昔のなんで続き未定。反応思ったより良かったので書くかもしれませんね。あらすじは二話があったら書きます。

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第1話

 

 拝啓、今を生き抜く戦士たちへ。恋が実る春と言いますが私の方はと言いますと恋愛映画が蕁麻疹ができるほどに嫌いです。何故ならあいつらが大抵行き着くハッピーエンドとやらは甘すぎるで候。しかし、ホラー映画張りのバットエンドは少々苦手ですので志し同じくする戦士たちにおすすめするナウいヤングでイケイケの上等な往き先はビターエンドを推す次第であります。例えば……。

 

「本当にそれでいいの?」

 

 ペンを進めるまだ見ぬ俺に、まるで焔のように真っ赤に染まった瞳の美女が話し掛けた。

 忠告を聞いた俺の手が、その言葉を聴いてひっかかった心を表す様に止まる。ふと、目が泳いで真っ白いカーテンのその先を見ると青い空が広がっていた。

 

 ……少し笑うといつになく真面目な顔で筆が乗った。

 

 ……ビターエンドを押す理由、例えば「クズな主人公は命を失ったが最後に見知らぬ他人一人を守った」そんな言葉だけでちょっとジーンとくるのは間違いなく俺だけではないはず。しかしここまで言っておいてなんだが、そんなナウなイケイケメンになりたいかと言われれば少し黙る。

 

 正直そんな人生はめちゃくちゃ憧れる。イケメンになりたくない、その理由を説明すると少々蛇足気味だ。

 

 当時、俺は誰かを泣かせるくらいしかできない男だった。心を病んだ母や暴力を振るう父とそれを見て泣いている弟、その状況下で俺が出来た事と言えば全部見て見ぬふりして逃げるだけだった。

 

 今でも夢に見て思い出す。わんわん泣いていた可愛い弟はあの家から自分を見捨てて一人だけで逃げ出す兄を見てどう思っていたのだろうな。

 

 今は二人とも大人になってしまったが、音信不通の時点でもう御察しだな。

 

 だから、また最初からやり直せるならビターエンドの主人公の様な渋いイケメンじゃなく、泣いている弟一人すぐに救い出せるアメリカンなスーパーヒーローになりたいよ。

 

 そしてそんな家から逃げるだけの日々だった18の頃、世界的な争いが起こった。なんでも新エネルギーが発掘され各国がそれを奪い取り合いもみくちゃにと……まるで潰れたビデオショップの棚の隅に置いてあるSFモノVHSの様なふざけた理由だ。ついぞ十年前、国家ぐるみで発展途上の国に支援していたのは何だったのかねぇ。

 

 まあそれはそれ、戦争は学歴も碌な頭も三級の資格も無い俺にとっては打って付けの働き口だったわけ。初めて人を撃った時の感想なんて判らなくなるくらい、人を撃った。撃つ例えがハンドガンでパンパン!なんてレベルじゃなくガトリングガンでべケべケべケバタバタバタとなるくらい撃ちまくった。

 

 勉強も土いじりも何をやらせても駄目だったけど生憎人を殺す才能は多少はあったらしいな。

 

 そして人を殺す方法を俺自身も積極的に学んだ。なにせ人を殺せば殺すだけ褒められたしな。小話すると人生初めて褒められたのが少年兵を打ち殺した時だ。なんでも子供を打ち殺せるのは難しい、始めは誰でも戸惑うものだからだー何て言われたが、なんのこっちゃ、こっちは生きるのに必死なんだよ。撃つも撃たないも仕方ねーだろがい。

 

 そーやって毎日気楽に人殺しやっていたら何時しか俺の目は誰も真似できない程吊り上がっていたらしい鬼の目とか言って同僚にからかわれまくった。ただ死にたくないから引き金引いてただけなのにな。

 

 そんなある日、戦争反対だとか戦の被害とか言うのをテーマにしたテレビを見たんだ。テレビを見るのは20年ぶりくらいだったかな。懐かしいなーと思った訳よ、こんな古いテーマ掲げてるテレビ遅れてるなーなんつって同僚と笑ってみてたわけですよ。

 

 ああ、テレビ如きに影響されたのは笑ってくれていいよ。だけどなそのテレビにはとんでもない者が映っていてな、普通に心に響いたね。なんせ血まみれ生傷塗れの「俺の弟たち」が何人も何十人も写っていたわけだ。もう嫌になったね。

 

 ーーーあれはそんな時だった。

 

 西暦2105年また国家間で小競り合いが起きた、その最中。よ~く覚えている。俺の指は手慣れた様にまた誰かの命が引っ掛かったスイッチを親指の腹で押した。

 

 両翼に装備されたミサイルが鼓膜を引きちぎるような音を立てて敵の戦闘機の背後に向かっていく。

 

