路上の歌姫と箱庭の華   作:黒糖煎餅

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バンドリに復帰して、知らぬ間に二つのバンドが追加されていて驚きを隠せない私が、ふと思い立って暇つぶしに書き始めます。
週に1回投稿できるように頑張っていきますので、よろしくおねがいします。

今回は主人公の回想と導入がほとんどになるかな。


第1話

将来の夢はなんですか。

そう聞かれた時に、昔の私はこう答えた。

『歌手になりたい!』

 

今一度、同じ質問をされたら、私はなんと答えるだろうか。

 

いつか同じ夢を見た友人たちを思い出す。

歌で有名になって、みんなでシェアハウスして暮らそうと、そんな馬鹿げた約束をした友人たちとは、一年以上連絡をとっていない。

「アタシらなら、天下取れるよ!」

眩いほどに笑う彼女たちの笑顔があまりにも眩しくて、私は…

 

 

 

 

 

随分と、懐かしい夢を見たものだ。

3年も前の夢を見るなんて、なんと未練がましいのだろうか。

私は頬を伝っていた涙を指で拭い、部屋のカーテンを開けた。

庭木が朝日を遮り、射す木漏れ日は美しい。

 

全てを失った私は、ようやくひとりの朝に慣れてきた。

 

 

 

 

顔を洗って、歯を磨く。

トースターにパンを一枚入れて、電子レンジで牛乳を温める。

チン!と小気味のいい音を立てたトースターからパンを拾い上げ、瓶詰めのママレードを塗り、頬張った。

ザクザクとした食感のトーストと、甘く酸いママレードは、私の朝食の定番だった。ホットミルクでトーストを流し込み、リビングに掛けられた制服に袖を通し、玄関に置かれたままのギターケースとカバンを背負う。踵を履き潰したローファーを履き、家を出る。

 

『行ってきます』

 

私は、誰もいない家に向かって呟いた。

 

 

 

ドルン、と明け方の街に排気音が響く。

三月が開けて、花粉症シーズン真っ只中と思いきや、ここ数日の気温は例年の平均気温を大幅に下回っていた。

背中に背負ったギターケースは、段差に呼応してカタカタと揺れる。

首筋から入り込む風はきんと冷えて、ジャージを履いていなければ寒さに震えていただろう。

朝日を迎えたばかりの商店街の前の道路をするりと抜け、私は自分の通っている羽丘女学園への道を急いだ。

 

「はよざいまーす」

 

いつも通り、私は職員室へと向かう。いつもはのんびりとしている先生がやけに小忙しく動いていて、何かあったのかと気になりながらも教室と音楽室の鍵を借りた。

 

「失礼しやしたー」

 

かなり雑な挨拶をして、私はいつも通り、音楽室へと向かった。

 

早朝の音楽室は、静寂に満ちている。

生徒数も少なく、交通量も、そう多くない。小鳥の囀りがわずかに響く室内で、お気に入りの曲を数曲弾くのが私の朝のルーティンだ。

この日もいつも通り、好きなバラードの曲を弾きながら、時間を過ごす・・・筈だった。

 

「いや、さっむいわ」

 

底冷えするような冷気に、春のくせに寒いのなんなんだよ。と独りごとをこぼす。私は部屋に荷物を置いたまま、マフラーと財布だけを持って購買横の自販機へと向かった。

 

購買というのは素晴らしい。通学路の道行で買うと130円も取られるというのに、校舎内で買うだけで、全ての商品が100円で購入できるのだから、なんと財布に優しい事だろうか。そして何より、品揃えがなんともベストチョイス。オーソドックスな缶コーヒーにお茶、オニオンスープやコーンポタージュ、ミルクティやマイノリティな梅昆布茶まで。よりどりみどりとはこの事だな、とひとりニヤニヤしながら自販機の前に立つ。さて、今日は何を飲もうか、と悩みながら。

よし、と。

私が何を飲むか決意を固めて、100円玉を投入した直後。

「何が売られてるんですか?」

背後から突如かけられた声に驚き、私の腕は照準を狂わせた。

 

「あっ」

 

声の主の驚く声を聞きながら、私の指先はあさっての方向を捉えて・・・

 

「すみません!すみません!」

落胆して肩を落とす私の手には、先ほど間違えて購入した温かいストレートティーが握られていた。その様子を見た彼女は、慌てながら何度も頭を下げている。これじゃ、私がいじめているみたいじゃないか。

 

「いいって、別に飲めないわけじゃないし。まぁ、別段好きなわけでもないけどさ」

 

