賢者の冒険 作:賢者さん
魔界編は情報も少なく独自設定満載になるので書かないことにしました。
ただ骨組みはできていたので、せっかくですしおまけとして出しておきます。
「へぇ~、魔界ってこんな感じなんだね」
アランたちは今までの冒険で得た情報やバランからの意見などを集め、遂に魔界へとやってくることができました。魔界へは結局アバン、バラン、ディーノくん、シンシア王女、アランの5人で行っており、理由は子供2人が一歩も引かなかったことから父親2人も自分が一緒に行くという事を条件として認めたためです。
現在の魔界は冥竜王ヴェルザーとその勢力がいなくなった事で大魔王バーンが支配力を強めていましたが、かといって大魔王に与する者ばかりというわけではなく大きな勢力は他にもあったのでした。魔界というだけあって魔族だけでなく多種多様な魔物たちが生息しており、もしこの魔界で生きているモンスターたちが地上に溢れれば人間たちなど一方的に追いやられてしまうでしょう。
当然ながら魔界の中で強さというのは自らを示す一番の手段であり、その中でも冥竜王や大魔王といった名を冠する者たちは多くの者にその名を知られ恐れられていたのです。しかし強者がいるということは反対に弱者ももちろん存在しており、そんな弱き者たちは肩身が狭い中、身を寄せ合って生きていました。
広大な魔界でどうやって情報を集めようかと悩んでいた矢先に見つけた小さな集落…警戒している相手の懐へするっと入り込むアバンやディーノくんの人柄を利用して、そんな者たちから邪悪な存在について情報を集めていく一行。その中で冥竜王と大魔王と同じく通り名を持つ存在が明らかになったのです。その存在は『魔人』と呼ばれており、その姿は表に出てくることなく名前だけが知れ渡っているということでした。
しかし魔人の存在は確かなもので、アバンたちが立ち寄った集落も魔人の領域であるが故に外部から侵される事のない安全な場所ということも同時に知ることになりました。そんな弱き者を庇護するような存在ならば協力してもらえるか、少なくとも情報は得られるかもしれない…そんな期待を得られただけでも大きな収穫なのです。
そして何より魔界においても言葉で以って意思疎通を行うことで友誼を結ぶことができると確信していたアバンたちでしたが、そんな安らぎは瞬く間に崩れ去ってしまったのです。
「魔人様…なぜ……?」
少しの間とはいえ共に過ごしていた魔物たちが突然苦しみだし、そして次には正気を失ったかのようにこちらへと襲いかかってきました。まるで平和な島で過ごしていたのに魔王の瘴気によって自我を失ったかのように襲いかかってくる魔物たち…先程まで笑顔で接していた相手の突然の豹変に戸惑うも、襲いかかってくる魔物を倒さない理由のない賢者によって殲滅されてしまうのでした。
「アラン…このひとたち生き返らせてあげられないかな?」
「んー、結局また倒すことになるから無駄手間じゃないかな」
生き返らせればまた元通りになってくれると期待したいディーノくんでしたが、まるで確信を持っているようにまた倒す事になると言われてしまえば返す言葉はありません。そして魔物たちの最後の言葉を鑑みるに魔人と呼ばれている、弱い者を庇護していたはずの者の仕業であることは間違いないでしょう。
これがアバンたちを狙って行われた『弱者を無理やり戦わせる』という作戦だったのであれば確かに効果は大きかったでしょう。言葉を交わし互いの意思を確かめ合ってしまえば…安易に魔物だからと倒すような事はできません。もしそこにアランがいなければ、最悪の場合の事も考えられたかもしれませんでした。
そんな魔人の悪辣な行動に怒りを覚えた勇者たちは、魔人のいる場所を探すために誰もいなくなった集落を後にするのでした。
…
……
………
「竜の騎士よ…よく私を止めてくれた…しかしそれだけではない…天界に危機が迫っているのだ…」
魔界にいたもう1つの勢力…魔人と呼ばれる者を倒したアランたち。魔人の勢力の多くの魔族たちがアランによって命を落とし、ようやく辿り着いた先に魔人は待ち受けていました。しかしその魔人の正体は何と『人間の神が変異した存在』だったのです。
なぜ人間の神であったはずの存在が魔人となったのか…正気に戻った人間の神が語ったのは、かつて人間の神が「竜や魔族に比べ非力な人間にもせめて対抗できるように」と地上に破邪の洞窟と呼ばれる正しき意思を持つ者に邪を退ける力を与える場を残すことにした時の事だったそうでした。
その際に魔族の神が協力を申し出てきたため、人間の神は共に正しき者に正しき力を与えるためだと思って助力を頼んだのですが…それこそ魔族の神の企みだったということです。皮肉にも破邪の力を残した洞窟で人間の神は呪いを受けてしまい、更には魔族の神の力によって破邪の洞窟は魔物の蔓延る場所となってしまい力を得るために力が必要というダンジョンに成り果ててしまったということでした。
