バイオハザードRTA 新B.O.W.ルート『グレーテルの怪物』END   作:血袋

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(07/21の19:19投稿に大遅刻したので)初投稿です。


おま〇け4

「タイレル! ワクチンを見つけた!」

 

『よし、今そっちに向かってる』

 

「気をつけろ」

 

『気をつけろ? 街の惨状を見てないのか? 無事に辿り着けたら奇跡だ』

 

 仲間との通信を終えたカルロスと並んで研究室を出る。

 ようやく最大の目的であるワクチンが手に入った。後は臨時治療室へと戻るのみ……とは言え、こんなタイミングだからこそ気を抜いてはいけないのがお約束。

 

「カルロス、止まって。……来ますよ」

 

 逸るカルロスの歩みを制止すると、そこへガラスを突き破って上階から飛び降りて来たトカゲ男。さっきカルロスがPCを殴り壊した音でも聞きつけたのだろうか。

 

「くそっ、こっちは1秒だって時間が惜しいってのに!」

 

「全くです、こんな時に面倒な相手……」

 

 苦戦はしなくとも、火力がハンドガンとアサルトライフルでは少々手間取る。手榴弾で対処してもらってもいいけど、なるべく複数の敵に囲まれた時のために温存しておいてもらいたい。

 それらを考慮すると、ここは──

 

「──5秒で終わらせます。下がっていてください」

 

「なにっ?」

 

 決断と同時に溜めは完了させていた。電気を帯びた右腕を勢いよく突き出し──放たれた一条の光が、標的、その頭蓋を撃ち貫く。

 余裕の確殺である。我が力ながら、やはりハンドガンとは威力も利便性も違うというものだ。

 

「イザベラ!? 今のは……」

 

「ごめんなさいカルロス。後で全てを話しますから、まずは治療室まで戻るのが最優先です。1秒だって時間が惜しい、でしょう?」

 

「……そうだな、急ごう。もう流石に厄介な敵は現れないはずだ」

 

「ええ、急ぎましょう。眠り姫たちがベッドの上で待っていますからね」

 

 切り替えの早いカルロスの軍人思考を頼もしく思いつつ、移動を再開。

 1秒でも速く、大切な人のもとへ。その一心が、私たちの足を急がせた。

 

 

 

 

 

「ジル、もう大丈夫だ!」

 

「さあグレーテル、お注射の時間ですよー。そのまま力を抜いててくださいねー」

 

 無事に臨時治療室へと戻り、カルロスはジルさんに、私はグレーテルにワクチンを投与する。

 ここまでやり切ってしまえば、後はワクチンの効能頼りだ。時間の経過による回復を待つ以外にできることはない。

 

「頼む、効いてくれよ……!」

 

「ワクチンの効能を信じましょう。バード博士も、人間としてはともかく、研究者としては確かな能力を持っていたはずです」

 

「待つ他ない、か。……なら、今のうちに話してくれないか? 君が本当は何者なのかについて」

 

「あらら、警官の娘ってところからガッツリ怪しまれてます? まあ実際に真っ赤な嘘なので気にしませんけどね。……もちろん、約束通りお話ししますよ」

 

 

 共に室内のパイプ椅子へ腰掛け、順を追って語る。

 私がアンブレラによって生み出された生物兵器であること。私の素体となった人間はアンブレラのせいで殺されたこと。その人間の妹が、今ここで眠っている少女グレーテルだということ。私の目的がグレーテルのラクーンシティ脱出──そして、アンブレラへの復讐であること。

 何も知らない者へ聴かせれば鼻で笑われてしまいそうなほどに、現代の社会常識やアンブレラの外面を考えれば衝撃的な話。バード博士の告発映像で真実の一端に触れたカルロスにも……流石に刺激が強かったようだ。

 

 

「──民間人の拉致、人間へのクローン技術利用、人体実験……それで、やることが兵器開発か。とんだ企業に雇われていたもんだな、俺たちは」

 

「T-ウイルス単体でも十分に凶悪な兵器であることを考えると、採算も取れなさそうな生物兵器の開発に拘っているところには、単なる軍需狙いに留まらないヤバさも感じます。……ま、イかれたインテリの考えることなんて想像したくもありませんが。吐き気がするので」

 

 どうせウイルスの力を利用した超人化だの不老不死だの、暇を持て余し過ぎた金持ちの道楽ってところだ。その馬鹿げた絵空事のために、イザベラのような人間が犠牲となってきたことを考えると、腸が煮えくり返って仕方がない。

 

