「ダメ!シャミ子!」
シャミ子の家を魔法少女が強襲したあの日、私たちの街角での日々は壊れてしまった。
「シャミ子、どこ?」
魔法少女千代田桃が、もう二度と大切な人を失わないために歩き出すお話が始まる。


激重まちカドまぞく大好きなので書きました。
原作6巻までのネタバレあります。

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シャミ子が悪いんだよ、嘘。私が悪いんだよ。

「見つけたよ、シャミ子

「ふぇ、誰です!?」

 

 魔法少女千代田桃はあの桜ヶ丘からはるか遠くの小さな精神病棟で、シャミ子を抱きとめた。

 

「ごめん。ごめんねシャミ子シャミ子は悪くない何も悪くないよ」

「どうしたんです……?」

シャ、シャミ子? 私のことわかるよね。桃、千代田桃だよ!」

「私は吉田優子、シャ、シャミ子じゃないです。それじゃあ私は探してる人がいるので」

「ま、待って!」

 

 しかしあの便利な尻尾は既に無く、伸ばした手は空を切った。

 

「私が、悪いんだよね」

 

 

 ●●

 

 

 春休みに入り、シャミ子と緩い日々をあの街角で過ごしていたある日、携帯に昔仲間だった魔法少女から連絡が入った。話はシンプルで家族が重い病気になってしまいそれを治すために狩れる魔族は居ないか? という話だった。彼女は結構優しい子だったし心配しつつも病気を治せる程の魔族は知らないと返すしか無かった。そのせいで焦った彼女は、この町で最も結界の薄いシャミ子の家にたどり着いてしまった。

 

「なんで、なんで!? お母さんも良も何もしてないじゃないですか!」

「あ! フレッシュピーチ! 酷いよこんなに強力な魔族の眷属を隠してたなんて」

「あ、あなた。何を!」

 

 清子さんと良ちゃんを封印した箱のようなものを持つ彼女にミカンが掴みかかる、私は呆然としたまま立ち尽くしていた。シャミ子を抱いて。

 

「桃! 離してください! 私は、あの魔法少女を討たないといけません!!」

「……」

「桃!」

 

 不意にすり抜けたシャミ子は父の杖をハンマーのような物に変えるとあの魔法少女の頭に打ち据えた。

 

「シャミ子!? それじゃこの子死んじゃう!」

「魔族を封印するとご褒美が、貰えるんですよね?」

「シャミ子まさか!」

「メタ子! この場にいるみんなを眠らせて! そして私の魔族としての力も使って!」

「時は来た!!」

 

 私はあまりにも重い瞼を必死に持ち上げながら叫ぶ。

 

シャ、ミ子。駄目」

「桃、御先祖をよろしくお願いします。私は多分死んだりはしないけどここからはしばらくいなくなると思うので。それにご飯もちゃんと食べて、みんなで仲良くして、それでそれで」

「アァ、ァァァァ!!!」

 

 目が覚めた時には虚ろな目で封印を解いた彼女がぶつぶつと何かを呟きながら金の棒のようなものを持っていた。あれは……、シャミ子に前に言った金の割り箸だ。

 

「私は、なんてことを、あの子になんて謝れば、だめ、嫌! 嫌!!」

「まって!」

 

 桃がどれだけ制止しても、彼女は駆け出してしまった。

 そして、気が付くとそこには。

 

「シャミ子、どこ?」

 

 

 ●●

 

 

 遅れて目を覚ました清子さんにすべてを説明し頭を下げた。あの魔法少女を間接的にでも私が呼び出してしまったこと。シャミ子がどこかに消えてしまったこと。

 

「優子は優しい子です。そして優子は無茶をしてしまう子でもあります。いつかこんな日が来るかもしれないとは思っていました」

「それでも、私はこれからシャミ子のことを探したいと思います」

「どうするかはお任せします。でも、私はもう何年も前に死んでしまうはずだったあの子を少しでも長くこの腕で抱けたことを喜ぶべきなのかもしれません。良子には悲しい思いをさせますが、ここ一年の優子は今までの彼女の人生の中でも幸せそうでした。そのことにはお二人には感謝してるんです」

「桃、私もシャミ子のこと探すから。諦めないで!」

 

 それでも私は。

 

「ごめん、なさい……」

 

 

