賢者の冒険 作:賢者さん
「行かせると思いますか…」
暗黒闘気の集合体であるミストが操るキルバーンの身体が大魔王に「カールに向かう」事を告げたのですが、それを黙って見逃すアバンたちではありません。このままミストをカール王国に向かわせてしまえば良い事など何1つない事は明白です。
「お前たちは余の数百年分の不老を、そして超魔力すらも奪ったのだ。よってその分余を精一杯楽しませ、そして償う義務がある」
大魔王バーンはその超魔力をもって数百年に一度の皆既日食の度に自身の若い身体に『凍れる時間の秘法』をかけることで擬似的に不老の状態となっていたのです。しかし地上の勇者たちによってその秘法は強制的に解除されてしまった事で大魔王は不老の時間を奪われてしまったのでした。
そしてその不老を奪った代償として、アバンたちの母国であるカールを滅ぼし大事なものを奪う事で報復としようとしているのかもしれません。その上で真の姿となった大魔王を退屈させないように必死に抵抗しろというのが大魔王の言なのでした。
「フフフ…お前たちはここでカールが吹き飛ぶ様子を眺める事になるのだ」
真の姿となった大魔王がこの場にいる以上、自分に手出しはされないと踏んだのかキルバーンの身体を乗っ取ったミストは余裕の様子です。現在利用しているキルバーンとは数百年ほどの付き合いがありますが、所詮は仮初めの仲間でありいつかは決別することがわかっていた関係なのです。そのためミストには名残惜しいなどといった感情など持っていないのでした。
しかしそんなミストが飛び立とうとした時、足元から光が噴出しキルバーンの身体を覆ったのです。慌てて足元を確認すると羽根が5枚刺さっており、そしてそれは五芒星を描き光の力を増幅している事がわかりました。
「ぐぉぉ…なんだこれは!?」
「行かせないと言ったはずですよ」
なんとそれはアバンが予めキルバーンに放っておいたフェザーだったのです。アバンは最初、大魔王が1人で相手をすると言った時は大魔王を総攻撃するつもりでいました。しかしアランがそれに反して1つ目ピエロを倒し、その後アランとブロキーナが接近戦を行っていた時に大魔王以外の敵の様子も目敏く伺っていたのです。
流石の大魔王といえど武神流を使う2人の相手に集中しており、ミストバーンはその動きを見ていることはわかりました。しかしキルバーンだけは微動だにせず身体の向きどころか視線すらも動かなかったのです。そのためアバンはキルバーンが操られていたか自力では動けないのだと仮説を立てました。
もう戦う相手ではないとわかれば放っておいても良いものですが、万が一誰かに操られ動き出す事も考えられないわけではないとアバンは念のため保険を掛けておくことにしたのです。それがフェザーをキルバーンの足元に五芒星の形で差し込んでおくことでした。もし暗黒闘気などにより操られ動き出したとしても聖なる五芒星によって力を増幅させたマホカトールで暗黒闘気を祓うつもりだったのです。
そんなアバンの保険は功を奏し、飛び出そうとしたミストを止める事ができました。しかしいくらフェザーと五芒星で威力が増幅しているとはいえ、それだけではミストを消滅させる事はできません。これは仮にマホカトールよりも上位の破邪呪文であるミナカトールであったとしても影響を与えることはできなかったでしょう。
事実今のミストは突然破邪呪文で包まれてしまったために驚いた程度だったのです。もしこれが攻撃呪文を放たれていたのであれば驚くこともなく対処できたのでしょう。しかし人間の不意打ちによって、しかも暗黒闘気の天敵である破邪呪文で脅かされたというのは暗黒闘気の集合体であるミストには我慢できない屈辱だったのです。本来ならばこのまま目の前の人間たちを打ちのめしたいところなのですが、大魔王の言葉はすべてに優先するのがモットーのミストにとってこのままアバンたちと戦うという事は許されていません。
