メジロマックイーンだと思ってスカウトしたら、おばアサマの方でした。   作:風神・雷神

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二人で一緒なら

こっちも落ち着きを取り戻した後、アサマの言葉を聞いたがどうしても気になって聞いてみる。

 

「……俺の事、失望したりしてないのか?」

 

「どうして失望するのですか?話の意図が分からないのですが……。」

 

「分からないって……。今の俺の情けないとこ見てただろう!それ見て何も思わなかったのか?」

 

「ああ、そのことですか。情けないと言うよりは……いつもは見られない一面が見れた位にしか思っていません。ですが……私から一つ、よろしいかしら。あなた。」

 

アサマはそう言うと、俺の目を見て大きく息を吸って、ゆっくりと話した。

 

「私は、誇り高きメジロ家のウマ娘、メジロアサマです。そして、あなたは私のトレーナーです。私たちは、一心同体。損得であなたを見捨てることなど決して、しませんし、ありえません。なので……自分を捨てろだなんて、もう言わないで下さい。私も、全身全霊であなたを支えます。ですから……。」

 

 

「どうか、私を信じて下さい!トレーナーさん!」

 

 

……真剣な眼差しのアサマの姿は、純粋に俺に力になりたいと伝わって、優しい笑顔で俺を見てくる。

 

「ですので、どうか涙を拭いて下さいまし。折角のいい男が台無しですから。」

 

そう言いながら、涙が流れ濡れている所を指で拭う。

 

そんな彼女を見て、俺は心から彼女の心は強いんだと思った。

 

「……アサマは、強いな。俺とは大違いだ。」

 

「いえ。私は強くありませんわ。あなたがいるから強くいられるのです。」

 

「……そうか。」

 

「なので、私が弱っていましたら、助けて下さいね。私の担当トレーナーさん。」

 

そう言うとアサマは立ち上がり、俺へ手を差し伸べる。

 

「……分かった。その時は、任せてくれ。」

 

彼女が差し伸べてくれたその手は、俺を助けてくれた救いの手だった。

 

その手を取り立ち上がると、アサマが目をキラキラさせながら話し出した。

 

「では、あなた。折角なので、町を見に回りましょう!私、窓から見える景色が気になって仕方ありません。一緒に行きましょう!」

 

そう彼女が指さす窓からは、元の世界ではなかったような建物が見えた。

 

「まぁ、いいけど……。その格好じゃ……。」

 

俺の話を聞くと、アサマは視線を下に向ける。

 

胸の辺りがパックリ割れ、お腹まで丸見えだった浴衣を顔を真っ赤にして直し、どうして言ってくれなかったのかとジト目で訴えかけてくる。

 

 

「……スケベですわよ。あなた。」

 

 

俺も今気づいたんだ。

 

許してくれ……。

 

 

 

 

 

 

 

あの後、家の中を見て回ったが、家には一通り生活に必要な物が揃えられており、リビングにはソファーと大型のテレビ、キッチンには最新式のIH、冷蔵庫など他にも色々あったが、中でも女物の服が大量にある衣装室を見つけ、恐らくアサマの為に用意されていた。

 

それに比べ俺には、スーツが1着しか用意されておらず、しかもここに来る前に仕事用で着ていた物と同じであった。

 

更にポケットには、前に使っていた財布が入っていて、中には高価な買い物をしない限り大丈夫な額の金が入っていた。

 

この差は一体なんなのだろうか。

 

女物の衣類が沢山ある衣装部屋に入った途端、アサマは目をキラキラさせ服や化粧台と一緒に置いてあった化粧品を見ると、『少しお時間を頂きます。』と言い残し室内に籠ってしまった。

 

少し時間が経ってから、出てきた姿に驚いた。

 

旅館での浴衣姿とは違い、黒色がワンポイントのグレーのカジュアルワンピースに身を包んだ、落ち着いた印象を感じさせるファッションで、初見ながら早速着こなしていた。

 

彼女曰く、着たことがある服に似ているから選んだらしい。

 

化粧や髪のセットは控えめで、色々調べてから本格的に挑戦するらしい。

 

変に目立っても困るので、こちらとしてもありがたい。

 

アサマがそわそわしながら近づいてくると。

 

「……何か言う事がありますか?」

 

と聞いてきたので『普通に着こなして凄いな』と返すと、回答が微妙だったか、『あなたは、そういう人でしたわね。』と言い、ため息をして玄関へ向かって歩いてゆく。

 

彼女なりに、元気のない俺へ気を使ってくれたのだと思うが、何と返せばよかったのか考えながら、アサマの後を追った。

 

 

 

 

同日 場所 某商店街

 

 

今、俺たちは街に繰り出している。

 

俺がいた時代と比べ今いる現代は近代化が進み、ビルなどが聳え立つコンクリートジャングルへ生まれ変わっており、全く別物であった。

 

アサマは、そんな街並みをキョロキョロと見回し歩く。

 

「それにしても、本当に未来の世界なのですね。試しに町中を歩いてみましたが、見る物すべてが違って見えます。」

 

「紙に書いていた内容だと、60年は経ってるからな。そりゃ変わるだろ。」

 

「!!あなた、見てください!何かありますわ!これも、テレビですわね。凄く薄いですわ……。」

 

アサマは、電気屋で展示されている薄型テレビを見つけると、『色がついてますわ……。』なんて言いながらまじまじと物珍しそうに見る。

 

今思えば、あの時代は現代に慣れてた俺にはキツかった。

 

ネットなんてないし、スマホだってもちろんない。

 