 その刹那、俺は何故だか、あくる日の団長宜しくまるで朝方のティータイムの様に見慣れたその光景を今更ながらこの目にもう一度強く焼き付ける気になった。ちなみ俺は朝はコーヒー派なのでよくわからんが。

 

 軽く見積もられた命のスイッチを押して、派手な音を立てながら命を奪うために射出された「それ」の描く軌道は、なんとなくだが白い一筋の蜘蛛の糸のように見える。

 

 ……幼い頃に「蜘蛛の糸」という少しオトナな絵本を誰かに読み聞かせてもらった事が在った。おかしいな体だけは健康な俺の目が珍しくも霞んでいる。

 

「はは、俺疲れてる……」

 

 悪い主人公が地獄に落ちて残虐な風景を見てそこから出たいと強く願った。何の因果かそれを神様が聞き、命を奪う事ばかりだった主人公が生前に唯一助けた蜘蛛の糸を天国から降ろす。

 

 目の前に垂らされたその一筋の糸を伝って主人公は天国を目指す訳だ。不思議な事にその糸は藁よりも細く見えて人一人くらいの重さなら切れる事は無かった。主人公はそれを伝って天国を目指すがふと、天に伸びた蜘蛛糸が軋む。

 

 焦ってすぐ下を見ると気付いた、我先にと地獄の魑魅魍魎共が救いを求め糸を伝って自分のすぐ下にきている。……俺は重さで糸が切れぬよう足に縋りつく手を蹴り飛ばした。何人も何人も蹴り殴った、その時だ。

 

 神様の指の先から蜘蛛の糸がぷつりと切れた。

 

「……ああ、懐かしいなぁ」

 

 ぼーっと敵の命を奪うその爆弾が描く白い放物線をじっと見ていた。まるで朝方目覚めたばかりの羊のように。恥ずかしながら俺はこれでもスーパーエースとか呼ばれているわけだがその様子は唯の新兵だ。

 

 気付けば、緊急ブザーが幾つも鳴っている。のに、何も心に響かなかった。あのテレビを見てから、「弟たち」を見てから食べ物の味も、快楽も、何処からか沸いていた体の熱もなにも感じない。

 

 爆散するその機体をただしっかりと見ていた、ミサイルにぶち当たりばら撒かれた破片の回避運動も取らずに、まるで地獄の中で蜘蛛の糸が目の前に垂れてきたように、ぼーっと何かに取り憑かれたかのような様で。それが自分の機体にぶち当たるその時まで。

 

「糸の様な光が見える。目の前が真っ白だぁ……」

 ……ブツッ。

 

 一応、伝説のエース相馬錬、俺の最後の言葉は唯の体調不良のお間抜けな死。そう記録された訳だ。これにて閉幕! イケメンにもスーパーマンにもなれなかったけど俺は満足していたよ。

 

 ++++++++++++

 

 国連軍 白花隊 相馬錬 CNホワイトコスモス 敵機爆撃後、崩壊する敵機ノ回避運動を行わズに衝突及び墜落 MIA(戦闘中行方不明)。 

 崩壊した自機の一部残骸は海上に打ち上げられてイ、身柄は見つからズ 捜索、本日付により打ち切レリ。

 

 ++++++++++++

 

 淡々と書類にそう刻まれたその葬式の内情は、行方不明になったからと注釈されてもこじんまりとしたものだった。世話になった部下三人と上司二人と血肉を分けた弟が一人だけ。誰も涙を流さず、誰も阿吽しない。その何千と敵機を破壊した国の英雄の葬式はただ坊主の声が淡々と聞こえるだけの何も面白くも無い異常だった。

 

 

 ……私は意見する。彼の家庭環境は良いものではなかったと観測す、それは対象の人生を調べると度重なる引っ越しと借金、病魔といじめというろくでもない語録に溢れるからだ。

 

 ただそれでも彼は満足した。その事実だけは揺るがない彼の意思だと断言できる。

 

 ……この話はこの世界でよくあるつまらない一つの完結だ。それは異常でもなんにでもない。

 そこに有ったのは才のある人一人が「生まれ」という宝くじで道を歪めてしまったと言うこの世界の当たり前だ。

 

 ……ただ、そんな一つの人生に。

 

「……つっ……」

 ……きっと誰かがいたずらでもしたのだろう。

 

「……なんだ……ここ……」

 ……誰が望んでいたとしても 

 

「……うごけ……ね……」

 ……誰が望んでいなかったとしても。

 

「……くら……い……」

 ……きっと恐らく、彼はここに居たのだろうから。

 

 ―――――――――― 

 ⇒はじまり

 ―――――――――― 

 

 ……メーデーメーデ? おかしな事が起こった。なんと白い一筋の光を見ていたらそれが白い一筋の光になったのだ。そして周りは暗闇。うーんなんとも奇々怪々。俺は何を言っているんだろうな団長。

 

 朝方のティータイムって日本なら何を呑むんだろうな。緑茶か、やっぱ。

 

 ……。落ち着いて具体的に言うと、先ほどはミサイルのひり出す飛行機雲の真っ直ぐな白い線を見ていた。ら、なぜか今は暗い中で缶詰の中側から蓋を開けたような光の一筋に変わったのだ。うん、結局何言ってるのか解らんな。

 

 なんか、体は動かねーわ、暗いだわでやる気なくなってきた、このまま眠ろうか?眠っちゃうよ?