 

 ●●

 

 

 それから私は、日本中を回った。

「あの、天パで角と尻尾が生えてる小さめの女の子知りませんか?」

「うーん、わからないなぁ」

 

 しかし結果は振るわず、毎日ミカンの命令で定時連絡をするもののこの半月、全く進展は無かった。

 

「もしかして魔族としての力を失ったならシャドウミストレス優子なんて名乗らないんじゃない?」

「確かに!?」

 

 桃はスマホで行方不明者の検索を吉田優子でかけてみた。

 

「ビンゴだよ! ミカン!」

「見つかった!?」

「わからない、でも××県の△△市にいるのは分かった」

「そこから直ぐじゃない」

「明日朝一で行く、けど」

「わかってる。一旦期待させるのは酷よね」

 

 良ちゃんは姉はいつか死ぬと覚悟していたと話はしていたけど、毎晩屋根裏の小倉のところで甘えているのを知っている。

 私が憎まれないだけマシ、いや憎まれた方が良かったかもしれない。

 

 

 ●●

 

 

「ここで、最後」

 

 山奥にあるこの精神病院が最後にシャミ子が居そうな場所であった。

 

「すみません、誰かいますか?」

「はい? どうなさいました?」

 

 薄い桃色の看護服を来た女性が受付にいた。

 

「ここに人を探しに来たんですけど」

「患者さんの個人情報もありますので」

 

 難色を示す女性の所に白衣を纏った老年の男性が現れた。

 

「その子の髪色は少し明るい茶色で、背の低い女の子じゃないかね?」

「そ、そうです!」

「そうかあの子の知り合いがいたんだな」

「えっとあなたは?」

「この医院の医師さ、ここは精神病院だが治療というより療養しつつ心を休める施設のようなものなんだ」

「つまり、優子は」

「うん、彼女の心は何かに囚われてしまっている。軽めの薬など処方しても意味がなかった。これはもう病とかでは無い。まるで魔法にかかったように今を生きているんだ」

「シャミ子、なんでそんなになるまで」

 

 医師は手をパンと打つと2階を指さした。

 

「吉田さんは2階で掃除を手伝ってくれている、まず1度あってみてくれないか?」

「……わかりました」

 

 結果は散々であった。

 

 

 ●●

 

 

 私は近くの安部屋を借りて毎日シャミ子に会いに行った、学校には休学の連絡を済ませた。

 

「桃さんこんにちは」

「うん、こんにちは優子」

「今日は暑くなるって先生が言ってました! お水をちゃんと飲まなきゃダメですよ!」

「そうする」

 

 シャミ子の記憶には蓋がかかってしまったけど、シャミ子いや吉田優子というヒトのあり方は変わらない。それが何だか苦しくて私は無理な笑顔を重ねるのだった。

 

「ここは山奥だからあまり桜とか見れなさそうですよね」

「さ、桜? うん、そうかも」

「あれ? でも私なんで桜が見たいなんて思ったんだろう?」

「どうしたの? 優子」

「私最近、桃さんと喋ってると頭にモヤモヤがかかるんです」

「何か嫌なことしちゃったかな」

「ちがうんです! ちがうんです! なんというか、外れそうな蓋がくっついたままというか 」

「それは先生に聞いてみた方がいいんじゃない?」

 

 正直、少し期待してしまった。

 

「でも、私はあの人を探さなきゃいけないんです 」

「あの、人?」

「はい、私には。人生をかけてでも一緒にいたい大切な人がいた……はずなんです」

「そ、その人の話聞かせてもらえるかな?」

「いいですよ、たまに誰かに話さないと忘れちゃうかもしれない。それが怖いので」

 

 シャミ子は少し震えながら弱気な笑顔で話を始めた。

 

「その人が友達なのか、恋人なのか、はたまた旦那さんだったのかは分かりません。けど家族とはまた違う本当に大切な人。すこしズボラで私が見ていてあげないとダメになっちゃうような本当は繊細な人。うどんが好きで、結構強引。だけど誰かに頼るのが下手くそな可愛い人。どこを探しても居ない人」

 

 悲しくも見慣れてしまったシャミ子の涙が、溢れ続ける。

 

