警報は自宅で鳴り響いた。
手にした端末は避難を促す短いメッセージが綴られていた。
――ああ、ここもついにか。
漏れ出た感想は、自分でも意外なほど簡素なものだった。
全国での被害状況、出現の頻度。
低い確率ながらあり得るだろう、としか言いようがなかった。
私は自室を眺めた。
長い机の上に所狭しと並べられたディスプレイ。
捨てられずに棚に保管されたグッズ類は、結果として私の来歴を簡潔に示していた。
(防音対策、頑張ったんだけどなあ……)
赤字の上に赤字を重ねた設備も放棄することになる。
さすがに持ってはいけない。
このままできる限り安全な場所へ、黙々と移動すれば私は「良い住民」なのだろう。
でも、なぜか悔しいから。
私は言葉を発するのだ。
周りの誰かに対してでも、ましてや自分にでもない。
それはただ空気を、わずかに揺らすだけ。
「避難避難って簡単に言わないでよ……もうっ……」
私はあらかじめ用意していたリュックサックを担ぐと玄関へと向かった。
後ろを振り返る。
何となくここには戻ってこれない気がした。
だから目に焼き付けておいた。
私のやってきたことを。
「……?」
何を、やってたんだっけ?
私の目の前には白い壁の大きな建造物。
教育機関の施設。
一体、どうしてこんなところに――。
そうだ、私は桃原桃美。
小学六年生。
ひょんなことから魔法少女をすることになった。
戦いは大変だったけど、なんやかんやで切り抜けてきた。
でも、今回は負けてしまった。
その結果、紫ちゃんが――。
「そうだ!!!!!!!! 紫ちゃんは!?!?!?!?」
「五月蠅いわね。耳元で騒がないで頂戴」
私の肩の上で妖精さんが怪訝な顔をする。
そうだ、
あの戦いで出てきた鬼に私達は全く太刀打ちできなかった。
そして紫ちゃんが私を庇って連れ去られたのだ。
空を見上げてみる。
依然として、暗雲が立ち込め、光は閉ざされている。
「紫王紫は改めて迎えられてたのよ。深淵なる闇の核として、ね……」
「深淵なる闇の……核!?」
妖精さんは深刻な顔をしていた。
それは紫ちゃんの身を案じてではないと、わかってしまった。
「……私は行くよ。妖精さんがどう言おうと、紫ちゃんを助けに」
「どこへよ? 私に案があるから付いてきて頂戴」
「あ、待ってよ!!」
妖精さんが私の目の前を飛ぶ。
それにしても、と考えた。
アパートらしき一室の、一人暮らしの風景。
唐突に鳴るアラーム。
崩れていく日常。
あれは一体、誰の
緑に発光するそれに導かれ、私は学校の門をくぐった。
私はアパートの自動ドアから外へ出た。
周知されている情報の通り、昼間だというのに外は暗くなっていた。
周囲の民家からも続々と人が出てきて、騒然としている。
家族らしき一団の、恐らくは父親と母親が喧嘩しているのが目に入る。
余計な混乱が起きなきゃいいけど……。
そんな風に考えながら歩を進めた。
半年ほど前のこと、「モンスター」なるものの存在が確認され、対応策が発表された。
我が国を中心に現れたそれは、瞬く間に世界規模の厄災となり人類の目下の懸念となった。
共通の敵が現れたことで人類は結束……なんてするはずがなく、モメにモメている。
先行きの見えない不安からか犯罪も急増し、すっかり物騒になった。
仕事以外ではなるべく外に出ないようにしていたのに、こうして外へ出ないといけないのは皮肉な話だった。
(仕事、特別休暇扱いになるんだっけ。有給消費しないのはラッキーだな。……あっても使えないけど)
そういえば、とまた別の思考が頭に割り込む。
こうやって雑多に考えるのは、やはり浮足立っているのかもしれなかった。
(進路相談、あれでよかったのかなあ……)
半年ほど前、ちょうどモンスターが出現する少し前のこと。
自分が趣味でやっていた配信に寄せられた質問。
高校生らしい、初々しい内容だなと思った。
実際、それを送った人がどんな人かはわからない。
文字ベースのやり取りだ。
年齢や性別だって本当のところはわからない。
そうしたものは真に受けないことにしていた。
