メジロマックイーンだと思ってスカウトしたら、おばアサマの方でした。   作:風神・雷神

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少し遅れたけどあけおめです。


いつ孫が一人だと言いましたか……ですって?

『……んっ。ここは……』

 

 

ふと目を覚ますと、部屋で寝ていたはずが、そこは不思議な空間でした。

 

辺り一面緑の草花が広がり、雪解け水の様な透き通った水が流れる小川、花の蜜を吸うためひらひらと漂う無数の蝶、心地よいそよ風が頬を撫で、頭上に広がるどこまでも青色の空。

 

今、死後の世界があると言われてしまったら、ここだと信じてしまう程に美しい景色。

 

自分以外の人の姿は無く、人工物すら見当たらない。

 

まるで自分だけがこの世界に居るよう。

 

都会では決して見られない絶景がそこにはありました。

 

そんな、突然この様な状況に、慌ててしまってもおかしくないのですが、私は不思議と不安は感じませんでした。

 

何故なら、きっとここが私の夢の中だと直ぐにわかっていたからです。

 

でなければ、つい先ほどまで自室のベットで寝ていたはずなので、この事態の説明の仕様がありません。

 

それにしても、夢にしては現実的過ぎます。

 

試しに足元の花を指先で摘まむと、ツルツルとした葉っぱの質感が伝わってきました。

 

前に話で聞いたVR?……と呼ばれる機械でも、再現できるのでしょうか。

 

使ったことが無いので分かりませんが。

 

ですが、ここが現実だと思ってしまっても不思議ではないですね。

 

それにしても。

 

こんな夢を見るなんて、恐ろしい夢よりはいいのですが、現実で疲れが溜まっているせいでこのような夢を見ているのではないかと思うと、少しだけ私自身が心配になります。

 

今週の何処か時間が空いた時に、気分転換であの人とどこか行ってみるのもいいかもしれません。

 

そんなことを考えながら花々を眺めていると、突然声が聞こえてきました。

 

 

 

『おばあ様!!』

 

 

『!?』

 

 

何故か、自分が呼ばれていると思い声がした方を向くと、そこには1人の幼いウマ娘が立っていました。

 

正直、私自身立ち尽くす彼女に見覚えはありません。

 

すると、彼女は両手を広げて一直線に笑顔でこちらへと走ってきました。

 

私には、彼女への警戒心は全くなく、それどころかどういう訳でしょうか、こちらに向かってくる彼女を、優しく抱きしめたいという欲求に駆られます。

 

膝で立ち、向かってくる彼女にこちらも両手を広げて答えると、彼女は勢いよく私の胸の中に飛び込んできました。

 

頭をスリスリしながら、ぎゅっと抱きしめ、そんなに嬉しいのか尻尾はブンブンと左右に振られていました。

 

その様子は、さながら親の帰りを待つ子供が仕事を終えて会えって来た母親に甘えるよう。

 

『えへへ……』

 

その姿を見てしまうと、何故か自然と頬が緩んでしまう。

 

『貴女は、何処から来たんです?』

 

頭を撫でながら彼女を見ていると、ある事に気が付きました。

 

紫がかった芦毛のロングヘアー、右耳には緑のリボン、おまけに私の事を『おばあ様』と。

 

それだけの事が分かれば、大体察しが付きました。

 

現実なら、決してあり得ない話ですがここは、私の夢の中。

 

なら、こういう事態も容易に想像出来ました。

 

であるなら……。

 

この様な事は、少なくとも今は決して実現しないでしょう。

 

でしたら、多少楽しんでも罰は当たらないですよね。

 

撫でるのをやめて、彼女のお餅の様な柔らかいほっぺをむにむにこねます。

 

しかし、考えてみれば……。

 

『まさか、娘の顔より先に孫の顔を拝むことになるとは、人生何があるのか分からないものですね』

 

今度は、眠くなったのか座った私の膝の上に頭を乗せ、眠りにつこうとしている彼女を優しく撫でながら、そんなことを思ってしまいました。

 

(こんな素敵な子がメジロ家に居てくれるのならこの先、メジロ家は安泰……)

 

 

『おばあ様!!!』

 

 

『え!?』

 

 

不意に右側から声がしたと思えば、マックちゃんと同じぐらいの子が、私へ向かって走ってきました。

 

そして、私の体を抱きしめていました。

 

急に現れたもう一人のウマ娘の子供の出現に動揺を隠せずにいると、その黒髪の子はこちらをジッと見つめていました。

 

その謎のウマ娘の子供に少しだけ驚きましたが、はしたなく声を上げる程ではありません。

 