こうして人間の神は魔族の神の企みによってその在り方が大きく変様してしまい、天界から魔界へと堕とされ魔人として操られていたということだったのです。それをすべてではなくとも知ることとなった冥竜王や大魔王は、神々の力が衰え消えたと判断し『竜の騎士』や『神の涙』といったものを『遺産』と考えていたのかもしれません。
かつては竜と魔族と人間が争っていたことを良しとしなかった神々でしたが、どこかで少しずつ歯車が狂い始めてしまったのでしょう。神々の意思も決して一枚岩というわけではなく、それぞれが何かしらの思惑を持っていた事は間違いありません。
人間には地上で、そして魔族と竜には魔界で生きることを決めた神々でしたが…人間の神は人間たちが生きる地上に魔族や竜が出て行かないようにとの考えから、そして竜の神は生命力が他よりも強い竜種が驕ることなく他種族を認められるように…そんな考えからの行動だったのです。
そして神々は話し合い、互いを排除しようとする行為を諫めるための存在を作り出すことにしたのでした。何よりもそれぞれを諫めるという使命の中には神々も含まれていたのです。それは神々が互いを牽制する意味も含まれており、しかし表向きには天地魔界のバランスを整えるという名目でそれぞれの神の力を分け与えた新しい種族を生み出すということになったのでした。
それこそが『竜の騎士』と呼ばれる種族だったのです。
「どうか…ヤツを止めてくれ…頼んだぞ…」
息絶え光の中に消えていく人間の神の最後を見送り、そしてそんな悲しい戦いの最後に竜の騎士の真実を知り天界へと向かう事を決意した5人。そこに救い出す予定だったはずのマザードラゴンが姿を表しました。マザードラゴンは魔人となった人間の神によって呪いを受けた事で力を奪われており、しかしその魔人が倒れた事で呪いが解けた事を感じ取ったのでした。
しかしその蝕まれた身体は生命エネルギーをほとんど奪い取られており、更にマザードラゴンにとって親でもある竜の神もまた魔族の神によって生命の危機に瀕しているためその身に力はほとんど残されていませんでした。それでも竜の神の危機を救うため、そして魔族の神の悪しき企みを阻止するためにこの場へとやってきたのです。
ー我が子よ…遂にこの時が来てしまいました。今こそ竜の騎士の真の使命を果たす時です
「マザー…私が必ず悪しき企みを阻止してみせます」
ーできれば我が子にも、人間たちにもこのような事を任せたくありませんでした…しかし事態はそうも言っていられないところまで差し迫っているのです
そんなマザードラゴンに導かれ天界へと向かっている最中に更に齎された言葉によって『竜の騎士』という名を付けたのは人間の神だった事を知り、竜の騎士とは元来竜と人が魔に対抗するための存在であった事を知らされました。更に戦いの遺伝子とも呼ばれる経験を蓄積させたのは『神々が対立したとしても御せるように』と長い時間をかけて、しかし短いサイクルで様々な経験を積ませるために考案されたものということです。
バランだけでなく歴代の騎士たちの誰も知らなかった事実がマザードラゴンによって明らかになっていき、そして真の使命を知ったことでバランたちは天界へと…真の邪悪と対峙するために天界へと向かう事になりました。そこに反対する者などなく、当然のように戦う事を決めています。
…
……
………
そしてマザードラゴンの助力を得て天界へと辿り着きました…が、そこは天界という名とはまったく違う瘴気の蔓延る暗黒の世界だったのです。もはやバーンパレスが素敵な宮殿だったと思えるほどに禍々しい空気の中、天界へ辿り着いた時にはマザードラゴンは既に死力を絞り尽くしてしまっていました。
ー我が子よ、どうか世界を…
瘴気に蝕まれていたマザードラゴンから最後の力を託されたバランは天界を救うことを固く誓い、天界にある大宮殿…その中で神々の間と呼ばれる場所へと進んでいったのです。すると奥のほうから咆哮にも似た断末魔の叫びが聞こえてきました。急いでその場所へ向かうも一足遅く、そこには竜の神の力を食らった魔族の神がおり竜の神が伏していた状態でした。
現れた竜の騎士の姿を見て、厭らしい笑みを浮かべながら語ったそれは大魔王よりも更に深謀遠慮と呼べるほどに綿密で長い時間をかけた企みであり、冥竜王などと名乗る小竜を竜の騎士に始末させ、その魂を封印して身動きを取らせない事も含まれていたということです。そしてたかが数千年しか生きていないにもかかわらず神に成り代わろうとする痴れ者の大魔王が倒れた事が引き金となって動き出したということだったのでした。
