UA三桁も超えましたし。
見てくれる人がいるなら頑張れそうです。
評価で満足度とか示していただけたらモチベにも繋がるので、是非ともよろしくお願いいたします。
それではどうぞ。
赤羽琴葉が帰路に着いて数時間後。
四人の幼馴染と合流した羽沢つぐみは入学式へと臨んでいた。
クラス別で、出席番号順。あの子は赤羽だから、各クラスの先頭付近にいるのだろうと思ってキョロキョロと辺りを見回すも、彼女らしい姿はない。そも、彼女は小柄なほうなので前方が中々見難いと言うのもあって、各列の先頭なぞ頭頂部が見えるのがやっと、と言うところだろう。
(後で巴ちゃんにでも聞いてみよう。)
自分で見つけたかったものだけど、あまりキョロキョロしすぎると、先生たちに注意されてしまうこともあるかもしれない。彼女との再会は後の楽しみにして、今は式に集中しようと教壇に向き直るつぐみであった。
その一方で。
「あ、もしもし?リサ?おはよ。朝早くからごめんねー。」
課題を終わらせて来いと言う桐ヶ谷の言う通りに課題に着手しようとしたはいいものの、課題の範囲がわからない。ので、クラスのギャルに聞いてみよう。と言うことで、同級生でギャルで課題はやってくる意外な真面目キャラこと、今井リサへと電話をかけていた。
休みボケしているであろう中での朝早くからと言うことで寝ぼけているかとも思ったけれど、それほどでもなさそうな雰囲気で彼女は電話口にいる。
「あれ、琴じゃん。おはよー。なになに、遊びのお誘い?」
なんなら朝早くなのにハイテンションだ。今8時だぞ、8時。遊びに誘うなら昼過ぎぐらいにするわ。と思いつつ、
「残念無念。課題が終わってないから今からやらなきゃなの。でさ、範囲がすっかりさっぱりわからないんだけど、どこかわかる?」
「課題、課題?あー、学習ワークブックのことか!えーっとね、一冊15ページぐらいの小冊子、学年末に貰ったでしょ?赤青緑、みたいに色分けされてるワークブック!5教科分あるから、75ページあるけど。」
「マジ?終わったわ。」
「マジマジ。でも、選択式の問題が多かったよ。四択とか。数学化学は途中式のこせーっ、て先生言ってたからあれだけど、国、英、社は一時間半あれば終わると思うよー?」
「択問とか神か。爆速でやるわ。でさ、リサ。もし今日暇ならでいいんだけど、数学と化学なんだけど・・・」
「おっけー。午後からは暇だから、面倒見てあげる!代金は、コーヒー一杯とケーキ一個でーす!」
「金とんのかよ。まぁいいや。それじゃ、適当に喫茶店にでも集まろっか。スタバとかなしね。あそこでコーヒーとケーキなんか頼まれたら、財布に大打撃待ったなしだから。」
「りょーかい!それじゃ、お店の位置情報共有しとくから、後でみてねー!また後でねー!」
通話時間、5分。中々マシンガントークだったが、案外短い時間で済んで良かった。お昼すぎに集合ということは、準備含めて11時30分ごろまでには終わらせないといけない。幸い、会話をしながらワークブックは全て発見していたので、すぐさま作業に取り掛かった。
それから、約一時間半。
「ひと段落ついたぁー。」
勉強机にしなだれかかりながら、私は大きなため息をついた。
ここまで真面目に勉強に取り組んだのは、受験以来なかったであろう。まぁ、簡単な問題を先に解いて難しい問題は知っている単語を当てはめただけなのだから、そこまで辛くはなかったが。
机に突っ伏したままスマホを見ると、時刻は11時30分を少し回っていた。部屋着から着替えなきゃと立ち上がって服を見繕おうとするも、どうせ勉強するだけだしなぁ、と思い、適当なジーンズと長袖のTシャツに落ち着いた。軽く化粧をして、原付の鍵と勉強道具を入れたリュックと財布だけ持って、部屋を出た。
昼ごろにもなると、だいぶ気温が上がっていた。朝の底冷えするような寒さはなくて、原付で風を切る感覚はとても心地がいい。
朝とは違って少し晴れやかな気持ちで、私はリサの指定した喫茶店へと向かった。
店の前で待ち合わせ、ということで・・・
