賢者の冒険   作:賢者さん

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頂いた感想を読み、思いついたのでささっと書いてみました。

完全な番外編です。


ドラクエ4へ行ってみる

 

 

「アラン兄さん!今日も稽古を付けてよ!」

 

山奥にひっそりとたたずむ小さな村で少年の声が聞こえてきました。

 

呼ばれているのはかつて地上の勇者たちと共に大魔王や魔神と戦った賢者アランです。アランは天界での戦いの後しばらくして魔界に行ったはずだったのですが、気がついたらどこかの山奥にいたのでした。

 

意味がわからないと魔界に再度向かおうとしても移動することができず、一旦ルーラでよく知るカール王国に戻ろうとしても呪文がうまく発動しないのか戻ることもできませんでした。しかしルーラこそ使えないまでもメラなどの呪文はきちんと発動していたため、アランはひとまずトベルーラで周辺を飛んで情報を集めようと思ったのです。

 

上空から見ればあまり見た記憶のない山の景色が広がっており、そんな森の中に集落のような村を見つけたアラン…そういえば小さい頃に世話になった村の人たちは元気かな?などと考えながらその村に行ってみることにしたのでした。

 

そして村の中央へと降り立ったところで…ソロと呼ばれる少年とシンシアと呼ばれる少女と出会ったのです。

 

突然空から人が舞い降りてきた事に驚きつつも子供ながらの好奇心で近寄ってきたソロとシンシア…そんな2人の子供の、特にシンシアの名前に驚きつつもアランは持ち前の子守りスキルで仲良くなっていったのでした。そして子供の心を掴んでしまえば後はそう難しいことではありません。

 

ソロくんの両親に迎えられ軽く自己紹介しながらカール王国などの事を聞いてみたところ、誰もカール王国やパプニカ王国などを知りませんでした。それどころかハドラーやバーンなどといった魔王軍の事も知らないと言うではありませんか。

 

どうやら山奥にまではその名前を轟かせることのできなかったのか…と自称魔王や自称大魔王を少々不憫に思いながら、それはそれとしてアランはカール王国などの地理すら知らない村人たちの学の無さも同時に不憫に思っていました。別世界に来たなどという荒唐無稽な考えなど当然思いつくはずもなく、そしてメラやトベルーラが使えているのですからそんな事になっているなどとまったく考えつくことすらできません。

 

聞けばソロくんは小さい頃から剣術などの特訓をしているらしく、その様子はまるでかつての自分を見ているようです。そこでアランは「急いで帰らなくても怒られないだろ」という何の確証もない理由で少しだけソロくんを手伝ってあげようと決めてしまいました。もしかしたら今頃突然いなくなった事を知ったヒュンケルやラーハルトが探しているかもしれませんが、2人の性格からして慌てて騒ぐこともないだろうとも思っていたのです。

 

それにアランにとってシンシアという名の少女は、別人と分かっていても身近にいた少女の名前と同じなためどこか引き寄せられるものがあったのかもしれません。見た目は全然違いこっちのシンシアちゃんは耳が尖っていたりしていますが、そんなものはアランにとって何も問題ではありません。

 

これによってその日からアランによるソロくんとシンシアちゃんの子守り兼魔改造計画が始まってしまいました。

 

ソロくんもなぜこんな村に地下室が…と思うような場所で特訓を付けてもらっていたようですが、そんな事をしていても腕前だけで経験を積むことができないと言われてしまっては言い返せません。そしてまるでソロくんの存在を隠したいかのように外へ連れ出すことを反対する村人に得意の説得(物理)を行ったアランは、渋々ながらの了承を得て2人の子供を立派に育てる事にしたのでした。

 

「ソロくんは剣を使うならまずは闘気を使えるようになろうね」

 

「シンシアちゃんには俺のとっておきを教えてあげるよ」

 

