賢者の冒険   作:賢者さん

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アランの冒険14

 

 

「フローラ様!南の方向より2つの軍がこちらに向かってきているとの事!掲げている旗印は…アルキードとパプニカのものです!」

 

「どうしてこんな事に…」

 

アバンたちが大魔王と対峙している頃…地上では大魔王の言葉通り人間たちが、アルキード王国とパプニカ王国の軍勢がカール王国を目指して進んでいました。

 

これらもまたかつてアルキード王国で大魔王が行った策略と同じものだったのです。大魔王バーンとその側近であるミストバーンなどは暗黒闘気の使い手であり、そして暗黒闘気とは怒りや憎しみなど負の感情が力の源でもあります。ミストバーンが指揮する魔影軍団も実体のないモンスターが多く、配下であるシャドーなども暗黒闘気を操ることができました。

 

そのためバランの時はシャドーを使いアルキード王国のソアラ王女を狙う者たちの嫉妬心や猜疑心などといった感情を操り、暗黒闘気で増幅し方向性を示してやるだけで本人たちも気付かぬ内に都合の良いように行動を操られていたのです。そして今回はアルキードとパプニカに蔓延る憎悪や嫉妬などを、ほんの少しばかり増幅させ発散する方法を示してやったのでした。

 

当の本人たちに操られているという自覚はなく、アルキードであれば『不当に奪われた王女を取り戻すため』そしてパプニカならば『落ちた国の威信を取り戻すため』と、彼らのその行動の根底は愛国心や正義に根ざすものです。そしてそういった感情を操られ行動を起こしているのが大臣たち国の要職につく人間たちだったため、その暴走とも言える行為はたとえ国のためとはいえ他国に攻め入ることを良しとしなかった人間がいても歯止めが利かなかったのでした。

 

大魔王が地上を侵略しているのに何を人間同士で争っているんだというところでもあるのですが、世界中の皆で一致団結して大魔王に抗おうという情勢ではなかった事が魔王軍に付け入る隙を与えてしまっていたのでしょう。

 

これにはそういった事情を知らないフローラ女王が嘆くのも当然です。そしてこの2国が行動を起こした原因は負の感情を増幅されているとはいえ、両方ともアランの行動から引き起こされた事だと知ればもっと嘆くかもしれません。

 

仮にですが…アランがこうなる事をわかっていたとしてもやはりソアラ王女とバランを助けていたでしょう。

 

もしかしたら両思いのお姫様と騎士を引き裂く国なんぞ滅んでしまえと余計に暴れていたかもしれません。それは魔王ハドラーを倒した後にアバンがフローラ女王との結婚を渋っていた際、フローラ女王が治めるカール王国であろうと滅ぼそうという考えが浮かんだ事からもアランには匿うや逃げるといった真っ当な発想は思い浮かばないのかもしれません。そしてパプニカ王国のほうはマトリフが原因と言えなくもありませんが、王家の人間たちまで見ている前でたった1人で国家の面目を叩き潰したのはアランなので結局アランのせいと言えるのでしょう。

 

もちろんフローラ女王も両国の進軍の報に最初こそ驚きましたが、しかし冷静になって考えればアルキード王国やパプニカ王国が突然攻め入ってくるなど魔王軍の何かしらの策略だろうということくらいわかります。前回の戦いで魔族が直接カールの王城にやってきたにもかかわらず策略が失敗したのだから、次は更に搦手を使って攻めてきたとしても何も不思議ではありません。

 

そしてそこまで看破していてもこの状況を打破するのは難しいのです。

 

もし原因がわかっておりここにアバンがいれば破邪呪文で増幅された邪気を祓うという事もできたかもしれません。時間に余裕があったのであれば各国にマホカトールを施す事により操られるという事態を防げたかもしれません。しかし破邪呪文を使用できる唯一の勇者は大魔王との決戦に向かっているためその方法を選択することはできなかったのです。

 

