メジロマックイーンだと思ってスカウトしたら、おばアサマの方でした。   作:風神・雷神

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ROAD TO THE TOPすごく凄かった


アサマはやはり身内に甘い

 

 

【【前日・夜。場所、自宅リビング】

「……とにかく、スピカのメンバーは一癖も二癖もあるが、中でも一番警戒しなきゃならないのが、あの『ゴールドシップ』って奴だ。これは俺の切実な忠告だ、お前も学園では絶対にアイツに余計に近づくなよ」

対面に座る青島から、真剣な顔で「ゴールドシップ」の名を告げられた瞬間、アサマは微かにウマ耳を伏せ、つまらなそうにツンとそっぽを向いた。

「……随分と、そのゴールドシップさん?という方を、事細かに気にかけていらっしゃるのですね」

頭では彼が純粋な生存戦略として警戒しているのだと分かっているのに、彼女の乙女心はどうしてもイジワルな聞き方を選択してしまう。

「いや、だからさ……。ってかアサマ、何で急にそんなに不機嫌になってんだよ」

「いいえ? 別にそんなことはありませんわ。ただ、先ほどからそのゴールドシップさんのお話ばかりを熱心にしていらっしゃるようですから……。そこまで過剰に警戒する必要が、本当にありますの?」

「お前はまるで分かってないんだ、アイツのヤバさを! 思考回路が常人とは完全にぶっ飛んでるから、アイツの予測不能な行動のせいで、もしも俺たちの正体やタイムスリップのことがバレたら……」

確かに彼の話を聞く限り、今回のミッションにおいて最も危険視すべきイレギュラーなウマ娘なのだと、アサマも理屈では理解できる。

――だとしても、だ。

「まあ、アナタの深いお考えはよく分かりましたけれど。しかし……」

「……しかし、なんだ?」

「……いいえ。別に何でもありませんわ。明日は朝が早いですし、私はこれで失礼します。おやすみなさい」

アサマはそれだけを言い残すと、椅子から立ち上がり、お淑やかな(しかしどこか怒気を孕んだ)足取りでリビングを後にした。

自室のベッドに潜り込み、意識が闇へと落ちるその瞬間まで、彼との会話が脳内で幾度も蘇る。

……彼は何度も、何度も、私の前でその見知らぬ銀髪のウマ娘の名前を口にしていた。

(――本当に、気に入らないわ)

彼が恋愛的な意味でその女を特別視しているわけではないと分かっていても、自分以外のウマ娘の名前をあそこまで意識の特別枠に置いていると思うだけで、何故か彼女の胸の奥からは、ドス黒くモヤモヤとした嫉妬の炎がフツフツと湧き上がってくるのだ。

ゴールドシップ。

彼にそこまで強烈に意識させる彼女が、一体どのような不届きなウマ娘なのか、一度じっくりと対峙してみたいものですわね。

こちらに干渉してこない平和的なウマ娘なら、名門の慈悲として見逃して差し上げますけれど……。

もし――もしあちら側から、私の大切な彼に距離を詰めてくるような真似をしたならば、その時は、一切の容赦はいたしません。

あの人の『一番の特別枠』は、最初から最後まで、この私だけで十分なのですから――。

ざわつく独占欲を鎮めるように、アサマは静かに目を閉じ、眠りについた。

◇

【現在・チームスピカ部室周辺】

「はい。では、先ほどお話しした通りの条件で……ええ、こちらこそ、何卒よろしくお願いいたします。では、失礼いたします」

スマートフォンの通話を切ると、青島の口からは自然と、深い、心からの安堵の溜息が漏れ出た。

(……よし! これは、想像を遥かに超える特大の収穫だぞ……!)