確実にディーノくんとシンシア王女と同じように育てようとしているのですが、アランはその事に気付いていません。まずは契約だけでも…とお馴染みの魔導図書館に向かおうとしたのですが、ルーラが発動しなかったため仕方なく武神流だけとりあえず教えるということになりました。

 

 

……

………

 

 

そんな村での生活も数年を数え、ソロくんが17歳となり村でも一人前だと認められるようになったところに遂に魔物たちが動き出したのです。

 

「ソロを地下室に隠せ!」「はやく!」

 

なぜか魔物たちがこの村に襲いかかってきたらしいのですが、村人たちはソロくんを匿いたいようで地下室に連れて行ってしまいました。ソロくんも抵抗していたのですが、自分を気遣ってくれている村人を振り払うわけにもいかず…村人たちの一体感満載の連携によってすぐに姿が見えなくなってしまったのです。

 

「アラン兄さん…」

 

「別に心配する必要とかないよ。シンシアちゃんもいつも通りやればいいだけだからね」

 

ソロくんだけが匿われたことで不安になったのかシンシアちゃんが呼んできますが、アランにとって魔物が襲ってきた程度で動じるような精神など持ち合わせていません。それどころか匿うならシンシアちゃんも一緒に連れて行ってやれよと、気の利かない村人に内心で愚痴っていたりもしていました。

 

 

「勇者をどこに隠したァァ!!」「勇者はどこだァァ!!」

 

 

村へと襲いかかってきた魔物たちは何故か勇者を探しているらしく、勇者勇者と叫びながら暴れているようです。アバンならカール王国にいるはずなんだけど…と、返事でもしてみようかと思ったのですが、アランはここで大切な事を思い出しました。

 

ハドラーもバーンもトドメを刺したのはアバンではなかったのです。

 

つまり魔物の中では『ハドラーやバーンを倒した存在=勇者』という事になっており、人間の中での呼び名と魔物の中での呼び名は違うという事かもしれません。そうなるともしかしたら魔物たちが狙っている勇者というのは自称魔王のハドラーを消し飛ばしたアランの事かもしれないのです。

 

そして大魔王バーンとの戦いは誰にも見られていないはずであり、その後バーンを倒した勇者として名を馳せたのもアランたちでした。その3人の勇者のうち2人は他界しているため、残されたアランが勇者として仇討ちの対象になっていると考えれば納得のできるものです。

 

わざわざこんな山奥の村に勇者を探しに来るということは、アランの居場所がわかったから復讐の牙を向けてきたと思えばこの襲撃の目的も判明したという事でもあります。

 

「なんか俺を狙って来ているみたいだし、さっさと片付けてくるね」

 

「え…?どうして兄さんを…?」

 

シンシアちゃんが困惑するのも仕方ないことでしょう。この村は勇者を隠し育てる事を目的とした村であり、その勇者とはソロくんの事です。魔物たちが探している勇者というのは間違ってもアランではありません。なのにアランはどうしてそんな答えに行き着いたのか自分を狙っていると言い出しています。

 

シンシアちゃんにとってアランは色々と呪文を使用でき武術まで修めている人物ではありますが、時折意味のわからない事を言ったり行ったりする人物でもありました。確かに「俺は大魔王とか魔神とかと戦った事もある」などと言っていましたが、まさかそれが事実で別世界の事などと思ってもみません。

 

「魔物ども!!勇者アランはここにいるぞ!!」

 

しかし止める間もなくアランは大勢の魔物たちの前に躍り出て、更に名乗りまで上げてしまいました。もちろんただ名乗りを上げただけではなく、毎度お馴染み不意打ちメドローアで魔物の群れを消し飛ばすことも忘れません。

 

突然の攻撃を受けた魔物たちが一斉にアランへと視線を向け、思っていたよりも大人だったことに戸惑っている中…1人の魔族がアランの前に出てきました。

 

「ほう…お前が勇者か、それとも身代わりか知らんが皆殺しにすることに変わりはない」

 

