メジロマックイーンだと思ってスカウトしたら、おばアサマの方でした。 作:風神・雷神
アサマ「マックちゃんの水着が出ました。何が言いたいのか分かりますね?」
???「今月、キツイっスッ……。」
アサマ「分・か・り・ま・す・よ・ね?」
???「はい……。」(コンビニへ)
日本ウマ娘トレーニングセンター学園。
URAが管轄するものでは日本最高峰のレベルとされており、生徒数は2000人弱。
在校生は皆、国民的スポーツ・エンターテイメントとして位置付けられている「トゥインクル・シリーズ」への出場と勝利を目指しているが、その華やかさとは裏腹に生徒も教職員も地方では異次元レベル扱いされるようなエリートたちがしのぎを削る戦場でもあり、活躍できるのはほんの一握り。
ケガや戦績の悪さが原因で学園を去ることになった者も数多く存在する。
そんな過酷な世界が当たり前のトレセン学園へ入る正門の前に、二人が立ち並ぶ。
一人はウマ娘でもう一人は、人間の男性であった。
二人の周りには、この学園に通う生徒のウマ娘やここに勤める職員などが、彼女達を通り過ぎ門の中へ向かって行く。
何もおかしなことはない光景だが、門の前に立つ二人、特にウマ娘の方に周りの視線が集まっていた。
その視線を集める原因は、男の方でなく、ウマ娘の方にあった。
彼女の近くを歩いた者達は、背筋が伸び凛とした佇まい、整った容姿、体全体を纏うオーラが明らかに一般人とは思えない姿につい見とれてしまう。
それだけではなく、彼女の動き一つ一つは気品に満ち溢れ、まるで彼女の周りがキラキラと輝いて見えた。
それらを見て、彼ら彼女らは、ただ一言【美しい】という言葉が自然に浮かび上がる。
そんな、昨日まで見たことがない謎のウマ娘の存在に、段々と疑問に思う言葉が声へと変わり、彼女の周囲をざわつかせた。
「ねえねえ。さっき門の所にいた人ってさ……。うちの制服着てたから、学園の人かな?」
「凄く綺麗だったね。あんな綺麗な人、学園にいたっけ?」
「私は見たことないかな。多分、どっかからスカウトされてこっちに来たんじゃないの?」
「なんか見た感じ、お姫様みたいだよね。そうじゃなきゃ、あんな近寄りがたい雰囲気周りに出せないでしょ!」
「何なの?なんか気品あふれる感じって言うかさ、私と同じ庶民とは思えない……。」
そんな周囲の反応をもろともせず、正門からトレセン学園へ足を踏み入れる。
その突如として現れた見慣れないウマ娘の情報は、あっという間に学園中に広まり、この学園の誰よりも目立ってしまうのだった。
1日前 時刻 21:00 場所 自宅
「分かっていると思うけど、一応説明するぞ。学園で俺達がしなければならないことを。」
「はい。確認は大事ですものね。」
リビングにある木製のテーブルに座るトレーナーが真剣な顔つきで聞くと、メルヘンチックな白いルームワンピースを着たメジロアサマが、反対側の席に座って答える。
テーブルには、雑貨屋で買ったハート柄のペアマグカップが置かれ、アサマは優しく両手で持つと、中に注がれた紅茶を口に含む。
そんな彼女の姿を見ながら、トレーナーは話を続ける。
「いいか?俺たちの最終的な目標は、有馬記念で1着を取る事。これがクリアされないと、俺は死んでしまうし、アサマは元の時代へ帰ってしまう。」
「はい。その通りです。」
「では、アサマさんに突然ですが問題です。その有馬記念にどうすれば、出場できるでしょうか?」
アサマは、急な質問に驚くも、マグカップをそっと置き、『そうですね……。』と言いながら考え始め、10秒も掛からないほどの時間で答えを出した。
「やはり、レースでの結果……では?ちゃんとした実力があると証明できた人しか出れない……と言うことではないのですか?」
改めて考えてみるとどのような基準でレースに出場できるのか、アサマ自身もイマイチわかっていなかった。
「まあ、確かにレースでの勝利数や獲得賞金の額、それらも選ばれる理由の一つなんだが、この有馬記念と言うレースでは、他に重要な事がある。決して楽な道ではないがアサマには、文字通り走り抜けてもらう。」
アサマは、それが元も重要な役割だと信じ、緊張感が高まるのを感じ取った。
「わ、私自身がそのような重要な役目を……分かりました。例え、どんな苦難が待ち受けていようと、必ずあなたの期待に応えてみせますわ。」
そして彼女は、絶対にメジロの名に相応しい働きをすると意気込み、彼の言葉を待つ。
「ありがとう。少々、遠回りな言い方だったが、お前には、選手としてだけじゃなく、“アイドル“としても活躍してもらう。」
「あい……どる?……ですか?」
「ああ。歌って、踊れて、走れるウマ娘のアイドル。それも、有馬記念はファン投票上位16名に選ばれるとレースの出場資格が出るから、嫌でも誰もが知るトップアイドルになってもらう!」
有馬記念のレースでは、ファンの投票数も大きく関係し、もちろん距離適性などの審査が入るが、基本的には実力が見合い、投票数が多いウマ娘に出場権が与えられる。
なので、アサマにも少なからず、有馬記念までに自身を応援して投票してくれるファンを獲得しなければならない。
だが、トレーナーが言った様にそう簡単にはいかない。