よって憤怒の感情に溢れながらも、その目の前の人間たちの守ろうとしている国を吹き飛ばして鬱憤を晴らそうと考えました。自らを律し大魔王の言葉を実行するめ再度動こうとするも…今度は突然の重力によってその行く手を阻まれたのです。
「まぁそう急ぐな…少しゆっくりしていけよ」
それはマホカトールでは足止めできなかった次の手として放たれた、マトリフのオリジナル呪文であるベタンでした。アバンもマトリフもキルバーンの頭部に黒の核晶が埋め込まれている事などもちろん知りません。しかし「カールを滅ぼす」という大魔王の言葉や、ミストがキルバーンの身体で移動し「コレを使う」と言っていた事から何かをしようとしているのは当然ながら推測していました。
「おのれ…人間どもめ…!!」
「カールに…地上に手出しはさせません!」
既にミストが暗黒闘気の集合体であることはアバンたちもわかっています。そんな霧のような存在に物理攻撃が効くとは思えず、そして暗黒闘気に対抗するためには光の闘気の攻撃が有効なのは周知の事実でした。更に光の闘気を利用したアバン流の武技には見えないものを斬るという空裂斬という技まで備えていたのです。もちろん空裂斬だけではなく『すべてを斬る』というアバンストラッシュもあるのでいかに暗黒闘気の集合体といえど斬ることはできるでしょう。
「そこまで先に死にたいのならばカールに勇者の死体を持って行ってやる!」
「生憎ですがそう簡単に死ぬわけにはいかないんですよ!」
まさにミストとアバンの一騎打ちの戦いが始まるような雰囲気となり、大魔王も動くことなくその様子を止める事なく興味深く見守っていました……が、そんな空気など知らんとばかりに横から一条の光がミストをキルバーンの身体諸共飲み込んでしまったのです。
その光の正体は言うまでもなくアランの放ったメドローアでした。
それはカールでの魔軍司令ハドラーの演説中に始まり、リンガイアでは超竜軍団の名も知らぬ軍団長が名乗ろうとしていたところを消し飛ばしてきたアランの得意な不意打ちメドローアだったのです。その不意打ちメドローアはカールを守るために戦おうとしていたアバンを差し置いて、アバンを倒そうとしていたミストをそんなことは関係ないとばかりに消し飛ばしてしまったのでした。
「目の前に本命の相手がいるのに何でそっちで勝手に決闘みたいなことやってんのさ」
いくら大魔王が様子を見守ってくれているとしても、アランとしては大魔王が目の前にいてこれから戦おうというのに雑魚に構っている暇などないと言いたいのでしょう。どう考えてもミスト(キルバーン)対アバンの戦いが始まるはずだっただけに、この横槍はミスト本人も予想すらできませんでした。
とはいえメドローアで消し飛ばしたのはアランなりに考えがあっての事です。ミストの正体が霧のようなものであるとわかっている以上、武神流で戦っても効果が薄いだろうことはわかっていたのです。そのため乗り移ったキルバーンの身体ごと中身の暗黒闘気も消し飛ばすという選択肢を選んだのでした。
「まさかミストまで倒すとはな…」
その結果…腹心であったはずのミストを倒され、遂にと言うべきかやっとと言うべきか大魔王がいよいよ動き出すようでした。やはり最後のボスというのは徒党を組む事なく自身の強大な力に絶対の自負を持って待ち構えないといけないものなのでしょう。このあたりがハドラーとの大きな違いなのかもしれませんし、大魔王としてのこの姿勢はアランにとって好ましいものでした。
しかし大魔王も決してミストが倒されるのを黙って眺めていたわけではありません。
老人の姿の時とはいえ自分を相手に怒涛の連携を見せ消滅させた相手たちなのですから、人間だと侮ることなく必勝のため観察に回っていたのでした。その上で老人の姿の時の勇者たちの戦い方や必殺技とも言えるものを踏まえ、ミストとの戦いで更にその実力を見極めていたのです。