「確かにそれもそうか…」

 

アランの前にいる魔族…デスピサロはアランのこの言葉を諦めと捉えましたが、当然ながらアランにそんな殊勝な心など備わっていません。そしてアランが同意したのは「皆殺しにすることに変わりない」という部分だったのは言うまでもありません。

 

余裕綽々で人間ごとき…と侮っているのは魔族全員に備えられている標準スキルなのかわかりませんが、その結果デスピサロは武神流の拳によって身体を貫かれてしまいました。それでも死には至らず致命傷ながらどこかへと逃げていったので生命力はやはり人間を大きく超えているようです。

 

親玉であったデスピサロが返り討ちに遭い逃げ出したことで魔物たちの統率も乱れてしまい、そしてそんな暇などアランが与えるはずもなく言葉通りに魔物たちは殲滅されてしまうのでした。

 

「思ったより呆気なかったなぁ」

 

「兄さん…」

 

「シンシアちゃん何かあった?」

 

最初はソロを庇っているのかと悲壮な表情をしていたはずのシンシアちゃんでしたが、アランが魔族を倒したあたりで思い出したのです。アランはこの数年で空を飛び回ったり森を焼いたり凍らせたり…そして何を怒られようと最後は話し合い(物理)によって解決する人物だったと…

 

更に驚いたことに、アランは魔物に襲われて命を落としてしまった人の蘇生までやってのけてしまったのです。確かにこの世界には蘇生呪文というものが存在していますが、まさかこの破天荒を絵に描いたような大人がそんなものを使えるなどと誰が予想できるでしょうか。

 

しかしそれでも勇者を狙った魔物たちの群れを人的被害無く乗り切ったことは事実なのです。シンシアちゃんももしこれでアランがいなかったら…と考えれば、常識外れの行動など些細な事だと考えを改めました。実際アランがいなかったら匿ったソロ以外はデスピサロの言う通りに皆殺しに遭っていた可能性は非常に高かったでしょう。

 

シンシアちゃんもモシャスなどを覚えていましたが、これは決してイタズラなどで使うために覚えたわけではありません。万が一の時に勇者であるソロを死んだと見せかける事ができるかもしれないという覚悟の上で覚えていたのです。

 

それも自分を勇者だと名乗り魔物を返り討ちにしたことで、アランがある意味身代わりの囮となりソロの事は知られる事なくやり過ごすことができました。しかも誰も死なず…死んでも生き返るという望外の展開によってです。

 

もしかしたら天空に住まう神が遣わした使者だったのかも…と思うくらいにはシンシアちゃんはアランについて誤解と混乱していました。悪い人だとは思っていませんでしたが、出会った時から「おじさんじゃない。お兄さんと呼びなさい」などとこだわりを見せていたアランがまさかここまでだとは誰にもわからなかったでしょう。

 

とはいえ村人やシンシアちゃんにとって勇者とはソロの事であることは間違いなく、そして今回の魔物の襲撃によってソロは自分が伝説の勇者であることを知らされることになりました。この世界の危機を救えるのは伝説の勇者であるソロ以外におらず、ソロはこれから世界を救うために旅に出る必要があるというのです。

 

「兄さん、オレが伝説の勇者だって…もしかして兄さんも知ってたの?」

 

「ソロくんが勇者?でもあいつら俺を狙ってきてたし俺が勇者だと思うんだけど…?」

 

「…え?」

 

もしかしたらある日突然現れて自分を鍛えてくれた兄と呼ぶこの人物も自分が「勇者だから」鍛えてくれていたのかと思っていたソロくんだったのですが、当人から返ってきた答えは予想外のものでした。アランのこの返事を聞いてちょっとばかり自信がなくなってきたソロくんですが、なぜかシンシアちゃんはじめ周囲が強調するように勇者だと言ってくるのでひとまず飲み込むことにしておきました。

