【急募】私達が世界を滅ぼさずに済む方法   作:アキ山

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長く失踪しておりまして申し訳ございません。

久々に筆が奔りました。

もし、よろしければ見ていただければ幸いです


急募・光の国への連絡方法

 

 夜闇が一面を覆う神野市上空。

 

 そこは鉄火が交差する戦場になっていた。

 

「さあ、もっと踊ろうじゃないか、娘達! 死枯木が命じる! 出でよ、炎头(イエントゥ)!!」

 

「ちぃっ!」

 

 オール・フォー・ワンが放ったドクロをかたどった炎を、私は腕の一振りで発生させた衝撃波で撃ち落とす。

 

 衝撃波によって拡散した炎は、大気で燃え尽きはしなかった。

 

 下手にヴァジュラエネルギーを孕んだ所為で、火の雨になって街へと降り注いだのだ。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁっっ!? なに!? なんなの!?」

 

「火の雨が!? 屋根が壊れて……ごわぁっっ!?」

 

「ぎゃあああああああっ!? あじぃぃぃぃぃっ!!」

 

 炎は容赦なく住宅の屋根を、ビルの屋上や壁を貫いて、その中に焦熱地獄を生み出す。

 

「そ…そんな……街が……」

 

「紅葉お姉さん、下を見ちゃダメ!」 

 

 私達が張った結界の中で、紅蓮に染まった街にショックから口元を押さえる紅葉さん。

 

 こう言ったら冷たいかもしれないが、私達にしてみれば街の被害なんて今更だ。

 

 今までのドッグファイトの中、私達のヴァジュラと獣魔術の激突によって街には瓦礫や雷撃、氷牙に爆炎、その他諸々の余波がばら撒かれている。

 

 これによって街は次々に破壊され、住民の多くは災禍の中に消えた。

 

「おやおや、クシナダ姫は随分と心を痛めているようだ。まあ、この惨状を見れば仕方のないことか」 

 

 そんな紅葉さんの様子に、オール・フォー・ワンはワザとらしく額に手を当てて天を仰いで見せる。

 

 自分も嘆いていますというポーズなんだろうが茶番にもほどがある。

 

「まったく以て酷い有様さ! それも君達が逃げたのが原因だ! 少しは被害を抑えようと思わなかったのかなぁ?」

 

 自分の事を棚に上げて、奴はこちらへ文句を吐き出す。

 

 もちろん、これはタダの言葉じゃない。 

 

 孔雀達と関わったお陰で分かるようになったけど、紡がれる言の葉の全てにヴァジュラが乗っている。

 

 いわゆる言霊という奴だ。

 

「6歳児に何を求めてるんだ、お前は」

 

「私達はヒーローでも何でもないの。必死に逃げているのに、他人に気を回せるわけないじゃん」

 

 そんな戯言を鼻で笑いながら、私達は奴に目を合わせる。

 

「かっ! あぁ……!? 頭が…! 頭の中に……!!」 

 

 すると貼り付けていた嘲笑はどこへやら、目を見開いたオール・フォー・ワンは頭を抱えて悶絶し始める。 

 

「煽りの言葉に呪を乗せていたな。精神干渉系の術で私達、いや紅葉さんの罪悪感を抉るつもりだったか?」

 

「生憎だけど、そういうのはヴァジュラで全部バレバレなんだよね。だから、お礼に精神干渉のお手本を見せてあげる」

 

「あ…がぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」 

 

 私達の返しも耳に入っていないのだろう、血が出るほどに自身の頭を鷲掴みにしてオール・フォー・ワンは叫ぶ。

 

 それもその筈。

 

 奴が感じているのはカミキリムシが頭の中を這いまわって、己の脳や頭蓋を食まれる感触だ。

 

 常人ならあっという間に発狂、場数を踏んだ悪党でも自分の脳みそを抉り出さずにはいられないほどに不快だろう。

 

「ダイアナ、今のうちに逃げるぞ」 

 