そういうと、彼女は少ししょんぼりした様子で、「すみません」とまた謝った。

 

「キミ、ストレートティー飲める?て言うか、好き?」

私の言葉に顔を上げて、「飲めます。結構好きです」と返す彼女。じゃあ、とストレートティーを彼女に放り投げた。

ニ、三度お手玉をしつつもしっかりとキャッチした彼女に、「あげる」と言い、私は財布からもう100円を取り出して、今度はちゃんと梅昆布茶を購入した。

戸惑う彼女に、「こんな時間に鉢合わせたのも何かの縁だし、あげる。私はそれあんまり好きじゃないし」

と言うと、彼女は「ありがとう」と頬を弛ませた。

 

冷める前に飲んじゃおう、と言う話になり、彼女と私は校庭のベンチに腰掛けながらちびちびと飲み始めた。あまり無言でいると堅苦しい感じなのでこちらから声をかける。

「キミ、名前は?」

ややぶっきらぼうな言い方になってしまったことに気づき、彼女が萎縮してしまわないかと心配したが、そんな心配はなく。

「羽沢つぐみです!」

と言った。

先ほどまでの少しこわばった態度は形を潜め、ニコニコとこちらに笑いかける彼女に「私は赤羽。赤羽琴葉」

微笑む彼女につられて微笑みながら、私と彼女はしばらく談笑を続けた。

 

数分が経過して、底冷えするような寒さもだいぶ和らいだ。

 

「そろそろ時間だから、行くね!」

琴葉ちゃんも遅れないようにね!と早歩きで廊下を歩く彼女に目線を送りながら、始業時刻まではまだあるのにな、と思いつつ、まぁ、日直かなんかだったんだろうと彼女から預かったペットボトルと自分の飲んだ梅昆布茶のボトルを捨てに購買横のゴミ箱へと向かう。ちょうどそこに、国語教諭の桐ヶ谷先生がいた。珍しくスーツなんて着込んで、と茶化すついでに声をかける。

「ガヤ先、はよーっす」

ぬっと後ろから忍び寄って声をかけるも、先生はさして驚いたような様子もなく、「おはよう赤羽、って、は?」

と疑問符を浮かべながらこちらへと振り返った。何が『は?』なのか分からず、私が首を傾げていると、

「なんでお前が学校にいるんだ?」

と先生も首を傾げながら言った。

 

「え?私知らない間に退学にでもなったの?」

 

と言うと、

「今日は入学式だけだから、二年生以上はほとんどの生徒が休みだろう?」

と言った。は?は?

「え、マジで?」

「マジマジ。それと、教師にその言葉遣いはやめなさい。あと、ガヤ先と呼ぶな。」

くどくどと説教を垂れる先生の話を話半分で聞いていると、「ところで」と、先生が話題を変えて切り返してきた。

 

「赤羽、もちろん課題は提出できるようになっているんだろうな?」

「あははー、もちろんじゃないですかー」

想像の三倍くらい片言だ。棒読みちゃんか?こんなの、やってないと白状したも同然ではないだろうか。

「明日までに終わらなかったら、私と毎日補習だからな。一週間。ただでさえ成績が悪いんだ、最初の一週間で他の奴らの平均くらいになるまでまったりしごいてやろう。」

実質死刑宣告じゃないですか、やだー。

「今から家帰って良いですか」

「やり残しがあるならさっさと帰ってやってこい。私はやると言ったらやるぞ。経験者だろ、お前は。」

「イエス、ボス。」

「誰がボスだ、誰が。早く帰って終わらせて来いバカもんが」

桐ヶ谷先生と漫才のようなやりとりを終えて、自身の荷物を取りに音楽室へと向かう。折角持ってきたギターに鞄も、今日は無用の長物だったと。そして今から、どれだけあるかすら分からない課題地獄だと。

ため息をつきながら、私は原付で帰路に着いた。

明日からの一週間の平穏を保つために、私の奮闘が今から始まる。

あ、課題の範囲聞いてないや。




一応、この小説に登場するのは(物語の根幹に据えようと思っているのは)ポピパ、アフロ、ロゼリアの3バンドになる予定です。まぁ予定は未定と言いまして。
アフロメインで日常とシリアスを描いていこうとも思いますが、百合要素やシリアス場面では結構暴言飛び交ったりします。
また、未成年の喫煙、飲酒の描写がある場合もありますが、基本的に筆者は未成年者の飲酒喫煙に肯定的なわけではありません。
本当に、やめといたほうがいいからね。
と言うわけで、週一投稿目指してぼちぼちやっていくつもりです。
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