魔法少女Imagine   作:MOPX

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普通事変(Prologue)

『ねむい』

 

 

『もういやだ』

 

 

『なにもしたくない』

 

 

 

「……うーん」

 

 

『私は頭が悪いからわからないんだけど――』

 

 

 

「いやいや、自虐に走りすぎでしょ……消しとこ」

 

 

 

 

 

(任意の構文)

 

 

 

 

 

(任意の流行ワード)

 

 

 

 

 

(任意の揉め事)

 

 

 

 

 

「これ書きたいわけでもないのよねえ……」

 

画面をスクロールする。

 

 

猫の動画。

 

 

「やっぱり猫動画を拡散するのが一番安心感あるわね……。あは、かわいい……」

 

 

その時、画面がぶるぶると震えた。

ビクッと体が反応する。

 

一瞬、何事かと思ったが何てことはない。

過去の自分が仕掛けた時限式爆弾。

 

要するにアラームが鳴っただけだった。

 

「もう30分? はや……。何もしてない……」

 

全然、休憩できた気がしない。

 

私はやっと手にしたスマホを脇へと置いた。

 

「……。あと5分。いやいや、さすがに……」

 

また手が伸びそうになるが、机の上の紙が目に入った。

 

 

進路希望調査。

 

 

逃避していた現実がそこにあり、私は溜息を吐いた。

A4一枚の紙は名前と学年欄を除けば、見事なまでに真っ白だった。

 

 

「リアルって何でこんなに面倒くさいのかしら……」

 

私はまた溜息を吐いた。

最近、癖になっている気がする。

 

綺麗に書いた名前欄の文字が、まっさらな余白を強調している気さえする。

 

 

紫王紫。

 

 

特にこれといった夢も取り柄もない、普通の高校二年生。

 

 

 

 

 

お風呂を終え、部屋に戻った後、私はベッドに突っ伏した。

手を擦るように、画面をスクロールさせる。

 

最近はほとんど、無意識にこうしている気がする。

机の上の紙は白紙のままだ。

今日は宿題を片づけたから許してほしい。

 

(何かないかな……何か……)

 

何か。

 

何か。

 

何か。

 

 

 

(何かって何だろう……)

 

そう思っていると、ある文字列が目に入った。

指の動きが止まる。

 

 

配信告知。

 

 

(この人も懲りないなあ……)

 

内容を確認する。

今日は……雑談と質問コーナーか。

 

『質問、少なすぎて大体読まれます!! ドンドン送ってください!!』

 

(大変だなあ……)

 

『あ、相談とかでもいいです!!!!』

 

(……。相談)

 

私は画面を何回かタップして文字を打ち出した。

 

これは人助けだ。

赤の他人とはいえ、頑張っている人への後押しだ。

 

もしくは好奇心だ。

ガチのお悩みが来て、一体どんな反応をするのか。

この人がどうするのかの興味だ。

 

もしくは――。

 

私が困っていて、誰かに話を聞いてほしいだけ。

 

書き終えて、私は文面をまじまじと見つめる。

これを本当に出すのか。

大袈裟に言えば、人に影響を与える行為を。

 

こんな私が――。

 

(ええい……送ったところで何も起こらないわよ……何も)

 

ネットの大海に小石を投げるだけだ。

精々、小さな波紋ができて、波にかき消されるだけ。

 

送信。

 

ふう、と溜め息が出た。

 

(送っちゃった……もういいや、匿名だし。自分じゃない感じを醸し出しておこう……)

 

胸が高鳴っているのは気のせいだろう。

こんなことはただの暇潰し。

 

画面を戻して配信時間を確認する。

 

――魔法少女系ブイチューバ― モモミン。

――配信開始まで残り十分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん!!!! こんばん魔法ー!!!! 魔法少女系ブイチューバーのモモミンです!! 今日も愛と勇気と道徳を胸に!! 張り切って行きましょー!!」