「うん」

 

 とはいえ、これも時間稼ぎ程度にしかならない。

 

 私達が方向転換をした瞬間、背後で肉を潰す音と赤い液体を伴って生臭い鉄錆の匂いが撒き散らされる。 

 

「なるほど。視線を介したヴァジュラエネルギーによる瞬間催眠、これは強烈だ。僕が張った個性の精神防御など、障子紙のように破られてしまったよ」

 

「ひっ!?」 

 

 振り返ると頭の半分をえぐり取ったオールフォーワンが、右手で頭蓋からはみ出た自身の脳を弄んでいるのが見える。

 

「だが実際に抉り出して中を見れば、どんな催眠だって解けるってもんさ」

 

「……そんな解き方、お前以外に出来るか、死にぞこない」

 

 奴が『(ウー)』である以上、こういう方法を取ってくるとは予想していた。

 

 けど、実際にやられると流石に引く。

 

「まったく、子供の姿でここまでの力を使えるとは。製作者としては鼻が高いが、捕まえるのは少し骨だな!」

 

 修復の煙で顔の右半分を覆いながら、オール・フォー・ワンは再び動き出す。

 

「となれば、こちらも搦手を使わせてもらおう! 死枯木が命じる! 出でよ、石絲(シースー)!!」

 

 詠唱と共に奴の手の上に現れたのは石を思わせる花弁を閉じた蕾。

 

「そらっ! 個性・空気を押し出す!!」

 

 そして奴はその石の蕾を個性を使った空気砲でこちらへ撃ちだしたのだ。 

 

 空気を裂いて飛ぶ石の蕾、それは私達の眼の前に来ると花開き、中から触手を吐き出した。

 

「お姉ちゃん!」

 

「これは……!?」

 

 そして触手が触れた障壁を見て私は戦慄した。

 

 何故なら、そこからドンドン石化しているからだ。

 

「チィッ!」

 

 このままだと中の私達まで石にされる!

 

 そう考えた私は一度障壁を解除した。

 

「きゃああああああああっ!?」

 

「紅葉お姉さん!」

 

「しまった!?」

 

 咄嗟に解除した所為で、足場を失った紅葉さんが落下してしまう。

 

 ダイアナが追ってくれているが間に合うか!?

 

「ようやく殻が割れたな! 死枯木が命じる! 出でよ、泡蠱(パオクウ)!!」

 

 そんな中、オール・フォー・ワンがまたしても獣魔を呼び出した。  

 

 腹部が泡のようになった奇妙な蟲型のそれは、足を広げて私へ襲い掛かる。

 

「舐めるな!」

 

 私は念動で破壊された街からケーブルを引き寄せる。

 

 金属とゴムで出来た黒蛇は宙を泳ぐように上昇すると、眼前まで迫った獣魔に金属が覗く断面を突き刺す。

 

「ピギィィィィィッ!?」 

 

 次の瞬間に閃光と共に奴へ食らいついたのはビル一つを賄う程の電力だ。

 

 もちろん、こんな物を食らっては獣魔といえど一たまりもない。

 

「チッ!」

 

「くらえっ!!」

 

 そして私が手を振ると、ケーブルは獣魔を貫いて蛍光ピンクの体液を滴らせながらオールフォーワンへ襲い掛かる。

 

 もちろん、ただ突進するなんて芸の無い事はしない。

 

 寸前でゴムのコーティングを引きちぎって、奴へ食らいつくように銅線というアギトを開いて前方全てから襲い掛かる。

 

 分かれた銅線とはいえ、その一つにでも触れれば感電は必至。

 

 これで少しは時間が稼げるはずだ!

