乃木園子目線での勇者の章、大満開の章の回想(という名の妄想と考察)です

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ここでの乃木園子の各々への呼び方

結城友奈→ゆーゆ
犬吠埼風→フーミン先輩
犬吠埼樹→いっつん
三好夏凜→にぼっしー
三ノ輪銀→ミノさん
鷲尾須美→わっしー

東郷美森→みもみも



第1話

○------------------○

 

ゆーゆはまるでチョコだ。

あの2年間で私の心は冷えて固く味の無くなったガムのようになった。

そんな私を彼女は甘くドロドロに溶かしていった。

優しく照らし暖めてくれる春の日差しのようなミノさんと似ているな。と思った

 

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「私は乃木園子。

あなたは鷲尾須美。

あのこは三ノ輪銀。

3人は友達だよ。ズッ友だよ。

私は死なないから、後でまた会えるから」

 

そう言ってから永遠にも感じた2年を経てやっとズッ友に再会できた。

「東郷美森」と名前を変えた彼女はさらに美人さんになっていた。

分かってはいたけれど…仕方のないことだとは納得しているつもりだったけれどやはり私のことは忘れてしまっていた。

堪えようと我慢していたけど涙が流れてしまった。

そんな私の涙を拭い東郷さんは私のリボンを「とても大事なもの」と言った…記憶はなくてもたましいは覚えているんだ。

「仕方がないよ」そう。仕方のないことなんだ…

 

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私が壁の外の真実を話したそのすぐ後、

「東郷さん」が壁を壊したが勇者部の活躍により世界は守られた。それどころか私を含め皆の散華が戻ってきた!

 

リハビリが終わり私は讃州中学へ入学。勇者部へ入部した。

皆とても優しくすぐに友達になってくれた。毎日が楽しい!青春を取り戻すんだ!

記憶の戻ってきた「彼女」も空白の2年を埋めようとたくさん接してくれる。

けれどどこかわっしーと別人のように感じてしまって表では「わっしー」と呼びつつも内心では「みもみも」と呼んでしまう…私は冷たい女だ。

 

 

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罪悪感に苛まれつつも幸福な日々を送るある日のこと。

ミノさんに焼きそばをお供えした時、「何故か」3つの焼きそばパックを作っていたことからみもみもがこの世界から消えていることに気がついた。ミノさんが教えてくれたのかもしれない。

一瞬心臓を散華した時のような感覚に襲われ直後にバクバクと心臓が動き始めた。胃が針で刺されまくっているかのように痛い。頭もふらつく。

いつから…

どうして!?

ここ数日何か違和感を感じていたがこんなに大事なことに気がつかなかったなんて!

[後悔は後でいくらでもできる。動ける時に動く]

奉られていた2年間で味わった数少ない教訓が早速役立つとはと思いつつ2年前からお世話になっているにぼっしーのお兄さん…三好春信さんへメールを送る。

 

{件名:至急

内容:春信さん、わっしーについて何かしらないか}

 

メールを送ったら即返信が来た。流石にぼっしーのお兄さんだ。対応が早い。期待をしながらメールを開く。

 

{件名:re 至急

内容:わっしーとはどなた様でしょうか。存じ上げないです。}

 

…何かが起きている。

安芸先生は私達のお目付役という任務が終わってから更に忙しくなっているようで数ヵ月前から連絡が取れていない。私への負い目もあって顔を合わせずらいというのもあるのだろう。

 

即刻家へ戻ってみもみもの痕跡を探す。

ごめんねふーみん先輩、今日の部活動の劇行けそうにないや。

 

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私の家を引っ掻き回して調べたが何もなかった。こうなったら勇者部の皆に聞くしかないと集合場所へ向かうとゆーゆも何か思い出してしたようだった。

劇は中止にさせてもらい部室でゆーゆと共に皆にみもみものことを知らせた。

皆も思い出してくれたようだ。

 

皆が校内でみもみもの痕跡を探してくれてる間に私はお付きの運転手さんを呼んで大赦本部へと向かった。

 

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大赦本部へ行き私が話せる範囲の人と話すも誰も彼女のことを覚えていない。

GPSなら彼女の居場所が分かるかもという一縷の希望をふと思いつき、乃木の権力や私という存在(生き神)をフルに活用し、「少し」怒りながら掛け合い、勇者端末を戻してもらった。

