いつかに英雄の隣にいた誰か   作:幽 

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ありがとう。ずっと、死ぬのが怖かった。でも、君のおかげで勇気を持てた。叶うなら、君の隣で、美しい国を見たかったなあ。

リクエスト企画にありました、騎士な女と姫な男で、セイアッドが男として育っていたラのIFになります。


騎士な女と王子様

 

それとモードレッドが会ったのは、とある戦の前のことだった。

 

「あの、申し。」

 

その時、モードレッドは雑務のためにキャメロットを離れており、身分を隠すために不貞隠しの鎧を纏っていなかった。

その時のモードレッドは、身分の高い少年に見えただろう。

モードレッドはとある川縁で水を飲んでいた。そんなとき、後ろから声をかけられた。

モードレッドが振り向けば、そこには黒い髪をした青年が立っていた。

首を覆うぐらいの襟足を伸ばしている。年の頃は、モードレッドとそう変わらないだろう。ひどく、見目麗しい青年だ。

けれど、その体つきはまるで若い鹿のようにしなやかで、生命力に満ちあふれている。

 

何よりも目を引くのは、その瞳だろう。

ぽっかりと、夜空に浮んだ、満月のような黄金の瞳。

 

「誰だ、てめえ?」

「ああ、申し訳ございません。私は。セイと申します。その、この辺りには魔猪が出るのですが。ここが気に入りのようで。時間的にそろそろやってくるはずです。なので、ここを離れた方がよろしいかと。」

 

そう言って、控えめに微笑んだそれ、セイとモードレッドの出会いであった。

 

 

モードレッドとセイはそれから、時折会うようになった。

その理由というのも簡単で、セイというそれがひどく料理が上手であったため、モードレッドがそれを目当てに通っていた。

そうして、もう一つ、理由があった。

 

「おーい、セイ。来たぞ。」

「おや、また来たのかい。モルド。」

 

そう言って、青年が控えめに微笑んで言った。彼が出迎える、小さな家にはいつだって柔らかな、料理の匂いに満ちていた。

 

モルドとはその時、モードレッドの名乗っていた偽名だ。

 

「ああ、今日こそは、お前のことを引き抜いてやろうと思ってな!」

「それはありがたいことだねえ。」

 

のんびりとしたそれにモードレッドはふんと息を吐いた。

 

セイとモードレッドが親しくなったのは、二度目の邂逅の時だった。

最初の時は警戒心により、セイからさっさと離れはした。そうして、二回目の邂逅の折には、セイは何故か川辺で鍋を煮込んでいた。

 

「お前、何してるんだ?」

 

思わず声をかけたモードレッドに、セイは苦笑した。

 

「ええ、あの、鹿が取れてシチューを作っているんです。」

「だとしても、なんでこんなところで。」

「いいえ、私の家は、なんというか食事を作るスペースが無い状態で。あ、食べて行かれますか?」

 

警戒心は煽られたが、それはそれとしてそのシチューから香る匂いはたまらなくよいものだった。もしや、妖精がからかっているのだろうかとも考えたが、丁度空腹であり、モードレッドはそれに口をつけた。

それは、大変美味だった。

肉はほどよく軟らかく、スープは野菜が煮込まれて、深みのある味わいをしていた。

 

「・・・・俺が雇ってやるっていうのによ。」

「あははは、申し訳ありません。私も、仕えているものがある身なので。」

 

それにモードレッドはむすりと顔をしかめた。

 

男の料理は絶品で、モードレッドはいたく気に入った。そのため、是非とも、自分の所に来いと誘ったのだ。

けれど、セイはそれに苦笑交じりに首を振った。

 

「私も、仕えるものがある身ですので。」

 

曰く、セイはとある尊き存在に仕える身らしい。

 

「仕えてるって、あの王だろう?」

「ええ、お優しい方です。」

 