「……だがイザベラ、君は俺を信じてくれた。最初から全てを知っていた、おまけにアンブレラを憎んでいたのに。それはなぜだ?」

 

「? なぜって……貴方が()()()だからですよ、カルロス」

 

 急にそんなこと訊かれたものだから、ついクスクスと笑いながら答える。

 

「もちろんグレーテルのためにワクチンを手に入れる上で都合の()()()だったというのもありますけど……貴方が本気でこの街を救うために戦っている()()()だってことは、誰だってわかります。私が憎悪しているのは、あくまでアンブレラという隠れ蓑に潜んで外道なことをやってる輩だけ。貴方を嫌う理由なんてありませんよ」

 

 そもそも、私だって「アンブレラを許さない」としか言葉では表現できないだけで、アンブレラという企業自体には思うところなど無い。その暗部を支配している者にとっても、間違いなく兵器開発の研究データさえ無事なら企業がどうなろうと知ったことではないのだろう。

 それを考えれば、何も知らずに踊らされていたカルロスもまたアンブレラの被害者でしかない。と言うかアンブレラと関わってるにしては根明すぎる。無辜の市民のためにここまで戦える軍人、そうはいないはずだ。

 

 ……このジルさんだって、そんな姿を見てカルロスを信じるに至ったんだと思うし。あぁいや、知らないけど。興味ないけど。

 

「カルロスの方こそ、どうなんですか? こうして話した通り、私は人の形をしているだけの兵器です。……怖くは、ありませんか?」

 

「怖いものか。たしかに、その刺激的な力にはビビったが……君はアンブレラの被害者で、同時に愛する者のため戦える立派な()()()()()()()()。尊敬に値するよ」

 

 ──ああ、ほら、もう。そういうキザな台詞、恥ずかしげも無しに吐くんだから。

 

「……ジルさんに信頼してもらえた理由がわかるってもんですね、女たらし(グラインダー)

 

「おい、ちょっと待ってくれ。彼女はそういうんじゃない。まだ擦るつもりなのか、この話題」

 

「そうですね~。頑張って私のことも信頼させてくださいね~」

 

 

 揶揄い甲斐のあるカルロスで遊びつつ、眠るグレーテルを見守りながら、私たちも身体を休めて──窓から朝日が差し込み始めた頃。

 院内に誰かが入ってきた気配がした。活性死者ともトカゲ男とも違う足取り……生きた人間だ。

 臨時治療室の扉が勢い良く開かれる。即座にカルロスが銃を向けた、が。

 

「なんだ……タイレル、一体どうした?」

 

 すぐに銃を下ろし、相手の名を呼ぶカルロス。どうやら同じ部隊の仲間……あぁ思い出した、私がワクチンの在処を知る切っ掛けになった書置きを残してくれていたタイレルという人物らしい。

 そんなタイレルさんは、カルロスとの合流を喜ぶこともせず真っ先に室内のテレビを点けた。

 

『──ラクーンシティに拡散するウイルスの封じ込めは、不可能と判断しました。10月1日に巡航ミサイルでラクーンシティを爆破します。未感染だと判断する市民はただちに脱出してください。これは試験放送ではありません、繰り返します──』

 

 ……思わず言葉を失った。合衆国政府は、この街を地図から消すことを決断したのだ。

 

「1日しかないじゃないか、まだ生存者がいるんだぞ!」

 

「政府が気にすると思うか?」

 

 憤慨するカルロスの言葉に、タイレルさんは諦め交じりの声で答える。

 確かに政府の選択は正しい。万が一にもウイルスがラクーンシティ外まで拡散してしまう危険性を考えれば、なるほど妥当な作戦だ。……何万人もの無辜の命が失われるという点に目を(つむ)れば。

 

「──クソ、ヤツらが来た」

 

 どうやら考えている余裕は無いらしい。タイレルの言った通り、活性死者の大群が病院へと押し寄せていることが気配と音で感じ取れる。

 街を救う前に、まずは自分たちを救わないと。

 

「ここにいろ、俺が片付ける」

 

()()()()、の間違いでしょう?」

 

 ここまでの移動で疲労が溜まっている様子のタイレルさんを制止して出向こうとするカルロスへ、横から口を挟む。始まるのは籠城戦、手は多い方が良いに決まってる。ついて行きますとも。

 

「……ん? ちょっと待てカルロス、誰なんだそのレディは。数時間前の通信で聞いたあの声は俺の幻聴じゃなかったのか?」

 

「勝利の女神だ、それさえ憶えておけばいい。頼りにしてるぞ」

 