レース成績が良くても、ファンからの支持を集められず出場できない、と言うのも珍しくない。
しかし、ファンを集めることに力を入れ過ぎてしまえば、今度は肝心なウマ娘としての走りの技能が足りなくなる。
実力と投票数、二つをバランスよく高める必要があり、何万人といる応募者の中でも実力とファンの投票数が上位16位以内でなければならない。
だが、その有馬記念で見事勝利できたのなら、ウマ娘の中でもトップクラスの実力を持ち、その上多くのファンの指示を得ている証明になり、ウマ娘なら誰もが憧れるとても名誉な事である。
アサマは、トレーナーの話を聞いて、口を開けたまま固まってしまう。
(流石に、いきなりトップアイドルになれって言われたら、そりゃ動揺するに決まってるわな……。)
その様子を見たトレーナーは、いきなりこんなことを言われて、プレッシャーになっているのではと心配になり、声をかける。
「あ……まあ。大丈夫だ。俺も全力でバックアップするから。だから、あまり重く考えなくてもいいぞ。」
「あの……。」
心配して話すトレーナーを他所に、アサマは、不思議そうな顔で尋ねた。
「その、あいどる?とは一体何なのですか?」
「え?ああ。そっか。昔にはなかったか……。えっと……。アイドルってのはな……。」
トレーナーは、そばに置いてあったタブレットを手に取ると、【ウマ娘 アイドル】と検索をかけ、それっぽい画像や動画を見せながら、アイドルとは何なのかとアサマに説明し、今後アサマ自身がどの様になって欲しいと思っているかを伝える。
だが、タブレットの画像を見ていたアサマのウマ耳は、先の部分を後ろへ向けて倒すようになり、目はグルグルと回し、みるみる顔を真っ赤になり、頭から煙が上がっているのではと錯覚するほど燃えるように、上気していく。
そして、椅子から立ち上がり、トレーナーに勢いよく喋り出した。
「あ、あなたは本気で私に、この方達と同じような事をしろと言うのですか!?」
急なアサマの変わりようにトレーナーは驚くが、お構いなしに彼女は続ける。
「こ、こ、こ、こんな、胸の上の部分が見えてしまうほど、胸元は開けられ、お腹の辺りは、おへそが丸見えになってますし、おまけにスカートに至っては、丈が太ももの半分ぐらいで、先ほどの見た映像では、ウマ娘の方が跳ねた拍子にスカードが舞い上がり、し、し、下着が見えてしまって……。しゅ、衆目が集まる舞台の上でこのような事をするなど……これではまるで痴女ではありませんか!!わ、私、このような衣装着られません!?」
これほど言っても、アサマの勢いは止まらない。
「あ、あなたは、わ、私が大勢の前で、このような恥ずかしい格好をしていいと本気で思っているのですか!?それにです。将来、栄光あるメジロ家を継ぐであろう私が、このような事をするなど、許される訳ありません!?いくらあなたでも、正気を疑いますわ!!」
アサマの言い分として、肌の露出が多い服装は、あまりいいものとされておらず、自分と将来を誓い合った人以外の他人に、気軽に肌を見せる服装を着ることは、余り褒められた行為ではないと教えを受けていた為、彼女にはアイドルに対して若干の拒否反応が見られた。
思った事を言い終わったのか、アサマはハッと我に返ると、コホンと咳をして、静かに椅子に座った。
アサマの、想いを聞いたトレーナーは、申し訳なさそうな顔を浮かべて謝った。
「……確かに、そうだな。急にトップアイドル目指せなんて無理だよな。すまん。俺、アサマなら、素顔も美人で、スタイル抜群で綺麗だから、おまけにウマ娘としての実力もあるから全然、ファン投票数も1位でいけると思ったんだよな……。」
「ふぇ!?(び、美人!?き、綺麗!?)」
トレーナーの言葉に、それも、『綺麗』と言う単語を聞いた瞬間、尻尾は荒ぶり、ウマ耳の先が力強くピンっと天井へ向き、恥ずかしさから、あさっての方向を見てしまう。
トレーナーの不意打ちとも言える褒め殺しに、そんな教えはどこかへ消えて無くなってしまう。
アサマは酷く動揺するも、再び悩み始め自身が出した結論は、さっきとは一転した答えに変わってしまう。
「そうだよなぁ……。ホントにすまなかった。今のは聞かなかった事に……。」
「あ、あの……。」
アサマは、おずおずと気まずそうに、トレーナーへ自身の考えを伝え出した。
「やっぱり。私、アイドルとしてもやっていきます。あなたは……わ、私が、き、綺麗だから出来ると……。そう言うのですから。あ、あなたがそこまで言うのですからね。メジロの誇りにかけて、やらない訳にはいきませんわ!!」
「おお!?ホントか!ありがとうアサマ!!この作戦でいけば、有馬記念優勝も夢の話じゃないぞ!!」
「いえいえ。私こそ、先ほどはすみませんでした。興奮して我を忘れて言い過ぎてしまいましたわ。それにです……」
その日アサマは、ベットで眠る時にトレーナーに言われた言葉を思い出し、胸の鼓動がうるさく、なかなか寝付ずに夜更かし気味になりかけた。
(美人、綺麗、スタイル抜群……ですか。フフフッ……。)
名のあるメジロ家のウマ娘と言えど、乙女心にトレーナーが絡むと、彼女は物凄くチョロかった……。
お気に入り登録、誤字脱字、高評価、感想書いてくれた兄貴、姉貴達感謝します。
福袋は、アルジュナオルタでした。