提示したこちらの無茶な潜入条件をすべて快く飲んでもらった上で、なんと週に2日間の固定の休日まで貰える契約を結ぶことができたのだ。実績のない新人は奴隷のように酷使されると怯えていたが、現代のトレセン学園のシステムを逆手に取った今回の裏ルート作戦、どうやら心配の必要はなさそうだ。

しかし、スピカの面々がやけに悲壮感を漂わせて焦っていた理由が、まさか【メインの沖野トレーナーが激しい過労で緊急入院し、チームが機能停止していたから】だとは思いもしなかった。

電話越しに話しただけだが、沖野トレーナーは非常に理知的で、かつ「話せばわかる、ウマ娘想いの本当に良い人」という印象だった。彼ほどの優秀な指導者が不在の今、俺がサブとしてスピカの看板を借りる大義名分は完璧に整ったと言える。

(後で、この最高の朗報をアサマにも教えて、安心させてやらないとな)

青島は、自分がスピカの『代理(サブ)トレーナー』を引き受けることに決めたという決定事項を伝えるべく、彼女たちが待つあの特設部室へと、軽い足取りで向かった。

◇

(……いや、一体全体これはどういう地獄絵図だ……?)

数分ぶりにチームスピカの部室の扉を開けた青島が目にしたのは、文字通りの『軽い地獄』であった。

なぜか一人のウマ娘(スペシャルウィーク)が立ったまま白目を剥いて完全に気を失っており、それを肉壁の盾にするかのように、ウオッカとダイワスカーレットがガタガタと震えながら後ろに隠れている。そして何より、あの唯我独尊で弱っている姿など1ミリも想像できないゴールドシップが、床に力なく座り込み、大粒の涙を流して本気でガチ泣きしているのだ。

そんな凄惨な修羅場の中心に、あまりにも見覚えのある、気高くも恐ろしい後ろ姿があった。

全身から禍々しい暗黒のオーラを放ち、正に世界の終焉を告げる魔王の如き圧倒的な風格で立ち尽くす彼女が誰なのか、青島には一目で理解できた。

「アサマ……お前、俺がいない数分間に一体何をやったんだよ?」

「――っ、……!!」

聞き馴染んだ主人の声が部室に響いた瞬間、限界まで後ろに絞られていたアサマのウマ耳が、ピキィン! と力強く真上を向いて反応した。

大慌てで振り返り、青島の顔をその瞳に捉えた瞬間――彼女の全身から放たれていた、周囲を凍りつかせるほどの絶対的な精神圧が、嘘のように一瞬で霧散して消え去った。

「あなた……! と、トレーナーさん!! 無事でしたのね!? 私、本当に、本当に心配したのですから!!」

ひと睨みで周囲の猛者を縮み上がらせていた冷酷な仮面はどこへやら。今のアサマは、瞳をキラキラと子犬のように輝かせ、これ以上ないほどの柔らかな極上の笑顔を浮かべていた。彼女はスカートの裾を翻して青島へと突撃すると、彼の頬に自らの手が触れられるほどのゼロ距離まで駆け寄り、その大きな両手をぎゅっと力強く握りしめた。

