反射の精度は千景さんよりも俺の方が上、……もし、守りの精度が攻撃の機会に直結するなら、このまま行けば……勝ち越せる……!」

「…………そうね、完璧だったわ、だから早く、いいから早く、とっととコントローラーを握りなさい」

 

 ──底冷えする声に促され、もう一時間と、五十戦後。

 

「くっ……なんだこの滅茶苦茶な動き……っ!? ……すっ、すり抜けてっ……?」

「最後の禁じ手まで使わされるだなんて。……流石はカズキ、ずば抜けた学習能力」

「これズルでしょ」

「……裏技と言ってちょうだい」

「それがズルだよ。……飲み物取って来るから、その後に再開だ」

 

 正規から逸脱したプレイングを魅せる卑劣な千景に抗するべく、今日始めたばかりのカズキの奮闘劇はまだ続く。

 そうして、もう二時間と百戦を超えた頃。

 

「っ! やった! やったぁ!! 勝った!」

「そ、そんな……始めたばかりの初心者に……!」

 

 珍しくカズキは、子供らしいおおはしゃぎをつい見せる。

 

「勝ち越したからなっ。今日の皿洗いは千景さんだからなっ」

「私のっ、三百年にも及ぶデバックプレイの研鑽がっ、プレイ時間五時間にも満たない初心者に崩された……!?」

「……暇すぎないか?」

 

 ただの勝利、いっときの勝利、いずれとも同様に語ることなかれ。

 郡カズキは、規定から道を外れたプレイングに、真っ向から正々堂々と勝ち越してみせたのだ。始めたばかりのプレイヤーとも思えない密度で、馬鹿馬鹿しくも真面目な──『真壁』の戦術勘と、『皆城』の洞察力によって、愚かしくも小賢しい細工の手腕を打ち砕いてみせた。

 これも郡カズキが英雄の後継たる証か? いやしかしこんな事に、ファフナーとしての処理速度を用いるのは下らなさすぎるのか、人智を超えて人の手には届かない領域にある力を使ってまでの勝利が甘いのかと、その問いには堂々と答えよう、「先にズルしたのあっちだろ」と。

 カズキ側の種明かし? 明かす訳がない。受け取るが定めの敗北感だ、初心者を狩らんとした心と共に、勝手に禊いでくれ。

 

「そこまでいくとゲーム好きとかって範疇を超えてる気がする」

「仕方ないじゃない……現存するタイトルは全てをクリアしたの完クリしてるの! っ、しかもずっと、金輪際新作が出ることはないよ!? ……私はもう、今ある物を骨の髄の更に髄まで遊び尽くすことでしかっ、楽しく遊べないの……」

 

 結果として行き着いた先が、デバッカーとしてのフロンティアだったらしい。長寿の使い道としては、流石にそれはどうなのかなと言いたくもなってしまうが。

 

「まあ、同情はします」

「うぅ……バグまで使ったのに負けるなんて……」

「……何があったの?」

 

 飲み物の替えを取りに来た芽吹が、胡乱気に声を掛けてくる。中断するにはちょうどいい頃合いだろうか。

 ものの見事に勝ち越し切り、当初の目標を達成せしめた。初心者その者だったカズキは、千景へと決定的な敗北感を植え付ける事に成功したようである。

 

 

 校庭の貸し切り、それは勇者部だけに許された特権──という訳でもないが。

 自分達以外に使用者のいない今は、実質的な貸し切りも同然なのだ。

 

「それ〜」

 

 抜けた声と共に投げられる、白色の球体。

 緩やかに、されど確実な精度で向かう雪玉は、しかし狙いを定めた獲物には命中しなかった。

 

「それっ」

「へぶぅっ」

 

 背後へと勢いよく振り向き、そのままのベクトルを乗せて振り抜かれるはカズキの腕。結合を緩めて作成された柔らかい雪玉は、園子の顔へと雪をぶちまけた。

 耳元を紙一重で過ぎ去っていた雪の塊に、カズキは動揺を見せることはない。いっそ平常心、敗北の可能性がすぐ傍まで迫っていたとしても、当たらないと確信しているのなら揺れる道理もなかった。

 

「や〜ら〜れ〜、ちゃった〜」

 

