メジロマックイーンだと思ってスカウトしたら、おばアサマの方でした。 作:風神・雷神
あの時の事を思い出すと、どうしても怖くて仕方がなくなる。
忘れたくても、人というのは、痛みや恐怖などの出来事の記憶は、そう簡単に消えたりしない。
寝ていると、悪夢として何度も蘇る。
最初は何かの悪い冗談だと思っていたが、そんなことは無かった。
気が付いたら、全く見覚えのない部屋で目が覚め、指令のような内容が書かれた紙が、机の上に置いてあった。
最初は信じなかったが、急に紙が燃えて塵になり、その後10秒ほど経つと、急に立っていられなくなるほど胸が苦しくなり、倒れてしまった。
呼吸が出来ず、意識が薄れていく感覚は、今まで体験したことがない恐怖だった。
急な理不尽に、頭の中の考えがまとまらない中、俺が生き残る為に出来ることは、紙に書かれたミッションをクリアすることだけだ。
ご丁寧に机には、この世界の戸籍などの書類が置かれていて、中にはトレセン学園のでトレーナーとして活動するための書類とバッチが用意されている。
突如として始まった命を賭けたミッションを、俺は死にたくないの一心で、そのミッションを達成し、元の世界へ帰ることを誓うのだった。
……………………
…………
……
親愛なる君へ
『ごきげんよう、トレーナー君。こうやって、君宛に手紙を出すのは初めてだね。私は、神だ。まずは、ミッションのクリアおめでとう。実に、見ごたえのあるすばらしいモノだった。だから、終わってしまうのが名残惜しくて、もう一周行ってもらうことに決めたよ。勝手に決めてごめんね。でも、今回が本当に最後だよ。神は約束を絶対に守るからね。また同じ設定でも良かったけど、やっぱり違った方が面白いから変えとくね。今回は、前のミッションから約60年後の世界だ。ちなみに、アニメなどでお馴染みの、スペシャルウィーク、トウカイテイオーやメジロマックイーンのようなウマ娘達がいるから、実際に会えたりするかも。やったね。ラッキー!ちなみに、今回はお供役に君が担当していたウマ娘のメジロアサマを付けといたよ。ステータスとかいじってないから、ほぼ前と変わらないと思うよ。話長かったかな?それじゃ、ルール説明をするね。
ミッション
・担当ウマ娘による 有馬記念 1着
・担当するウマ娘 制限なし
・期間 1年
・成功報酬 元の世界へ返還
注意
・メジロアサマ以外の第三者の人間、またはウマ娘に、自身の身に起こった事が発覚し正体がバレてしまった場合、死亡処置が行われます。(トレーナー限定)
(その場合、メジロアサマは自動的に元の世界へ返還されます)
・この紙は読み終わり次第、自動的に破棄されます。
・破棄されてから十秒後に、数秒間の心臓停止を実行されます。(トレーナー限定)
神より
最初に、この騒動の元凶である者が書いたのであろう文に目を通したのは、メジロアサマのトレーナーだった。
紙に記入されていた内容を大体覚え、隣で不思議そうに見ていたアサマにトレーナーは紙を渡す。
「読み終わったら、机の上に置いとけよ。紙に書いてあるだろ。それ、燃えるから。」
紙を受け取ったアサマは、一通り紙を見て机の上に置くと、突然紙が燃えだしたのに驚いたのか、トレーナーの背中に素早く隠れる。
机には、紙が燃えたことによる焦げ跡どころか傷一つなかった。
トレーナーは、恐怖からか紙が燃えていくのを見て、血の気が引いて顔が真っ青になった。
そして紙に書かれていたが、今回も悪夢として見た『アレ』があったことを思い出した。
「あの、これは一体……」
「……ごめん、後にしてくれ。もうすぐアレが……ッ!?」
突然、トレーナーが胸を押さえて苦しみだし、膝から崩れ落ち、苦しむ姿を見たアサマが、急いで駆け寄る。
「き、来た……む、胸が……」
「!?。どうしたのですか!あなた、しっかりして下さい!!」
今まで見たことがない程、苦しんでいるトレーナーを見て、パニックになりそうなのを必死に抑え込み、アサマはどうすればいいか考える。
「ど、どうしましょう。このままでは、トレーナーさんが死んで……だ、ダメです!そんな事!絶対にダメですわ!兎に角、早くお医者様の所へ……きゅ、救急車!そう、早く救急車を!電話!電話はどこにありますの!」
「アッ。ハァ……ハァっ」
急いで電話を探して部屋を見回していると、アサマの手をトレーナーが掴み、トレーナーに視線を戻す。
「!!あ、あなた、大丈夫ですか!ま、まだ苦しいのですか!待っていてください!もう、私が抱えて近くの病院へ行きますので!」
「だ……大丈夫だ。これは、一時的なものだ……紙にもそう書いてあっただろう……。」
肩で息をして、発作が終わったのを確認し、過呼吸気味の呼吸を整えながら話す。
「俺も……どういう原理かは分からないが……紙に書いていた通りに実行されたんだ。」
「た、確かにそのような事が書かれていたかもしれませんが……。だからと言って、こんなことが……。」
トレーナーの話を聞いたアサマは、信じられないと言わんばかりに、口を手で押さえ驚愕していた。
紙に書いてあるからと言って、人間の心臓が止まるなんてことはまずない。
だが、実際に起きた不可解で、不気味な出来事を、少しずつ頭の中で溶かして理解していった。
そして、トレーナーも落ち着いてきたのを見て、大きく息を吸いアサマは安堵した。
だが、安心したのもトレーナーの様子がおかしいことに気付き、アサマの頭に不安がよぎる。
いつもうるさいほど明るいトレーナーが、まるで謝るように膝を床につけ体を丸め、握っていた手から分かるぐらい手をブルブルと震わせていた。
その姿は、まるで雷に怯える子供の様に、アサマには見えた。
「……ど、どうしたのです?あなた。まさか、まだ体のどこかが痛みますか?それとも……。」
そして、アサマは気づいたことがあった。
それは、いつも笑顔だったトレーナーからは想像できない、アサマ自身今まで一度も見たことがないものだった。
「……もうたくさんだ。こんなの……。」
トレーナーは、情けないと思っていても、どうしても涙を抑えられなかった。
見てくれたニキ、ネキ感謝します