もう一人の来訪者に私は、必死に冷静さを掻かずにいました。

 

……ですがそんな努力が一瞬で無駄になってしまいました。

 

 

 

『『『『『おばあ様!!!』』』』』

 

 

『……はい?』

 

 

急に左右前後から声がすると、今度はウマ娘の子供が複数人現れ、私の元に集まってきました。

 

『ズルい。私もやって!』

 

『ぎゅー!』

 

『私も!私も!』

 

『ほわぁ~』

 

『……』

 

彼女達は、集まってきた途端、子供特有の純粋に構ってほしくて、我先に自分に気を向けようと私に声を上げています。

 

『こ、これは一体どういう……。まさか……!?』

 

初めて会った私に良く懐いている彼女達を目の当たりにして、ある結論に至りました。

 

ですが、まさかそんなことが……。

 

───流石に……いくら何でも“多すぎ“ませんか。

 

恐らく正解に近い答えにたどり着き、頭の中の考えをまとめるも、急に夢から目が覚めるかの様に周りが真っ白な光に包まれて……。

 

 

 

 

気づけば、自室のベットの上で目覚めました。

 

「(あの夢は一体……)」

 

今寝ればもう一度その夢を見れるのではと思い、二度寝を考えましたが、部屋の時計はもう起きる時刻を指していたので、朝食を作るため台所へ向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

不思議な夢を見てから数日後。

 

アサマがチームスピカの面々と顔合わせした日から1週間が過ぎ、仲間の一員として過ごしていくのに慣れつつあったある日。

 

そんな二人に、二人以外なら気にも留めない不可解な問題に直面する。

 

切っ掛けは、休日での些細な事であった……。

 

 

 

「最近やっと操作に慣れてきた、このスマホと言うものはとても便利ですね。知りたいと思った事を直ぐに教えてくれますから。例えば、お料理をするときのレシピ、今日あった事のニュース記事、おまけにそのニュース記事を読んだ会った事も無い人々の感想や意見までも出てきてしまうとは。ネットとは本当にすごいんですね。」

 

自宅のリビングにあるソファーに座りスマホを見ながら、アサマはそう言うと、隣に座るトレーナーが答える。

 

「そうだな。でも、あんまりネットの情報を鵜呑みにするなよ。全部が正しい情報じゃないからな。そこは、自分で信じられるかちゃんと考えて……って、さっきから何見てるんだ?」

 

「ふふ、気になります?いいでしょう、特別に教えてあげます!これです!」

 

アサマは誇らしげにスマホの画面を見せた。

 

「これは……マンガか?しかも、ウマッターに載ってるやつか。」

 

「ええ、そうです。最近空いた時間に、この方の創作物を見るのが、お気に入りなんです。」

 

「そうか。面白いのか?それ?」

 

「はい!それはとても!そうですわ!良ければ見てみますか。巷では、こうして他者にお気に入りの作品を勧めることを『布教』と言うのでしょう。ネットで見ましたわ!」

 

「その調子じゃどうやら、無駄な心配だったな。……ほう、これは……。」

 

トレーナーが嬉しそうに見せられたスマホの画面には、ウマ娘と思わしき娘と男が、手を握り合い見つめ合っている場面が写されていた。

 

「恋愛モノか……」

 

それも、恋愛ものであった。

 

「意外だな。そんなにハマるなんて。」

 

「お話が面白いのもあるんですが……上手くは言えないんですが、この作品の主人公、私他人事とは思えなかったんです。」

 

「まあ、そういった創作物で、リフレッシュしてくれるのはこっちとしてもありがたいから、いい事だな。」

 

「ええ。この作品を知ってから私、毎日この方のウマッターを見る程の大ファンになってしまったのです!!」

 

「そ、そうか……」

 

目をキラキラと輝かせながら、アサマはトレーナーに詰め寄る。

 

「そう、主人公である彼女は、とある名家の生まれの学園に通うウマ娘。幼い頃から自身を利用し家に取り入ろうとする人達と多くかかわってきた為に、弱さを見せてはいけない。見せてしまえば、そこから付け入られると思い、他人に決して気を許さない冷たい氷のようなウマ娘へと成長してしまいました。ですが、学園で自身のトレーナーとなる殿方との出会いがきっかけとなり、人を信じようとしない彼女を大きく変えていくのです。特に、私のおすすめの場面は、このトレーナーである彼が捕まってしまう時に……」

 

「分かった。分かったから。今から見るから。近い近い。そんな詰めないでくれ。」

 

「え?」

 