武闘家と賢者は接近戦で戦っていましたし、魔法使いは必殺の呪文を有していました。更に今回で賢者もまた魔法使いと同じ呪文を使用することが改めてわかったのです。勇者はハドラーとの戦いで必殺技を放っており、更に破邪呪文や破邪の秘法すら使用するという事がわかりました。これらのすべてを統合し大魔王はその叡智によって打ち破る算段を立てていたのでした。
それはもちろんアバンとミストの戦いによってキルバーンの頭部にある黒の核晶がこの場で爆発するといった可能性も視野に入っています。その場合はアバンたちだけでなく大魔王にまで爆発の影響があるのですが、そうなった場合はそれでも構わないと考えていました。もちろん超魔力を失った状態では無傷とまではいかないでしょうけれど、それでもその身に宿る強大な暗黒闘気が自身に与えるダメージを大きく軽減できるだろうという目算があったからこそです。
しかしその可能性は消滅という形で覆され、大魔王にとって今の状況は決して油断できるものではなくなっていました。
本来であれば老人の姿と若い姿を合わせることで真の姿となれたものを、老人の身体を消滅させられてしまったことで持っていたはずの膨大な魔法力を失ってしまっていたのです。これはただ呪文を使用する際に威力が下がるといった単純なデメリットだけではなく、大魔王が数々の敵を打ち倒してきた必殺の奥義すら制限されたようなものでした。
そして老人の身体を失った影響はそれだけではありません。大魔王の魔力の源である第三の眼『鬼眼』をも失うことにより、元より使うつもりのなかった最後の手段すらも使うことができなくなっていたのでした。それでもこれからまた悠久の時間をかければ失った魔力を取り戻すことはできるでしょう。既にこの先数百年は真の姿のままなのですから、大魔王にとっては数千年もの間陥ることのなかった危機といっても過言ではなかったのです。
「まったく見事と言う他ない…余が、この大魔王バーンの策がここまで悉く破られたのなど何時ぶりであろうか…」
「心配しなくても最初で最後になるさ」
「フフッ…お前が言うと真実味があるから不思議なものだな」
アランの軽口にも余裕をもって答えているのはやはり『大魔王』といったところなのかもしれません。もし今の大魔王の置かれた状況に、他の一般的な魔王や中ボス的な存在が陥っていたとしたら恐らく怒り狂っているでしょう。自身の力の一部を奪われ不老の時間も奪われ腹心や魔王軍も失ったのです。もうそれらを理由に人間を滅ぼすと言われても仕方ないくらいの状況にあるにもかかわらず、それでもなお大魔王は不気味なくらいに落ち着いていました。
やはりそこには『大魔王の矜持』とも言えるものがあるのでしょう。
「ゆくぞ地上の勇者どもよ。余が勝って地上を滅ぼすか、お前たちが余を倒して地上を守るか…2つに1つだ!」
大魔王のその言葉によって開戦の火蓋は切って落とされ、アランたちが大魔王へと飛び出すも…その大魔王はなんとマトリフへと狙いを定めて向かったのでした。今の肉体的強さを持つ大魔王であればアランとブロキーナを相手に渡り合えるかもしれませんでしたが、そこに意識の外からメドローアを撃たれるのは厄介なものです。そのため必殺の呪文を持ち肉体的に脆い魔法使いであるマトリフをまずは落とすことを決めたのでした。
これは先程「弱いものから倒す」とアランが行った戦術であり、それでいて数的不利な大魔王からしてみれば合理的な判断だと言えるでしょう。今まで比較的待ち受ける姿勢だった大魔王からの急襲はマトリフに大呪文を使わせるような余裕を与えず、更に高齢であり大魔王を相手に接近戦などできるはずのないため必殺の手刀によってその身体を貫かれてしまったのです。
「まずは1人…と言いたいところだが、念のため確実に息の根を止めるとしよう」
「随分と念入りな事だな…だが、冥土の土産に…片腕くらいは…もらっていくぜ…」
貫いたまま暗黒闘気を込めようとする大魔王に向かって何かをしようとするマトリフ。今からメドローアを準備するような余裕などない以上、そのマトリフが選んだのは自身の魔法力を暴走させることで大魔王が接触している腕だけでも奪おうという自爆だったのです。「後は任せた…」という言葉をアバンへと残し、まるでメガンテのようにマトリフは最後の一撃を放ったのでした。