引ったくるように奪って急いで起動してみたがやはりこの世界(四国)に彼女の反応はない。

…死んでしまったとは考えたくない。外の世界にいるのだろうか。

 

慌ただしくなった施設を後にする。

待ってもらっていたお付きの運転手さんへ讃州中学へ行くようお願いし学校へ着くまでに今起きたことを振り返る。

 

大赦の人々は本当に何も知らないようだった。

わっしーのお父さんは不思議そうな表情をした直後、忘れていたことに気がつくとひどく動揺していた。良かった…やはり彼女の記憶が完全に消えたわけではないんだ。

帰り際、久しぶりに会った安芸先生にも彼女のことを伝えると無感情、冷徹に勤めようと

「そうですか」

と一言。先生、仮面をかぶっていても感情隠せていないよ。私たちのこと想ってくれありがとう。

私たちだけでなく大赦の人々も記憶を消されていた。神樹様がはたまた天の神か。どちらにしろただならぬことが起きている。大赦の人達も原因を探ってくれるそうだ。

 

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部室へ戻り勇者部の皆へ大赦から受けた新しい勇者システムの説明をそのまま伝える。

こんな時でも私の心配までしてくれるなんてフーミン先輩は優しいなぁ。慕われるわけだよ。

私が勇者システムに関する隠し事は一切しないと言う大赦の言葉を信じると伝えると

ゆーゆをはじめとしてフーミン先輩、にぼっしー、続いていっつんと皆も信じて行ってくれることになった。

素敵な仲間達に恵まれたね、みもみも

 

新しい勇者システムについて説明をしながら2年ぶりに変身。

跳躍を繰り返し壁へと到着した。

「この先はずごごごごって感じだから気をつけてね」おそらく壁の外を見るのが初めての子もいるだろう。

正直灼熱の死の世界へ再び足を踏み入れるのは怖い。

そんな気持ちを知ってから知らずか 

「あたしが先頭をいくから園子はサポートをお願い」

今代の赤い勇者が先陣を切って壁の外へ進もうとする

「にぼっしー、あまり前に出ないでね」

片腕を、命を失いつつも役目を果たしたミノさんと重なりとても儚く危うい存在に見えてしまった。

 

外の世界は相も変わらず壮絶な光景だ。すぐに端末を見る。

…レーダーにみもみもの反応があった!生きてる!

端末が指し示す方向を見ると彼女はブラックホールの中にいるようだ。

距離がある上に星屑や星座達の反応がある。もう二度と友達を失うのはごめんだ。星屑を薙ぎ倒しながら決意は固まる。

「満っ開!!」

力を温存して後悔するぐらいなら全力で進む!

 

「さあこれがわっしー行きの船だよー

みんな乗って!」

 

-------

 

ブラックホール近くまで来れた。しかしブラックホールから出ているのだろうか、周辺の風と熱がすごい。更に悪いことに星座達に囲まれた。

それぞれ2回戦っていてある程度特徴も把握しているつもりだ。大丈夫、いける。

 

「ゆーゆ、わっしーのこと、お願い」

私達は全てを飲み込む中心へと突っ込んでいき中心と思しき場所へゆーゆを送り届けると星座達と戦闘を始めた。

 

-------

 

30分ほどだろうか。全ての敵を倒しやっと一息つけた。

「帰ったら東郷にはお説教ね」

まったくいっつも相談しないんだから…とフーミン先輩がぶつぶつと言い始めてしまった。お母さんみたいだと笑ってしまう。

 

…刹那、懐かしい日の君(大好きなミノさん)の香りが淡く、フワッと漂ってくると共に優しく頭を撫でられた気がした。生涯決して忘れるのことないだろう大好きなあの子の匂いと頭の撫で方…まさかね。疲労からくる幻嗅と風かな…?

 

直後、凄い衝撃と共にブラックホールが消え、ゆーゆがみもみもを連れて戻ってきた。

嬉しさと共に満開の限界が迫っていることを昔の感覚で分かった焦りで全速力で壁の中へと帰還する。

 

-------

 

気を失ったままのみもみもに外傷は見受けられないので霊的医療班の人達がいる病院へと運び込む。

大赦の人曰く、みもみもは本来生贄になる分以上のエネルギーを持っていたおかげで死を免れたそうだ。外の火は安定し追加の生贄も必要ないとのこと。

本当に奉火祭は終わったのだろうか。

勇者システムに「関しては」隠し事をしないと言ってくれたが他のことはどうだろう。

…大分大赦を疑り深くなってしまっている。まずは無事だったことを喜ぼう!

