魔法少女Imagine   作:MOPX

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始動!!!! 魔法少女系ブイチューバ―ゆかりん!!!! 愛と勇気と道徳の生配信!!!!

目覚めは、朝の日差しとともに。

 

今日も一日が始まる。

 

健康のためにと、日課となった散歩。

 

まだひんやりとした空気の肌触り、聴こえてくるささやかな音。

 

毎日、少しずつ違い同じものはひとつもない。

 

人はまだ、まばら。

 

 

 

人、ヒト、ひと。

 

全てが儚くて、脆くて、確かじゃないもの。

 

けれど私達の世界を形作るもの。

 

 

 

 

 

途中で女の子の二人組に声をかけられる。

質問に答えて、しばらく話し込む。

 

「すいません」と「ありがとうございます」。

 

別れ際に聞いた挨拶の対称さが何だかおかしくて笑みがこぼれる。

けれど同じように頭を下げる二人に軽く手を振り、そのまま別れた。

 

彼女達もどこかへ向かうのだろう。

 

良いことをした後は、気持ちが良い。

私がさてと、散歩に戻ろうとしたその時だった。

 

「やっほー!! おはよーモモミー!!」

 

「あ、黄依ちゃん!!」

 

黄色いジャージの見慣れた姿。

私のかけがえのない、親友の一人。

 

近くに住んでいるとはいえ、こんなところでばったり出くわすとは。

やっぱり今日は良いことがありそうだ。

 

黄依ちゃんが、出し抜けに聞いた。

 

「さっきの子たちは?」

 

「道がわからなかったから教えてあげたよ。旅行なんだって」

 

「あ~。卒業旅行かなあ~。高校時代を思い出しちゃうなあ。私達ももう一、二か所巡りたかったよね~」

 

「いつか海外にも行きたいね。 黄依ちゃんはどこか行きたいとこ……」

 

「もちろんイースター島!! 生モアイ、一度でいいから拝みたい……!! あ~でもでも、エリア51とかも捨てがたいよねえ」

 

「何か周囲までは行けるんだっけ? 本当に宇宙人に会えちゃったりして……ふふ!!」

 

いつも通りの親友に、苦笑いを浮かべる。

でも、いいかもしれない。

 

黄依ちゃんはいつだって、私達を遠くの世界に連れて行ってくれる。

取材にもなるだろうし。

 

「それにしても卒業かあ~。黄依ちゃんの妹達だと……黄穂ちゃんが高校に上がるよね」

 

「うん!! 受験でぐったりしてるか、寝ているか、食べてるかだったけど、いやあ、無事に終わって良かった良かった。元気が一番だからね!!」

 

黄原家の三女、黄原黄穂ちゃん。

昔に黄依ちゃんの家に遊びに行ったときに、何だか妙に懐かれてしまった。

以来、私も少し気にかけている。

……やっていることに勉強が入っていなかったのは、気にしないことにしよう。

 

「黄依ちゃん、偉いよね。妹のことまで気にかけて」

 

「ん~。好きでやってるだけだから……。黄結にはそれで反発されたしね……」

 

「あ~……。黄結ちゃん、まだプンプンしてるの?」

 

「あ、でもこの前、進路の相談を頼まれてしばらく話したよ。親には話しにくいって。いやあ、あの時はお姉ちゃん冥利に尽きましたな……。まあ、今度は黄乃が反抗期に入ったけど。家族全員を目の敵にしてるよ……はは……」

 

「た、大変だね」

 

「姉妹って難しいからねー。でも、こんなものなのかもって」

 

時が過ぎれば、ずっと同じではいられない。

でも、そうやって思い出は増えていくのかもしれない、なんて思った。

 

きっと、これからだって。

 

 

 

ふと、風が呼んだ気がした。

私はそちらに目をやり、思わず笑みをこぼす。

黄依ちゃんも気づいて、手を振った。

 

私のかけがえのない、もう一人の親友。

 

クールなようでお茶目で、優しいようで見栄っ張りで、真面目なようでちょっとズボラで。

 

私の、大好きな人。

 

「桃美ちゃん!! 黄依!! ふふ、何だかこんなところで会うなんて奇遇ね」

 

「紫ちゃん……!! 本当だね!! 」

 

「オッスオッス!! ゆかりんもランニング? ちょうど私達の家の間くらいだから、それでかな。もしくは、この特製ピラミッド型お守りの御利益が……」

 

「それはいいから」

 

あうーん、と黄依ちゃんがピラミッドを引っ込める。

紫ちゃんの長くて綺麗な髪は、風になびいていた。

 

私達三人のいつもの日常。

 

「でも紫ちゃん、いつも朝遅いのにどうしたの?」

 

「いつもって……!! ……まあそうなんだけど。ほら、やっぱり長く活動するつもりなら体が資本というか、誰かさんに倣って朝のランニングでもしよっかなーなんて……」

 

「誰かさん……!? ゆかりん!! それってもしかして……!! 嬉しいなあ~!!!!」

 

抱きつかないでよ、と声が響く。

少し照れたような、嬉しそうな調子で。

 

私はその様子を微笑ましく見守る。

 

 

 

紫ちゃんのやりたいこと。

それはブイチューバーとして活動すること。

 

高校生の時にそれを聞いた時、私はなぜだかとても嬉しかった。

うすうすは知っていたことだけど、その決心を自分の言葉で語ってくれたから。

 