ならば破邪呪文を使える者を増やせばいいのかというとそう簡単にいかない事情もありました。破邪呪文自体がカール王国にある破邪の洞窟にて習得できるものであり、人間の神が残した遺産である破邪の洞窟をある程度踏破できるだけの実力が必要になってしまうからです。

 

そしてその破邪の洞窟を地下15階、地下25階と踏破することによって初めて破邪呪文を契約するというところに漕ぎ着けることができるのでした。しかしアバンでさえ地下25階で契約できるミナカトールは契約できていません。

 

ただこれは周囲のモンスターが次々と湧いてくる状況のため、ミナカトールを契約するために集中することができなかったことが原因です。もしかしたら破邪呪文というものは1種類しか契約することができないという事も考えられますが、そんな制限がないのであればアバンが複数人で破邪の洞窟に挑んでいれば周囲の警戒を仲間に任せてミナカトールを契約できたことでしょう。

 

何が正解なのかはわかりませんし人間の神はミナカトールを契約させる気があるのかと思うような話ですが、やはり破邪の洞窟というのは「人間たちが協力してこれくらい乗り越えることができなければミナカトールは契約してやらん」という神が用意した高きハードルなのでしょう。もしかしたら魔族や竜に対して身体能力が種族的に劣る人間たちに『1人では不可能な事もあるよ。協力して仲間に頼りなさい』という無言のメッセージなのかもしれません。

 

アランがこれを知っていれば喜々として一緒に行っていたかもしれませんが、アバンが破邪の洞窟に挑戦していた頃は魔導図書館にいたため同行することは叶わなかったのでした。

 

そのような過酷なダンジョンにカール王国が魔王軍対策として他国に対して破邪の洞窟踏破を勧めたとしても、各国は自国の精鋭や破邪呪文を契約出来得る選りすぐりの人物を派遣しないといけないという問題もあったのです。そしてそんな有用な魔法だとそこまで周知されていない現在において破邪呪文を使用することができるのはアバンのみであり、残されたフローラ女王たちカール王国の面々は何とかしてこの状況を打破しないといけない状態だったのです。

 

勿論アルキード王国もパプニカ王国もその国が持つ全戦力が投入されているわけではないのですが、賢者アランを良く思っていない人間たちというのは一定数存在していました。そこに負の感情を増幅され伝播していくことでアラン個人への恨みがカール王国への恨みへとすり替わっていったのです。

 

このままいけばカール王国とアルキード・パプニカの2国との戦いは避けられません。フローラ女王たちだって国家間での人間同士の戦いなど経験した事はありませんし、何よりも「今はそれどころじゃない」というのが本音でした。世界の危機に他国に対して戦いを仕掛けるなど愚行もいいところなのですが、暗黒闘気に対抗できるような人間たちが国の要職の中にいなかったため魔王軍にとっては非常に利用し易い状況だったのでしょう。

 

「フローラ様!アルキードとパプニカの動きを受け、リンガイアにも動きがあったとの事です!」

 

「リンガイアまで……」

 

更に国境を警備していた兵士から追加で齎された情報は決して良いと思えるものではありませんでした。なんとリンガイア王国でも動きがあり、相当数の人間たちがここカール王国に向かって来ているということです。

 

「フローラ殿、それらは私が抑えて来よう」

 

本来は人間同士の争いなど竜の騎士が関わるものではありません。しかしこの場には愛する妻と子がおり、そこに攻めて来ている者たちがいる以上戦わない選択肢などありませんでした。更にここには長い時間を共に過ごし、大魔王を倒さんと決戦の地に向かっている仲間たちの大切な者もいるのです。

 

「バランさん、彼らは恐らく魔王軍によって扇動されているか操られているのでしょう。この状況で戦うのは相手の思うつぼとなってしまいます」

 

「心配は無用だ。こういう時にどうすれば良いのかはアランから学んだのでな」

 

「それは本当に大丈夫なのかしら…?」

 