 園子はくるくると回りながら、芝居じみた動きで白銀の上へと倒れこんでいく。

 遠目から見る限りは怪我なども無いだろうが、念の為にとカズキは園子へと駆け寄ってみる。

 

「わ、悪い……痛くなかったか?」

「ぜ〜んぜん、むしろ気を遣いすぎっ。バシッというよりフワァーって感じで、合戦って勢いじゃなかったんよ〜」

「顔に当たる予感がしたから、咄嗟に……」

 

 脱落者へと気をやる、美徳とされる人柄が良く出ていると、それを千景が見ればしたり顔で頷くのだろう。

 ──好戦的な赤き2人が、その絶好を逃せる訳もなく。

 

「合わせなさい銀……!」

「優しい隙だらけを突く!!」

 

 敢えて固形化を避けた散弾が、夏凜の手元から撒かれ、カズキへと 目掛けて降り注がれた。雪合戦でそれはアリなのかと、範囲攻撃など許されるのかと、単発式の雪玉でなくてはレギュレーション違反ではないかと物申したくなるが、細々とした制限などそれこそ野暮。

 第一、夏凜は事あるごとに、カズキへと身体能力面で競わんとする姿勢を崩したことがない。こと運動に関しては譲れないのか、此度の合戦すら例外ではなく。

 その果ての勝利を渇望するのなら、人を通さない隙間無き面制圧、これには抗い難い有用性がある。

 尚且つ────弾幕の背後から、本命の一球が気配を隠して迫っていた。

 

「くっ、ぉっ!」

「討ったぜ!」

「今日ばかりは勝った!!」

 

 赤色コンビが喜び勇む──油断するには、まだ早いのに。

 カズキの足元が、一瞬、ほんの刹那、雪へと深度を深める。

 躱し切れない雪の量、これはもはや雨と変わらない。仮にこれらを躱したとして、姿を景色に隠した本命も避けられない。どちらかを即座に消さなければ退路もない。

 幸いだったのは、雨霰の雪散弾は、散った分だけ強度もまた脆い。

 

「ォォっっ、っっのおぉぉぉ!!」

 

 振り上げたカズキの右足が、足元を捲り上げ────雪結晶のカーテンを作り出す。

 

「んなっ!?」

「チッ、……やるじゃないの郡……!」

「それってアリなんだ?」

 

 友奈の呟きは無視だ。最初に仕掛けたのはアッチ。対処の為に酷似した手段を用いるのが罪なら、夏凜だって同罪で裁いて欲しいものだ。

 ともあれ、散弾の全てを防ぎ尽くしたカズキは、身を急速に捻って最後の本命も躱してみせ────そのまま、空中で尚も身を捻り尽くす。

 回転の最中に手で掴んだ雪が、遠心力を伴って、半自動的にカズキから射出された。

 

「! 銀!!」

「うおっとぉ!」

「へぇ? ぃっなばぅあー!?」

「お姉ちゃーん!」

 

 夏凜と銀が咄嗟に身を引いた延長線上へ、カズキの反撃は飛んでいく。──2人の背後を静かに狙っていた、我らが部長の悲鳴が聞こえたが、まあ、狡猾が行き着く成れの果てということにしよう。

 

「なんちゅー体捌き! 四国一の運動少年は伊達じゃないな!」

「次よ次、次の犠牲者は前に出て! そんで早く郡に負けなさい!」

「夏凜ちゃん、カズキくんに勝ちた過ぎて怖いよ?」

「そうでもしないとアイツには隙がないのよ!!」

 

 消耗線の様相を醸さんとする夏凜。カズキとの戦力比の計算は正確なのかもしれないが、頭に血が昇っているあまり、悪手を選ばんとしてる己には気が付いてないらしい。

 拙い夏凜の策を補うのは、やはり仲間の存在か。

 

「とはいえ……夏凜ちゃんの言にも一理あります。彼という大きな戦力へ対し、個人で向かうは愚」

「全員で掛かって、ようやくカズキくんとトントンくらいかな? ……ちょっとカズキくんが強すぎるから……うん、悪く思わないでね!」

「お姉ちゃんの……仇っ!」

「カズキのことだからリンチにはならんだろうしー、覚悟決めろよ少年ッ!」

「この際一つまみの恥は捨てる……数で押させてもらうわよ……!!」

 