 

 そう考えた私は背後に警戒を置いたまま、紅葉さんとダイアナを追う。

 

 パワーダイブで高度を下げれば、自由落下の恐怖に耐えられなかったのだろう、気を失った紅葉さんを追う妹が見えた。

 

「ダイアナ!」 

 

「お姉ちゃん!」

 

 私が妹の隣に並ぶと、巡りが良くなったヴァジュラによって飛行速度が大きく上がる。

 

 なんだかんだ言っても、私達が最も力を出せるのは二人そろっている時だ。

 

 そうして二人の手が紅葉さんに届いた時だった。

 

「うっ!?」

   

「えっ!?」

 

 全力で放っていたヴァジュラが妙な作用をしてしまったのだろう。

 

 瞬間、私とダイアナの脳裏に過ったのは以前に見た祭壇の上で息絶えた紅葉さんと少女、そしてその周りを囲むように枯れ果てた異形の群れというビジョンだった。

 

 あの時は分からなかったが、今ならもう一人の巫女の正体に察しが付く。

 

 おそらく彼女は紅葉さんの双子の姉である国木田…いや藤宮楓だろう。

 

 彼女達が巫女装束を纏って祭壇で絶命しているのは、生贄の儀が執り行われたからだ。

 

 紅葉さんが主役を張ったアニメ『BLUESEED』では、日本には植物由来の超生命体が存在し、古来より人々に災いを齎していた。

 

 彼等は『荒神』と呼ばれ、人々が語り継いできた怪談の鬼や妖怪の正体と言われていた。

 

 そして紅葉さん達『クシナダ』の血族に産まれた乙女は、死ぬ際に特殊なパルスを放つ事によって荒神を休眠状態に追い込む力が備わっていた。  

 

 故に彼女達の家系は荒神が休眠から目覚めた際には、人柱として我が身を犠牲にして日本の安全を守ってきたのだ。

 

 原作では紅葉さんと姉の楓という双子の女児が産まれた事で、封印の為のパルスが共鳴しあい想定より早く荒神が目覚めてしまった。

 

 そして本来クシナダの役目を受け継ぐ筈だった楓が行方不明になった事で、紅葉さんが数奇な運命に巻き込まれていくというあらすじだったはず。

 

 だとすれば、このヴィジョンは何なのか?

 

 一見すれば藤宮姉妹が斃れ、荒神達も休眠に入ったという構図だ。

 

 しかし藤宮姉妹が同時に死ねば、起こるのはかつて荒神達の封印を解いたパルスの共振。

 

 それが本来定められたクシナダの役目を果たすとは思えない。

 

 それに彼女達の周りで死屍累々と転がる蒼い勾玉が植え付けられた植物たち、荒神も様子が変だ。

 

 彼等の様子は休眠というよりも枯死と表現すべきだろう。

 

『いったい何なんだろうね、この光景?』

 

『わからん。だが、紅葉さんと接触した事でコレが見えるのなら、何か意味があるんだろう』  

 

 とはいえ、今は非常時だ。

 

 速くビジョンを中断して現実に戻らないといけない。

 

 しかし、それにはどうしたらいいのか?

 

 宙に浮かぶ精神体になっている私が足りない頭でウンウン考えていると、死屍累々の惨状に囲まれた鳥居と祠がある場所がぐらりと揺らいだ。

 

 地鳴りを伴う振動は一気に荒神の屍が積み重なった周辺へと伝播し、それは巨大な地割れに化ける。

 

 一瞬の静寂を置いて、吹き上がる紅いマグマと共に現れた巨影。

 

 私はその威容に言葉を失った。

 

 太い合金製のワイヤーを無数に寄り合わせたような屈強な筋肉に覆われた暗色の身体。

 

 帯電する背びれと一薙ぎで高層ビルをなぎ倒すであろう太く強い尾。

 

 私達の記憶にあるソレよりも強面になった顔には、冷徹な瞳の光と共に口には鍾乳洞のように鋭い牙が並ぶ。

 

 そして彼は天を見上げると大気が震えるほどの声量で咆哮を上げた。

 

『お…お姉ちゃん、これって……』

 

 眼前の超生物に圧倒されて震える声で問いかけてくるダイアナ

 