それでも自分なりに真面目に回答をしたのは、本当に悩んでるかもしれない誰かが、この世界にいるかもしれないと思ったから。
たった一人であっても、その人の力になれたのなら配信者冥利に尽きるのではないか。
(そんな風に考えるモモミンであった、まる、と)
さあ、と私は改めて足に力を込めた。
荷物は万全のつもりだったが、その分だけ重たかった。
(誰かの力に頼るんじゃ、いつまで経っても変われないから)
モンスターに遭遇したら、どうにもならないだろう。
映像で見たが、野生の熊より一回り大きく、人間がタイマンで勝つのは無理筋だ。
何でも専用の対策組織があるらしいが、私のような一般人には知らされていない。
(ヒーローでも現れて助けてくれたらいいんだけどね)
ふふっ、っと自嘲気味な声が漏れた。
(……魔法少女なんて現実にはいないから)
「魔法少女に何とかしてもらうのよ。この状況を打開できる唯一の、ね」
「それって……黄依ちゃん? そう言えば黄依ちゃんは無事なの!?」
校庭のトラックを突っ切りながら会話を続ける。
妖精さんは、私の肩に戻ると嫌味ったらしく言った。
「黄原さんが無事じゃない、わけないでしょう。一緒にいてそんなこともわからなかった? あの子の実力はあなたより遥か上よ」
「……少し言い方ってものがあるんじゃない?」
「あはは!! でもいいわよ。桃原さん、あなた結構クチが悪いわよね? 今更だけど気が合いそうだわ」
「……嬉しくない」
クチが悪い。
そうだ、私は普通にしているつもりなのに。
思ったことを言うのは他の人にとって辛辣らしいから。
だからいつの間にか自分の思考に蓋をするようになった。
理想的な少女を演じるようになった。
それは、さっきから見えていた「私」もそう言っていたではないか。
「……ねえ妖精さん。私、さっきから過去なのか、未来なのか、よくわからない物が見えてるんだけど……」
「ああ、そうなの? 恐らくは記憶が甦ったことによる混乱でしょう。ここはあなたと、紫王紫と、黄原さんの認識の世界。そこに過去も現在もないわよ。今、見えていると思っている現実は感覚器官を通して『ある』と認識しているものに過ぎない。それはつまり、過去の記憶として頭で再生されることと何の違いもない。本物の現実は、誰にもわからない。そうでしょ?」
「……」
「ふふ、説明が難しかったかしら?」
「……例えば、複眼の虫は人間よりも死角が遥かに少ないし、目が退化して超音波で周囲を認識する動物もいる」
「……?」
「私たちの世界は、私たちがこうだと認識しているに過ぎない……ってことだよね」
そんなところね、と妖精さんは答えた。
実際に何が存在して、何が存在していないのか。
世界は人間の五感程度では認識できないくらい未知で埋まっているのかもしれない。
それはさながら、地を這う虫が、大空を知らずに命を終えることだ。
人間は自分の
そして、だからこそ――。
他者の
「……紫ちゃん」
思わず、そこにいない人の名前を呼ぶ。
ずっと、隣にいた人の名前を。
「妖精さん、黄依ちゃんに紫ちゃんを助けてもらうってどうするの?」
「……。どうもこうも。黄原さんに深淵なる闇を倒してもらうのよ。場所は、きっと屋上でしょうね、座標的に一番近いから。あなたにも是非とも説得してほしいわ」
「それで紫ちゃんは助かるの……?」
「……」
「よ、妖精さん!! 都合悪い時は黙るよね!! 段々わかってきたよ!! 目をそらさないで!!」
「ああ!! あなたも黄原さんの強さを知ってるでしょ!! 兎にも角にも急ぐわよ!!」
黄依ちゃんの強さ。
そうだ、私はそれを良く知っている――。
「いや、知らん……知らん、知らん、知らん……」
尻もちを付いたまま、私はうわ言のようにつぶやいていた。
小学校へ至るまでの見慣れたはずの道。
そこにあったのは見慣れない陰。
目の前には、獅子の姿に羽根が生えた漆黒の獣。
鋭い牙と爪は、いかにも殺傷力が高そう。
さながら戦うための種といった風情だ。
これは終わったか。
つい今しがた目の前に落ちた黒い稲妻。