 命懸けの鉄火場を潜り抜けた勇者達が、数を以ってカズキを封殺せんと迫ろうとしている。

 誰もが実戦の勘を手にしている歴戦の猛者。各々の特色を生かし、連綿とした戦略を繋いでくるのなら、さしものカズキとて旗色は悪い。

 

「そっか、うん、いいぞ」

 

 そんな不利の未来すら楽しめるのが、程よく心地良かった。

 

「余裕を見せられるのも今のうちよ、カズキ君」

「余裕ってほどでも……まあ、いいか」

「先輩っ、おかくご〜!」

 

 むんっ、と愛らしく力こぶを作って意気込みを表明する樹。

 それを見て、頃合いかと悟った。

 

「いつでも来い」

「結城友奈、いっきまーす!!」

 

 元気の溌剌とした掛け声と共に、真正面からの不意打ちが投擲された。釣られて笑ってしまいそうになる声色とは裏腹に、雪玉の勢いはエグかった。空気の摩擦で、雪玉は雪玉の形を放棄した尖り方をして飛んで来る。

 いっそ雪の棘とでも称せるそれを躱し、勇者部の雪合戦は最後の決戦へと至るのだった。

 

 

 

 ──おっと……流石だ東郷。車椅子生活で鍛えられた筋肉は森の賢者にも引けを取らな……おぁっっ? ……いきなりだな。

 ──花も恥じらう女子になんて物言いを……!

 ──森の、賢者? ……何のことだか夏凜ちゃんは分かる?。

 ──……動物、みたいな感じよ。

 

「楽しそうだねぇ〜」

 

 ──ふべぇっ!?

 ──ああっ!? 樹ちゃーん!

 ──まだまだだな、犬吠埼ッ。

 ──数の優位が削られていく……おのれ乙女の敵め……!!

 

「ねっ。……あんなに無邪気なカズキ、初めて見れた」

 

 ──その隙ッッ、捉えたわよ!!

 ──どうかなっっ。

 ──んなっ、残像だと!? 生身でどうやるんだカズキ!!

 

「ね〜、可愛いねぇ〜」

「やはり子犬系男子ネ」

 

 

 

 粉に水を加え、練って捏ねる。作業と言えば至極単純なそれだけのことだが、これが中々どうして奥が深い。

 口にした際の滑らかな口当たりに、程良い弾力のコシ。麺類に於いては、高みを目指すのが至極必然的な要素でもあるが、シンプルな要素を追い求めるが故に、求められる技術は相応に王道なのだろう。

 ──うどん作りはシンプルで奥が深い、これに尽きる。

 

「……わっ」

 

 足踏みの段階へ移行するのは意外と早く、手際の面でも悪くなかった。

 無心で足踏みを行うカズキ。思いを込めて、ガラではないが内心で『美味しくなれ』と願いながら、目指す域は平たくなるまでだ。

 

「…………おぉ」

 

 手打ちうどんを作るのは初めての試みだが、存外楽しいものだった。決定的な失敗をした場合の為のサブプランとして、最高級うどん玉も用意済みだ。抜かりなく、心ゆくまでふみふみ出来るのだ。

 うどん粉を踏む感触が、なんだかちょっとずつ癖になってきたカズキだった。

 

「………………よっ」

「楽しいの?」

 

 カウンター越しに問いが飛んできても、数秒間気にも留められなかった。言わずも伝わるこの迫真具合はどうだ。

 

「……………………まあ、それなりには」

「それなり、ね」

「個人の感性だ、どう表現するかは自由なんだ」

 

 何かしらを言いたげに、しかし夏凜はそれ以上の追求をやめてくれた。

 興味も他所に移ったのか、携帯端末の電源を入れてから、すぐさま画面を暗く閉じてしまう。どうやら時間を確認したようだが、全く同じ行動を先ほどから何度も行っている事実には気がついているのだろうか。

 

「それよりも、みんな遅いわね」

「三好が早すぎなんだろ」

「ハッ、デキる勇者は5(+25)分前行動が基本なのよ」

 

 カズキが思うに、単にこの集まりが楽しみで気が急いてしまっただけと睨んではいるが。恐らくは家に居ても手持ち無沙汰で、散歩がてら時間を潰しながら来ようとして、けれど足は勝手に喫茶楽園へと急いでいたのではなかろうか。

 

「……ふっ」

「何よその顔」

「いや、別に、特には」

 