 私は眼前にそびえる巨体の王に憶えがあった。

 

「ご…ゴジラ・アース……」

 

 そう、それは『ウルティマ』という反則が現れるまで、歴代ゴジラ最強と言われていた個体だ。

 

 劇中では宇宙人のテクノロジーを手に入れた人類を宇宙へと排斥し、地球を己の楽園へ変えた怪獣の王。

 

 身に纏う障壁によって如何なる兵器も傷つける事が叶わず、その熱線は一撃で月と同程度の質量を持つ妖星を粉砕する。

 

 彼こそがアニメ映画『ゴジラ』に登場するシリーズ屈指の災厄、ゴジラ・アースである。

 

『ねえ、これってどういう事? あそこで死んでる紅葉さんそっくりの女の子は? 枯れたみたいになってる化け物はなんなの!?』

 

『あれは紅葉さんの双子の姉だよ。彼女達は死ぬときに特殊な力を発して、枯死している化け物を封じることが出来る一族なんだ』

 

 けど、どうしてそれがゴジラ・アースなんて化け物に繋がる?

 

 いったい何処に共通点が……。

 

『あ……』

 

 必死にオタク知識と記憶を掘り返していた私は気づいてしまった。

 

 ある、たしかに彼等には大きな共通点があるのだ。

 

「荒神は植物に御魂という勾玉状の核が取りついて生まれる化け物、そしてゴジラ・アースも植物生命体……」

 

 つまりゴジラ・アースも荒神……いや、違う。

 

 順序が逆だ。

 

 きっと荒神こそがゴジラ・アースと近縁のルーツを持つ小クラスの怪獣なのだ。

 

 思い返せばゴジラは第1作目から『呉爾羅(ごじら)』という竜神として、大戸島という島で伝説になっていた。

 

 シリーズの大半は核実験の影響によって『呉爾羅』は漆黒の怪獣王へと変化していたが、ゴジラ・アースにはその設定は適応されない。

 

 おそらく古代から彼は植物生命体として『あの姿』のまま存在していたのだ。

 

 そして、クシナダの力がゴジラ・アースの覚醒と休眠に影響しているのだとすれば……。

 

『二つのクシナダの誕生が荒神を覚醒させ、その死で重なったクシナダの力がゴジラを目覚めさせる?』

 

 枯死している荒神たちは、きっとゴジラ・アース復活の為に養分を吸い取られたのだろう。 

 

 この推測にたどり着いた瞬間、私は胃から何かがせり上がるのを感じた。 

 

 やべぇ……絶対に紅葉さん死なせられねえじゃねえか!!

 

『お姉さま、今のマジ?』 

 

『……多分』

 

 ギギギっと音がするかのようにゆっくりとこちらを見る妹に私は泣きそうな顔で頷く。

 

『どうすんの!? こんなの魔獣たんでも勝てねえよ!!』

 

『これ地球意思の化身みたいなもんだから、この世界で倒せる奴なんていないぞ! マジでどうしよう!!』

 

 二人で抱き合いながら見上げたゴジラ・アースと目が有った瞬間、私達は現実へ引き戻された。

 

「はっ!? ダイアナ!!」

 

「障壁再構築!!」

 

 私が紅葉さんを引き寄せるのと同時にダイアナが張った障壁。

 

 次の瞬間には、そこへ赤の葉脈が奔る鋭利な黒い爪が火花を上げて突き立つ。

 

「やれやれ、まったくもってしぶといな。まだ遊び足りないのかい?」

 

 下手人は言うまでもない。

 

 私達の上を取ったオール・フォ・ーワンだ。

 

「君達との戯れは楽しいが、僕も忙しい身だ。そろそ──ゴフォッ!?」 

 

 余裕綽々で力を練り上げようとしていたオール・フォー・ワンだが、その最中に右手から高速で飛来した何かに吹き飛ばされた。

 

「よく頑張った、二人とも! もう安心していい!!」

 