「「マトリフ!!」」
その生命エネルギーをも利用した爆発は大魔王を包み込み…しかし爆発から姿を現したのは少々のダメージを受けただけの五体満足な大魔王の姿でした。そこにマトリフの姿はなく、不敵な大魔王が悠然と立っているだけというのは魔王ハドラーの時には感じ得なかった強敵というものを改めて思い知らされるという思いです。
「どうやら余の腕を持っていくには少々足りなかったようだな」
ダメージを受けたであろう腕の調子を確認し、戦闘に問題がないと判断した大魔王は次の狙いだとばかりにアバンへと向かいました。メドローアという厄介な呪文を使うという意味ではアランもいるのですが、アランは接近戦も熟してしまうためミストの二の舞いにならぬよう自身の見知らぬ手段をまだ持っているかもしれないアバンを先に倒しておくのが最善と判断したのです。
「アバン殿は狙わせんよ…!」
しかしそれを読んでいたとばかりに立ち塞がったのはブロキーナでした。流石にここまできて真の姿の大魔王といえども無策で鎧袖一触できるなどと考えていません。老人の身体だったとはいえブロキーナとアランによる接近戦は予断を許さないと感じたのでしょう。
「ならば…お前たち2人をまずは片付けるとしよう」
そこで大魔王は1つの判断を下しました。
接近戦が厄介な2人を同時に倒すことができる絶対の奥義を使用することを決断したのです。膨大な魔法力を失っている現状では万全の奥義とは言えませんが、強大な力と肉体はあれど格闘の技などに頼ることのなかった大魔王にとってブロキーナとアランは十分に警戒に値する相手となっているのでした。
マトリフを倒した大魔王の行動が『動』から『静』へと移り、待ち受ける構えとなったその姿をアバンたちが警戒しないはずがありません。
「アバン殿、どうやらアレは後の先を取る構えのようだ」
「ほう…この構えの恐ろしさがわかるとは流石よ」
その構えの正体をいち早く見極めたのは武術の神様とまで称されるブロキーナでした。どのような技なのか詳細まではわかりませんが、それでもその構えを取ってから大魔王の持つ威圧感が増した事でただの構えではないと看破したのです。
そして大魔王もまた自身の構えがただのポーズではないことを語りました。それは『天地魔闘の構え』と呼んでいる自身の奥義だということです。もちろん詳細までわざわざ教えてくれるようなサービスはありませんでしたが、それでもその言葉がただのハッタリではないことは見ればわかるというものなのでしょう。
「何言ったってやることは変わらないよ」
「アラン!!迂闊に飛び込んではいけません!」
しかし膠着状態は時間だけが無駄に過ぎていくとばかりにアランは大魔王へ攻撃の姿勢を見せたため、アバンはそれを咎めるように制止の声を上げます。もしここにいるのが十代の年若い勇者パーティであれば物は試しとそのまま大魔王へ向かって飛び込む場面ではあるのですが、賢い賢者を自負しているアランは待ち受けている相手にわざわざ自分から飛び込むような愚は犯しません。
「これならどうする…よ!」
そしてアランによって放たれたのは待ち受けている相手からしてみれば最悪の攻撃であるメドローアでした。このメドローアを防ぐのであればマホカンタによる反射か相殺するしか方法がないのですから当然の選択でしょう。そして今回大魔王が取った手段は…自身の手によって弾き返すという大凡考えつく事のできない方法だったのです。
「うそっ!?」
跳ね返されたメドローアを避けたものの、まさか手で弾き返すとは思っていなかっただけにアランの驚愕は大きなものでした。しかしアバンとブロキーナはその大魔王の行動をしっかりと見極めており、どうやら大魔王は暗黒闘気のエネルギーを凝縮しその手に溜めていたということです。そしてそのエネルギーを込めた掌圧によりメドローアで消滅することなく弾き返すことができたのだろうというのがアバンたちの見解でした。