 

数日後、みもみもが退院したその日に私の家に泊まりたいと言ってきた。

断る理由もなく迎え入れ後は寝るだけ。そのタイミングで真剣な面持ちで私への話があると…なんでもゆーゆに助けられる直前ミノさんと会っていた。と言う。

やはりミノさんが助けてくれたんだ!感情を堪える理由も無くわんわんと夜通し抱き合って泣いた。

私達は全員無事に帰ってきたんだ。まだ平穏な日常が送れるんだ!

 

…そんなことはなかった。

世界は私達へ牙を向いたままだった。

 

壁の外から帰ってきてからゆーゆの様子がおかしい。

大橋でリーダーを務め、それから2年間大赦の人々を見てきたんだもん。多少は他人の感情を読み取る能力も上がる。

新しくなった勇者システムは散華はないと言うものの連続でゲージを使いすぎた代償ではないか。

春信さんへ調査を依頼した。

 

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学生生活を行いながらゆーゆを観察する日々を送っていたある日の夕方、フーミン先輩が車にはねられたといっつんから連絡があった。

犬神が。精霊バリアがありながらなんでそんなことに…?疑問を浮かべつつも

「もうでた」グループトークにそう発信しおっとり刀で病院へと駆ける。

 

「ひとまずは…だね」

意識も戻り、命に別状はないとのことで心の底から安堵した。

いっつんからフーミン先輩の端末を見せてもらったがしっかりゲージが一つ減ってる。

…やはり何かが起きている。

取り敢えずその日は帰ることに。

オペ室の前で待っている際もだったがゆーゆの瞳の裏にふーみん先輩が事故に遭った悲しみとはまた別の罪悪感のようなものを感じた。

 

私に直接聞く勇気がなくてごめんねゆーゆ…

以前の勇者システムに関することに加えゆーゆについても何か異常が起きていないか調べてもらうよう春信さんへ連絡をした。

 

数日後のクリスマス。病院へ行くとしおりが落ちていた。押し花のしおりとなるとゆーゆのだろう。何か急用があったのかな。

明日返してあげよう。

そう思い手を伸ばす。あの花は…勿忘草(わすれなぐさ)だろうか。

確か花言葉は「私を忘れないで」「真実の友情」だったっけ。この前のみもみもがブラックホールになっても友情パワーで助けましたたことを思い出すなぁ。

そこからゆーゆがおかしいんだよね。と特に気になったキリギリスのお話を思い出した

アリ(みもみも)借金(奉火祭の贄)を肩代わりするキリギリス(ゆーゆ)

その話をした翌日のゆーゆ以外の皆の不幸

 

普段は直球な物言いをするゆーゆが苦悶の表情でアリとキリギリスの例えを引っ張り出した事。

昨日のお見舞いの時に

「あ、スマホの写真渡さなきゃ」とフーミン先輩が言っていた事をよく聞いてみると事故の前にゆーゆから相談を受けていて途中で本題から逸らしたように感じたとの事。

 

「私…分かっちゃったかも」

春信さんへ急いでゆーゆを調べることを中止するよう電話した。

忙しいのか代わりに彼の右腕と称される人が出た。言葉を選んでいるのか数秒置いた後大赦も大体のことが分かってきたこと。上手くまとめて後日何が起こっているのか伝える。といったことを話された。

 

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お正月、フーミン先輩の退院祝い兼正月祝いということで皆を私の家へ招待した。

お手伝いさんを帰した後に本題であった西暦時代の勇者御記を皆で読んだ。

私のご先祖さまなのだろう。乃木若葉という人が書いたもので検閲でほとんど読めなかったけれど西暦時代の4人の勇者が命をかけ壮絶な戦いの末に四国を守り抜いたということは分かる。

 

ご先祖さまごめんなさい。こんな世界終わってしまっても良いやと思ってしまっていました。

申し訳なさでいっぱいになる。

…でも私はやはり世界より友達をとると思います。

 