「心配って……あ、ああ。そういえば、外での連絡に夢中で、お前に一言伝えるのをすっかり忘れてたな。すまん」

「本当に……! 麻袋を被せられて連れ去られたとライスさんから聞いて、私、心配で居ても立っても居られなくなってしまって……っ!」

アサマの主観からすれば、彼が凶悪な集団(不審者覆面スピカ)に拉致されたと聞けば、命に関わる大事件だと錯覚するのも無理はない。

アサマは潤んだ瞳で青島の全身をくまなく見回し、優しくその頬へと白い手を添えた。

「……よかった。殴られたり、酷い拷問をされた形跡も見当たりませんわね。あなたが怪我もなく元気そうで、何よりですわ……」

アサマはホッと深く安堵の胸をなでおろし、彼の無事を確認できたことに心から満足していた。

しかし青島は、アサマに優しく頬を包み込まれ、顔を右へ左へと過保護に動かされながらも、視線をその背後に広がる「死屍累々の光景」へと向けて尋ねた。

「あのさ、アサマ……。元気なのはいいんだけど、お前、アイツらに一体全体何をしてそんな風に壊したんだよ?」

「……特には、何もしていませんわ? ほんの少し、淑女として対等にお話し合い(物理)をさせていただいただけですけれど?」

問い詰められた途端、アサマはあからさまにバツが悪そうにウマ耳を伏せ、サッと視線を斜め下へと逸らした。

「いや、どう見ても話し合いの領分を超えて一方的な脅迫と殺気をぶちかましただろ、これ……」

「……っ、そんなことより! まずは無事に戻ってきたのですから、私に対して言うべき高尚な言葉があるのではないかしら!?」

アサマはジト目に切り替え、頬をぷっと膨らませながら、彼からの「心配させてすまなかった、愛している(超拡大解釈)」の言葉を待つ。

「あ、ああ……そうだな。よく分かったな、アサマ。流石だ」

しかし、タイミングが悪すぎた。青島はアサマのその言葉を、自分が外で成立させてきた『スピカへのサブトレーナー潜入計画』を、彼女が持ち前の聡明さで察知したのだと勘違いしてしまったのだ。

「分かるも何も、あなたがトレーナーとして、いえ、尚更一人の人間として当然の選択ではありませんこと!?」

当然、アサマはサブトレーナーの契約の件など1ミリも知らず、「心配をかけたお詫び」を求めていた。

だが、青島が勝手に話を進めてくれる状況に若干の違和感を覚えつつも、彼が自分を肯定してくれた(と勘違いした)アサマの耳や尻尾は、嬉しさで自然とピコピコとパタパタ動き出してしまう。

「そうだな、お前が賛成してくれるなら話が早くて本当に助かるよ。――今後、俺はこの『チームスピカ』のサブトレーナーになる。もう、スピカの責任者である沖野トレーナーとも直々に話を付けて契約は成立したからな」

「……はえ?」

青島の口から飛び出した、あまりにも予想外すぎる契約締結の事実に、アサマは目をパチクリとさせて硬直した。

そして次の瞬間、ピコピコ動いていたウマ耳は一瞬で限界まで後ろへ絞られ、上下に揺れていた尻尾はピシッと垂直に停止する。同時に、アサマの最大級の怒号が部室中に爆発した。

「――全ッ然違いますわよ、この大馬鹿者がーーーーーーっっっ!!! まずは『心配をかけて本当にすまなかった、アサマ』のひと言くらい、誠実に出したらどうなのですの!? 私、あなたが連れ去られたと聞かされて心配で、心配で心が張り裂けそうだったのに……って、ん?」

猛烈に捲し立てていたアサマだったが、少しだけ冷静になって彼の言葉を脳内で反芻し、その驚愕の予定変更に、言いたかった雑念がすべて引っ込んで消え去った。

「……いまのお話、本当に本気なのですか?」

「ああ、本気だ。生存確率を最大にするには、これしか道はない」

「……はぁ。昨日の夜、リビングであれほど『スピカには近づくな』と言っていた内容と大分矛盾しておりますけれど……本当によろしいのですのね?」

「ああ、大丈夫だ。すべて計算通り、問題ないよ」

「……分かりましたわ。あなたがそこまで問題ないと言い切るのでしたら、私はどこまでも貴方(担当トレーナー)に従います」

多くを語らない青島の真剣な眼差しに、アサマは何か深い意図があるのだと察し、渋渋ながらも完璧に納得した。

「ありがとな、アサマ。世話をかける。……さて、他にも色々と話したい今後の作戦はあるんだが、それよりも……」

青島は、未だに軽い世紀末の様相を呈しているこの部室の現状をどうにかしなければ、と頭を抱えた。

「アサマ、お前本当に威嚇しただけか? 流石に威嚇だけで、スペちゃんが立ったまま気絶するはずがないだろ」

「まあ……彼が攫われたと聞いておりましたので、名門としての警戒心から、少々本気で威圧(メジロの覇気)して差し上げただけですわ」

「お前なぁ……」

これからサブトレーナーとして良好な信頼関係を築かなければならないスピカの面々を、初手でここまで完膚なきまでにトラウマ植え付け状態にしてしまったアサマの狂暴さ(独占欲)に、青島の口からは深い、深い溜息が漏れ出る。