運良く直撃は免れたものの、衝撃で地面へ倒れ、そのまま腰が抜けてしまった。
ちなみに周囲の人は、悲鳴とともに逃げ出した。
一般的には、正解だと思う。
「知らん……知らん知らん……知らん……」
獅子が軽く飛びあがり、近づいてくる。
思考回路は焼き切れたらしく、映画のワンシーンのように目に見える風景をスローモーションに演出した。
どうも、あまりの恐怖を和らげるための処理らしい。
これが現実なら、確かに耐えられない。
だから現実感をなくしたのだろう。
獅子が私の前に着地した。
獅子が一歩、また一歩。
私の元へ、また一歩。
まるで歳末の鐘の音。
私の命もバーゲンセール。
またのお越しをお待ちしています。
「いやああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!」
自分でもビビるくらいの絶叫。
まるで映画のワンシーン。
でも、これで最後。
終わり――。
その時だった。
遠くからトラックが突っ込んできたのは。
「ああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!?!?!?!?」
私の伸びきったガラガラ声が裏返る。
まるで絶叫に導かれるようにトラックが道路から歩道へと突っ込む。
「ああああぁぁぁぁ!!!!」
トラックは獅子へと突っ込んで行き、私は回転しながら後ろへのけ反った。
良かった。
トラックに轢かれて終わるのではと内心ひやりとしたからだ。
大型車に轢かれるなんて痛そうだし大分嫌だ。
獅子はどうもトラックの向こう側へと逃げたらしい。
私はこの窮地を救ってくれた物体を見る。
コンテナ部分はいたるところに継ぎ目が入っており、電子基板の配線パターンを思わせる模様を描いていた。
継ぎ目から煙が吹き出す様子は、さながらフル稼働しているボイラーか。
どうやら普通のトラックでないことは理解した。
継ぎ目が、ゆっくりと花開くように……いや、思ったより、たどたどしかった。
……プラモデルのやや無茶がある変形ギミックのように、階段へと変わる。
コンテナの横っ腹から私の方へ下っていく階段ができあがった。
階段から一人の少女が姿を現す。
セーラー服を着た何の変哲もない少女。
手にするは白銀のステッキ。
その違和に気づいたのはしばらく見つめてからのこと。
より正確に言えば、少女の長い桃色の髪に私は目を奪われていた。
情報を整理しよう。
ピンチに颯爽と現れ、戦うための武器を持ち、その髪は鮮やかな色彩を示す。
これはまさしく――。
(ま、魔法少女だああああぁぁぁぁ!!!!)
「……」
少女が階段を一段ずつゆっくりと下る。
まるで堕天使が現世へと降りてくるように……。
少女は地面に降り立つと、キョロキョロと辺りを見回した。
どうにも落ち着かない様子だ。
少女は私に近付くと、話しかけてきた。
「あ、あの……モンスター、いるらしいんですけど、どこにいるか、わかります……?」
「え? ああ!! トラックを挟んだ反対側!! 助けにきてくれたんだよね!! 頑張って!!」
少女はなおも、オロオロとこちらを懇願するように見ている。
あまり慣れていない魔法少女なのかもしれない。
無理もない、私も初めての配信の時は緊張した。
バサッと音が聞こえた。
羽根を広げた怪物が、車両を跨いでこちら側へと降り立った――。
「ひええええぇぇぇぇええええぇぇぇぇ!! こっち来たあ!! 魔法少女の方!! 気を付けてください!!」
「……」
良く見ると少女の足は震えていた。
顔色もみるみる青くなっている。
「あ、あの……無理はしなくていいからね?」
「……や」
「や?」
「やっぱり怖いいいいいぃぃぃぃ!!!!」
「ああ!! 私を置いて行かないで!?」
一目散に逃げていく少女の背中に投げかけた声は、虚しく辺りにこだまするだけだった。
後に残されたのは私と、怪物と、トラック。
今度こそ終わった。
最早、感覚が麻痺したのか。
すんなりとそれを理解する自分がいた。
隣から不意に声がするまでは。