 

アランは小さい頃から「ソロくん」「シンシアちゃん」と子供扱いのように呼んでおり、それは今でも何も変わっていません。つまりアランにとってソロくんとシンシアちゃんは今も守るべき子供として扱っていると思ったのです。もちろん後ろで見守ってくれていて「何があっても大丈夫」と言ってくれるのはとても頼もしいのですが、それはそれとしてやはり対等に…そして隣に並び立ちたいという気持ちもまたソロくんの中にはありました。

 

ただ並び立ちたいとは言っても今のソロくんはアランの足元にも及ばないことも事実なので、旅に出るとなってもやはり不安な思いは隠せません。これから1人で大丈夫なのかな…と、実力が足りない事を自覚しながら1人旅に出るというのは周囲の期待も合わさって心細さを齎していました。

 

「そんな心配しなくていいよ。俺がいるんだから怪我したって死んだって大丈夫!」

 

「…一緒に来てくれるの?」

 

「俺とソロくんとシンシアちゃんがいればどうにでもなるさ。あんな魔族程度だったら俺1人で十分だったしね」

 

しかしソロくんの「1人で旅に出ないといけない」という不安は余計な心配だったようです。アランは当然一緒に出かける気でいますし、更にアランの中でシンシアちゃんを置いて行くという選択肢も持っていません。シンシアちゃん本人が「行きたくない」と言えば無理強いされることはないでしょうが、シンシアちゃんもソロくんを見守りたい思いは持っていたためアランの提案はとてもありがたいものでした。

 

村人たちもまるでアランにソロくんを託すように…そして最後にアランの強さを確認するように見送りという名目の大乱闘になったりしていましたが、アランはそれをしっかりと返り討ちにして頼もしさと強さを皆に刻み込んでから村を出ていくのでした。

 

 

 

……

………

 

 

 

ルーラが使えないため2人を抱えてトベルーラで移動していたアランたち…とりあえず人の多いところに行こうという事でエンドール城という場所へとやってきました。

 

このあたりはカール王国やパプニカ王国などと変わらず、城下町にも人が行き交っているようです。今までアランに連れ去られる以外村から出る事のなかったソロくんたちには珍しいものも多くあるようで、シンシアちゃんと2人してキョロキョロと周りを見渡していました。

 

そんな観光気分の中歩いていると、1人の女性が目に入ることになります。その女性は占い師だということで、更に遠方からも人がやってくるほどによく当たると評判ということでした。占いというものに興味のなかったアランとソロくんでしたが、シンシアちゃんの好奇心によって1度占ってもらってみようということになります。

 

「やっぱり女の子ってこういうの好きなんだね」

 

「そうじゃないわ。もしかしたらソロがこれから向かうべき先を知ることができるかもしれないじゃない」

 

「えー…別に占わなくてもそれっぽいヤツ捕まえて本拠地聞けばいいじゃん」

 

アバンたちと共に旅をしていたときも占いなどに頼った事がなかったため、アランにとっては占いなど天気予報と変わりません。もしテラン王国で占い師と出会っていればまた違った態度になっていたかもしれませんが、残念ながら今のアランにとっては価値ある情報源とは言えないのでした。

 

「あなたの周りには7つの光が連なっており、更に脇に小さくも輝く星も見えます」

 

シンシアちゃんの薦めで占い師の女性にお金を渡して占ってもらったところ、ソロくんの周りには7つの星があるということでした。連なった7つの星とその脇に光る星があるというところに良い予感はまったくしない占いなのですが、この世界に死兆星など存在しないのできっと別の意味なのでしょう。

 

そんな占い結果を知り占い師の女性は「あなたが伝説の勇者さま…?」などと言っていますが、アランにしてみれば「これが勇者さま詐欺…?」と本人が聞いていたら怒られるかもしれない事を考えていました。その呟きはシンシアちゃんには聞こえており、どうやらシンシアちゃんの尖った耳は形だけでなく性能も良かったようでした。

