VERSUS 悪役令嬢   作:米ビーバー

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 ※ 思い付きで書いたものなんで短編です。長編モノにするのは―――まぁ気が向いたらで()


前編:エンディング『同じコインの表と裏』

 

 

 「これより、アンナ=フリーデン辺境伯爵令嬢の処刑を執り行う」

 

 

 

 広間にこだまするのは民衆の声。狂騒だったり悲哀だったり歓喜だったり、様々な感情がないまぜになっている。処刑されるご令嬢には熱狂的なシンパがいたし、逆に否定的なアンチもいたからまぁ、この狂騒もむべなるかな。じきにその熱狂的なシンパも頭が居なくなったことで勝手に暴走するか、或いは沈静していなくなるかになるだろう。

 

 アンナ=フリーデン辺境伯令嬢とはそういういわゆる『カリスマ』の持ち主だった。と、今なら言える。

 

 一等高い位置で処刑の場を見下ろしていた私は空を見上げて思った。

 

 

「やっとだよこの野郎」と。

 

 

 私―――正確にはこの私の『ガワ』となっている女性。イザベラ=トーレスという名前の『伯爵令嬢』である。今は王子の恋人として爵位などどうでもいい立ち位置に立っているわけだが……。

 

 この世界は―――いわゆる『とあるゲーム世界』と酷似している。過去の自分がいかにして死んで、そして生き返ってこの身体に転生したのか。今となっては思い出せない。

 

 “死に過ぎてしまったので思い出せない”からだ。

 

 

 

 *******

 

 

 私の知っているこの世界と酷似しているゲーム世界『隣り合わせの白と黒』は、『男性向け恋愛シミュレーション』である。いや、正確には『男性向け恋愛シミュレーションの皮を被った恋愛戦略シミュレーション』である。

 

 主人公は当然、今私の隣でイケメンスマイルを振りまいている王子様。フリッツ=フォン=シュトライム。ヒロインは私ことイザベラと、今処刑台でぶっ殺される5秒前なアンナの二人と、サブヒロインがぽこぽこぽこと10名ほど。

 

 このゲームは開発当初その美麗なグラフィック、♀のイラストレーター人気、CGスチルからくる期待度から爆発的な人気を生み出し、周辺グッズも売れに売れまくった。同人などの二次産業も沸きまくった。

 

 

 

 販売されてプレイした連中の『阿鼻叫喚の声』を聴くまでは。

 

 

 

曰く、「サブヒロイン攻略しようとしたら詰んだ」

 

 

曰く、「気が付いたら処刑台に乗ってた」

 

 

曰く、「9割勝利してたのに気づいたら敗北していた」

 

 

 

 

 

などなど、出るわ出るわの阿鼻叫喚で大型掲示板のスレが落ちるレベルの悲鳴を残した。

 

 

 このゲーム。ルールはいたってシンプルなゲームとなっている

 

 

【2年目の夏に王子様が襲撃を受ける】。これは確定事項

 

 

ただし王子様は死なず、襲撃犯は自害して果てる。

 

 

 このゲームは【王子様を襲撃した犯人を雇った犯人を捜す】ついでに【絆を結んだ女の子を落とすゲーム】である。

 

 

 そしてこのゲームの特徴なのだが―――【犯人はメインヒロインのどちらか】である。タイトルの「隣り合わせの白と黒」とは「ヒロインのうちどちらかは犯人(クロ)、どちらかは無罪(シロ)」という意味なのだ。

 

 

 

 

 

 そう。【どちらでも犯人たりえる】

 

 

 

 

 

 

 お判りいただけるだろうか?【どちらも犯人】なのだ。

 

 

 

 

 ―――たとえ自分に【何かを依頼した記憶がなかったとしても犯人になるのだ】

 

 

 

 

 理不尽極まりないよね。当事者になったからこそわかる(確信)

 

 

 

 ではその「犯人」たるフラグとはどうやって決定されるのか?

 

 

 

 

 ―――“証言”によって決定される。

 

 

ゲーム内の流れで言うと「主人公がどちらかのヒロインと行動を共にし、サブヒロインを攻略する」のが流れになる。もちろんサブヒロインは主人公一人でも攻略が可能だ。

 

 

  ―――「ヒロインと一緒にサブヒロインを攻略する」という項目に気づかないプレイヤーが阿鼻叫喚1号になったのだが。

 

 

 メインヒロインが主人公と一緒にサブヒロインの問題を解決することで、主人公とサブヒロインの間の好感度が上昇するのと同じように「ヒロインとサブヒロインの間の好感度」が上昇する。その上昇度が一定を越えた時「ヒロインに有利な証言」をしてくれるのだ。

 

 

―――おわかりいただけるだろうか?

 

 

 サブヒロインをメインヒロインと一緒に攻略しなかった場合、メインヒロインに対するサブヒロインの好感度は「主人公への好感度」の分『嫉妬メーター』という謎の数値により減少。

 

 

 サブヒロインの“証言”によりメインヒロインが【犯人】とされ、処刑される。

 

 

なおメインヒロインのどちらかが処刑された場合、強制的にエンドルートに入るため、それまでにサブヒロインのクリア条件を満たさなかった場合、『それまで放置していたもう一人のヒロインが正妻ヅラして隣に立っている』という謎のエンディングを迎えることになるのだ。うーん!理不尽!!