 無論ながら口に出すような愚行は犯さない。それぐらいには、人としての機微を身に付けている自覚があるのだ。

 記憶に焼き付いている真壁一騎と皆城総士の、その、まあ、控えめに言って不器用な人との付き合い方は参考にしてはならないのだ。反面教師にするべきなのだ。存在と虚無の果てと称されし自分は、前任者の至らない面を改善出来るからこそであると信じたい。

 

「悪いけど、郡のコミュニケーション能力は会った頃とそこまで変わらないわよ」

「!?」

「口下手だし、かなり自分本位だし、大事なことは相変わらず話さないし、人のことを考え過ぎて逆に考えてないっていうか……一周回った人でなし?」

 

 碌でもない物言いに、カズキの心はズタズタだった。

 

「……っ、ぉ、俺、声に出してた……?」

「全然」

「じゃあ顔に出てたんだな……!!」

「うん」

 

 そんなこんなだが、最初は険悪だった夏凜とのやりとりも今ではこの通り。

 直近で引き起こされたカズキの暴走時にも、率先して前衛を張ってくれていたとも聞く。迷う事なく刃を突き立てて()()()とも聞いた。

 きっと彼女なら、また()()()があれば()()してくれる。それだけの信頼が互いにあるのだ。こうして軽口を交わせる関係であるのがその証拠。

 以前ならもっとよそよそしくて、敵意と遠慮だけが互いを行き交う心だったけれど。

 

「千景もいないの?」

「あの人は家で留守番。昨日は夜更かしさせ過ぎて眠そうだったから、楠達を任せてる」

「ふーん。……? ……夜更かしさせ過ぎた?」

 

 ──言葉にするのは大切なことだ。それは理解を深めるのに欠かせなくて、人と人とを繋ぐ為に必要なツールの一つ。

 

「俺も千景さんも盛り上がって、熱くなりすぎちゃったな」

「もも、盛り上がって、あ、熱く……!?」

「分かると思うけど、ゲームの話だぞ」

「…………っ、知って、たけど、何よその目は何が言いたいのよ!!」

 

 だが、口にせずとも、流れる空気から温もりを感じられるのなら、言葉は要らないのかもしれない。

 行動が示す決意は在る。無言で語る心も在る。

 ならば、言わずと感じる信頼だってきっとある。

 

「いちばん乗り〜」

「いい香りー! カズキカレーの気配がするよ!」

 

 鈴の音と共に、雰囲気を一段と柔らかくする声二つが店内に響く。目敏いならぬ鼻敏い結城友奈だった。

 

「残念だけど2番目よ」

「にぼっしーに負けたぁ〜……しょんぼり〜ん」

「ってか夏凜早くない? まだ5分前じゃなかったかしら」

 

 小躍りを披露しながら楽園へ脚を踏み入れる園子を皮切りに、他の勇者部メンツがゾロゾロと入店してくる。これで千景を除けば、全員集合といっても良いのだろう。

 

「5分前行動は常識よ」

「(あれ、30分前じゃ……)……みんな一緒に来たんだな」

「店前でちょうど偶然な。これなら集まってからでも変わらなかったな」

「いい踏みっぷりですね先輩!」

「始めたばかりだったかしら?」

「いや、東郷達が来る5分前くらいから始めたから、もう少しで終わるところだ」

 

 思い思いの気分に任せて、店内の椅子に腰かける勇者部の面々。

 されど園子は座り込むことなく、くるくると踊りながら手に持った荷物をカズキへと突き出した。

 

「ヘイヘ〜イカズくん少年! こちらとっておきなお肉だぜ〜ぃ!」

 

 上等な質の紙袋を受け取れば、確かな重たさが手には伝わる。肉の調達に手を挙げたのは確かに園子だったが、しかしかなりの量がありそうだ。今回の集まりで使い切れるかどうかが不安になってしまうくらいほどには。

 中身を覗いてみれば、脂のノリが良く、赤身と脂身のコントラストが眩しい見事な牛肉。普段は使わない上等さ加減に、そういえば園子は名実共にお嬢様だったことを思い出すカズキ。

 

「……すごいな、これ」

 

 うどん粉を踏みながら、そう呟いて園子に向き直る。

 

「それはそれはもうね〜、とっておきですから〜」

「でも使い切れないぞ」

「人数も多いし、何よりアタシが食べるから問題無しだ!」

「そっか」

 