早くも私は待ちぼうけを食らっていた。いや、まだ集合時刻よりは早いのだけど、リサはいつも10分前には到着している。だから、今日は同じぐらいに着くだろうと思っていたのだが・・・
何かあったのだろうか。
気になって電話をかけてみようとすると、通知音と共にリサからメッセージアプリのチャットが入った。
『ごめん!道が混んでて、バスが身動き取れないの!少し遅れるから、入って待ってて!』
交通機関の乱れが原因か、とひとまず無事ならなんでもいいや、と私はスタンプを送る。
ちょうど昼時だし、軽食でも食べながら勉強して待っていよう、と私は『羽沢珈琲店』へと足を進めた。
メニューを眺める。初めてくる喫茶店ということもあるけれど、メニュー自体は結構オーソドックスで、それ故に色々と頭を悩ませてくる。色物・・・何か面白い商品でもあればそれに即決するんだけど、と思いながら悩んでいると、カラカラン、と小気味いい音を立てて店の扉が開かれた。背後の方から、
「ごめんコト!遅くなっちゃったー!」
と、聞き慣れた声が響いた。
「バスが遅れるのは仕方ないし、良いよ。代わりにコーヒーの奢りはなしね。」
えー、と落胆の声を上げるリサ。
「ケーキは奢ってあげるから、良いでしょ?文句言うならケーキもなーし」
そう言うと、リサはうぐっと唸って渋々了承した。
「で、先にご飯食べて良い?昼は学食で済ますつもり満々だったから、朝ごはんトーストだけだったんだよね。」
そう言うと、リサは
「は?」
と素っ頓狂な声を上げた。あぁ、そういえば説明してなかったか。
「今日から始業だと思って学校行ったら、一年生の入学式だけだったんだよ。ガヤ先に言われて課題のこと詰められたから、渋々やってるワケ。」
朝起きたことを簡潔に説明すると、リサはおっちょこちょいだなぁ。と笑った。
「でも、良かったんじゃない?進級直後から課題やってなくて説教くらったらテンション下がるしさ。ラッキーだったと思っちゃいなよ。」
「そうかなー。せっかく休みが最終日なんだったら、原付でどっか遊びに行けば良かったよ。桜でも見に行けばよかったなぁ。」
メニューを見ながら会話をしていると、リサが
「あ、私ケーキ決まったから、頼んでいーい?コトは決まった?」
「まだ。おすすめみたいなのある?」
そう言うと、リサはうーん、と唸る。何度も来たことあるワケじゃないけど、と前置きしてから、「たっぷりきのこの和風パスタなんてどう?」
と言った。見た目ギャルギャルしいくせに。
「ギャルなのに渋いとこつくよね、リサ。和風のパスタなんて食べたことないけど、それにしてみようかな。」
「オッケー。じゃあ店員さん呼ぶね?すみませーん!」
リサがそう声を上げると、はーい、と言って店員さんがこちらに駆け寄ってきた。透き通るような白髪に、ライムグリーンの瞳。おおよそ日本人離れしている少女に注文を通すと、彼女はかしこまりました!と笑顔で言って、厨房の裏へと消えていった。
武士道とか聞こえた気がするが、聞き間違いだろう。
暇な時間はとりあえずワークシートを広げ、簡単そうな問題から解いていく。流石に、一年生の前期に習った内容はまだ簡単な方で、これ、暗算でいけるじゃんと適当に欄を埋めていく。設問自体も1ページに2問、3問だけ。簡潔に式を書いて、途中式の詳細な部分なんかはざっくりと省きながら進めていく。1問あたり1分で解けて、5ページ半まで進めたところで、頼んでいたパスタとリサのケーキセットが到着する。
ふわふわと浮かぶ湯気とパスタの香りに誘われ、一度勉強の手を止めて食事をすることにした。
「いただきまーす!」
「いただきます」
満遍なく散りばめられたきのことパスタ麺をフォークでくるくると巻き取り、ふぅふぅと息を吹きかけて、口へ運ぶ。
「おいしい」
とろみのついたソースと、モチモチとした麺が絡み合って、なんとも言えない美味しさだった。リサはでしょ?と少し自慢げで、パスタを頬張る私を尻目にカフェオレとケーキに口をつけていた。