 

配信が始まった。

今日も挨拶の声は良く通っている。

 

画面には桃色の長い髪に、桃色のドレスの少女。

日夜、世界の平和を守るため人知れず戦う魔法少女……。

そんな少女が束の間の休息のため、配信で楽しくおしゃべりをしている。

 

……という設定のキャラクターだ。

 

(魔法少女系って何なのよ、そのカテゴリー……)

 

頭の中で何度も繰り返したそのツッコミを今日もする。

 

「いやあ、今日は暑かったねー。仕事中うちわでぱたぱた仰いじゃって……あ!! 風魔法ね!! モンスターとの戦闘中!!」

 

(いきなりの設定崩壊……まあ、こういうノリは嫌いじゃないけど)

 

「小型の扇風機、ほしいなあ~って思いました。はい。良い子のみんなも暑さとモンスターに負けず元気出して行こうね!!」

 

(暑さとモンスター、同列なんだ)

 

魔法少女モモミンはリスナーのことを「良い子のみんな」と呼ぶ。

道徳を重んじるモモミンにとって、悪い子はリスナーではないのである。

 

ちなみに今日の同時接続は十六人。

そこそこ多い方だ。

もっと人気のある人がたくさんいるのは知っているが、そうした人たちの配信は気後れしてしまう。

理由はわからないけど。

 

『おもろい』

 

『質問しといた』

 

『あつくて水のんだ』

 

(お米さん、今日も絶好調ね)

 

モモミン配信のコメント欄は、ほとんど『お米さん』しか書き込まない。

とにかく良くしゃべる。

若干、下ネタ(ウンコ系)が好きなので見てる方はハラハラする。

基本的に、悪い人ではなさそうなんだけど……。

 

『きょう外で遊んだ』

 

『みずうまい』

 

『みずこぼした』

 

『おこられる』

 

『しゃべりすぎた』

 

『イライラする?』

 

 

 

「えー、私はイライラしたりしないよ~。この程度で怒るとか人生初心者かー?」

 

ぶふっ。

 

私は吹き出した。

たまに素が出て口が悪くなる。

こういうところが憎めなかったりする。

 

「さ、というわけで。魔法と話術で解決!! モモミンのマジカル・アンサー!! ……のコーナーに行きます」

 

(そんなコーナー名だったんだ……)

 

「これね~。本当は音響魔法でタイトルを思いっきり響かせたかったんだけどね~テストする時間がなくてね~」

 

(知らんて……)

 

「え~頂いた質問にはちゃんと目を通してるからね。……じゃあまずこれかな。『ごはんとパンどっちがすきですか?』 うーん、いいね。ごはんはお米のことだと思うけど紀元前からの歴史を持つ稲作と西洋から伝わったパンの比較だね……!!」

 

(そんな小難しいことは聞いてないと思う)

 

ちょっとずれた感じのテンション。

それでも嫌な感じがしないのは、たぶん大真面目にこの人は言っているから。

 

コメントは実際に付けずに心の中でツッコミを入れるのが日課。

 

何も発言しなければ、絶対に安全だから。

 

「……というわけでモモミンとしてはお米の消費量が落ちている現状も顧みて、今回はごはんの方に軍配を上げたいと思います……!! 質問してくれた方、ありがとう!!」

 

(米が勝ったわね。お米さんも喜んどる)

 

画面を見れば誰が質問したかは明白だった。

この人はだいたい、こんな感じで捌いていく。

恐らくは大分、年上なのだろう。

しゃべりに余裕というか、貫禄を感じる。

 

……魔法少女という設定だけど。

 

「はい、じゃあ次の質問ね。え~っと、なになに……」

 

 

 

「私は今、高校二年生です」

 

心臓が浮き上がるような感覚。

私の書いた文面と同じものが、綺麗な声で読み上げられる。

私の考えたことを、別の人が言葉にする。

 

不思議な感覚だった。

 

「進路で悩んでいるのですが、そもそもやりたいこともありません。いっそブイチューバーに……なーんちゃって☆ えへへ!!」

 

(そんなに情感を込めなくていいから!!)