 銀がそう言うならばと一安心していれば、キッチンへいつの間にか入り込んでいた黄色い長髪の先輩が、シンクで手を洗っていた。

 ペーパーで手を吹き終わった後には、何となしに冷蔵庫の中身と睨めっこをし始める。その辺りから彼女が何をしようとしているのかは察しがついてきた。

 

「ふーん、なるほどなるほど」

「お姉ちゃん、勝手に開けちゃだめだよ?」

「別に興味本位って訳じゃないのよ。……ふむふむ」

 

 何か興味を引くものがあったのかと思い返した瞬間、思い立ったように風は中から色々と取り出し始める。

 手に持つ具材の数々を見て、流石と内心で褒め称えた。

 

「んじゃ、薬味切っとくわネ」

「俺がやりますよ」

「いいからいいから、アンタはうどんに魂こめてなさい。……あー、何かこだわりとかあったならゴメンだけど」

「特には……いや、白ネギは流水にさらしてもらえれば」

 

 流水で洗って、水にさらしておくだけでネギ特有の辛味が薄まる。一手間だが、これをやるかやらないかで、食事の快適度はかなり違うとカズキは思うのだ。

 しかし風にとっても言わずもがなだったようで、カズキが頼み切る前には、既にその準備を始めていた。主婦経験がある者はやはり理解度というか、そういった空気感をすぐさま理解してくれる。

 

「ザルは下に、包丁も同じ位置にあります。まな板はシンク横に」

「ウチよりもいいの使ってるじゃない」

「千景さんが揃えてくれるんです」

「本人は料理したがらないのに?」

「まあ、はい」

 

 ぐうの音も出ない。彼女を知る者同士、お互いに苦笑いしか返すことも出来なくて、千景の面倒臭がり気質を否定することもままならなかった。

 

「私も手伝いたけれど……邪魔になってしまいそうね」

「うん、先輩と俺に任せて、みんなはゆっくりしてくれると嬉しい」

 

 ──ここは()()だ。

 憩いであり、つかの間の休息を提供する為の居場所。

 ゆったりとしている光景こそ、この場所が求めるモノで、カズキが過ごして欲しい在り方だ。

 

「……そうだ、犬吠埼──」

「あにー?」

「はい?」

「──後輩の方で」

 

 これが、カズキにとっての牧歌の象徴。

 戦う為に産まれたカズキにも、日常は確かに在る事の証明。

 戦う日々から休める安穏の瞬間は、彼女等とでなくては得られないという確信があるのだ。

 

「いい加減紛らわしくない? つーか距離を感じるから下の名前で呼びなさい」

「……いや、それは……」

「呼んだ方が楽ですよー」

「そんなことはないぞ犬吠埼。……ほら、名字の方が楽だ」

「えー、でもー、咄嗟の時とかの反応に困るしぃー?」

 

 ()()を作ってわざとらしく語尾を伸ばそうと、風の言葉には頷けない。毅然とした態度を取って、踏み終えたうどん粉を次なるステージへと移行させるのだ。

 

「それなら私も私もーっ! 結城じゃなくって友奈って呼んでも良いんだよ!」

「……そ、そうなのか? でも、男子が名前を呼び捨てるのって、なんか……難しいんじゃないのか?」

「友奈ちゃんの言う通り、そろそろ美森って呼んでもいい頃合いだと思うの」

「東郷……? ……いやいや、やっぱりそういうのは……」

「何? 私の名前は呼びたくないってこと?」

「三好までどうしたんだ……」

 

 麺棒でうどん粉を平たく伸ばしながらでも、頭を抱えたくなってしまう。

 カズキの有する男女間の機微は疎いらしい。カズキからすれば不服ではあるが、遠見先生からそう言われたし、国土からも注意された経験もある訳だしそうなのだろう、大いに不満ではあるが。

 だが前任者達の抱いていた情操観点からすれば、男性と女性はみだりに下の名前で呼ぶ事は無いらしい。気安く呼べるのは小さい頃から兄妹も同然で育った者同士や、それこそ恋人などの特別な関係性に限定される────と、自分の中のマカベとミナシロの記憶はそう言っている。

 

