路上の歌姫と箱庭の華   作:黒糖煎餅

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3話

学校だりぃよぉ。

なんて、原付に乗りながらあたしは独り言ちた。

冷えた風がブレザーの隙間から入り込む。まだまだ寒い。

なんなら眠いし。

「あぁ、めんどくさーい!!!」私の叫びは、小さく街にこだました。

 

「到着ぅ」

 

うっわ、嫌そうな声。自分で言ってわかる程度には嫌な声出たよ。びっくり。

 

なんて。

まぁ、朝のこの静かな校舎は嫌いじゃないけど。

 

「おはざいまー」

適当な挨拶をしながら、職員室の扉を開ける。教室の鍵と、屋上の南京錠の鍵を二つ取って、

「しつれーしやしたー」

なんてこれまた適当な挨拶で職員室を出た。

「さて、とー。」

人気のない校舎の渡り廊下。私は自動販売機を目指して歩いていく。

 

 

指先でちゃりちゃりと小銭を弄ぶ。はてさて、今日は何を飲もうか、と頭を悩ませた。温かい飲み物ということだけは確定しているけれど、一体どうしたものか。

むぬぬと悩む私の横で、ふと声がした。

 

「買わないなら、先、良い?」

 

ぶっきらぼうな声。隣を向くと、ボブカットに紅いメッシュを入れた女生徒が立っていた。

 

「ああ、どうぞ。」

 

そう言うと女生徒はこちらをちらりと一瞥した後、颯爽とコーヒーを買って立ち去っていった。

 

「ありがとうくらい言えよ・・・」

半ば呆れながら私は100円を自販機に入れて、ポチリとボタンを押した。

梅昆布茶。寒い朝にはやっぱこれだよね、とか年柄でもないことを思いながら、私はさっきの少女の逆方向へと足を進めた。

 

梅昆布茶を飲んで、一服。ほぇーと緩んだ口から出た吐息は、白くゆるゆると空へ溶けていく。

じんわりと温まった体で、私はギターを取り出した。ゆっくりと曲を奏でる。切ない朝にはぴったりの曲だ。

 

『だれも いない道路で 両手を広げ歩いた 目を閉じてから私はそっと心の中で ちいさな 賭けをしたんだ』

 

白線から落ちたら負け。昔、そんなのやってた。

あぁ、嗚呼。

なんか懐かしいな・・・

 

優しく、しかし激しく、ギターをかき鳴らそうとしたその瞬間・・・

 

 

 

ガチャ。

金属室な音とともに、ローファーの硬い足音が響いた。

反射的に振り向いて、音の発生源を見つめる。茶色のローファー。少し緩めの靴下。膝上丈のスカートに、所定外のカーディガン。白みかかった灰色の髪は朝日を柔らかく反射して、キラキラと輝いていた。

どきりとした。私を見るその双眸は鮮やかな空色で、まるで心を見透かされているような気さえした。

「あれー、蘭じゃなかったかぁ〜。」

彼女は私を見た第一声で、そう言った。

 

「えっと・・・誰?」

 

言葉を絞り出せた私を、どうか褒めてほしい。

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