「任せてくださいよ。ごめんなさいタイレルさん、自己紹介なら片付いた後に。5分で終わらせてきますから、ジルさんと私の妹をお願いします」

 

 このタイミングでようやく私の存在に気付いたらしいタイレルさんへの説明等は後回しにして、治療室を出る。

 さあ、お楽しみはこれからだ。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

『カルロス! 無事か?』

 

「いや散々だ……だがとにかく終わった。今から戻る」

 

 快勝、大勝、我々圧勝。最終的に爆弾を用いたド派手な入口封鎖には至ったが、特に負傷も無く籠城戦は乗り越えられた。

 懸念点を挙げるとすれば、押し寄せて来た活性死者の中に、NE-αに寄生された個体がいくつか見られたことだろうか。……ネメシスが近付いてきている、おそらく対決は避けられないだろう。こっちから殺しに行きたいぐらいだから大歓迎だけど。

 とは言え今はグレーテルの守護が最優先。カルロスと一緒に治療室へ戻る。

 

 

 

「……ワクチンがしっかり効いてる」

 

 タイレルさんの言う通り、グレーテルとジルさんの寝顔は随分と穏やかなものになった。

 ワクチンは確かに薬効あり。この点だけはバード博士に感謝しよう。

 

「よかった」

 

 そう言ったカルロスは、しかし安堵と共に腰を下ろすこともなく、銃のリロードを終える。

 

「どこ行くんだ」

 

「やることがある」

 

「やることって何だ? 街はもうすぐ爆破される」

 

「お前は政府に連絡してくれ。ワクチンを見つけたって、時間を稼げ」

 

 カルロスがタイレルさんへ飛ばした指示で、私もようやく納得する。

 この病院の地下にあるという研究施設から、備蓄されているワクチンを確保してくるつもりなのだろう。ワクチンがあれば、ウイルスに感染して間もない人だけでも救うことが可能になる。流石に政府もそれを無視することはできないはずだ。

 

「待ってくださいカルロス、それなら私も一緒に──」

 

「──いや、君にはここに残ってほしい。タイレルが政府との交渉に集中できるように、それから万が一でもジルたちを守れるように。1人は護衛役が必要だ」

 

「む……それは、確かにそうですが……」

 

 カルロスの指示は至極もっとも。私としてもグレーテルの傍を離れたくはなかった。

 ただ、それでは単身でアンブレラの施設へと乗り込むカルロスが心配だ、けど──

 

 

「大丈夫だ、俺は死なない。俺のいない世界なんて寂しすぎるだろ」

 

 

 ──ああ、ほら、もう。まったく、この男ときたら。

 

「……ハイハイ」

 

 ここまで言われてしまっては引き下がれない。カルロスはカルロスの、私は私の。為すべきことを為すとしよう。

 堂々と出ていくカルロスの背中を、右手を軽く振りながら見送った。

 

「……肝が据わってるな」

 

「全くですね。タフって言葉はカルロスのためにあるんじゃないでしょうか」

 

 彼の雄姿を評するタイレルに、私も笑って賛同する。

 と、ここでタイレルさんに詳細な説明もしていないことを思い出した。

 

「バード博士が遺した情報によりますと、この病院の地下には研究施設があるそうでして。そこにウイルスのワクチンも備蓄されているという話でしたから、カルロスはそれを確保しに行ったんだと思われます」

 

「なるほど。俺はそれを交渉材料に、街の爆破を引き延ばしてもらうよう政府へ掛け合えってことだな? よし、時間が惜しい。早速ロビーのPCで取り掛かるとしよう」

 

「あっ……良いんですか? 私、まだ身元の説明も何も──」

 

「──もう聞いたさ。勝利の女神だろ? アイツが信じてるなら十分だ、俺も御加護に(あずか)るよ」

 

 それだけ言って、タイレルは作業へと取り掛かってしまう。……今だけはその淡泊な対応が何よりもありがたい。

 では、私も女神様らしく頼もしいところを見せるとしよう。

 病院の正面玄関と窓が封鎖された今なら、当面の脅威となるのは未だ院内で隠れ潜んでる敵だ。兵器としての優れた五感を活用し、全て見つけ出して殲滅。それが最も効果的な護衛になる。

 

 同じく悪魔の研究から生み出されてしまった命。同郷のよしみだ、終わらせてあげよう。

 

「絶滅タイムです。喜んでくださいね?」

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 虱潰しの院内探索を完了させれば、時刻は間もなく0時。すなわち10月1日だ。