当時、最先端が白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電であり、自力ではとても買えずアサマに頼んで、メジロ家の伝手で安く仕入れて貰ったのはいい思い出である。

 

でも、基本的にほぼ学園とメジロ家の資料室にこもって資料見たりして仕事漬けで家に帰っていなかったから、あまり関係なかったと言える。

 

アサマに一つ今後注意をしなければならない事を思い出す。

 

「アサマ、あのさ……。」

 

「なんです?あなた。」

 

「いや、その俺の事を『あなた』って呼ぶのやめないか?いろいろとまずいと思うんだよな。だから……!?」

 

不穏な感じがして隣を見ると、アサマはニコニコと笑っている様に見えるが、目は笑っておらず、気のせいか周りに黒いオーラみたいなものが漂って見えた。

 

「……何か問題がありまして?」

 

「いや、だって……アレじゃん。俺たちの関係勘違いされるかもしれないしさ……。」

 

「……そういう関係に見えて何か問題が?」

 

「ほ、ほら、スカウトした時も言ってたけど、仮にもトレーナーと担当ウマ娘がそんな関係に見えたらまずいし……メジロ家のご令嬢と俺なんかじゃ釣り合いが取れない……。」

 

「何か、問題が?」

 

「……何でもありません。むしろ……光栄です。」

 

「そうですか。では、いい時間になりましたし、あのお店でお茶にでもしましょう。」

 

そう言うと、歩いていた足を止めて、アサマは近くのカフェを指差す。

 

「……ウっス。」

 

正直こうなったアサマには、逆らえない。

 

まあ、丁度この機会に状況の整理をするのもいいと思い、アサマの提案に賛成し店に入る。

 

店内は、白やピンクを中心にした内装で机や椅子、小物がメルヘンチックな物で統一され、客層は女性が圧倒的に多い。

 

 

「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか?」

 

白とピンクカラーの個性的な制服を着た店員が聞いてきた。

 

「はい。二人でお願いします。」

 

「かしこまりました。……すみません。失礼ですが、お客様お二人の関係をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「え?はい。自分たちは……」

 

「恋人です。」

 

「はい?」

 

そう言うとアサマは、俺と腕を組んで店員との会話に食い気味に割り込む。

 

「え?あ。失礼しました。では、席にご案内させて頂きます……。」

 

「では、行きましょう。」

 

「いや、ちが……。」

 

俺の話を聞く前に店員に、ついて行こうとするアサマに腕を引かれ、席へ案内される。

 

案内された席へ座ると、テーブルに置いてあったメニュー表に、カップル限定スイーツなるものが表紙一面に載っており、反対側に座っているアサマが、表紙を指さす。

 

「どうしても、外で見ましたのぼり旗に載っていたコレが気になってしまって、あんな風に言ってしまいましたわ。」

 

「お前な。そういう事なら前もって聞かせてくれよ。俺を見る店の人の目、明らかに怪しんでたぞ。」

 

調べてみたが、この近くにはトレセン学園があるらしく、その学生のウマ娘達もこの辺りには多く見られるらしい。

 

「あら。でしたら、あの店員さんには、私達はどのように見えたのかしら。普通のカップル?それとも、トレーナーと担当ウマ娘の一線を越えた関係……と思われているかもしれませんわね。」

 

「ただでさえ目立つ行動は控えなきゃならんのに……。勘弁してくれ。」

 

そう言うとアサマは、『フフッ。冗談です。』と笑って言い、メニュー表を見て頼むものが決まると、店員を呼び注文をした。

 

 

 

 

 

 

 

注文した品が来るまで静かにコーヒーを飲んでいると、さっきとは違う店員の人が申し訳なさそうに聞いてきた。

 

「お客様すいません。……相席って可能でしょうか?」

 

それを聞いた俺はアサマの方を見ると、少し困った表情を浮かべたが『私は、大丈夫です。』と言った。

 

こっちは問題ないことを伝えると、『ありがとうございます。』と言って席から離れて行く。

 

それにしても、俺達よりも相手側の方が大丈夫なのだろうか。

 

俺達は今仮にもカップルとして店にいるわけであり、正直そんなカップルがいる状況の相席なんて気まず過ぎるだろ。

 

などと考えていると、店員が一人の客を連れてきた。

 

だが、店員が客として連れてきたウマ娘を見て、俺は驚きを隠せなかった。

 

……どうして寄りにもよってこのウマ娘なのだと。

 

名門メジロ家に生まれ、優雅ながら思い上がらない性格と品格を持った、元の世界で史上最強のステイヤーと呼び声高い競走馬が元になったウマ娘である彼女。

 

「突然失礼してすみません。私、メジロマックイーンと申します。」

 

そういって歩いてきた彼女は、俺が一番推していたウマ娘であった本物のメジロマックイーンだった。

 

まずい……。

 

今メジロ家の人間、ウマ娘に接触するのはあまりよろしくないと思い、ここは一時撤退すると伝える為、アサマの方を見るが。

 

「メジロ……マック……。」

 

アサマはマックイーンの名前を聞いた瞬間少し考える素振りを見せると、口につけていた紅茶が入ったカップを受け皿に置き、彼女の方へ視線を移す。

 

「メジロマック……そうですか。あなたが……。」

 

アサマがそう言うと、急に彼女の周りの空気が凍り付いた感覚に変わった。

 

そして。

 

「ええ。私も、あなたとお話したいと思っておりましたので……どうぞよろしくお願いします。メジロマックイーンさん。」

 

何故か、そう言うアサマはにこやかに笑っていたが、目は笑っていなかった。

 

 

 

 




豆知識
アサマは怒るとコワい。
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