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ゆーゆの調子が悪いことが増えてきた。彼女の異変におそらく勇者部員全員気が付いているだろう。

 

そんなある日春信さんの右腕とされる人からお伝えしたいことがあると連絡が来た。きっとゆーゆのことだ。すぐに大赦本庁へ向かう。

 

ついてすぐ個室へ案内された。

まず最初に連絡が遅くなったことを謝られた。

なんでも春信さんが突然倒れて入院。

彼の行っていた膨大な量の業務が滞り、彼は病床でそれらの引き継ぎや今回の伝え方の指示をしているそうだ。

入院に伝え方の注意…やはり私の予想は正しかったのか。冷や汗が背中を伝う。

 

ではご説明に入らせていただきますと言って今回のことに繋がるからとまず私たちの返された散華について色に例えて説明がされた。

 

身体機能や記憶が消える散華=脱色。

神樹のエネルギーを塗料としてできる限り元の色(機能)に似せて戻したものが着色。

今回の自分達が戻ってきたと思ったものは元のものではなく作られたものなのだと。

それ故に乃木園子様、結城友奈様は身体中が神のエネルギーで溢れていると説明された。

だから皆が馴染むまでしばらく違和感を感じていたのだという。

 

ああ…ずっと私がみもみもに感じていた違和感の理由も分かってしまった。彼女は限りなくわっしーに近くはあるけれどもわっしーではない。

わっしーは二年前の大橋で「終わり」を迎えたのだ。

…今は感傷に浸る時間はない。ゆーゆのことを聞かせてと話を急かす。

 

かしこまりました。と

学校のテスト用紙のような数字の横が空欄になっている紙とペンを渡された。

何を…?と思っていたら言われた数字のところへ書き込んでいくよう言われた。

 

神官が一人入ってきては順不同の数字を言った後に2.3言言っては出るという不可思議な行動が十数回にわたって繰り返された。

何故まとめて伝えないのだろう。そんな疑問も神官さん達からの情報をまとめるうちにだんだんと分かってきた。これがさっき言っていた伝え方か。流石春信さんだ。

 

最後まで書き切った紙を見返す。まとめると

『ゆーゆは天の神からタタリを受けている。

それはとても強いもので少しでも詳細に踏み込もうとした者へ呪いが発動して何かしらの「不幸」という形で表れる。

私たち勇者は精霊がゲージを使わない程度の結界が張られているためタタリはかなり弱められてはいるものの貫通するそうでフーミン先輩の事故の件もおそらくタタリに関するものだろう。

本人から伝えられなければ比較的呪いは弱い。しかし呪いを弱い段階で留めることに越した事はないため複数人それぞれに断片的なごく少数の情報しか与えていない。』

といった内容だった。

 

それでも尚春信さんは祟られてしまったということなのだろう。

精霊の結界を。精霊バリアを使っても尚フーミン先輩があの重症なのだ。強大な神の力の一端が窺い知れる。

 

皆へお礼を言って春信さんのお見舞いに行く。無理に起きてくれたようだ。今にも死んでしまうのではないかというくらいとてもやつれていた。

全身汗だくで酸素マスク。最近は1日のほとんどが昏睡状態だという。

そんな状態なのに彼は夏凜には伝えないでくれという。なにやら一発逆転のチャンスがあるとかないとか。

安芸先生が関わっている計画のことだろうか。深くは聞かないことにしよう。

 

霊的医療班の人に彼の状態を聞いてみる。[原因は知らされていない]がだいぶ強い力で呪われていて

彼の余命はいくばくかというレベルなのだという。大赦の秘匿体質を珍しく良い方向に働いている。

 

さて、皆にどう伝えようかと考えながら帰路について数時間後、みもみもからゆーゆ以外の全員にこっそり集合するよう号令がかかる。

みもみもがゆーゆの部屋からどうやったのか勇者御忌を取ってきた。

大方お見舞いとしてゆーゆを寝かしつけた後にこっそり拝借したのだろう。

…不法侵入して泥棒じみたことはしてないよね?今度聞いてみよう。

彼女の勇者御忌を開こうとする前に

「私からも良いかな」

天の神のたたりの危険性を伝えた上で皆とゆーゆの勇者御忌を読んだ。

大方は大赦の人達から伝えられたことと同じだがやはり本人の目線で語られるとより来るものがある。

勇者部5箇条も封じられ苦しみを誰にも言えない上に春まで生きられないほど命が侵されているとは…絶句した。

 