 事態が好転しなければ、この街は今日中に爆破され、全てが強制的に終わらせられる。……それは御免だ。脱出も復讐もあったもんじゃない。

 

 もう病院内から危険は無くなった。少し休憩を挟んだら、私もカルロスを手伝いに行って良いかタイレルさんに訊こう。そう考えながら、臨時治療室のパイプ椅子に腰かけた時──

 

「う、うぅん……お姉ちゃん?」

 

「──っ、グレーテル! よかった、目が覚めた!」

 

 瞼を開いて起き上がったグレーテル。思わずパイプ椅子を蹴り倒して、ベッドに駆け寄る。

 

「熱は……無いみたいね。意識はハッキリしてる? 体に痒いところとかあったりしない?」

 

「だ、大丈夫。元気だよアタシ。……それよりもお姉ちゃんのほうが酷いよ、擦り傷とか服の汚れとか! ごめんね、またアタシのせいで迷惑かけちゃったみたいで……」

 

「コラ、()()()なんて言わない。迷惑だとも思ってない。ちゃんと快復してくれたことが何よりの姉孝行だし……それに、貴女のために戦えることが私の原動力なんだから」

 

 深い安堵と共に、グレーテルを抱きしめる。

 愛する貴女のために戦えるなら、私はただの兵器ではない。それを強く実感した。

 

「……お姉ちゃん、汗臭い」

 

「う゛……ごめん」

 

「アハハ、早くお風呂に入りたいね──あ、お姉ちゃん! 隣のセクシーな女の人が!」

 

 ひとしきり笑い合ったところで、隣のベッドで眠っていたジルさんも起き上がる。

 体の具合は良さそうだが、顔色は良くない。……悪夢でも見ていたんだろうか?

 

「……ここはどこ? 何が起きてるの──って、あなた達は?」

 

「おはようございますスーパーコップさん。まずは、あの放送に耳を傾けてくださいな」

 

 目覚めていきなり傍に居た初対面の私たち2人へ当然の疑問を投げるジルさんに、テレビの方へ意識を向けるよう促す。タイミング良く、ちょうど1ループし終わったところだった。

 

『市民の皆様、ラクーンシティは数時間後にミサイルにより爆破されます。ミサイルは、あらゆる生物・病原体を根絶します。誰一人生き残れません──』

 

「10月1日? ウソでしょ、そんなに経ってるの?」

 

「おっと、待ってくださいって。状況説明ぐらい聴いても損は無いですよ」

 

 まだ痛むであろう左腕の怪我を押して動き出そうとするジルさんを制止して、質問等を挟む暇は与えずに現状だけ叩き込む。

 カルロスがジルさんを助けたこと。政府がラクーンシティを爆破する決定をしたこと。病院地下にあるらしいアンブレラの研究施設にT-ウイルスのワクチンが備蓄されており、昨日カルロスが既に入手へ向かったこと。彼の仲間も街の爆破を阻止するため尽力していること。

 状況を理解したことで、ジルさんの顔に焦りの色は無くなった。

 

「オーケー、やるべきことは分かったわ。……それで、あなた誰なの? そっちの方はただの逃げ遅れた子だと思うけど……あなたは違うわよね?」

 

 当然、次は改めて私へと疑念が向けられる。ここまで活性死体や他の生物兵器を相手にしてきた残り香か何かは知らないけど、流石に警官の鼻は誤魔化せないらしい。

 問いの返答として、あの研究所で入手してた私に関する研究資料の紙媒体をジルさんへ手渡す。ジルさんは最初からアンブレラの真実を知っていたとカルロスは話していた。ならば私が口で語るより、こういった証拠を自身の目で見てもらう方が信じてもらえるかと考えたが……それで正解だったらしい。スピーディーに資料へ目を通すジルさんの表情は、みるみる驚愕に変わっていく。

 

「……信じられない。あなた、B.O.W.なのね」

 

「その“信じられない”という意識を突き、人間を騙し討ちにしてこその兵器ですから。もっとも、こうして自我を持ち、脱出を企てている以上……アンブレラにとっては大の失敗作ですけどね」

 

 朗らかに笑ってみせたが、流石に少々警戒させてしまったらしい。

 こちらとしても信頼してもらえないのはマズい、ここからは努めて真剣に話す。

 

「どうかご心配なく、私の目的はグレーテル……妹と共に街を脱出することだけです。そのためにカルロスたちと手を組み、今は街の爆破を少しでも先延ばしさせることに協力しています」

 