モードレッドはそれに顔をしかめた。セイはかたくなに名前を出さなかったが、彼が誰に仕えているのか、モードレッドにはすぐにわかった。

というのも、セイが住んでいるのはとある国の端に当たる。その国の王は、お世辞にも評判は良くない。

というのも、その王の跡継ぎにである王子に問題がある。その王子は、ある予言をされて産まれてきた。

それは、その王子というものが、この島を滅ぼすというものだ。それをモードレッドは鼻で笑った。

この島には、アーサー王がおり、そうしてその世継ぎである己がいるのだ。誰が、そんなことを出来る者だろうか。

そうして、話題の王子というのは、周りから危害を加えられることを恐れた王に隠されている。なんでも、ある程度の年齢になってから表立っているが、常に鎧を身に纏い、そうでなければ仮面を被って頑なに周囲に顔を見せることはない。

ただ、その王子は、王妃に似て、美しい白銀の髪をしているそうだ。

 

「顔さえわからねえ相手に仕えるの、やじゃねえの?」

「うーん、そういうものだし。それに、うちは代々そうだったから。」

 

濁すようなそれがむかついた。

 

「ふん、いいさ。後で後悔してもしらねえからな?」

 

頑なに己からの申し出を断るセイに苛立って、モードレッドはそう言った。セイはそれにくすくすと笑った。

何が楽しいのだろうと、モードレッドはそれを見た。

 

「後悔って、そんなにあなたは尊き人なの?」

「そりゃあな!俺は将来王になるんだ!お前のことだって、好条件で雇ってやれるぞ?」

 

モードレッドはその時、流れの剣士であると名乗っていた。当時、鍛錬のために身分を隠して旅をする騎士は少なくなかった。

時折、セイに望まれて剣の鍛錬をつけてやっていることもあった。

そのために、セイはモードレッドのそれに頷いた。

 

 

「王様?」

「そうだ!偉大な父上の後を継ぐ!」

「・・・・そうか。モードレッドの国は、どんな国?」

 

セイはどこか神妙な顔でそう言った。それに、モードレッドはさすがに己の出身国をばらすのは避けようと、少しだけ口ごもる。

 

「美しい国だ。滅多にないほどに、素晴らしい国だ。」

「そうか。でも、モードレッドが王様になるのなら、きっと、その国はもっと素晴らしい物になるでしょうね。」

 

なんてことない言葉だった。本当に、それは軽やかな言葉だった。けれど、モードレッドは目を見開いた。

ああ、だって、そうだろう。

それは確かに軽やかなものだったけれど、それは、心の底から男が言っているのだと理解できたからだ。

 

媚びているわけでもない、嘲笑っているわけでもない。

ただ、ただ、それは、心底、モードレッドの治める国が善きものになるのだと、信じて疑っていなかった。

 

それに、モードレッドはなんだか、どんな顔をすれば良いのかわからなくなってしまって。

少しだけ、顔を伏せて、言った。

 

「無責任に、よく、そんなことが言えるな。」

「そうかい?うーん、でも、そう思いますよ。モードレッドはとても強くて、頭も良くて、何よりも、そんなにも国を愛しているんのでしょう?」

 

それに、どんな顔をすれば良いのかわからなくなった。

セイは淡く笑って続けた。

 

「あなたの強さを知っています。あなたの冒険を知っています。あなたが、それをくぐり抜け、そうして、こうやって私の元にやってきて話をし続けてくれている。何よりも、これでも、誰よりも知っているんですよ。」

 

あなたが、国を愛していることを。

 

それに、それに、モードレッドは自分でも驚きを覚えた。だって、モードレッドは国を愛しているなんて思ったことがなかったのだ。

彼女は、ただ、輝かしい、一人の王に焦がれ続けていただけで。

そんなことなど気にもとめずに、それは嬉しそうに微笑んだ。

 

「・・・・あなたは、国の話をするとき、本当に嬉しそうで。だから、私、いつも思っていたんですよ。ああ、この人はきっと、とっても、己の国を愛しているんだろうと。」

 

それは、偏に、ただ、ただ、彼の王の治める国が美しいから。美しくて、自慢をしたくて、言っているだけで。

それだけのはずで。

 