 

占い師の女性はミネアというようで、姉で踊り子であるマーニャと共に伝説の勇者を探していたというのです。本来なら1人で旅をしていた中で心強い仲間が加わるのかもしれませんが、現在アランたちは3人で旅をしていました。更にミネアとマーニャを仲間にして旅をすることにアランが乗り気ではなかったのです。

 

理由は2人が占い師と踊り子…アランの知識で言えば両方とも『遊び人』と似たようなものだからでした。

 

どう考えても戦闘で役に立つとは思えません。アランに『特技』という知識はないので、仮に戦っている中で踊られても困るだけなのです。それどころか邪魔にしかならないでしょう。占い師のほうも必要であれば要所で占ってもらえば良いだけであって仲間にする意味はまったくありません。

 

「とりあえず気持ちだけ受け取っておくね…」

 

ふんわりやんわり断ってさっさと次へ行こうとするアラン…しかしミネアのほうにも譲れない思いがあったのか必死に食い下がってきます。最後はどうしてもと頭を下げるミネアを見かねてソロくんとシンシアちゃんまで敵となってしまい連れて行くことになったのですが、踊り子の姉のほうはカジノにいるということでやっぱり連れていくの止めようかと考えだしたりしていました。

 

しかしアランの苦悩はこれだけでは終わりませんでした。

 

なぜか次に仲間になりたいと言い出したのは太った商人であり、自分を仲間にしてくれれば船をくれるというのです。しかしこの世界で唯一であろうトベルーラを使えるアランにとってそんなものは必要ではなく、なんなら遊び人枠2名を置いて飛んで移動すればいいだけでした。

 

当然そんな案は却下されてしまい、一体何の役に立つのかまったくわからない商人トルネコを加えた一行…反対にもういっそ1人で魔物殲滅して回ろうかと考え出しているアラン。そんなアランが我慢しているのはソロくんたちから「一緒にいてほしい」と言われていたからであり、それがなかったらとっくに飛び出していたかもしれません。

 

今更ながらアバンたちとのパーティってすごく恵まれていたんだな…と有難みを噛みしめるアランですが、やはり大切なものというのは失ってから気付くものなのでしょう。むしろアランの行動をフォローしてくれていたアバンたちからしてみれば言葉は違えど「やっとわかったか」と返されてしまうでしょう。

 

その後訪れた先ではなぜか寝込んでいる僧侶の病を治すためのアイテムを取りに行ったお姫様を助けてほしいと言われ、アイテムとお姫様を探して行った洞窟では別のパーティを組んだ目的の人物を探し出すことに成功しました。アリーナ姫と呼ばれるお姫様は勝ち気な性格の口よりも先に手が出そうなタイプのお姫様のようで、今までフローラ女王やソアラ王女といったお淑やかなお姫様としか出会って来なかったアランにとってはお転婆娘にしか見えません。ある意味レオナ姫に近いと言えるかもしれませんが、これを聞いたらレオナ姫は必死に否定するでしょう。

 

そして口を揃えて言うはずです。どちらかというとアランに似ている、と…

 

無事パデキアというアイテムを手に入れ僧侶も回復したのですが、次はこのお姫様一行が目的が同じだから一緒に旅をすると言い出しました。いくらなんでもお守りの必要なお姫様一行なんて必要ないと断ったのですが、やはりというかアリーナ姫はそんな事を認めないようでした。

 

最終的に「戦って認めさせる」という相変わらずの魔族的思考によってアランとアリーナ姫が戦うということになり、しかしそこで途中で加入した旅の仲間たちはアランの実力を間近で見せつけられることにもなったのです。

 

アリーナ姫は決して弱いわけではありません。武術界でも確かな結果を残していますし、魔物たちとの戦いでも先んじて活路を切り開くとても勇敢なお姫様です。しかし相手のアランは大魔王や魔神とも渡り合ってきた上で生き残っている賢者であり、その戦いの経験値は比べ物にならないほどの差がありました。