「すみません、目汁が」

「いいんだよ、それと私はそろそろ行くね?」

「今度はお昼も食べましょう! お弁当を作ります、習ったんです! 色と味を混ぜて作るといいんですよってあれ? これも誰に習ったんだろう」

「ま、またね? シャ、優子」

「はい! さようなら桃さん」

 

 私は逃げ出した。

 

「ミカン、今いい?」

「いいけど、定時連絡以外での電話は珍しいわね」

「シャミ子の記憶の蓋が外れかけてる」

「なんですって!?」

「そこに小倉いる?」

「はーい?」

「魔力を回復する何かを指定した住所に送ってくれない?」

「それは誰に、必要なのかな?」

「全部分かってるなら聞かないで」

「はーい、明後日には届くから」

「お願い、じゃあミカン。今日の定時連絡は無し、また明日」

「ちょっと! 桃! あなた、声g」

 

 電話を切る。

 

「う、ぐずっ、シャミ子。ごめん、ごめんね……」

「何がごめん、なんですか?」

シャミ子!?」

「ごめんなさい。つけてきちゃいました」

 

 そう言ってシャミ子は頭を下げる、魔族の力のない今シャミ子はこんな炎天下を歩いてきたならきっとヘロヘロのはずだ。普段も、彼女が体調を崩して会えないという日は何日かあった。

 

「優子! こんな暑い中大丈夫なの!?」

「はい、大丈夫、じゃないですけど。今はもっと大切なことがあるので」

「それって」

「その、シャミ子さんって人のことを教えてくれませんか?」

「……うん、いいよ」

 

 それから私は、シャミ子に驚いた顔をされたりびっくりされながら一緒に過ごした日々の話をした。

 

「私、魔族、お父さんは、みかん箱? 桃さんは魔法少女」

「落ち着いて、とりあえず落ち着いて」

「はい」

 

 そこでインターホンが鳴った。

 

「何か荷物ですか?」

「うん、優子に使って欲しい物が来たんだと思う」

 

 受け取って中を見る、少し昔闇堕ちする時に飲んだ黒い塊がそこには入っていた。

 

「これはなんて言うか、薬? みたいなもの」

「それ、私に飲めと?」

「結論としては、うん」

「なんか怖い!」

「優子、探してるあの人に会いたくない?」

「!」

 

 私は変身してシャミ子に薬を手渡す。

 

「この服がいました話が全部ホントって証拠、そしてその薬を飲んで欲しい理由でもある」

「わかり、ました」

 

 シャミ子は黒い固まりを口に含んだ。

 

「意外と行けます、土の味です」

「行けるんだ……」

「ん? うぅぅ、いたたたた!?」

 

 頭を抑えるシャミ子。

 

「優子、シャミ子! しっかりして!」

「なんか、おしりも痛い!? なんでっ!?」

 

 みるみるうちにシャミ子の角と尻尾が生えた。そして、痛みのあまりシャミ子は気絶してしまった。

 

 

「あれ? 私何を?」

「シャミ子!」

「桃? どうして?」

「どうして?」

「私みんなに酷いことをしました、なのになんでここまで私を探しに来てくれたんですか!?」

「それはね、シャミ子」

 

「私も、シャミ子のこと! シャミ子が私を思ってくれてるくらい大好きだからだよ!」

「桃……、寂しくさせちゃいました?」

「みーんな、シャミ子が悪いんだよ」

「はい、私が悪かったですよ」

「どれだけ、しんぱい、したか」

「桃、私をあすらから助けてくれた時桃に言ったこと覚えてますか?」

「んえ?」

 

 シャミ子は少しためるとこう言った。

 

「にこにこ笑顔になって! 桃!」

「──うん!」

 

 にっこりと、笑えているだろうか? 昨日までの作り笑顔と違う笑顔が出来ているだろうか? 

 

「最高のにこにこ笑顔です!」

「シャミ子、帰ろう? あの街角に」

「はい! 帰りましょう! 私たちのあの街に!」

 

 部屋を引き払い、病院に挨拶する。

 

「お世話になりました、あのこの角とか尻尾とかは気にしないでください」

「はは! そんなの吉田さんが元気になったならなんでもいいさ! また遊びに来てよ、何時でも待ってるから」

「また来ます!」

「それで、吉田さん。探し人には会えたかい?」

「はい、大切な宿敵が。眷属が迎えに来てくれました!」


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