フローラ女王の心配を他所に、不敵に笑いしっかりと対策を得ているというバラン。しかしフローラ女王はアランから学んだというその一点において不安を隠せません。そんなフローラ女王の不安は見事に的中することになり、しかし事態はそんな不安とは違ったフローラ女王が考えもしない方向へと向かっていくのでした。

 

 

……

………

 

 

カール王城でバランがこちらに向かってきているパプニカ・アルキード軍のもとへ向かおうとしている頃、リンガイア軍はそのパプニカ・アルキード軍と相対していたのです。更にそのリンガイア軍の先頭に立つのはなんと猛将として知られているバウスン将軍だったのでした。

 

「貴殿らは軍を率いてどちらに向かわれるのか?」

 

「リンガイアが邪魔をしないでもらいたい!我らはカールに奪われたものを取り返しに行くのだ!」

 

先頭に立つバウスン将軍の問いかけに答えはするものの、邪魔をするのであれば力ずくで押し通るとばかりに戦意を昂ぶらせるパプニカ・アルキードの面々…そこにはなんとキラーマシンと呼ばれる魔王が勇者を殺すために作り上げた殺人機械すらも姿を見せていました。まさに勇者たちが居を構えるカール王国に攻め入るには相応しいと言わんばかりです。

 

しかし当然の事ながらバウスン将軍はその程度で気後れすることはありません。何しろバウスン将軍含めたリンガイア軍はカール王国の援軍としてこの場に現れたのですから……

 

元々リンガイア王国は魔王軍に総攻撃を受けていたカール王国の援軍として馳せ参じる予定だったのです。しかし思ったよりも参加したいという者たちが多く、そのため自国の復興や守護か援軍かで人員を振り分けるのに時間がかかってしまったのでした。何せリンガイア王国ではアランの起こした行動によってカール王国の評価が今までとは一変してしまっているのです。

 

魔王軍の超竜軍団によって劣勢に立たされていたリンガイア王国……そこに援軍として現れたのは魔王すら倒した賢者でした。その賢者は襲いかかるドラゴンの軍団を返り討ちにし、更には勇敢に戦った末に無念の死を遂げた将軍の息子を蘇らせてみせたのです。それらは誰にも真似することのできないまさに奇跡の御業でした。

 

そしてそれらをさも簡単な事だと言わんばかりに行ったその賢者は「すべてはフローラ様の思し召し」であると皆に告げたのです。その上で「みんなもカールと仲良くすると良い事あるよ!」とまるでフローラ教に入れば力が手に入ると誤解を招くような事まで言っていたのです。

 

それによって現在リンガイア王国では空前のフローラ様旋風が吹き荒れており、特にそれらの奇跡を目の当たりにした騎士団や兵士たちには顕著だったのでした。アランはリンガイアへ行った時にドラゴンたちを倒すところを兵士たちにも普通に見られており、バウスン将軍の息子ノヴァくんが生き返っていることも目撃者である将軍本人から聞かされて、更に生きて動いているノヴァくん本人を見て知っています。

 

そして更にカール王国が魔王軍の総攻撃を受け、城よりも巨大な質量を持ったゴーレムすらもがカール王国を滅ぼさんと向かっていたことを知りました。そんな絶望の戦いと呼べるような激戦すらも跳ね除けたことで「やはりカール王国は奇跡を体現する国だったんだ」と思われているのですが、これは戦果が戦果なので仕方ないのかもしれません。

 

そういった状況もさることながら、一方で実はフローラ女王にもその原因の一端はあったのです。

 

現在のフローラ女王はカール王国を滅ぼされていませんし、魔王軍に抗う覚悟の表れとして腰あたりまであった髪を切り肩下までの長さにして後ろで纏めてもいません。美しい長い髪のままで女王としてのカリスマを備え、そこに勇者アバンと結婚することで子を得て溢れる母性まで備えてしまったのです。国家間のやり取りの中で使者からその美しさを讃えられたりすることもあり、そこに各国で流れるフローラ女王の噂話に合わせてアランの軽はずみな言動によってリンガイア王国内では聖女フローラ様が誕生していたのでした。