 

「これでわかったかい?デスピサロはどうせ俺が倒すんだし、アリーナちゃんは留守番しててよ」

 

「……ごほっ…まだ…よ…」

 

アリーナ姫のお供である神官クリフトと魔法使いブライにとってはそれは信じられない光景でした。今まで襲い来る魔物であろうと打ち倒して来たアリーナ姫が為す術もなく倒れ伏しているのですから、もはやそれは驚愕を通り越して幻覚を見せられていると疑ってしまうほどのものなのかもしれません。

 

しかもアランは補助呪文を用いておらず、奥義も使っていない手抜き状態だと知れば更に驚くことでしょう。ソロくんやシンシアちゃんもアランの全力はまだ見たことがありませんが、極端な話…人間1人にどうにかできるような人物だと思っていないのでこうなるのは理解しています。

 

それでも諦めることなく立ち上がり、アランに向かっていくアリーナ姫…何やら魔王に戦いを挑む勇者的な構図に見えなくもありませんが、これはお互いに引かなかったため最後に力で相手を認めさせる議論(物理)なだけです。

 

お姫様であるとか女の子であるという事を考慮しないアランの無慈悲な攻撃はアリーナ姫に立ち上がれないほどのダメージを与えるものの、それでも折れない心を持っているアリーナ姫を認めないわけにはいきません…ソロくんとシンシアちゃんが。

 

「兄さん、彼女の決意はよくわかったよ。もういいでしょ?」

 

「というか兄さんやりすぎよ。女の子に対してやることじゃないわよ」

 

なぜかアランが宥められる事になっていますが、これ以上やるとアリーナ姫が死ぬ未来しか見えない以上止めないわけにもいかないのです。アランの場合「治癒も蘇生もあるんだよ」という意識があるためとは思いたくありませんが、山奥の村の時もよく「最後は勝ったほうの意見を聞く」ということをやらかしていました。

 

ちなみにこれは天地魔界を渡り歩いてきたアランだから言えることではありますが、決して人里でやって良いことではありません。

 

ソロくんたちが育った村でそれが許容されていたのはアランが強かったからという事もありますが、それ以上にソロくんを強く逞しくしてくれていたからというのが大きかったのです。そしてすぐに暴力に訴える粗暴者というわけでもなく、ソロくんを外に連れ出す出さないなどといった時に起こるのと最後には治療してくれたりもしていたため受け入れられていたのでした。

 

ソロくんとシンシアちゃんに止められ、それと同時に意識を失ったアリーナ姫をベホマで治療したアラン。

 

ここにきてミネアの占いの意味を理解しました。つまりソロくんの周囲の7つの星とはソロくんに課される苦難の数ということだったのです。占い師、踊り子、商人、お姫様とそのお供2名…アバンやバランなど、単体でも攻撃回復など様々な事をこなし高い戦闘力を持っていた仲間たちを思えば今の仲間など足を引っ張る存在としか思えない職業ばかりでした。

 

しかしそれらはソロくんが成長するために置かれたハードルだと思えば理解できないこともありません。仲間に対して思う感想としては最低の事を考えながら、アランは「とりあえず最後のハードルがそのうち出て来るだろ…」と、これについてはもう考えないことにしました。

 

宿を出て旅を続けようとしたところでまた何故か吟遊詩人が突然話しかけてきて、勇者を探す戦士が1人でキングレオという魔物の城へと向かったということを告げます。ここまで来ればアランとてこれが最後の星だろうということは理解できます。更にキングレオというのはミネアとマーニャにとって因縁の相手とも言える相手ということでした。

 