 オールフォーワンの代わりに空中で仁王立ちする者。

 

「何故って? 私が来た!!」 

 

 それはヒーローコスチュームに身を包んだオールマイトだった。

 

 不敵に笑うオールマイトだったが、生憎と私達の眼が彼からすぐに離れた。

 

「私の姪になにをしてくれてるんだぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「うごぉぉぉっ!!」

 

 何故なら、そこには飛んできたオール・フォー・ワンを個性で大気を固めた巨大な拳で地面へ叩きつけるキャシーの姿があったからだ。

 

「うわぁ! スターアンドストライプのスーツ姿だ!!」 

 

「キャシー!!」

 

 オール・フォー・ワンを瓦礫の中に出来たクレーターへ埋め込むと、キャシーはすごい勢いでこちらへ飛んできた。

 

「二人とも! 心配したんだから!!」

 

「わっぷっ!」

 

「ふわっ?!」

 

 そして障壁を解除するタイミングに合わせるかのように、私達を全力でハグしてくれた。

 

 あ、今回は紅葉さんを堕としてないぞ。

 

 ちゃんと念動で支えているからな。

 

「怪我は無い? アイツに妙な事はされなかった」

 

「うん」

 

「大丈夫だよ」

 

 ハグから解放された私達は目を潤ませるキャシーを安心させるべく笑みを浮かべてみせる。

 

「ところで二人とも、その少女はどうしたんだい?」

 

「このお姉さんは藤宮紅葉さん、私達と同じで、アイツに攫われてたんだ」

 

「オール・フォー・ワンは紅葉お姉さんの命を狙っているみたいなの。だから3人で逃げてたんだ」

 

 私達の説明を聞くとオールマイトもキャシーも表情を厳しくする。

 

「スター、奴の相手は私がする。君は緑谷少女やこの女の子を安全な場所へ」

 

「わかりました、マスター」

 

 オールマイトの言葉にキャシーが頷くと、オール・フォー・ワンが戻ってきた

 

「いきなり酷いじゃないか、オールマイト。……なんだ、お前も若返っているのか」

 

「返してもらうぞ、オール・フォー・ワン! 緑谷少女達も! この少女も!!」

 

 空からこちらを見下ろすオール・フォー・ワンと、厳しい目つきで奴を見上げるオールマイト。

 

 実に絵になる構図だが、このまま彼を戦場へ出すわけにはいかない。

  

「オールマイト、オール・フォー・ワンと戦っちゃダメだよ!」

 

「今の奴は不老不死だ! いくら貴方でも勝ち目はない!」

 

「不老不死だって!?」

 

「……それは個性、いやオカルト関係だね」

 

 驚くキャシーと冷静にこちらへ問いかけるオールマイト。

 

 この頭の回転の速さと判断力は流石というところか。

 

「ああ。簡単に言うと、奴は自分の魂を他の誰かに預けている状態なんだ。その代わりにどんな傷でも再生する不老不死の能力を手に入れている」

 

「つまり、奴を倒すには魂を預かった者を先に倒すしかないか」

 

 苦い表情を見るに、オールマイトも今は退くしかないと理解してくれたようだ。

 

 なら、あとは空間転移を発動させるための時間を稼ぐのみ! 

 

「なあ、もういいだろう?」

 

 そんな密談を行っていると、オール・フォー・ワンはこんな事を言いだした。

 

「君達単体の性能が高いのは十分に理解した。まったくもって素晴らしいよ。その気になれば、一人でもエンデヴァーくらいなら簡単に倒せるだろう」

 

「……何が言いたい?」

 

「分かっている筈だよ、娘達。君等の真価は二人そろった時にある。その力を、私が与えたヴァジュラの可能性を! パパに見せてほしいのさ」

 

「ど…どういう事だ! エレイン! ダイアナ!?」

 

「ただの戯言だ、無視してくれ」

 

「アイツ、攫ってから私達に娘になれってしつこいんだよ。凶悪犯罪者がロリコンとか、マジで笑えないんですけど」

 