 

そんな国が魔王軍に攻められたと思ったら逆に返り討ちにしたと聞き更に尊敬を強めていたら、今度はなぜかアルキード王国とパプニカ王国がカール王国へと向かっているという情報が入ったのです。そのため何やらきな臭い思いを感じたバウスン将軍はひとまず事情を聞こうと両国の間に入る事にしたのでした。

 

「これはどういう状況だ…?」

 

にらみ合いの様相を呈していた両軍の間に降り立ったのは、策があるからとトベルーラでカール王城から現れたバランでした。バランはひとまずカールに背を向ける形でアルキード・パプニカ軍の前に立ち塞がっていたリンガイアのほうへと向かい名乗りを上げ、責任者と話をしようとしました。

 

「おお、貴殿が愛の騎士バラン殿ですね。話はアラン殿からお聞きしております」

 

「愛…?アランは一体何を言ったのだ…」

 

バランがカール王国からの使者だと知り、そしてその名を聞いたバウスン将軍は自らも名乗ってバランの事はアランから聞いていると語りました。その内容は『平和を守る騎士がお姫様と恋に落ち、家族のために生きる愛の騎士となった』というものでした。何も間違った事は言っていないのですが、何かが間違っている気がするバラン…ひとまずそれは置いておくとしてまずは現状をどうにかするのが先決だと思い直します。

 

何よりもアルキード王国が攻めてきているという事はソアラ王女も当然知っており、そしてそれを聞いて心を痛めないはずがありません。王女としての、王族としての責務を放り出して国を出てきてしまったのは事実なので、母国に対して申し訳ない気持ちなどは常にソアラ王女の中にありました。そんなソアラ王女の心の安寧のためにもこの件を早期に解決しておきたいという気持ちがバランの中にもあったのです。以前のカール王国に来る前のバランであれば徒に人間を傷つけるわけにもいかず、もしかしたら降伏して自身の命と引き換えにしてでも妻と子の助命を請うたかもしれません。

 

しかし今のバランは違います。

 

かつてアランがアルキード王国に訪れた際に、どうやってソアラ王女の事を認めさせ諦めさせたのかを本人に聞いていたのです。その時アランは言っていました…「人には何かを譲れない時が必ずある。そういう時は自分の覚悟を、持てる力を見せる事で案外簡単に解決したりするもんさ」と。

 

ちなみに格好良く言っているようですが、実際にやったのは「ソアラ王女が欲しければ俺を倒してみろ」という力押しの脅迫です。その助言の場にアバンたちが居合わせていればきっと否定して訂正してくれたでしょうが、しかしバランはカール王国にやってきて既に10年を超える年月を家族や友人たちと過ごしてきています。その中でアバンたちから学ぶことも多かったのですが、実はアランからも色々とバランは学んでいました。

 

ディーノくんがまだ赤ん坊だったころには寝かしつけるという行為が難しく妻のソアラ王女から呆れられたりしていた新米パパのバランでしたが、そこを通りかかって助けてくれたのもアランなのです。その方法は「なかなか寝てくれない?ラリホー使うといいよ」というお母さんたちにバレたらきっと烈火の如く怒られるであろう手段だったのですが、育児の経験など皆無のバランはそれを実行しソアラ王女から「あら、ディーノもパパの腕の中で安心して寝てるのね」とラリホーによる寝かしつけを決行した結果お褒めの言葉を頂戴してやって良かったと喜んでいたりもしました。

 

そんな合っているのか間違っているのかわからないまでも少しずつ人の生活について学びながら友人関係を構築していったアランの言葉ですし、アルキード王国にて実際にやった経験談として聞いたのだから大丈夫だろうとバランもそれを信じて真似てみようと思ったのです。

 

「私も今や安易にソアラを、ディーノを危険に晒すわけにはいかん……ギガデイン!!」

 

その結果バランは示してしまったのです……アルキード・パプニカの両軍の前に立ち塞がり、自身が使う稲妻の上級呪文により豪雷の雨を降らせるという事でその覚悟を示してしまったのです。