「だから、モルド。」

君はきっと、よき王になると思うよ。

 

そういって、己を真っ直ぐに見つめる、ぴかぴか光る金の瞳。

それは、美しい容姿をしていたけれど、その程度で、どこまでも凡俗なる人間だった。

料理の腕だけは認めていたけれど、騎士なんて言うには、あまりにも弱いそれ。

けれど、その、モルドをじっと見つめるその瞳。

その、目にモードレッドは言った。

 

「なら、なら!俺が王になったら、必ず、俺に仕えろよ!いい王になるって、お前が言ったんだ!お前が、誰よりも近くで。」

 

お前が、俺を見てろよ!

 

それに、セイは少しだけ笑って、そうして頷いた。

 

「・・・そうですね。そこまで言われたら、そうですね。」

あなたが王になったら、山のようなごちそうを用意しましょうか・

 

そう言って、男は笑った。その笑みは、何故か、どこか悲しみを帯びている気がした。

 

 

それから、セイに会うことはなかった。

それも当然で、セイの国と戦が始まったせいだ。始まりは、マーリンの言葉だった。

曰く、セイの国の王子の予言は真で有り、このままではまずいと進言があったのだ。

それに、国は王子の引き渡しを命じた。

けれど、セイの国はそれを否定した。当たり前だ。結局殺されるとわかっていて、そんなことはできないだろう。

モードレッドはその戦に嬉々として参戦した。

 

(セイの奴は、前線には出ねえって言ってたし。)

 

モードレッドは嬉々として、戦場で猛威を振った。彼女は、どこまでも傲慢に、考えていたのだ。

きっと、己の仕える王がいなくなれば、彼は自分の元に来るのだと。

 

欲しい!欲しい!欲しい!

あれが欲しい。

約束だ、自分のことを見ていてくれ。自分が王になるまで、俺の隣で、俺のことを見ていてくれ。

ただ、モードレッドを見ていて欲しかった。

 

そうして、モードレッドは確実に、相手を追い詰めていった。

ただ、目的の王子だけが見つからない。捕らえた兵士達に行方を聞いたが、知っているのは王だけだった。

王子の父である王もまた、口を噤み、最後には死んだ。最期になんとか王子を逃がしたのだそうだ。

 

(馬鹿な奴だ。)

 

モードレッドは呆れた。たった一人の息子のために、こんなことをしたその男に呆れた。ただ、その息子を差し出せば、こんなことにまでならなかったというのにだ。

そんな中、一人の兵士が口を開いた。

もしやすれば、あの場所に。

 

それにモードレッドはその場に向かった。

兵士の言っていたのは、その国の果てに立つ塔だった。

 

「よう、お前が、セイアッドだな?」

 

そう言ったモードレッドに、塔の上。

そこには、鎧を纏った騎士が待ち構えていた。それは、モードレッドの言葉に何も応えなかった。

 

「ちっ、せめて、何か答えろよ。それで、大人しく着いてくる気はあるか?」

 

それにセイアッドは軽く首を振った。それにモードレッドはにやりと笑った。それはそうだ。

そんなことを考えながら、セイはどこにいるのだろうと考える。

 

(まさか、どっかで死んでねえだろうな??いや、部下達には、黒髪の、金の瞳をしてる奴がいたら報告するように言ってるが。)

 

そんなことを考えていたとき、セイアッドは剣を振りかぶった。それはモードレッドからすれば、欠伸がするようにのろまなものだった。

けれど、何だろうか。

何か、ひどく、覚えがあった。

けれど、モードレッドはそれよりも反射のように、剣を弾き、そうして、セイアッドに斬りかかった。

モードレッドの魔術のかかった剣は、その鎧をあっさりと貫通して、その場に赤い水たまりを作る。

セイアッドはゆっくりと、倒れ込み、その時、兜ががらんと外れた。

 

「は?」

 

その顔は、彼女の知る、セイのものだった。

 

 

 

 

産まれてきたことこそが、間違いであったのだと、セイアッドは思っていた。

 

なんでも、自分が産まれたとき、一つの予言があったのだという。滅びの子、それは、セイアッドにもたらされた予言だった。

セイアッドは幼い頃、自分の立場なんて知らずに育った。幼い頃、彼は予言をもたらした魔術師と暮らしていた。

そうして、ある程度の年齢になり、己の真実を知った。

それに、セイアッドは自分がどんな顔をすれば良いのかわからなかった。

 

自分が王子様?