さて、この状況をどうやって収拾しようかと考えていた、その時。

ドサ、と青島の背中に、微かな柔らかい衝撃がぶつかった。

何事かと思って後ろを振り返ると、そこには、必死に涙をボロボロと堪えながら、身体をブルブルとみっともなく震わせているゴールドシップが、青島の背中のスーツの生地を必死に両手で掴み、顔だけをひょこっと覗かせていた。

「お、おい新入りぃ……! コイツ、オマエの知り合いかよぉ……っ! コイツいきなり部室のドアをぶち開けて入ってきたかと思えば、尋常じゃねぇオーラでアタシらを殺しにかかってきやがって……なんなんだよぉ! マジで怖えよぉぉぉ!!」

青島の背中をガッチリと掴んで完全に盾にしながら、ゴールドシップは弱々しく、しかし必死にアサマを指さして訴えかける。

「おいゴルシ、引っ付くな! っていうか、お前がそこまで怯えるなんて普通じゃないぞ……アサマ、お前俺がいない間にどんな――っ!?」

青島が言葉を途中で完全に失ってしまうほど、目の前のアサマの雰囲気が一瞬にして「極低温の殺意」へと切り替わった。

それは、彼女が最大級にお怒りの時にしか見せない、あの独特の暗黒空間。青島の目から見れば、もはや彼女の背後からどす黒い怨念のようなオーラが立ち上っているように錯覚するほどの異常事態だった。

アサマの唇が、ゆっくりと、乾いた冷たい笑みの形へと歪んでいく。

「……フフフ。なるほど、全く。よくもまあ、そこまで被害者面をした小芝居ができるものですね、ゴールドシップさん。私の大切なトレーナーさんを一方的に麻袋に詰めて攫うという野蛮な蛮行をしておきながら……形勢が悪くなった挙句の果てに、今度は『私を守って下さい、あなた♡』とでも言いたげに、彼の背中にぴったりとくっ付いて隠れるだなんて。……ここまで厚顔無恥な真似をされたら、もはや怒りを通り越して清々しいとすら感じてしまいますわ」

まるで飢えた猛禽類のような、鋭利な怪物の眼光が、再びゴールドシップの魂を的確に射抜いた。

「――彼は、私の、私だけの担当トレーナーさんです。不届き者が気安く触れていい殿方ではありませんの。……今すぐその汚い手を離して、彼の背中から離れなさい。さもなければ……今度こそ、手加減なしで貴女のそのウマ耳をへし折って差し上げますわ」

「ひ、ひぃぃぃぃぃっっっ!!」

「おいアサマ、落ち着けって! 殺気が本物すぎて話が進まないだろ! あとゴールドシップ、お前もいい加減に俺の背中から離れろ!」

アサマへの恐怖が限界突破しているゴールドシップは、青島が無理やり引き剥がそうとするのを拒絶し、後ろから彼の腰をがっしりと抱きしめるようにホールドして、文字通り必死の形相で自分を守る肉盾として固定した。

その、ゴルシが青島を「後ろから抱きしめる」という最悪の構図を目撃した瞬間、アサマの白い手が、ピキピキと青筋を立てながらゆっくりと青島(の背後のゴルシ)へ向かって伸びていく。

(だ、ダメだ……! どういった訳かアサマの奴、嫉妬の火力が強すぎて俺の声が1ミリも届いてないぞ……っ!)

これ以上のトラブルは本当にまずい。このままだと、さっき沖野Tと結んだばかりのサブトレーナーの話すら、この暴力沙汰で学園から白紙にされかねない。

何でもいい、このアサマの暴走を止める「きっかけ」があれば――!!

ガチャン!!!