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ゆーゆの不調の原因を知りながらも何もできない八方塞がりな日々。こちらが知ってると言ってゆーゆの想いを吐き出させれば一時的には彼女の気持ちも楽になるだろう。しかしその後何かが起こったら例えそれが祟りのせいで無かったのだとしても優しい彼女は自分のせいだとより苦しんでしまうだろう。

 

以前、半ばやけでいっそ神様ぶってやろうかと神話や呪いに関する書物を読み漁ったことがある。

私は何かヒントはないかとそれらを読み返していた。大赦の人々が手を尽くしても解決法が見つからないのだ。大元を潰す、諦めるくらいのものしかない。

日本神話の天岩戸という話が妙に心に残った。

 

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ゆーゆが神婚をするという。

授業前にやつれた彼女から聞き慣れないワードが出てたが「放課後部室で皆に話すよ」と引き伸ばされた。

神婚とは神樹様と人類の代表として婚姻をし人類が皆神の眷属になる儀式だという。婚姻をした人間は人として死ぬ。そんなことを私たちが許容するはずがない。

どんな言葉も彼女に届かず喧嘩別れのような形になってしまった。

どうにかしようとゆーゆを探していると大赦本庁から勇者様がたへ通達がある故学校前に停めている車に乗り込んでいただくようお願いしますといった電話があった。

 

今思うと何処へ行けばいいか言えば勇者の私たちならすぐだったものを行き先を言わずにわざわざ車に乗らせたのは

・神婚の儀を私たちの邪魔が入らない今のうちに進めるため

・神樹様のエネルギーを少しでも温存するため

の二つの目的があったのだろう。

 

そうして到着したのは大橋の近く、歴代の勇者や巫女達…ミノさんのお墓もあるあの場所だ。

異様な雰囲気に包まれ、すぐ止んだ不気味な警戒音。嫌な予感のする風に吹かれれながら私達は安芸先生から神婚成就まで天の神の攻撃を凌げと最後のお役目を通達される。

 

まるで四国全体にプレッシャーをかけているかのような存在感のある巨大な鏡のような見た目をした天の神が攻めてきた。

人類を300年以上にわたって箱庭に押し留めていた原因。元々が天の神の権能だったのだろう。星座達の攻撃をより強力に、苛烈にした絶望と表現するにふさわしい激しい攻撃が続く。

 

満開したにぼっしーが攻撃を捌いているのが見えた。援護に行こうとするみもみもを制止する。

「わっしーはゆーゆを助けに行って。

あの時は間に合わなかったからね…

今度は必ず全員で帰ろうね」

そう言ってみもみもを送り出してからふと気づいてしまった。

 

「乃木家の人間は代々大切な人の最後に立ち会えない」…仕方のないことなんだ。

私が幼い頃に執り行われた祖父の葬式で父が自身に言い聞かせるかのように言って涙を堪えていたのを思い出す。

 

ミノさんの時もわっしーの時も、この前のみもみもの時だって。

いつだって誰かがいなくなるかどうかの瀬戸際の場に立ち会えない。

もしかしたら今回のゆーゆも…そもそも天の神の攻撃を防ぎ切れなかったら私の両親と二度と会うことも叶わない。

…ぶんぶんと頭を振ってネガティブな思考を切り替える。これで最後になんてさせない。

もしゆーゆを救うことで世界が滅ぶのだとしたらそれは「仕方ないこと」だ。

この世が終わってしまったらあっちでミノさんにたくさん謝ろう。

私は孤軍奮闘しているにぼっしーのもとへと跳んだ。

 

-----

 

槍を展開し盾状態にする。紙一重でにぼっしーを狙う反射してきた矢を防げた。

「一人で前に出過ぎちゃダメだよにぼっしー」

間に合った…!今度こそ守るんだ!帰るんだ!

 

天の神はそんな決意と淡い希望すら嘲笑うかのように打ち砕こうとする。

ぐるっと囲う6本の蠍の尾が迫ってきた。

過去の絶望、天の神の権能、ミノさんを殺した3体目。同時に蠍座の毒針が襲ってきた。

 

ごめんねみもみも。皆で帰るという約束守れそうにないや。でも、せめてにぼっしーだけは…!