机の上に置いていた自分のスマホで調べ始めたトレーナーに対して、気の抜けた返事をするアサマが確認すると、二人の距離は二人の関係を知らない人が見れば恋人か、それ以上の近い関係だと思ってしまう程に体は密着していた。

 

「……あら、これは失礼しました。夢中になってしまいましたわ。今離れま……!!」

 

離れようとした矢先、何か思いついたのか、アサマのウマ耳と尻尾がピンっと上に向くと、直ぐに力強く立てられたウマ耳と尻尾は、力を無くしたようにしゅんっと倒れてしまう。

 

そして、こう続けた。

 

「彼方は、私がこう近くでいたら……イヤなの……ですか。」

 

目を潤ませ、まるで純真無垢な乙女の様な眼差しで、トレーナーを見つめる。

 

アサマは、興味があった。

 

笑って誤魔化すのか、あるいは力で押しのけるのか、はたまた彼が内なる本性を現しそのまま押し倒すのか。

 

こう言った時、この人はどんな反応をするのかと。

 

そんな、思いを巡らせる彼女の心境を表しているのか、尻尾か左右に振られる。

 

ほんの軽いイタズラぐらいに思っていた。

 

だが、彼女がこういった行動をして期待通りになった事などほぼ無いのである。

 

会話が途切れて数秒経つと、あっさり返答が帰ってきた。

 

「なあ、一つ聞いてもいいか……」

 

「は、はい!?何ですか……」

 

質問されるとは思っていなかったのか、揺れていた尻尾の動きが止まってしまう。

 

だが当然、愛の告白をするわけではなく、トレーナーは神妙な面持ちでアサマへ尋ねたのである。

 

トレーナーからの返事は、アサマが求める答えでは無かった。

 

「これ、おかしくないか?」

 

「……え?」

 

話の意図が分からず、動揺するアサマを他所にトレーナーは話を続ける。

 

「お、おかしい……とは、一体……」

 

「今、投稿されていたのを数話見てみたんだが、何も気づかなかったのか?」

 

「気づくとは……」

 

「この投稿されているマンガの出来事やイベント、全て俺達が実際に行った事のある場所や、遭遇したトラブルばっかりなんだ」

 

「それは……本当ですか!?」

 

期待していた事とは全く違ったが、話の内容が予想外過ぎて当初の目的を忘れ聞き入ってしまう。

 

「ああ。よく見てみろ。投稿されてるマンガの内容だが、学園での出来事、温泉街での話、花火大会に行った時の話だって、若干の脚色が加えられてるが、ほぼそのままなんだ。それに、この話の主人公、誰かに似てると思わないか?」

 

主人公であるウマ娘が、アップでスマホに写され、その画面を目を細め注意深く見ていると、アサマはある事に気付く。

 

「似ていると言われましても……って、ま、まさか!?」

 

「ああ、そうだ。似てるんだよお前にな。」

 

書かれたキャラの髪型や、髪色、生い立ちなどの共通点が多々挙げられる。

 

だが、それでもアサマはトレーナーが言うことを信じられずにいた。

 

「た、確かに、言われてみれば、この作品のお話には思い当たる出来事や、主人公のウマ娘の見た目も、私に似ていると言われれば似ているかもしれませんが……ですが、流石に偶然なのでは。」

 

彼女の言うことは、もっともである。

 

いくら自分たちに実際に起こった出来事や、出てきたキャラクターと似ているという理由で疑いを持つのは、こじつけではないのかと。

 

だが、トレーナーには、この作品は自分たちを題材としていると言える確証があった。

 

「言いたいことは分かる。だが、内容も問題なんだが、一番の問題がこれを書いている人物は、現役でトレセン学園へ通うメジロ家の人間かもしれないんだ。」

 

「メ、メジロ家!そんな……どうしてそこでメジロ家の名前が出てくるんですか!?では、仮にあなたがおっしゃっている事が本当なら、その人物とは誰なのですか!」

 

『まさか、マックちゃん!?』とアサマから聞かれるも、トレーナーは首を横に振った。

 

そして、トレーナーの口から、アサマの知らない名前が出てきたのである。

 

「……アカウント名、どぼめじろう。トレセン学園での彼女の名前は……」

 

 

 

 

 

 

「メジロ……メジロドーベルだ。」

 

「メジロ……ドーベル。」

 

 

 

トレーナーから告げられたのは、マックイーンに続き、二人目のメジロ家のウマ娘、メジロドーベルの名前であった。

 

 

 

 




お気に入り登録、誤字脱字、高評価、感想書いてくれた兄貴、姉貴達感謝します。

マスターズチャレンジのドゥラメンテ強すぎ。
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