「全く、初陣だからって敵前逃亡なんてね。後でお説教が必要だわ」
「あ、あなたは……?」
「ただのしがない研究員よ。今は現場監督をやってるわ。とりあえずあなたは私が保護するから安心して頂戴」
女性はスーツをぴったりと着こなし、その髪色は鮮やかな緑色を帯びていた。
恐らくは同年代だろうが、私などより何倍もしっかりしてそうだ。
羽根を生やした獣がこちらへと近づく。
「ひ……!!」
這うように女性の後ろに隠れる。
思わずその体に引っ付いてしまった。
「あ、あの……戦えるんですか? あなた?」
「そこそこはね。でも、現役じゃないから」
ええ!? と私は素っ頓狂な声をあげた。
じゃあすぐさまトラックに乗り込んで逃げた方がよいのではないか。
そう伝えるよりも先に、獣が飛び込んできた。
思わず目を伏せる。
今度の今度こそ――。
「休ませてあげたかったんだけど……黄原さん!! 頼むわ!!」
トラックの助手席から黄の閃光が走った。
そう見間違うほど速かった。
弧を描こうとした獣は地に打ち付けられた。
傍にいた少女がやったのだとわかった。
黄の髪を持つ少女が。
少女は見覚えのある白銀の棒を持っていたが、その様子は違った。
棒の先に黄の光球を携えている。
怪物を打ち倒したのは、この力なのだとわかった。
少女が二度、三度。
無慈悲に棍棒を振り下ろす。
羽根が飛び散り、尻尾が千切れ、頭が潰れる。
先ほどまでの脅威は、無残な姿へとなり果てた。
魔法少女なんていない。
目の前で戦っている彼女も、実は別の存在なのかもしれない。
でも。それで良かった。
身を賭して戦うその姿に、私は本物のヒーローを見た気がした。
彼女が何者であるかは、些細な問題だった。
金色の光を身に纏う横顔と、目線が合う。
黄を宿した瞳は、何故だか寂しげに見えた――。
「今のは私にも見えたわ。向こうの私に感謝するのね、桃原さん」
「……」
「あら、桃原さん? 私を見詰めてどうしたの?」
目の前には緑色に発光するビキニの妖精。
私の思考は再びグラウンドへと引き戻されたようだった。
前を行くその姿に、改めて新鮮さを感じたところだった。
「私と黄依ちゃんと妖精さんは既に出会っていた……? あと妖精さん、スーツの方が似合ってました」
「黙らっしゃい。でもあれが私とは限らないわね」
「……? どういうことですか」
「あなたの『誰かに助けられた』という記憶と、黄原さんや私の『現場へ急行して誰かを助けた』という記憶が入り混じった可能性よ。あなたが違和感がないと思えば、そうなるのよ」
「……。ここが認識の世界だから」
「そういうこと。随分と理解が早くなったわね、桃原さん」
足を動かしつつも考える。
私と黄依ちゃんは本当に会っていたのか。
そんなことよりも、もっと大切なことがあると思った。
記憶の中の黄依ちゃんが寂しそうな顔をしていたことだ。
ここが私達の認識が混じった世界なら、やっぱり黄依ちゃんはそういう想いを抱いていたのだろうか。
紫ちゃんは?
紫ちゃんは一体どう感じていたのだろう?
私の隣で本当に、楽しかったのだろうか?
私がそう、思いたかっただけじゃないのだろうか?
私は――。
私は一体、どうしたいんだろう。
足が止まった。
「あ!?!?」「桃原さん!?!?」
私の足元が、崩れていく。
地面がひび割れ、黒いものが噴出する。
「うわああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!」
体が、落ちる。
何の支えもない自由落下。
私の
何処までも続く闇。
何時までも続く虚無
何故、私は此処にいるのか。
此処にいるのは、何か。
何かとは、誰か。
誰かは――。
誰かは、
すすり泣いていた。
独りでずっと。
膝小僧を抱えて。
小さな子供みたいだな、と思った。
ここは
最早、関係のないことだった。
力を失った誰かが、そこにいるだけだ。
打ちひしがれた誰かが、その認識に呑まれているだけだ。
暗闇がささやく。
もういいじゃないか。
満足でしょう?