片面を変化させた盾、もう一面を私の肉で屋根のようにして少しでも防いでにぼっしーを下方へ蹴り飛ばして逃そうとする。

 

…満開したいっつんが攻撃を封じてくれたおかげで私の命は首の皮一枚繋がった。

いっつんが加勢してくれたおかげでだいぶ凌げるようになった。

 

本当は天の神も地の神もどうでもいい。

私たちは弄ばれすぎた。

でもどんな世界だってそこに大切なものがあるから…

それだけは絶対にもう奪わせない!

そんな事を頭の隅で考えながら3人で攻撃をいなしていると、突如獅子座以上の熱さと大きさの火球が放たれると同時に遠くの方で連続した爆発音が聞こえてきた。みもみもとフーミン先輩にも攻撃を加えてるんだ。

にぼっしーと顔を見合わせ頷き合うとレオの火球に正面から突っ込む。おそらくこれが正真正銘全てを振り絞った最後の一撃になるだろう。

 

盾となった私の武器で満開したにぼっしーの最後の一刀と私達を火から守ろうとするがもう限界が来ていたようだ。ヒビが入りバラバラになっていく。

最後にもう一踏ん張りだけお願い!

 

「これが」

「勇者の」

「「魂ってやつよぉぉぉぉ」」

 

私達の熱に応えるかのように、全てを焼き尽くそうとする獅子座や外の火とは異なる暖めてくれるような優しい火がにぼっしーの武器を包み込み、見たことがある気がする武器へと変化した。いける!

 

ミノさんを、わっしーを、皆を。302年間

苦しめてきた天の神に報いを!

 

そのままの勢いで天の神へとお見舞いしようとするが一枚隔てたところで遮られた。

天の神も勇者のようにバリアがあるというのか。勢いが徐々に削がれていく。防ぎ切られてしまう。

…一瞬全ての分子が動きを止めたのかと思うほどの静けさを挟んでから大気を震わせるほどの轟音と共に地上から発射されたのだろう。

高エネルギーの攻撃がバリアを破壊した。

 

一瞬だけ目線を音がした右下方へ向けると目の端で大きな彼岸花が咲いているのがちらと見えた。

(…千景先輩…?)

ふと、どこか懐かしさを感じる名前が自然と頭に浮かんできた。誰だろう。記憶を辿ろうとする思考を断ち目の前の事に集中する。今そこに思考を割く余裕はない。

 

天の神の中心部にヒビが入った。

このままいけると思いきや完全に勢いはそこで止まる。弾かれた私たちは落ちていく。

 

「これで…わっしー達が…」

全身全霊の一撃だった。もう指一本も動かせずに重力に身を任せるだけとなる。

 

一瞬上の方にミノさんの武器が見えた。見覚えがあるわけだ。

にぼっしーの端末の記憶と変化する武器の能力、私の想いが重なり合ったのかなぁ…

まだまだミノさん離れできていないや。ありがとうミノさん。

斧は光の粒となって消えていった。

 

ああ、この高さから落ちたら流石に死ぬな。

ミノさん。私もそっちに行くよ…いや、過去に守りきれず犠牲を出した上に世界を破壊しようと唆した私がミノさんと同じ場所に行けるわけないか…

 

「いっつん!?」

 

またもやいっつんが救ってくれた。「皆で帰る」だなんてそんな強い意志のこもった表情で言われるとまだまだ踏ん張れると思っちゃうや。次期部長の座は彼女かな。なんて疲れ切った頭でぼんやりと考えた。

 

地上に着いた時点で彼女の満開も限界を迎えたようだ。私達3人に対抗手段はもうない。

 

天の神の最終攻撃なのだろうか。

星屑は消え、樹海の温度が上がっていく。

壁の外と同じような理の書き換えを行っているのだろうか。

 

ここまで来るとやはり最後は神頼みなのかもしれない。

「人を…信じてくれませんか?」

…なんて神樹様へ声が届くわけないか。

流石にいよいよ万事休すかと諦めかけたその時、どこかへ光が集まっていくのが見えた。

光の先を追う。神樹様の方だ。

しばらくして神樹様のてっぺんで黄金色の光に包まれた蕾が開いた。

遠目からでもはっきり分かるほどの今まで見たことのない大輪の、涙が出そうなくらい綺麗な花が咲き誇る。

 

真ん中にゆーゆとみもみもがいる。間に合ったんだ!