「――これは一体、なんの騒ぎですの、あなたたち!!!」

開きっぱなしになっていた部室の入り口から、鼓膜を震わせる、これ以上ないほどに聞き覚えのある「気高き令嬢の声」が響き渡った。

美しい紫がかった芦毛のロングヘア、右耳に揺れる上品な緑色のリボン。圧倒的な気品と名門の風格に満ち溢れたその佇まい――青島が、そしてアサマが、かつて自分たちの生きた昭和の時代に誰よりも愛し、重ね合わせていたあの存在。

中央トレセン学園の現エースにして、アサマにとっては60年後の未来の『実の孫娘』――メジロマックイーンが、そこに立っていた。

「マックイーン、何か面白いことでもあったの……って、な、ナニこれ!? 凄まじいことになってるじゃん、この状況!?」

彼女のすぐ後ろからは、トウカイテイオーが目を丸くして、驚いた様子で部室の中をひょこひょこと覗き込んでいた。

「ゴールドシップ! あなた、また新入りのトレーナーさんにこんな野蛮な嫌がらせをして……!」

マックイーンは、この部室の散々な死屍累々の状況を一瞥し、いつものようにゴールドシップが原因の悪質な悪戯なのだと思い込んで猛烈に問い詰める。

するとゴルシは、ウマ耳をペタンと哀れに折り曲げ、震える声で、目の前で殺気を放つアサマへと怯える指先を向けながら大泣きで叫んだ。

「ち、違うんだよマックイーン! ゴルシちゃんは何もしてねぇよぉ! 全部、全部そこにいる、あのコ、コイツがやったんだよぉぉぉ!!」

ゴールドシップに犯人だと指し示され、マックイーンがそのウマ娘の顔を正面から見据えた、その瞬間――彼女の美しい瞳が、驚愕でこれ以上ないほど大きく見開かれた。

マックイーンにとって、その正面に佇む美しいウマ娘の顔を思い出すことは、極めて容易なことだった。

忘れもしない、昨日の昼下がり。喫茶店の席の都合で、男女のバかっぷる(仮)として座っていたあの不審な席に相席となり、そこで自分に向けて凄まじいマウントと「指ペロ」という異次元の破廉恥映像を目の前で見せつけてきた、あの恐怖のウマ娘だ。

あまりの衝撃に恥ずかしさで胸の内がむず痒くなる感覚を植え付けられた、あの時の彼女が、何故かスピカの部室の真ん中に立っている。

「あなたは……もしや、あの喫茶店での、アサマさ……っ!?」

本人であるかを確認すべく、昨日教えてもらったその名前をマックイーンが口にした、まさにその瞬間だった。

アサマの瞳の奥に、凄まじいまでの「孫バカの光」がバチバチと点火された。

アサマは目の前の青島と、背中にへばりつくゴールドシップのことなど完全に素通り(無視)して、猛烈なスピードでマックイーンの元へと近づいた。

そして――驚愕に固まるマックイーンの華奢な身体を、正面から、これでもかと言わんばかりの凄まじい怪力で思いっ切り抱きしめたのだ。

「ひゃ、ひゃいっ!?」

「ああ……! また、またこうして会えましたわね、私の……っ!」

アサマはマックイーンをその腕の中にしっかりと抱きかかえながら、昨日までの「泥棒猫」という誤解など微塵も感じさせない、愛おしさと狂気に満ちた満面の笑顔で、その柔らかい頬へ自らの頬をスリスリと全力で擦り付け始めた。

 

「――私の、世界一可愛い、可愛い《子ぎつね》ちゃん!!!!!!!!」

 

そう言ってマックイーンを抱きながら、愛おしそうに頬擦りをし始めたのだった。

「い、 一体何をされておられますの、貴女はーーーーっっっっっっ!????」

部室の入口で、かつてないほどのド級の孫バカの愛情(※ただし正体を隠すためのとっさの呼び名)を注がれて大パニックを起こすマックイーンの悲鳴と、それを見て「ええええーーーっっっ!? マックイーンの知り合い!?」と目を輝かせて大喜びするトウカイテイオーの絶叫が、夕方のスピカの部室へと木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 




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