もしかして勇者の仲間になったのは仇討ちがしたかったからか…?と、戦士ライアンを仲間に加えキングレオとバルザックを倒したアランの頭にそんな考えが浮かんだりしましたが、本人たちが良ければまぁ良いのでしょう。というよりも今までなら大体魔物のほうが「ボスはこいつだよ!」や「本拠地はここだよ!」と教えてくれるのですが、なぜか断片的な情報しかなく親玉のところに突っ込むという手が取れなかったのです。

 

道中立ち寄ったロザリーヒルという場所でエルフのロザリーから黒幕がデスピサロという名であることを知らされ、それぞれがデスピサロを倒すために決意を固めていました。アランだけはロザリーからの「デスピサロの野望を打ち砕いて」という頼みに対して「何を今更」などと考えたりしています。アランにとっては『やっとボス情報きたか』くらいにしか思っておらず「むしろもっと早く教えてくれたらさっさと倒しに行ったのに…」とすら考える始末です。

 

デスパレスという魔物たちの城の場所を特定し、しかし突入しようにもその数はかなりのものだということがわかりました。魔物の城を前にしどうやって攻略するかを考える一同…当然そこには真正面から打ち破る系の賢者がいるので出される案は決まっています。

 

「よしそれじゃあ乗り込んで片っ端から片付けていこう」

 

「兄さん…それは危険すぎるよ」

 

「とりあえず外からメドローア連発したら大体倒せると思うからいけるって」

 

アランの中に潜入という文字は存在しないため、出された提案はメドローアで外壁ごと貫いて消滅させるという案です。そして残ったモンスターとデスピサロを殲滅してしまおうというものでした。これがうまく機能すればデスパレスを攻略しデスピサロも倒せるかもしれませんが、どれだけの魔物がいるのかもわからず危険が大きいのも確かです。

 

そこで陽動組と潜入組に分かれて魔物が混乱している内にデスパレスへと潜り込み情報を集めるという作戦が立てられることになりました。

 

大人しく潜入するはずのないアランが陽動組に回ったのは当然の結果であり、そしてそこから齎される結果もまた必然のものだったのでしょう。

 

 

「なんだ今のは!?敵の攻撃か!!」

 

「わかりません!光に飲み込まれてかなりの数のモンスターたちがやられました!」

 

「すぐにデスピサロ様に報告しろ!アッテムトに誰か向かわせるんだ!!」

 

「地獄の帝王エスターク様の復活前に無様な様子は見せてはなら…」

 

 

アランによって無差別に放たれたメドローアによって、デスパレスに穴が空き無数の魔物たちが飲み込まれていってしまいました。しかしこれによって混乱した魔物たちは指示を出し、それによってデスピサロは地獄の帝王を復活させるためにアッテムトという場所へと向かった事がわかりました。混乱しながらも一生懸命に士気を保とうとしていた魔物もメドローアで飲み込まれて消えてしまっていますが、かつて山奥の村に突然襲いかかってきたのと似たようなものなので順番が変わって魔物側が襲われただけなのです。

 

しかし貴重な情報を手に入れたソロくんたちは巻き添えにならないようにすぐに城の外に引き返し、情報の共有と…ありったけの文句を言うためにアランたちを探すことにしました。

 

「兄さん…あれ何なの?てっきりベギラゴンとかイオナズンとかで城の壁を壊したりするもんだと思ってたんだけど…」

 

「あんたには仲間を大事にするって気持ちとかないわけ!?」

 

「もしかして7つの星の傍にあったのは不吉な星…?」

 

潜入していたソロくんたちからは少々評判は悪かったものの、アランとしてはこの結果に満足していました。かつて魔神と戦った時には魔法が通用しないという事もあったため、もし今回もそんな相手だったらという確認も込めたメドローアだったのです。もちろん親玉であるデスピサロがいなかったり地獄の帝王というボスっぽいやつの存在を知ることになったということもありますが、もし今回も魔法が効かない相手だった場合は今の仲間たちを置いて行くという選択も考えていました。