神々しい姿のゆーゆが絶望の光をかき分けながら天へと昇っていく。

「いっけー友奈!」

隣にいたにぼっしーが叫ぶ

「友奈さんの幸せのため」

いっつんも声を張る

「成せば大抵」

私も叫んでいた

「なんとかなる!」

みもみもの声が神樹様の方から聞こえてきた

「勇者部〜!」

フーミン先輩の声が何処かから聞こえてきた

「「「「「ファイトォォォオ」」」」」

ゆーゆの後ろに私達の花が出現し、彼女を力強く押し上げていく。

 

彼女を脅威と認めた天の神がより力を強める。このままでは押し負ける

 

「勇者は…根性ぉぉぉぉぉ」

静寂の樹海に心の底から響き渡るゆーゆの振り絞るような雄々しき声。

それに呼応するかのようにミノさんの

「たましい」を見た。

 

呼応するかのように三つ巴が最後尾に浮かび上がってブースターとなり彼女をより強く上昇させていく。

「ミノさん…」

ぽつりと声が漏れた。

 

私とにぼっしーがつけた傷に的確にゆーゆのパンチが決まる。天の神は割れて砕けていった。

 

-----

 

気づけば樹海化が解けていた。

「よくやった」とでも言っているかのように青い鳥が私達の上を一周してから遠く遠くへと羽ばたいていった。極度の疲労による幻覚だろうか。

 

天の神は打ち砕かれ撤退した。

神樹様は枯れた。

天の神によって書き換えられていた四国外の理を戻したことによりいよいよ力を使い果たしたのだ。

 

こうして300年以上に及ぶ勇者のバトンは一旦ゴールを切った。

 

------------------

 

後は皆が知る限りだ。

 

神樹様に生かされていた人類はいきなり独り立ちをさせられることとなった。

神樹様の恵みが無くなった事で食糧難に陥りかけている。

また、大赦によって発表された外の世界の真実を出まかせだと信じないもの、強引に確認しようとするもの、絶望的な事実に打ちひしがれるものなど様々で自殺者も出ていると言う。

 

どこまでも人思いな神樹様は自身の亡骸を化石燃料とした。有効な活用法が模索されている。

 

大赦も神婚の際に神官や巫女達の大半を失ったわりに頑張っているとは思う。

とはいえこのままでは暴動が起きるのも時間の問題だ。天の神はもしかして人類が自滅する事を予期して手を引いたのだろうか。

 

ここまで人類存続のバトンが繋がれてきたんだ。途切れさせるわけにはいかない。元の暮らしに戻れるよう頑張ることが勇者の本懐…

なにより勇者部の皆を悲しませたくない。

私は壁が無くなってから数日後、大橋の戦いによって亡くなったフーミン先輩といっつん…いや風先輩と樹ちゃんのご両親へのお墓参りをした。

買い取った無人島にミノさんとわっしーとの思い出の建物や公園を作るための工事依頼は完了。前金も渡し工事に着手してもらっている。

 

大赦を潰す前にやりたいことは大体終わり。

後は退部届を出すだけだ。

フーミン先輩やみもみもに唆されたと思われて彼女達を巻き込ませたくない。

 

2年間何もできなかった分、たくさんの罪を背負った分頑張らなきゃ

 

これは私の懺悔であり

決意を改めるための振り返りだ

 

勇者部5人にどうか平穏な日々を…

 

○------------------○

 

「ふぅ…こんな感じかな」

んー改めて書き起こすとアツい女の子になってるなぁ私…ミノさんの影響をもろに受けたんだろうなぁ

 

バタン

 

「行ってきます」

 

内側の胸ポケットに入れた退部届を確認しながら私は学校へと足を向けた。

 

まるで「行ってこい」と微笑みながら告げるかのような暖かい風が優しく背中を押す。

 




チラッと作中にも出しましたが
ゆゆゆい 2021年バレンタインイベントの
「めぐる想いのアイランド」後編ラスト
ミノさんへ想いを吐露する園子(中)とっても良いから皆さん見て…

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