 

 ……いやまてよ、手は動いているような気がする。血の音がするのと筋肉に負荷を感じた。つまり俺は今重力を感じているんだなこれが。

 

 理解して手を目の前まで持ってくるといつも見慣れた指、手の平、手首が微かながら見える。じゃあこの手を今見えている白い光の筋に向かってそのまま伸ばしていくとどうなるか……っと。

 

 手にひんやりとしたものが当たる、撫でるように指を動かすと小生解った。恥ずかしながらこの感触は何遍も触れた事が在る。

 

「……金属か!」

 

 触った感じざらついていて、何かが手にべったりと付く。なるほどこの「壁」が錆びに塗れている事もよく解った。よく五感を研ぎ澄ませてみれば匂いも嗅いだことがある。油と燃料の渋い香り。となればここは……。

 

 先ほどよりも力を込めて壁を押す……と。

 

「おも……い、けど……うご……いた……!」

 

 きっと俺が居るのは戦闘機か何かのパーツの中だと予想する。破損した機体が流されて体がパーツの隙間にでも入り込んだのだろうと考えたわけだ。

 

「……助けてくれ! CNホワイトコスモス! 相馬錬! 抜け出せない! 聞こえるか!」

 

 重い鉄板を自重で広げながらコールする。

 

 ……返事が無い、人が居ない場所に流された可能性あり。最悪無人島ならまだいい、俺が飛んでいた辺りには今の時代希少な食人族が巣食っている島があったような気がする。もしそこに落ちたとなれば……状況は最悪だ。周囲に救いを求めるのはあきらめて一人で何とかしよう。

 

「……ふんっ!……」

 

 体力評価は何とも言えず普通だった事を思い出して、力の限り動いた個所に力を込めた。しばらく力を込めていると意外にもあっけなくどこかのファンタジー漫画の扉を開ける宜しく音を立てて光が差した。

 

「……なんとかなった……か」

 

 鉄の蓋が開かれ周囲の光景が露になるとよろよろと芋虫のように損傷したパーツから這い出る。傷一つ無かった両の足で地面に立って、その新しく切り開かれた光景をぐるっと一周見渡した後、俺はある大きな疑問と吐き気のする憎悪を抱える事になった。

 

 建物の残骸、散り散りのコンクリートから飛び出した太い針金、草も碌に生えない剥げた大地、硝煙の匂いのする太陽、火に焼けて乾いたオイルが目に差す最悪な空気。

 

 ……なぜならその光景はいつも見慣れた唯の戦場だったからだ。

 

 その光景に死んだ魚のような目で唾を吐いた。マナーが悪くて済まない。もうこの光景は二度と見たくなかったからだ。正直もうこの場所をもう一度見るくらいなら、奇麗な砂浜と海の無人島にでも漂着して干からびて死んだ方がマシと思えるくらいに、だ。

 

 しかし俺の願望を吐露した後、先に言った通り疑問を抱く事となった。

 飛行機が落ちた、周りに緩衝材になる海や木もない。直撃だ。だれもが思う一つの結論。

 

「「何故俺は生きている?」」

 

 ……すぐ後ろにはボロボロになった俺の戦闘機が残骸となって朽ちている。曇天の空とそこから漏れる少しの光、そして枯果てた戦場に俺、なんとも意味深なシチュエーションだ。ちなみに意味などない。

 

 ……どうやら、俺の地獄在住まったりティータイムはお預けらしい、地獄の空から蜘蛛の糸が降りてきたからな。ああ、せんべえ齧りたひ。

 

 

 

 

……青い空なんてこの世にはなかった。空は何時も灰色で、その辺の草木もしなびた茶色だ。きっと俺の目もこの色に染まっているんだろう、そう思う位この光景を焼き付けてきた。それと同じように手だけは血が浸み込んで鮮やかな赤色だ。守る者も無い。その先も亡い。ただ自分が死にたくないから引き金を引いた男の末路がこれだ。もし次があるなら何て望んではいけない。そんな未来の話は俺には聞かせてやる必要はない。何人殺した、何人撃った、何人見捨てた、何人の肉を貪った。その男の先の話は終焉でなければならない。

 

だから、この話はだれかの見た唯の夢なのだ。そう思ったほうが気楽に生きれる、コツの様なものだ。

 

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⇨Welcome!!

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