「……なるほど、なら私も手を貸さないワケにはいかないわね。もちろん警官としても、そっちの妹さんを助けるのには協力したい」

 

 ただし、と挟んで──ジルさんは私に問いかける。

 

「釈迦に説法かもしれないけど、確認よ。例え姿も心も人間のものであっても……あなたは兵器として生み出された存在。それが外の世界へ出ていくことの意味を……あなたは分かってる?」

 

「覚悟の上です。何処ぞへ身を差し出す必要があるなら、喜んで差し出しましょう。もし、私一人が街の外へ出ることを許されなくなったとしても……その時はその時。グレーテルさえ無事に助け出してくれるなら、それ以上は望みません」

 

 嘘や欺瞞は一切無い。本気の言葉だ。

 結局のところ、私が何よりも望むのはグレーテルの無事。それさえ叶うのであれば、私の命など二の次。胸を焦がす復讐心だって三の次でしかない──

 

「ちょっと待ってよ! 話してることはよくわかんなかったけど……アタシ、お姉ちゃんと一緒じゃないならどこにも行かない。お姉ちゃんがここを出ていかないなら、アタシだって残るっ! お姉ちゃんが独りで死んじゃうくらいなら……アタシも一緒に死ぬ!!」

 

「グレーテル……」

 

 ──などと、私が勝手に諦観してしまうのも、それはそれで傲慢なのかもしれない。

 私にはグレーテルがいる。彼女を独りにしないことは私の義務……そして、私の願いだ。まだ、死にたくはない。

 

「……ひとまず動きましょうか。今は悩んで立ち止まってる暇なんてないもの、私もその地下施設に向かうわ。……あなたも来るんでしょう?」

 

 ここで話を打ち切り、ジルさんが立ち上がった。……反対意見がある中で話し合いを続けるほどの猶予は無いと判断してのことだろう。結論は先延ばしになっただけだが、とりあえず探索の同行を容認してもらえただけでも良しとしよう。もう何でも来いと自棄っぱちになってるのもあるかもだけど。

 未だ少々不満げなグレーテルをなだめて、いよいよ世話になった治療室を後にした。

 

 

 

 

「目覚めたか」

 

 ロビーに出れば、作業中のタイレルが声を掛けてくれた。引き続き交渉のため格闘中らしい。

 

「ええ、状況説明もこっちのお嬢さん方から受けたわ。今からカルロスとの合流に向かうわ、1人で行くなんて流石に無茶過ぎるもの」

 

「待て! それなら既に理解しただろ? この街は爆破されちまう。俺はそれを阻止するために、あらゆる手を尽くしてる。ヤツに任せろ、彼はプロなんだ」

 

「──私もよ」

 

 わざわざ負傷を押してまで行こうとする必要は無いと説くタイレルさんへ、一言で切り返すジルさん……クールだ。大人の女性……否、姉御って言葉は彼女のためにあるのかもしれない。

 

「タイレルさん、私も行きます。決してカルロスのことが心配なワケではありません。この病院で護衛を続ける必要も無くなった……何かやってないと気が落ち着かないんですよ」

 

「やれやれ、何を言っても聞きそうにないな。なら、そっちの妹さんは……いや、一番安全な場所は君の隣か」

 

「そうだよ、アタシだって付いてくから!」

 

 呉越同舟も絶体絶命も、何のその。ここからが正念場だ。

 

 

 

 

 

「地下施設はアンブレラの研究所だ。カルロスからも連絡が途絶えた、用心するんだぞ」

 

「えっ……それを早く言ってくださいよ、やっぱり心配です! ジルさん急ぎましょう!」

 

「焦りは禁物よ。アンブレラの施設とあっては何が出るか分からない、慎重に行くわ」

 

「そういうワケにもいかないでしょう、ジルさん薄情ですよ! カルロスのことなのに!」

 

「……別にそういう仲じゃないわよ、私とカルロス。あなたに譲るわ」

 

「譲──は、はァ~!? イヤ別に、私そういうつもりで言ったんじゃないですけどォ~!?」

 

「……妹さんから見て、どう?」

「お姉ちゃん昔からちょっと惚れやすいタイプ。でもガチだよコレは。カルロスってどんな人だろ」

 

 

 ……ここからが、正念場だ!

 




先日誤字報告くれた読者の兄ちゃん、ありがとナス!
たまに自分でも読み返してはいますが、やっぱり他人のチェックが入ると違いますね。


……これまでより投稿間隔が空いた理由?
無料公開中のワンピースを読み耽っているからです(人間の屑)
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