 驚くキャシーに私達は冷静に言葉を返す。

 

 ここで激高なんてしたら妙な勘繰りを掛けられかねん。

 

「やれやれ、随分とガードが堅い。これは少し趣向が必要だな」

 

 そんな私達の業を煮やしたのか、オール・フォー・ワンはパチリと指を鳴らす。

 

「うわっ!?」

 

「くさっ!!」

 

 すると奴の足元、荒れた街道に悪臭を放つ黒いヘドロのようなものが現れる。

 

 そのヘドロが揺らぐと、吐き出されたのは二つの人影。

 

「あ……」

 

 その姿を見た瞬間、私達二人……いやキャシーを含めた三人は息を呑んだ。

 

「パパ…ママ……」

 

 何故なら白い貫頭衣を来た二人は、私の両親である緑谷伸茂とセレナ・緑谷そっくりだったからだ。

 

「ああ、心配は無用だよ。これらはある伝手から手に入れた遺伝子サンプルから造り出した肉人形だ」

 

「貴様! そんな物を出してどうするつもりだ!?」

 

 キャシーが怒りを露わに叫ぶと、オール・フォー・ワンはさも可笑しそうに口角を釣り上げる。

 

「そんなに難しい事じゃない。───こうするのさ!」

 

 そして奴は右手の指先から何本もの刃を生み出すと、二人へ射出したのだ。

 

「あ……」

 

 その突然の行動に、私達は誰も動けなかった。

 

 放たれた凶刃は右手から二人の身体を6つに寸断した。

 

 そう、あの日のように。

 

「たしか、こんな感じだったろう? 君達の両親の最後は!」

 

 地面に落ちる肉片の濡れた音。

 

 臓物の生臭さ。

 

 噎せ返るような鉄錆の匂い。

 

 そして転がってこちらを見るお母さんの生首。

 

 眼前の惨劇があの日の光景と重なって、オール・フォー・ワンの嘲笑も耳には入らなかった。

 

「この……クソカス野郎がぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そんな中、真っ先にブチキレたのはキャシーだった。

 

 偽物とはいえ妹夫婦を惨殺され、それを姪たちに見せられたのだ。

 

 しかも本物が死んだ瞬間を再現するかのように。

 

 これで激怒しない身内などいるはずがない。

 

 けれど、彼女が怒りに身を任せて飛び出すことは無かった。

 

「あ……」

 

「こ、これは……」

 

 何故なら私達から黄金の光として見えるほど、高密度のヴァジュラが立ち上ったからだ。

 

「エレイン、ダイアナ……」

 

 戸惑うようなキャシーの声に答えることなく、私とダイアナは前に出る。

 

「凄いヴァジュラエネルギーじゃないか! やっぱり実力を隠していたんだな!!」

 

 そんな私達を見て、クソ野郎は喜悦の声を上げる。

 

「──そんなに私達の本気が見たいの?」

 

 あの言葉がオールフォーワンのものか、それともグエン・モルガンかはどうでもいい。

 

 街を破壊して多くの犠牲を出した事だって知った事じゃない。

 

「そんなに見たいのならいいだろう」

 

 絶対に許せないのはお父さんとお母さんを道具にして、あの光景を再び私達に見せた事だ!

 

「「見るがいい! これが私達の怒りの姿だッッ!!」」

 

 私達の叫びと共に吹き上がるヴァジュラと甲高い咆哮。

 

 黄金の光が収まった時、そこにあったのは二人の子供ではなかった。

 

 アスファルトに爪を立てて仁王立ちし、紅玉の瞳で怨敵を睨み上げるのは機械と人が融合したような退廃的な美を誇る異形の人型。

 

 虚界の魔獣・ジェノサイバー再臨。

  




【超絶悲報】藤宮紅葉・楓姉妹が死亡すると、地球は怪獣惑星になります。

【終了報告】ジェノサイバーが再臨しました
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