セイアッドはただ、料理が好きな、少しだけ魔術の使える青年で。

そんな自分が、王子?

いいや、それ以上に、セイアッドは己がいつかこの島に滅びをもたらすという事実に愕然とした。

戻った城では、たった一人、父だけが歓迎してくれた。

よくぞ、戻ったと。

けれど、周りの視線は冷たかった。

 

ああ、あれが滅びの子であると。ああ、あれこそが、この島に滅びを招く王子なのだと。

 

父のおかげで、疎まれることはなかったけれど、それでも周りはセイアッドを拒否した。

 

当たり前だと、セイアッドは理解する。

滅びを招くなんて存在を、受け入れることは出来ないだろう。

だからこそ、セイアッドは城から抜け出して、元々魔術師と住んでいた隠れ家に逃げ出した。

ばれないようにと、見事な銀の髪の色を変えて、セイと名乗って。

 

どうすればいいのだろうと、考えていた。

セイアッドはこのまま王になる。そのための教育も施されていた。

けれど、自分が王になったとき、本当にこの島は滅ぶのだろうか。

考えて、けれど、どうすればいいのかわからなくて。

 

わかっていた。自分のすべき選択を。本当に、己の予言が果されるというのなら、ずっと、わかっていた。

 

「なあ、お前、俺のところに来いよ!」

 

そんなとき、セイアッドは出会ったのだと。

 

強くて、綺麗で、目映いまでに軽やかな、それの人に。

 

 

最初は、ただの偶然だ。

よく猪のやってくる場所にいたモルドと言った彼に声をかけた。

最初は、警戒心のためか、名乗ることもなく去ってしまったけれど。

けれど、二回目に、出会った時、食事をした。匂いに釣られたらしい彼は、己の料理をうまいうまいと褒めてくれた。

 

王子になり、料理をすることなんてなかったセイアッドにとって、モルドのそれは久方ぶりに自分を見つけて貰ったような気分だった。

 

モルドはそれから、よくよくセイアッドのところを訪れた。

そうして、料理を望んだ。

セイアッドにとって、それは王子として、そうして、責務を忘れられる息抜きの時間だった。

 

(友達って、こんな感じなのかな?)

 

そう思って、セイアッドはモルドと会うことを楽しみにしていた。

たわいもない日々だった。

モルドに会って、ただ、ただ、話をして、料理を食べて、時には鍛錬をして、狩りをして。

そうやって過ごした。

会うたびに、モルドはセイアッドに自分の国に来いと言ってくれた。

それをセイアッドは言うたびに断っていたけれど、でも、本当に嬉しかった。

 

セイアッドはよき王にはなれないから。

セイアッドはよき騎士にはなれないから。

セイアッドは、この島にとって、この島に住むあらゆる人にとって、善き者にはなれないから。

だから、嬉しかった。

ただ、セイアッドという個人に与えられた、彼を求める言葉は、どこまでも、救いであったから。

 

セイアッドにとって、どこかの国の王子だと名乗るモルドは憧れだった。

彼みたいに、強くなれたら。

彼みたいに、国を愛することが出来れば。

彼みたいに、冒険に出て己を磨く勇気があれば。

 

(私は、ただ、ここで。ここで、なにをするのだろうか?)