「ほらほら、呼んでみようー! ねっ、試しに一度!」

「で……でもな……」

「カズくんは呼ぶのが嫌なの?」

「嫌とかじゃない、けど……」

「じゃあ呼びましょう! 皆さん下の名前で呼び合ってるのに、呼んでないのは先輩だけですよ!」

「いつになく押しが強いな犬吠埼……!」

「樹! ()()()ですよ!」

「助けて千景さん…………!!」

 

 こうなればうどんだ──うどんは全てを解決する、これは四国でならまかり通る理屈である。

 最高品質の肉がある、であればあとは至高品質のうどんだけ。究極のうどん作り出せれば、きっと皆の意識もそっちに逸れるだろう。周りからの急かしも聞き流し、カズキは無心でうどん作りに没頭していく。今だけ自分は歴戦錬磨のうどん職人だと思いこむ。更には、これまでの前任者達の料理経験すら急速にラーニングしていく。

 目指すべきは、人類史上へ届きうる会心を────!

 

「ほら銀って呼んでみな」

「私も~! 園子でお願いね~」

「……しかたないわね。私もカズキって呼んであげるから、あんたも同じようにしなさいよ」

「(しかたないって何が? とか聞き返すのはダメだ、無我に至れ俺)………………」

 

 急げ、郡カズキ。

 

「……うどん食べ終わった後にでも、ちょっとだけ、真面目な話がしたいんだ」

「話?」

「相談というか……お願いがあるというか…………ああでも、やっぱり……」

「うんっ! 聞かせてねっ!」

「カズキからの相談なんて初めてじゃないの? ……恋バナでも何でも、勇者部総力を挙げて協力しちゃうわヨ!!」

「ありがとうございます。……でも、かなり真面目な話で────」

 

 

 ────勇者達が失った部位は今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()────

 

「……もちろん彼女等は人間です。心優しい女の子たちです。友達を助けようと、その時に出来る限りの救済を施そうとしたカズキ君も、当然ですが、優しい男の子です。……しかし『肉体が今までとは違う代物となってしまった』……この事実は、カズキ君本人も伝えあぐねているのが現状です」

 

 散華を繰り返し、存在の多くを欠いた勇者達。その空いた隙間へと流し込まれるのは、ザルヴァートルモデルが救世主たる所以の大きな力。

 

『同化現象のような……懸念点は無いのか?』

『勇者たちのエスペラントとしての素質が伸び始めています。……それ以外の影響がどうなっているのかは、今のところは……』

 

 散華からの治癒を繰り返すことで、それに伴うように彼女達の感応は上がっていく。

 

 

アレ、郡じゃないわよ……! こんな()()()()()()()を郡が出す訳ない!!

 

お前が何を()()()()、道理など通らないッ!!

 

()()────()()!!!!

 

 

 直近で起こった『郡カズキの暴走』に於いても、それ以前の戦いに於いても、あたかも心で会話するかのように、心で中身を見据えているかのように、心で全てを感じているかのように振舞う場面はいくつか存在していた。

 東郷美森が筆頭か、言語化困難な領域の知覚を徐々に可能とし始めている。

 その発端となるのは、やはり────────郡カズキなのだろう。

 

『今では勇者システムすら、カズキ君の手の中にあります。神樹や大赦の手による影響を受けないという意味では、()()()()()()()と言えるのでしょうか……』

 

 勇者システムとは最早名ばかり。神樹から勇者たちへの力の供給は既に断たれている。精霊という要素こそが据え置きでは在れど、根幹となるエネルギーの全ては郡カズキがただ一人で補っている────というのは、少し語弊があるのか。

 ともあれ、カズキの意志によって統合されるようになったといういみでは同じことだ。

 

『本来のものと全く同じのシステムを、ザルヴァートルモデルの力で再現してみせた……ということだな』

『まるでテセウスの船のようじゃないか』

 

 司令官が一言で纏めて、感心した様子の西尾の老婆が感嘆を上げる。

 無表情を意識して保つ千景が、話しを前に進ませる。

 

『力の大元が大赦からカズキに変わっただけでも、その戦術的価値は上がっているわ。それに勇者たちが行使できる力自体も上がっている』

『満開すら彼の力による再現、だったか。……散華が前提となるほどに燃費の悪い決戦機能も、ザルヴァートルモデルならば簡単に賄える、か』

『……なら、嬢ちゃん達は変身させねぇ方が良いんじゃねえのか? カズキの力を使うってんなら、カズキの寿命をあの娘らが奪う羽目になりかねないだろ』

 