 

とはいえどんな理由があろうと仲間が潜入しているのに無差別メドローアなどやって良い事ではありません。仲間からの当たってはいけない攻撃を避けつつも情報をしっかりと持って帰ってきたソロくんたちは仲間から労われつつアッテムトを目指すことにしました。

 

 

……

………

 

 

寝起きの地獄の帝王をサクッと倒し、そこに現れたデスピサロはアランの顔を見て苦虫を噛み潰したような表情をしつつも「やはり天空の勇者だったか…」と意味のわからないことを言っています。アランは自称賢者ですが大魔王バーンを倒したあたりで「伝説の勇者」扱いにもなっており、そこまでは自分の事だと理解できるのですが「天空の勇者」という言葉は初耳でした。

 

一応バランが天界に住んでいるので「もしかしたらバランの事なのかな?」などとも考えたりしていましたが、いくら考えてもその答えが出るはずがありません。勇者と呼ばれているのは自分の事ではなく、実はソロくんが天空人と人間のハーフで伝説の勇者であるという考えなど思いつくはずもないのです。

 

しかしデスピサロが何を言おうと倒してしまえば問題にはならないだろ…という脳筋思考で戦おうとするアランは、まずはこいつとばかりに乱入してきた魔物を閃華裂光拳で早々に倒しました。そしてそのままデスピサロへと高速で近づいていき接近戦を繰り広げだしたのです。

 

ちなみに乱入してきた魔物は「エルフのロザリー様が人間の手に…」という報告を持って来ていたのですが、この言葉はデスピサロに伝わることはありませんでした。もし伝わっていればデスピサロは早々にこの場を移動して魔界へと行って進化の秘法を使用していたかもしれませんが、魔族のデスピサロは占い師でも何でもないのでそんなことはわかりません。

 

更にデスピサロの前にいるのは「伝説の勇者」を自ら名乗り、かつて自分を致命傷に追い込んだ存在なのです。本当にこいつが伝説の勇者なのかどうかわかりませんが、デスピサロにとってはそんな事はどうでもよく…屈辱を受けたやり返さずにはいられない相手なのでした。

 

「貴様さえ邪魔しなければ…!!」

 

「そうだな、勇者にいられると困るもんな」

 

怒りの表情を浮かべるデスピサロに対し、アランのほうは何も思うことはありません。今のアランの頭の中ではデスピサロはハドラー枠扱いとなっており、一度倒してまた現れただけという認識です。状況はアランとデスピサロの1対1の戦いとなっており何故か仲間たちは手を出さずに見守っているのですが、アランからしてみれば「少しくらい手伝えよ」と言いたい気持ちでした。

 

「んじゃ終わらせようか…バイキルト、ピオリム、スクルト!」

 

そして仕方ないので補助呪文を自らにかけ、掠っただけで肉体に大ダメージとなる閃華裂光拳の連打によってデスピサロは倒されたのでした。

 

 

 

 

 

親玉であるデスピサロが死んだ事によって魔物たちの軍勢は散り散りとなったのですが、きっとこの世界もまだまだ問題は残されているのでしょう。

 

 

天空の名を冠する装備たちは勇者に装備されるどころか手に入れられることすらなく、天空の城で見守っていたマスターなドラゴンとも見えることもありませんでした。

 

 

魔界の存在やデスピサロの側近の存在も知らない仲間たちはそれぞれの居場所へと戻っていき、ソロくんとシンシアちゃんもまた山奥の村へと戻っていきました。

 

 

 

そしてソロくんは今回の旅を通して理解しました。

 

 

 

勇者といっても強くなければ何もできないということを…

 

 

 

きっとアランが『勇者』というものを目の前で見せてくれたのでしょう。

 

 

 

まさか本人が本気で自分を勇者だと思っているとも知らずに…

 

 

 

 






今日感想を見て今日書いたので誤字などがあったらごめんなさい
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