 

恥ずかしさを紛らわすため茶化したのが裏目った……。

実際に読まれるときついわ、これ。

 

「モモミンさんはどうしてブイチューバ―になったのですか? 嫌ならいいですが、よろしければ教えてください……と」

 

間が空く。

 

私の緊張は最大まで高まっていた。

今更になって後悔の念が湧いてくる。

 

文面は最低限、整えたつもりだ。

でも、もしも、不快に思われたらどうしよう。

 

その口で、私を否定する言葉が出てきたらどうしよう。

 

「え~まずは言わなければならないことがあります……」

 

ごくっと唾を飲み込む。

 

「モモミンはブイチューバ―ではなく魔法少女なので……!! 宣伝とかは便宜上そう名乗っているけど!!!! 面倒くさくてごめんね!!!!」

 

息を吐いた。

 

きっと溜まり切った緊張感が安堵と共に出ていったのだ。

 

そういうノリでいい。

 

私は人気のない配信者にネタを提供しただけ。

だからこれでいい――。

 

「それにしても進路の相談かー。進路、進路ね……あ、お米さん、進路って将来の仕事とか、大学に進むかとかを選ぶことね」

 

(真面目に考えてそうね……。適当でいいんだけど……)

 

「うーん、そうだね……」

 

 

 

「真面目な質問だから真面目に答えよっかな」

 

 

 

 

 

「まず最初に、こういう道に進むのが正解!! ってのは言えないから先に謝っておくね。私はこの人がどんな人か知らないから。ごめんね魔法!!」

 

(……まあ、そうよね。断言されても困るし。いえいえ魔法)

 

「で、考えたけど例えば同じ進路に進みたいって言ってる人がいても適切な助言って違うんだよね」

 

(……? と、いいますと?)

 

「片方の子が本気でその道に進みたいと思ってて、長い間真剣に考えていて、もう片方の子は何となくで言っていたら」

 

(……う。グサッときたわ。説教の流れ……)

 

「あ、説教臭くなったね!! ごめんごめん!! いやでも!! 魔法少女たるものレスバにも強くないといけないから!!」

 

(いえいえ……、もっと適当に自分のことを話して……)

 

「で、私のことね……。何でこうやって配信するようになったかというと……」

 

(そうそう、聞きたいのはそれ。なんでなんで?)

 

 

 

「……」

 

(……? どうしたの?)

 

 

 

「何となく、かな……」

 

(何となくかーーーーい!!!!)

 

 

ベッドから転げて落ちそうになる。

ここだけ昭和か今は令和だ。

お米さんからも『何となく』と復唱コメントが付けられた。

 

 

「いや、これはちゃんとロジックのある何となくでね!! 説明が難しいなあ……。人間の思考と言葉は一対一対応じゃないことを思い知らされるよ……。私も魔法文学科に行っていれば……」

 

(何にでも魔法って付ければいいもんじゃないでしょ……。魔法のありがたみが減る)

 

 

「やりたいことって結構ぼんやりとした感覚だけど、案外そんなものかもって。全く興味のないことは考えないし」

 

(そんなものかなあ……その意見がぼんやりして聞こえる)

 

 

「人の心は覗けないから。他の人が感じてなくて、自分が感じているならそれは個性なんだけど、なかなか見えないって話かなあ……」

 

(……だって自分は普通だから)

 

 

「だって自分が基準だから」

 

(……。……?)