 溝口が一番に思いつく懸念点を上げるも、誰よりもそれを一番に危惧する千景はそれを即座に否定した。

 

『彼女達が戦う事によるカズキの時間の問題なら、何一つない』

 

 遠見女医は、それを補足する説明をする。

 

『現勇者システムの力の根源は、カズキ君ではなく、ザインとニヒトなんです』

『? ……だから、カズキがヤバいんじゃないかって……』

『違うのよ溝口さん。『ザインとニヒトを擁したカズキ』からではなくて、泉に在るザインとニヒトのコアから供給されているの』

 

 コアからの代替。或いはそれは、二人の英雄が残した最期の回路だったのか。

 郡カズキと共に肩を並べる存在が、郡カズキの命を奪い取るなんて悲劇にはならないように。

 

『満開に必要なだけのエネルギーの補充も、端末を機体へ持って行けばそれで済む』

『勇者の嬢ちゃん達とザルヴァートルモデルが繋がってるってんなら…………機体に喰われる可能性は?』

『無い』

 

 司令官が遠見女医へ顔を向け、小楯と呼ばれるメカニックにも目を向けるが、両者共にその確信を共有できてはいない。

 それを知っても、千景はもう一度言い切って見せる。

 

『それは絶対に無い』

『……何故言い切れる』

『根拠は無い。でも、()()()()もうそれを選ばない』

 

 家族を信じる顔つきで、何度でも、何回でも。

 

『今のカズキは、存在と虚無に縛られることの無い、()()()()()()に届こうとしている』

 

 他の面々はそれを聞いて、皆一同驚愕を表さない。

 ただ、その顔は、悲痛にも近い色を伴って歪ませるのが殆どだ。()()()()()()()を思えば、悲願の成就と罪悪感の咎で苛まれるのだろう。

 

『ザインとニヒトを掌握できている。だからカズキがそう願わない限りは、あの力が人に牙を剥くことはもう無い。……少し前みたいな例外は除いてね』

『…………つまり?』

『勇者部での様子、知ってる?』

 

 そして千景は────────郡カズキと同じ末路が待ち受けている千景は、思い出して、少し笑った。

 

()()()()が出来るようになれた居場所を、あの子が自分で壊す筈が無いでしょう?』

 

 

 怒りに似ている。

 けれど、形容は、し難い。

 情の色彩は分かる。

 けれど、輪郭は、掴み難い。

 

 ──対話は、無理なのか?

 

 人の心では、一生と理解が出来ない回路。素材やら製作法やら、何から何までが違っているのだ。天上の意志を、人の意志に依って推し量ろうというのが、そも無理な話。

 人と神は、相容れない。真の意味での理解者にはなれない。

 だから人は神を敬う。敬い、未知の存在を未知のままにして置いておく。距離を縮める発想は、そうそう産まれないだろう。太陽と握手をしようとか、自殺行為を前向きには行えない。

 だから神は人を支配する。支配し、既知の範疇でのみの繁栄を許可する。人のの考えなど、理解しようとはしない。虫と人が分かり合えるのかという話に置き換えれば、納得もしやすいか。

 

 ──消すことが全てなら、いつか、互いに消えるだけだ。

 

 人が神の怒りに触れて、だから神が人を滅ぼそうとしている。此処までが、至極シンプルな話。

 だが世界の状況は、どこまでも混みあってきた。

 遠因は確かに人だ。人間が、その()()()を編み上げた。

 滅びの始まりは、神による衝撃。

 けれど滅びの加速、それはどうしても、何に於いても、どれだけの理由を探ろうと、やっぱり人間に非があった。

 

 ──悪いのは昔の人たち。否定できないよ。だから今を生きる人たちに白刃を立てるのも、分かる話だけど……でもっ。

 

 人の業は、どこまでも続く。数百と、年月を重ねるごとに、始まりにあった筈の尊厳も慈しみも薄れて、やがて人の傲慢さがどうしても前に出始める。

 命を作り、心を宿らせ、人として生まれる命を弄び、我欲が為に振り回し、生命を使い潰す。

 事情を隠し、真実を謀り、流血を免れない戦場へと向かわせて、若き世代からを使い潰す。

 数年と人の世を生きたカズキにだって、言い切れる結論はあるのだ────()()()()()()()という結論を、郡カズキは完全に否定できない。

 

 ──でも、俺達は、本当に()()なのか?