更に語られるのは竜の騎士という種族もまた、魔族の神にとって実験動物と呼べるものだということでした。竜魔人と呼ばれる竜の騎士の戦闘形態は竜の力と魔の力が大きく作用しています。そしてそれが問題なく利用できているということは、魔族の神が竜の神の力を得れば竜魔神とでも呼ぶ更に上位の存在となることができると考えたのでした。
それらの企みはすべて成功し、今のこのすべての状況が魔族の神の予定通りだったことが判明したのです。
そんな魔族の神が目の前にいる竜の騎士や人間たちを放っておくはずもなく…もはやこれ以上語る言葉など持たないとばかりに戦闘へと突入したのでした。
「なら…とりあえず挨拶代わりだ!」
「魔の王を倒して増長しておるようだが…我は魔を司る神也!その魔神に魔の法による力が効くとでも思うたか!」
一度は大魔王をも消滅させたアランのメドローアすら霧散させられ、魔法が通用しないという魔神の言葉通りに攻撃呪文では一切ダメージを与えることすらできませんでした。メドローアで無理であれば呪文で戦う事はできないと瞬時に理解し…ならばと闘気で戦うも、人間の持つ生命エネルギーでは微量すぎて効果が薄く形勢は不利な方向へと向かっていました。
「魔の王との戦いは見ていた…我はあのような無様な真似はせん。このまま飲まれるが良い!」
「なめんな…ベホマラー!」
大魔王バーンとの戦いすら見ており自分には油断はないと豪語する魔神…アランも傷つき倒れた仲間たちを回復させますが、魔神の放つ瘴気によるダメージと竜神の力を食らった事で得た闘気は強力で戦況は悪くなる一方だったのです。
魔神にとって竜の闘気と魔の力を持つ竜の騎士は試作品でありながらも警戒すべきものだったのですが、ならばと自身も竜神の力を手に入れることでそれ以上の竜神の闘気を手に入れた以上もはや恐れるような存在ではありません。そんな竜神の力を取り込んだ魔神の力は凄まじく防戦一方の5人。あわや全滅かと思われたその時…バランの身体が光を放ち魔神の持つ竜神の力が抑え込まれました。
その光の正体…それはマザードラゴンに託された魂の力だったのです。
ー魔の神よ…あなたに我ら竜の力を使わせはしません…!
「マザー…感謝する。そしてどうか見守っていてほしい。この竜の騎士バランの戦いを…!」
竜神の力が抑えられた事を勝機と見たことで竜魔人となり戦うバラン。その姿に仲間たちは驚くも事態はそんな余裕を与えてはくれません。しかし竜魔人の力で戦うも魔神の力はまさに神の名に恥じないほどに凄まじいものでした。
「みなさん、あの魔神の瘴気と力は生半可な力では打ち破ることすらできません。バランさんに我々の力を集めますよ!」
このままではジリ貧になる事を懸念したアバンの提案でミナデインを使わせるため魔法力を送り込む仲間たち。持てる力をすべて竜魔人となったバランへと送り、竜魔人となったバランですら身体から溢れ出るのではないかと思われるほどの力が注ぎ込まれました。
その絶大な力で見事魔神を討ち果たし、天地魔界をも巻き込んだ神の陰謀は破られました。
その後バランは天界の精霊たちに請われ、神々の消えた天界にて三界の守護を担うことになりました。それも竜魔人の姿で…これは竜と魔の力が強く表に出ている状態のため生命力の強い竜と同じように長い寿命を得るために必要な事だということです。
そしてその姿と力から『竜魔神』という名で呼ばれ、しかし事情を聞きバランを1人天界に残す事を是としなかったソアラ王女とディーノくんが共に天界で過ごすことになったのでした。
とはいえバランたちとの永遠の別れということはなく、天地魔界の門戸は開いたことでいつでも会える状況となり引っ越ししたようなものとなりました。もしかしたら何時の日か誰もが自由に行き来できる時代がやってくるのかもしれません。
魔界と天界での冒険を終えたアバンたちはカール王国へと戻り、世界は遂に平和な日常を取り戻したのです。
アバンはカール王国に腰を据えシンシア王女と共にフローラ女王を支え、レオナ姫はパプニカ王国で奮闘しているようです。
バランはソアラ王女とディーノくんと共に天界で精霊たちと共に過ごし…たまにソアラ王女に請われて人間の姿に戻ったりしながら穏やかに、しかしまた世界を混乱に陥れるような存在が現れないように注意深く見守っていました。
アランは平和になった世界でそれを享受することを良しとせず、更に戦いの中でしか生きる事のできないラーハルトやヒュンケルもいたため2人を連れ魔界へと旅立って行ったのでした。
これで本作は完全に終了です。
なおこれがハッピーエンドなのかはわかりません。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。