 

 

聞き間違い。

そう思う程度には、頭が認識しなかった。

 

 

「……私ね。結構、周りから『変わってるね!!』って言われることが多くて……でも、全然わかんないだよね、どこがどう変わってるのか。親からも普通にしなさい!!ってよく言われて」

 

(そうなんだ。それは確かに――)

 

頭によぎりそうになった言葉を、抑える。

これは思うだけでも、良くない。

 

普通であることに悩む人間がいるなら、特別であることに悩む人間もいるはずだった。

 

 

「それでまあ、普通に勉強を……あ、魔法少女のね。とにかく頑張ってみたり、これが普通なんだろうなって生き方をしようとしてたんだと思う」

 

(それで頑張れるのはすごいし、十分じゃないの……?)

 

 

「でも、まあ、ふと思ったんだよね」

 

(……何を?)

 

 

「何となく、このままの人生が続いていいのかなって」

 

(……)

 

 

「で、やりたいことをよくよく考えたらもっとこう、創作的な何かだったなあ~って。ぼんやりとした何かの答えがやっと出たんだよね、後になって」

 

(自分でも当時はわかんなかったってこと? そんなもんなの……?)

 

 

「さっきは冗談で人生初心者か~って言っちゃったけど、そうなんだよね、みんな。十歳の選択は初めて十歳になる人がしないといけないし、二十歳の選択は初めて二十歳になる人がしないといけない。だから難しいんだよねえ……」

 

(そっかあ……。魔法少女がそう言うのなら、そうなんでしょうね)

 

 

「自分をありのまま認められたから今がある……魔法少女は絶対にモンスターや冷え性やその他、世の中の困難モロモロに負けたりしない!!」

 

(……そうなれたら、いいわよね)

 

 

「……というわけで。ぼんやりとした何かに案外真実があるし、それ自体が答えじゃなくても考えているうちに視野が広がるかもね!! というお話でした!! 上手くまとまった!!」

 

(……え? そんなこと言ってたっけ? 誤魔化された気分ね……)

 

 

「……あ!! あと最後に一言」

 

(……?)

 

 

「大変かもしれないけど、一緒に頑張ろうね!! 私も頑張るから!!」

 

(……)

 

 

 

画面の中の少女はにこやかに笑みを浮かべていた。

コメント欄には『深い』と簡素な意見が述べられていた。

 

私は――。

 

桃色の少女を見詰めていた。

いつまでもずっと。

胸には今までに感じたことのない感情が灯っていた。

 

何となく、ぼんやりと。

 

 

 

 

 

次の日からの私は、少しだけ変わった。

調べ物をよくするようになった。

ネットで片っ端から、仕事に関して検索をかけたりした。

 

「はいはい!! 今回の配信も感謝感激魔法!! さあて次の配信は~デデドン!!」

 

(モモミンさん、個人的には面白いのにイマイチ伸びないのよねえ……何でだろ)

 

「モモミン VS 人工知能怪人!!!! 人間らしさが演算で代替された時に何が起こるのか!? シンギュラリティ!! むしろ楽しみ!! をお送りします!! また見てね~」

 

(……キャラとネタのミスマッチ感、かな)

 

 

 

配信で生計が立つかも真面目に考えてみた。

知っておくだけならタダだと思ったから。

 

(げえええ!! 個人のブイチューバ―ってこんなお金がかかるの!? 赤字じゃん!!)

 

「はいはい今日も配信やっていくよ~。え、声が疲れてる? うーん、今日のモンスター強かったからなあ……」

 

(……。モモミンさん大丈夫なのかな、いろいろ。本業が別にあるっぽいけど……)

 

「じゃあ今日の配信!! ついに姿を捉えられたブラックホール!!!! その中から現れたのは~?? ……けほっ、けほっ」

 

(宣伝とかやればいいのかな……? でも書き方によっては迷惑になったりしないかな……?)