20分ほどして、空いた食器も下げてもらって、勉強を再開した。店内の雰囲気が物静かなお陰だろうか、不思議と集中力が途切れずにすらすらと回答が出てくる。わからないところはリサに聞いて、地道に課題を進めていく。一時間もしないうちに数学の応用問題まで片付いて、一息つこうと店員さんを呼んだ。
先ほどの美人さんではなく、恰幅のよい柔らかな雰囲気の男性が出てきた。ブレンドのコーヒーを頼んで、リサは冷たいミルクティーを頼む。
男性は「お勉強ですか」と問いかけてきた。
「すみません。もしかして、あんまり勉強とかしない方がよかったですか?」
ファミレスなどでも、勉強するための居座りを許容しない店舗は多くなっている。個人経営のカフェなんかだと、回転率が下がってしまうのは死活問題なのだろうか。
「もし迷惑でしたら、すぐに出て行きますので」
そう言うと、男性は朗らかに笑って、
「いえいえ。頑張ってらっしゃる方に、そんな不躾なことは出来ませんよ。それでは、少々お待ちください。」
そう言って男性はお辞儀をして、厨房は消えていった。
それから数分。男性は私たちそれぞれに飲み物を持ってきて、サービスですと言ってクッキーを二人分置いていった。
ありがたくクッキーに舌鼓を打ちながら、残りの科学の課題へと手をつける。難しい計算式などはなく、単語や公式、結果を四択で選ぶ方式の問題がほとんどであったこともあって、数学よりはるかに短い時間で課題を終えることができた。
「終わったぁ」
机に突っ伏しながらそう言うと、ゆっくりと船を漕いでいたリサが、寝ぼけ眼を擦りながら「おつかれー」
と言った。
実に三時間も拘束してしまったリサに謝意を告げると、
「別に暇だったから、いいよ。ぐだぐだ過ごしてもなー、って思ってたし、久しぶりにコトと喋れたから、楽しかったし?」
にひ、とあどけない笑みを浮かべる彼女に少し照れ臭さを感じつつも、私も「私も、久しぶりにリサと話せて楽しかったよ。」
と言った。リサは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、その後少しだけ照れたように破顔した。
そろそろ帰ろっか。私がそう言うと、リサはお会計の前に、ちょっとお手洗に行ってくると席を立った。お会計するのは戻ってからにしろと言われたけれど、付き合わせたのは私なのだから、元々今日の代金は全て払うつもりだったのだ。何か言われる前に、ささっと払ってしまおうと伝票と財布を持って席を立った。
「お会計お願いします」
そう言うと、先ほどのクッキーの男の人が出てきた。
朗らかな笑顔で、「ありがとうございました。本日はご満足いただけましたか?」
と聞いてくる。
「はい。きのこのパスタも、いただいたコーヒーもクッキーも、とてもおいしかったです。」
質問にそう答えると、「そうですか、それはよかった。」
と朗らかに笑う男性。
「当店では、期間限定でさまざまなメニューや常連さんへの新メニューの試食などもお願いしている時がございますので、またお足を運んでいただけると幸いです。それでは、お会計2500円になります。」
「3000円からでお願いします。」
現金を手渡すと、手早くお釣りの500円を手渡してくる。
「ありがとうございました。またのご来店を、よろしくお願いします。」
お釣りを受け取った私は、リサが出てくるのを待ってから店を出た。
別れ際のリサは、「今度はアタシが奢るからね!こーゆーお金の貸し借りはゼロだから!次勝手にやったら怒るからね!」
と言って、バスに乗って去っていった。
リサがバスに乗り込むのを確認して、私も原付に乗り込む。ドルン、と響く低音を感じながら、私は家までの道をゆっくりと走っていった。
『また明日ね!』
家に帰ると、リサからメッセージが届いていた。
やけにキラキラとした絵文字付きのメッセージに、
「うん。また同じクラスだといいね」
と返信を打ち、私はそのままお風呂に入って、レトルトカレーを食べて眠りについた。