 

 

 ではサブヒロインをとっかえひっかえして“証言”を十分な量集めれば事足りるのか?

 

 

 はい。「9割証言を集めて鬱フラグをクリアしたと思ったら逆転敗訴した」という阿鼻叫喚くんに繋がります。

 

 

 

 このゲーム。「隣り合わせの白と黒」にはもう一つの意味がある。タイトル名で思い出すものがないだろうか?

 

 

 

  ―――そう、オセロだ(震え声)

 

 

 メインヒロインと王子様が一緒に行動しているとき、もう一人のヒロインもまた勝手に動いている。

 その勝手に動いたヒロインは『サブヒロインのところに向かい、サブヒロインの好感度を稼いでいく』

 

 この時、サブヒロインの下に向かったヒロインと位置が被った時には主人公(王子様)とヒロインのミニゲーム対決が発生。成功するとメインヒロインの好感度が上がり、失敗すると行動結果が『何の成果も得られませんでしたぁ!』する。

 

 ともあれ、『好感度を稼いでいたサブヒロイン』が、もしも『別のヒロインの方がより好感度を稼いだ』場合―――

 

 

 ―――“証言”がひっくり返るのだ。なお証言は虚偽の罪などないので裁判で二転三転した結果証言者から外される証人 みたいな展開はない。

 

 

サブヒロインの過半数を「自分の味方」に引き入れたうえで「それを維持」し続けなければならない。そのために「相手の動向を先読み」し、「相手の先手を打って行動を潰す」もしくは「相手が証言者として引き入れたサブヒロインを引きずり込む」必要がある。

 

 もう一度言おう。このゲームは『男性向け恋愛シミュレーションの皮を被った恋愛戦略シミュレーション』である。

 

 

 こんだけ面倒臭いBADENDルートへの分岐路を用意して置いて「時限式のイベント」をきちんと踏まないと「美麗なイベントスチルを回収できない」という。

 

 イベントスチルやイベントでのヒロインのかわいらしい姿、セリフを見たかったプレイヤーが総じてコントローラーをぶん投げるのもむべなるかなと言えよう。

 

 

 *******

 

 

 このゲーム世界に「御令嬢」としてやってきてしまった私は、まず最初に「主人公じゃねぇのかよ!」と叫んだ。

 主人公視点で世界を見ていたプレイヤーからしてみれば、「行動原理のわかんねぇ、でもサブヒロインを落とすためにはこいつが必要」という主人公の存在はかーなーりーイレギュラーだった。

 

 もう一人のヒロインに落されたサブヒロインは様子だけですぐ気づけた。のに主人公はそっちを攻略しに行ってくれない。

 

 まんべんなくサブヒロインを回ろうとする主人公を誘導するために様々な情報を仕入れ、サブヒロインの情報も仕入れ、主人公と会話してうまく誘導する。努力に努力を重ねてきた。

 何故か?

 

 

 ――――“死は終わりではない”からだ。

 

 

 

1回目、わけもわからず犯人として処断された。

 

2回目、気づいたらループしていたことに気づかず処断された。

 

3回目、サブヒロインのフラグを立てきれず処断された。

 

 

 

10回目からは「もう慣れてきた」。だが、ギロチンで首をぶっ飛ばされる感覚に慣れてはいけないのだ。

 

 こういうゲーム世界転生の大半は「クリアすれば戻れる」のがお約束だから。

 

 

だから何度も何度もループしながら、冷静に、着実に、状況を把握して、話術を学んで、イベントを確認して

 

 

 ―――そうして、やっとここまでたどり着いた。

 

 

 

 

 もう一人のヒロイン、アンナ=フリーデン。

 

恨みは―――結構ある。こいつのCPUがどんだけ高性能なのかわからんが、的確にこちらに対して嫌がらせをしてくるし、どんな状況になっても決してあきらめない。

 サブヒロインからの証言による逆転を封じたと思ったら『ひそかに隣国を手引きして証言裁判そのものをひっくり返そうとしてきた』ことすらある。

※ 隣国の王子を篭絡することで得られる別ルート。裁判で処刑が確定した直後隣国の王子が率いる軍がgdgd状態の王都にダイレクトエントリーしてすべてを薙ぎ払い、死山血河を見下ろして、飛空艇の上で愛を誓うエンディングを迎える。処刑不可避の時のヒロインの救済措置(主人公は死ぬので実質BADEND)

 

 

 隣国への通信手段を封じ、サブヒロインへの橋掛けを封じ、一本一本手足をもぎとってようやくここまでこぎつけられたのだ。

 

 

 

 「ではこれより―――処刑を開始する!!」

 

 

 

 

 中央広場に大声が響き渡り、処刑人がギロチンを繋ぐロープの上に斧を構えた。

 

「―――まさか彼女が犯人だったとは……僕はそんなに彼女に恨まれていたのだろうか?」

 

 そんな声が隣から聞こえる。隣の椅子に座って悲し気な瞳をアンナへと向けている王子に「いいえ」と答える。

 

 

 

 

 

 

 

「彼女は愛ゆえに狂い、愛ゆえに過ちを犯し、愛ゆえに今、ああしているのです。もしも、一つ間違えれば、あの場所にいたのは私だったかもしれません」

 

 

 

 

 エンディングの時のヒロインの文言を背景に、中央広場にギロチンが落ちた音が鳴り響いた。

 

 

 

 

《後編へ続く》

 

 




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