 

 

「はい!! じゃあ今日の配信はこれまで!! こんな私が活動できているのはみんなのおかげです!! ……ごめんね、突然、感謝したくなって。私が普通か特別かなんて自分でもわからないけど。もしも特別なものがあるなら、みんなとの絆かなって……でへへ!! 今の恥ずかしいからナシ!! 記憶消去魔法!!」

 

(……趣味人)

 

(……)

 

(力になれたらなあ……)

 

 

 

次の日も、次の日も。

学校へ行って、調べ物をして、そして配信を聞く。

 

その日、私は彼女にコメントを送った。

……気まぐれで。

 

(今日の配信ですが内容がとても充実しており……いやいや、批評家か。今日の配信、良かったです……いつもは良くないみたいじゃん……。う~~~~ん)

 

『今日も面白かった!!!!』

 

(……)

 

(何でこんなに緊張しているの、私)

 

 

 

(……!!!!)

 

『床太郎さん!! ありがとうございます!! いつも告知を拡散してくれてますよね!! それもありがとう!!』

 

……小躍りして、しばらく何も手に付かなかったのはナイショだ。

 

 

 

 

 

その日も私は、いつものように家路についていた。

 

(今日のモモミンの配信、量子力学の計算だから絶対見なきゃ……!! エンタングル!!!! な~んて……)

 

その日も私は、いつものように少し小走りで。

 

(……自分が普通でも、ちょっとだけでも特別になれたらって思うのが大切なのよね、きっと)

 

その日も私は、いつものように――。

 

(……? 何か空が急に暗くなった? )

 

 

モモミンの配信を、見るはずだった。

 

 

轟音。

 

 

衝撃。

 

 

痛み。

 

 

自分の体がコンクリートに打ち付けられていると理解したのは、数秒の後だった。

災害? 爆弾?

 

頭が状況を整理するより先に、恐怖が体を支配した。

 

周囲に、人気はない。

 

 

また轟音。

 

反射的に目を伏せる。

生ぬるい風が吹く感覚は、私の経験したことのないものだった。

嫌な単語が頭をよぎる。

 

兵器による攻撃。

それが私の頭の弾き出した答えだった。

 

(逃げなきゃ……!!)

 

家だ。

とにかく家を目指そう。

夜道のように辺りは暗いが、全く見えない程ではない。

建物の中に、身を――いや、入れてもらえればどこでもいい、とにかく近くに安全な場所は――。

 

(ひ……!!)

 

目の前の交差点から黒い陰が覗いた。

いや、その物体は『黒』そのものだった。

 

闇に溶け込んだ怪物。

明らかに、私は知らない。

この世界の生き物でない。

 

ぶよぶよとした体に、まるで取って付けたかような鉤爪。

上部には目のような部分が――。

 

 

目が、合った。

 

 

逃げろ。

逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ。

 

 

逃げろ。

 

 

叫び声とともに、弾かれたように私は逆方向へ走った。

後ろも、周囲も確認なんてできない。

そんな心の余裕はない。

 

けれど確かに感じるのだ。

 

怪物がまっすぐこちらを追ってくるのを。

 

何で?

 

どうして?

 

私は普通の高校生のはずだ何も特別なことなんてこの身に起こることなんてなかったきっとこれは夢か冗談だだって何も理由がない私がこんなところで――。

 

 

足がもつれる。

のたうつように地面に転がる。

 

顔を上げれば、目の前にいた。

体から無数の『爪』を延ばした怪物が。

 

私は普通だ。

 

私は普通の女子高生だ。

 

私は普通に、生きていくんだ。

 

 

事切れたように思考は打ち切られた。

代わりに流れてきたのは、映像。

 

これまでの私の、差しさわりのない人生。

何かあったはずだ、と脳が頑張って編集をしているみたい。

 

頭の中で、桃色の髪の少女は、笑っていた。

 

最期に思い出すのが、会ったこともない人だなんて――。

 

 

「助けて……助けてよモモミン……」

 

 

怪物の爪が私の方へ、伸びた。

 

きっとこの怪物はこれから被害を出し続けるのだろう。

増殖、進化、統合を繰り返して、人類と敵対するのだろう。

私は、その最初の被害者。

 

 

――こんな特別、私は嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

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