 

 偽りの箱庭。嘘の平和。虚な今。

 意味の無い毎日を繰り返し、いずれ来たる滅びは避けられない。その未来は、必ず来る。現状など、知る者が見れば、薄氷の上をどこまでも歩いて進んでいるのと同義だ。ここまで来られたのが、奇跡以外の何物でもない。

 そんな行き止まった世界から、脱却させたい友達がいるから。

 

 ──生きるのは間違いなのか? ……未来を見たいって望むことも、明日が欲しいって泣く事も、本当に許されないのか。

 

 大いなる支配など要らない。欲に満ちた箱庭の日常など要らない。その未来へ辿り着けるのなら、本当に、この命すらも要らない。

 人が、人の脚で、()ましい前進ができる()達に。

 そんな世界が、カズキは欲しい。

 

 ──……間違えても進むのが、人なんだと俺は思う。

 

 ──渇きで人は死ぬ。──飢えで人は殺す。──不和で人は堕ちる。これが人だ、その通りだった。時には硝煙で、時には刃で、時には硬い石で、己の不利益(敵対者)を叩き潰し、流れ出る血の絨毯を広げて進んでいく。

 でも、そうやって間違えても、何でも選び直して、一度選んだ間違いを認めて、新たな選択を進む勇気がある────それも、人だ。

 嘆きながら前を向く。叫びながらも道を探す。涙が邪魔をするけど拭える強さがある。

 

「あなたは────あなた達は、潔癖すぎるんだよ」

 

 譲れない何かの為、決死を誓うのも、また人の在り方。

 であれば犠牲は免れないだろう。多くの命が散っていくだろう。千景へ無理も強いるだろう。カズキの大切なモノも砕け散るかもしれない、()()()()()

 此れより始まる大きな戦いを、最後の犠牲とする為に。

 

 ──お前達の支配と滅びを、受け入れることは出来ない。

 

 みんなと騒いで、笑顔で別れた楽園からの帰り道────夜へ更けようとする夕暮れ空を見上げて、強く睨む。

 今はまだ、仮初へと向けて睨むことしかできない。でも、きっと、いつか。

 空と共に微笑み合う日は、やがて、かならず来たるだろうから。

 

「絶滅を望むのなら、最期まで抗ってみせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────險?縺?〒縺ッ縺ェ縺?°縲ゅ↑繧峨?∽サ翫??寥髮?r豎コ縺昴≧────』

 

 

 

 

 

 

 

 その声が聞こえたのは、郡カズキと、巫女の生き残りである国土亜耶だけ。

 

「は────────?」

 

 ()()()が聞こえたのは、四国中に生きる全ての命達。夕暮れの空が囲う、偽りの箱庭にして、炎避の絶壁。最後の生存領域を守護する、現時点で間違いの無い生命線。

 ガラスのように、瓦礫のように、土器が砕けるように。

 ────────────その一部が、叩き割れる音。

 それは、名実ともに、世界が砕ける音にも等しく。

 箱庭から覗ける向こう側から、()()の色彩が四国へと入り込んでいく。

 敵意に塗れた黄金の群れが、憎しみを抱えた悪辣の集いが、殺しの悦を求める最悪の敵達が。

 ()()を冠する群れを筆頭に、星座を冠する大型個体を護衛するように。

 だがその先へと、カズキは集中する。他の一切を無視できてしまえるほどに、何百何千何万何億と蠢くその奥で、他の度の存在よりも一際大きく主張する、最大級の憎悪。

 

「────────────────ああ、ここにいる」

 

 懐かしさを、カズキの知らない過去の記憶は感じていた。

 ある種の同胞、同じ役割の為の存在────────とある開発者は、可能性の扉と呼んでいた。

 

()()()()()()()()────────!!!!」

 

 同じ存在へ向けて、同じ機体(兄弟)へ向けて、ザルヴァートルモデル(郡カズキ)は『理由なき救世主』へと叫ぶ。

 訣別の決戦は唐突に、日常をぶち壊して始まった。




 寒い冬の四国も暖かく(壁外の火)な~れ~
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