それだけではありません。ブロキーナが言うには「もう片方の手は手刀の形になっていたということから、恐らくあれは攻防一体の構えなのだろう」という事だったのです。
「見事な慧眼だ。しかし本来のこの構えはその程度ではないのだがな」
構えの秘密を見破られたからか、大魔王はその構えがただの攻防一体の構えではないと説明してくれました。その説明によると本来の天地魔闘の構えは攻防魔の三位一体の構えであり、攻撃・防御・呪文の3つを同時に放つ奥義ということです。黙っていれば攻防一体のすごい構えという認識で終わったかもしれないのですが、そこで本来はもっとすごいという事を教えてくれるあたり大魔王にとって「その程度の認識で終わってもらっては困る」という自身の持つ奥義に対する矜持があるのでしょう。
「ならば、万全ではないその奥義を打ち崩すまで!」
しかし相手の奥義がもっとすごいものなのであるならば、それを使えない今のうちに倒すだけだということです。当然後の先の奥義であるならばその奥義を放った後に大きな隙ができると考えるのが自然でしょう。アランもブロキーナも相手に大ダメージを与える奥義を持っており、この2人のどちらかがその役目を担うというのが大魔王の見解でした。
そんな大魔王の考えを覆すかのように飛び出してきたのはアランとブロキーナだったのです。次から次へと予想を覆してくるなど大魔王にとっては予想外だらけの戦いであり、もはや大魔王の頭の中に人間は弱いなどといった認識は消え去ってしまっていました。それほどの強敵だと認めた上で同時に襲いかかってくる相手を迎え撃ったのです。
「「閃華裂光拳!!」」
「ならば大魔王最強の秘技を食らうが良いわ!」
生きている者ならば例外なく大ダメージを与える攻撃も大魔王の攻防一体の構えによって逆にダメージを受けるアランとブロキーナ…大魔王はこの瞬間勝利を確信しました。暗黒闘気によるダメージはすぐには回復せず、そしてその手応えは申し分ないものだったのだから当然でしょう。
しかし攻撃後も油断することなく警戒していた大魔王は、その甲斐あってかアランたちに隠れて飛んでくる物体を見つけることができたのです。それが何かはわかりませんでしたが、この場でアバンから放たれた何かが何も意味のないものだなどと考えられません。
本来であればカイザーフェニックスによる迎撃で消し飛ばすところなのですが、今の大魔王に攻防魔の一体攻撃はできないため対応が遅れてしまったのです。飛来する物体程度…と当たってやるような慢心をすることなく、しかし天地魔闘の構え後のため回避のできなかった大魔王は手刀によって叩き落とすという選択を取りました。大魔王の手刀はまさに切れ味抜群の威力を誇っており、本来は切り裂いて無力化されるのが正しい未来だったのでしょう。
しかしその物体は手刀によって切られたと同時に光を放ち……その光が収まった後には、大魔王は片腕を失っているという結果が待っていました。
「なっ…余の…腕が…」
これこそがアバンの切り札『魔弾銃』だったのです。
アバンは魔王ハドラーとの戦い以降、己の実力の底上げだけではなく様々な分野で役に立つものを調べ上げ作り出していました。そしてフェザーなどと一緒でアバンが作ったのがこの魔弾銃だったのです。これは呪文を込めた弾丸を撃ち出すことで、その魔法を使用できない者でも込められた魔法を使用できるようにした逸品なのでした。
本来はその弾丸に込められた魔法を撃ち出して弾丸は手元に残るのですが、今回はメドローアであると看破される危険性を考慮して弾丸をそのまま撃ち出さずに弾丸だけを投げつけていたのでした。この魔弾銃の事はアランやマトリフも知っており、そして弾丸に呪文を込めるというのがよくわからなかったアランに代わってマトリフがメドローアを込めていたのです。
こうしてマトリフの最後の言葉通り…弾丸に込められた大魔道士の極大呪文は大魔王の片腕を奪う事に成功したのでした。