 

これにはアルキード・パプニカの兵士だけではなくリンガイア軍も驚きました。しかしリンガイアは友軍であるため、そして1人で戦況を変える事のできる人物をすでに知っていたためそれ以上の感想はなくむしろ尊敬の念が深まる程度です。

 

しかしアルキード・パプニカのほうは違います。

 

元々両国の大臣たちが突然豹変したように「王女を取り返すには今しかない!憎きカールへ攻め入り囚われの王女を救い出すのだ!」「我らの国の面目を傷つけ…更に国王たちが見ている前で、まるでいつでも攻め滅ぼせると言わんばかりの振る舞いには力を持って見せねばならん!これは我がパプニカの威信を懸けた戦いである!」と暴走したのが原因なのです。

 

暗黒闘気による負の感情の増幅によって、まさに泥沼の戦いになろうとしていた状況を変えたのは伝説の騎士の呪文でした。嫉妬や妬みといった負の感情によってここまで行動していましたが、目の前に落とされた稲妻の雨はもう1つの負の感情を大きく増幅させたのです。

 

それは…『恐怖』でした。

 

誰にも使用できない伝説の呪文とされるギガデインを間近に見せられ、恐ろしさを自覚してしまえばもう自身の内から溢れ出るのは恐怖しかありません。そしてその恐怖が増幅してしまえば自制することなく、まさに混乱といった状況に陥ってしまったのです。兵士たちは奇声を上げたり逃げ回ったりと先ほどとは人が変わったかのようになってしまい、もはや戦いなど頭にないと思うほどの状況でした。

 

「ひぃぃ…行けバロン!そのキラーマシンであやつを倒すのだ!」

 

しかしその混乱の中でも1人の司祭がキラーマシンにバラン攻撃を命令していました。その司祭はパプニカの司教であり、キラーマシンに乗っているのはパプニカで賢者の地位を持つ男だったのです。そんな人物たちも暗黒闘気の力によって、今となっては大魔王の傀儡としてこの場にいたのでした。

 

キラーマシンとは地底魔城にてハドラーが対アバンとして用意した強力な機械であり、実はその司教がいずれパプニカ王家に牙を剥き王位を奪い取ろうと思い密かに準備していたものでした。しかしアランというパプニカ賢者の敵とも言える人物の登場によって計画は変更され、ひとまずカールの賢者を倒すという方向にシフトしたため計画されていたパプニカ王女様暗殺計画なども先送りになっていたのです。

 

本来であればキラーマシンというものは呪文も効かずそれなりに強力なものなのですが、そんなものが今更竜の騎士であるバランに通用するはずもありません。真魔剛竜剣の一太刀によって斬り裂かれ、乗っていた賢者は当身で気絶させられてしまいました。

 

これにより攻め入ろうとしていた人間たちは逃げ帰るようになり、バランのほうも「人間たちを傷つけることなく撤退させることができた」という成果にアランの言葉が間違っていなかったと改めて納得することができました。これまでの戦いは敵を倒すか倒さないかという二択で物事を考えていたバランにとって『威圧』という第三の方法が穏便に事を収めるのに都合が良いと知識ではなく経験で知ることができたのです。

 

実際にやっていることはアランと同じく強大な力による脅しでしかありませんが、魔王軍によって扇動された人間たちを無闇に傷つけることなく撤退させたのもまた事実でした。

 

流石に恐慌状態でこの場を慌てて逃げ出そうとしている者たちがカールに襲いかかって来ることはないだろうと判断し、バランはバウスン将軍へ声をかけてから王城へとトベルーラで戻っていきました。バウスン将軍たちリンガイア軍のほうはフローラ女王に礼を言いたい事もあり追ってカール王国へ向かうということです。

 

バランとしては満足な結果を得られたのですが、まさかこの行動によってリンガイア軍内のカール王国に対する評価が更に上昇してしまうなどとは知る由もありませんでした。

 

 

 

 

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