 

望まれる者になれない己。

生きているだけで、誰かに危害を加える未来を持つ己。

 

セイアッドはいつかにモルドに聞いたことがあった。

 

「モルドは、自分のすることに不安はない?王になることに、不安はないのかい?」

 

それを彼は鼻で笑って見せたのだ。

何を恐れるのだと。

己は王の子として生まれたのだ。ならば、自分には責務がある。そうあるものとしての、責務が。

 

「それに不安なんてあるはずがないだろう?」

 

それにセイアッドはそうかと思った。

 

(そうだね、モルド。役目を、果さなくてはいけない。)

 

セイアッドはずっと知っていた。

己が望まれること、本当はそうしなくていけないのだと、ずっと知っていた。

 

(私は、死なないといけない。)

 

 

そうして、倒れこんだセイアッドは淡く笑った。

本当はずっと知っていた。

己のしなくてはいけないこと、自分で選択しなくてはいけないこと。

ああ、愚かなことだ。

国同士での争いになってなお、セイアッドは覚悟を持てなかった。ようやく、最期になって、その騎士を目の前にして、ようやく己は覚悟を決めたのだ。

 

(・・・私は、僕は、最期まで、意気地なしだ。)

 

もっと、早く、決めなくては行かなかったのに。けれど、どうしても、死ぬなと嘆く父と、そうして、一人の青年のことが未練だった。

ばさりと、銀の髪が床に散らばった。

ひ弱な体のせいか、目は掠れて、思考はぼんやりとしている。

そんなとき、だ。

懐かしい、声がした。

 

「セイアッド!!」

(ああ、なんて都合の良い夢だろうか?)

 

彼の声がする。彼の、涼やかで、りんとした声がする。ずっと、聞きたかった声がする。

 

「おい、お前!お前が、なんで!」

 

セイアッドはそれに、夢うつつの、寝言のように声を紡いだ。

 

「モ、ルド。ありがとう。ぼくの、料理を、褒めてくれて。君の、国に、来いと、言ってくれて。嬉しかったなあ。誰も、僕のことを、父上以外、望んでくれなかったから。」

「んなこといいんだ!治療を!すぐに!」

 

セイアッドはそっと、血濡れの手で、モルドの頬を撫でた。

 

「モルド、ありがとう。君のおかげで、僕、死ぬ覚悟を、決められたんだ。」

「なに、言ってるんだよ。」

「僕、わかってたんだ。僕、死ななくちゃいけなくて。でも、怖くて。でも、君を見てたら。王様になるために、頑張ってる君を見て、僕、ようやく責任を、とらないとって。」

 

モルドの、美しい顔が歪んでいるのが見えた。それに、そんな顔をしないでと思った。

セイアッドは理解していた。自分を殺した、騎士。彼の騎士王の騎士であろうそれ。

そうだ、モルドは敵国の人間だったのだ。

けれど、モルドをセイアッドは恨んでなかった。全て、自分が悪い。自分が何よりも、死を選んでいれば、こんなことにはならなかったから。

 

「ごめんね。君が、きみ、が・・・」

「おい、なんだよ!なあ、止めてくれよ!俺が王になるのを見るんだろ!?ごちそう作るって、言ってただろう!?」

「やくそく、まもれなくて、ごめんね。かなうなら、どうか。」

君の、治める、美しい国を、見たかったなあ。

 

セイアッドは淡く笑った。

ああ、よかった。自分は、最期には逃げなかった。ちゃんと、責任を果たせたのだ。

その、大好きな友人に恥じない人間であれたのだと、彼は淡く笑って、そうして事切れたのだ。

 

 





好きなもの?
そうだな。

モードレッドは、少しだけ考えるような仕草をして、そうして、指を折りながら言った。

旨い飯、足音が一発でわかる間抜けの音、吹っ飛ばされて食らいついてくる根性、風に揺れてる、短い髪。
ああ、あと、そうだ。
ぴかぴか、光る、お月さん見てえな、瞳。

そんなものが、好きだ。

嫌いなもの?
んなもん、簡単だ。
・・・助けて欲しいのに、それもいえねえ弱虫に。
何も気づけなかった、愚か者、だ。
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