自分を偽って、人気者気分に浸れて――。
黒い物が周りを取り囲んでいた。
恐怖の具現化。
感覚を刺激し、侵食し、破壊する。
最期の瞬間はいつもこうだ。
誰か、誰か、誰か、誰か、誰か誰か誰か誰か――。
「誰か助けてよ……」
誰でもいい、誰でも、誰か、誰かいないの?
必死に周囲に目をやった。
誰か――。
小さな子供が目に入った。
「危ない!!!!」
私はそこへ飛び込んでいた。
体は小さな体を覆っていた。
痛みとも、熱とも取れる感覚が走り抜ける。
声が聞こえた。
――私は、イヤだ。
――私は、イヤだった。
――こんなこと特別、私はいらなかった。
そうか、あなたは――。
「……紫ちゃん」
そして、私は――。
「変身!!!!!!!!」
桃色の光が噴火する。
そうだ、甦ってきた。
あの時、誰かに助けてもらって、別れた後だ。
また、私は襲われて。
近くにいた小さな子供を庇って――。
そして、
あの時だ。
私達が本当に出会ったのは。
光と共に穴から飛び出る。
地面へと着地を決める。
そこには、桃色のドレスを身に纏う
黒い物も穴から這い出る。
瞬く間にそれは、黒い大蛇へと姿を変える。
黒い空を衝く大きな。
「桃原さん!! 無事だったのね!! それにその恰好!! ドレスは本人の魔法力に依存するからもう治ったのね!! やるじゃん!!!!」
「……私、だよ」
「は?」
「私が!! 私だよ!! 私が私が私が私が!!!!」
「何やらすごい興奮しているわね。まあいいわ、敵をやっつけちゃいましょう」
黒い蛇がこちらへ突っ込んでくる。
逃げる?
衝撃が走る。
避けれないものは、避けれない。
避ける必要すらない。
「ああああ!!!! なにモロに食らってるの!?!? 今のは避ける流れで――」
私は、杖で受け止めていた。
両の足で踏ん張る。
衝撃で地面が軋んでいた。
そんなことだって、もうどうでもいい。
「私が私が私が私が!!!!」
思い出した。
「
黒き物の口へと、杖を突っ込んだ。
「
大蛇の体を、桃の光が引き裂いていく。
溢れ出した光に耐え切れなくなり、黒い蛇は粉々に砕けていった。
後には桃色の光が残るだけ。
まるで一筋の道のように。
何処までも、迷いなく、真っすぐと。
「やるじゃない桃原さん!! 周囲の認識が歪んでたのもこいつの影響かしらね。既にこんなのが潜んでるなんて急がないと――」
私は既に走っていた。
後ろから妖精さんの声が聞こえてくる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! 急にどうしたの!?」
「私だよ!! 私がブイチューバ―をやってたのは、誰かに思いを伝えたかったから!! 偽るんじゃなくて、そうじゃないと本音が言えなかったから!!!!」
そうだ。
私はずっと変わっているって言われて、本心を隠して生きてきて――。
だから、創作物が好きになった。
嬉しさ、悲しさ、驚き、興奮。
そこにあるのは、私にとって本当の感情だったから。
造られたものだからこそ、それは絶対にあると言えた。
だから私はモモミンになったんだ。
自分の感情を、思考を、そして存在を誰かに伝えるために。
それが一人でも、二人でも良かった。
誰かの力になれさえすれば。
今は――。
「この世界が私達三人しかいないなら!! 紫ちゃんも黄依ちゃんも笑って終われるようにしたいよ!! それが私の願いだよ!!!!」
こんなにも単純なことだったんだ。
この世界にいるのが私達三人だけならば、私達だけのことを考えればいい。
よくわからない奴はぶっとばして、三人で笑えるように――。
「前言撤回するわ。桃原さん、私とあなたは違う人種だったみたい」
後ろから呆れかえった声が聞こえる。
それすらも、私の心にくべられた薪に過ぎなかった。
もう迷いはない。
魔法少女は、