雑談したり、歌ったり、好きな物を紹介したり、

そうして自分も見てくれてる人にも楽しんでもらって――。

 

誰かに手を差し伸べたいって。

 

 

 

夢は挑戦しなければ叶わない。

 

だから私も夢を答えた。

紫ちゃんの夢が叶うように手伝いたいって。

それはつまり、いつまでも一緒にいたいという意味。

その願いを込めた言葉はきっと紫ちゃんに伝わったのだろう。

 

にっこりと微笑んでから、それから私達の体が触れ合った。

 

黄依ちゃんにもこのことを伝えた。

あれは三人で下校している時。

驚きと共に心から嬉しそうな声で、黄依ちゃんも三人で応えてくれた。

 

だったら三人で夢を叶えようって。

 

 

 

三人で相談して、

三人でわからないことを調べて、

三人で準備をちょっとずつ進めて。

 

「紫ちゃん、次の打ち合わせも頑張ろうね!! 知識面で仕込みが必要だったら私が調べ物を……」

 

「桃美ちゃんには技術面でもお世話になってるし、あんまり甘えるわけにも……」

 

紫ちゃんの表情はきりっとしたものに変わっていた。

 

「……私がやりたいことをやるだけだから。お父さんとお母さんにも大分無理言ったし。独りでも、たとえ形が変わってもやっていく覚悟で……」

 

「紫ちゃんは立派だよ……!! 私もお母さんとは喧嘩してばっかだったけど、紫ちゃんを見習ってちゃんと話すようになったし」

 

「もう~何度目なのこの話。私もモモミーも好きで手伝っているんだって!! なんなら三人で会社作っちゃえばいいんだよ。私達、きっと何だって作れるはず!! あ、雑談のネタ出し担当は私が……」

 

「それはいいから」

 

「あう~ん。モモミー!! ゆかりんが冷たいよー!!!!」

 

三人で悩んで、三人で喜んで。

 

三人だから、楽しい。

 

 

 

思わず笑みをこぼした私に、親友が聞く。

 

「どうしたの? 桃美ちゃん?」

 

「モモミー、何か良いことあった感じ?」

 

問いかけと問いかけ。

私は笑顔で答える。

 

「何でもないよ。三人でいるだけで、楽しいなあ~って思っただけ!!」

 

そうすれば、

 

二人からも、笑顔が返ってきた。

 

 

 

「さてと、そろそろ戻ろうかしら。……私も頑張らないと」

 

「紫ちゃんはもうたくさん頑張ってるよ!!」

 

「私なんて、まだまだよ。……配信でコメントが流れている度に思うの、これら全部一人一人が考えたことなんだなって。ううん、きっと見てるだけの人も何かを考えたり、あるいは作業中に気を紛らわすために流してたり……みんなが違う距離感だろうけど、でも、それでいいんだろうなって……その、なんだ……」

 

 

 

「モモミー……!!」「黄依ちゃん……!!」

 

私と黄依ちゃんは抱き合った。

 

「ゆかりんがこんな立派なことを言うようになるなんて……!!」

 

「今夜はお赤飯だね……!!」

 

「あ、あなた達!! こういう時に結託するの止めなさい!! まとまんなかったし今のはなし!! はい、そこ!! 引っ付かない!!」

 

そのまま、私達は三人で歩いた。

 

みんな、自分の道がある。

けれど、その道を一緒に歩める人がいたら。

それはきっと幸せなことだ。

 

つまずいて、時には誰かに助けられて、誰かを助けて、前を向く。

 

私達みんなが、魔法少女(主人公)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はーい、みなさん、おはようごじゃ……ございまーす!! 嚙んでないし!! ちょっと雅言葉つかってみただけだし!!』

 

「……」

 

ディスプレイに映るは、髪が紫の少女。

まるで激流のように、それを聞いたもの達の反応が流れていく。

 

私はコーヒーカップに口を付け、傍らへと置く。

いつも同じ苦さを求めて口にするのだが、今日は少し違う味だ。

 

画面の中で紫の少女は、ワタワタと自己弁護をしていた。

そんな様子も、どこか愛おしい。

 

――きっとまた『夢』で会えますよ。

 

そう、あの子たちは(好き)を叶えたのだ。

 

「全く、気の利いたことを言ってくれるじゃない。……中身はあまり変わってないようだけど」

 

遠い国のどこかの魔法少女。

今日はモンスターとの戦いに疲れてお休みだ。

少女がもっぱら夢中なのはインターネットの配信。

 

歌うことが好きで、科学知識に明るく、妙に古代の遺跡やオーパーツに詳しい、そんな少女が語らう。

 

今日も今日とて、魔法少女は誰かに手を差し伸べる――。

 

そんな夢物語に乗っかるのも一興だ。

私達が想像して、私達が創造した物語――。

 

『はい!! じゃあ今日はね朝の質問コーナーとか……あ、その前に!! いつものアレ!! やるよアレ!!』

 

私は傍観者。

見ていて、聞き流して、たまに頭の中でツッコミを入れて、それで満足だ。

 

だけどたまには、この物語に加わろう。

 

 

『はい!! 私達が出会った奇跡……、その縁に今日も感謝を込めて!! 合言葉は――』

 

 

流れていく文字と同じものを、私は打ち込んだ。

 

 

 

魔法少女(Hello,world)

 

 

 

 

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