ダンまち×FGO ~ 許されよ 我らが罪を~   作:はしゅまる

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お気に入りだった小説が、全部の話が消えてて、めっちゃ曇ったけど...読者を曇らせるとは流石だと思いました。

頑張ってください応援してます(1ファン)


11話

僕達は今、教会の修繕作業をしている。

 

実は昨日ダンジョンから戻り、ギルドに寄って換金していた時にエイナさんに呼ばれ、ある事を聞いた。

 

 

「『怪物祭』の次の日、えっと約4日後に【ロキ・ファミリア】が、一昨日のことやミノタウロスの件で君たちと話しがしたいって言っててね。それでベル君達のホームに伺いたいって...」

 

 

心臓が止まるかと思った。けどすぐに再起して、必要になりそうな材料を買い集め、トネリコと共に教会を直している。さすがにこのままでは人様を呼べない。住めば都と言うけれど、住んでない人からすればただの廃墟だ...。作業を開始して既に2日経っている。

 

2日前のダンジョン帰りにバスケットをシルさんに返して、雑談をしている時に、うっかり教会を直さなくちゃいけないことを話してしまってから毎日シルさんが来て、お昼ご飯を届けてくれる。ほんとにありがたくて...うん...涙がでる。トネリコは、無表情で食べてるけど。

 

そんなこともありながら。外観は修繕できたけど、中をするには時間もお金も足りない。明日にはダンジョンに潜らないと、生活が少し...いやかなり厳しくなる。

 

 

「もう中は諦めましょう、当日何とか魔術で誤魔化しますから...今日はもう...寝かせてください」

 

 

「...うん...そうだね」

 

 

そして一睡も僕達はしていない。既に限界は超えている。そういえば神様、まだ帰ってこないのか...な...zzz

 

 

━━━翌日

 

 

朝が来た。目覚めのいい朝だ。まだ疲労は残ってるけど...神様はまだ戻ってきていないらしい。まだやらなきゃいけないことがあるが…その前にダンジョンに行かなくちゃ...トネリコも準備は終わっている。

 

 

「......では行きましょう」

 

 

「......うん」

 

 

そうして僕達は、疲労を叫ぶ体に鞭を打って歩き出す。ホームを出て、西のメインストリートを通り、ダンジョンヘ向かっていると。

 

 

「おーい、待つニャそこの白髪頭と金髪ー!」

 

 

そんな特定されやすい髪色の2人組は僕達しかいないため、僕達は足を止め声のした方向に振り向く。『豊饒の女主人』の店先で、キャットピープルの少女が、ぶんぶんと大きく手を振っていた。

 

……前にクソ白髪野郎なんて叫ばれたからよく覚えている。一応確認のために「僕達ですか?」と自分たちに指を指しながら聞くと、こくこくと頷かれた。どうしたんだろうと頭に?を浮かべながら少女に近づく。

 

 

「おはようございます、ニャ。いきなり呼び止めて、悪かったニャー」

 

 

「「おはようございます」」

 

 

「えっと、僕たちに何か?」 

 

 

挨拶を交わしたら店員さんは、早速とばかりに用件を切り出した。

 

 

「ちょっと面倒ニャこと頼みたいニャ。2人はシルのマブダチニャ。だからコレをあのおっちょこちょいに渡して欲しいニャ。はい、これ」 

 

 

「え?」

 

 

手渡されたものはお財布だった。布袋状で、口金のついた紫色の小ぢんまりしていて可愛らしい『がま口財布』。

 

 

「アーニャ。それでは説明不足です。クラネルさん達も困っています」

 

 

今度はあのエルフの店員さんが現れ、僕達に近寄ってくる。 

 

......場違いかもしれないけど、僕はあのエルフに自分の名前を呼ばれたことに少し感動している。僕の名前覚えてもらったよ。

 

 

「リューはアホだニャー。店番サボって『怪物祭』見に行ったシルに、この忘れていった財布を届けて欲しいニャんて、そんニャこと話さずともわかることニャ。ニャア、2人とも?」

 

 

「というわけです。言葉足らずで申し訳ありませんでした」

 

 

「あ、いえ、よくわかりました。そういうことだったんですね」 

 

 

ふぅーヤレヤレだニャという顔をするキャットピープルの店員さんを綺麗に無視して、リューと呼ばれたエルフの店員さんは謝罪してきた。なるほどそういうことだったのかと僕達も理解出来た。

 

一瞬で蚊帳の外に置かれたアーニャと呼ばれたキャットピープルの少女は、だんだんと顔を赤くしうつむけてわなわなと震え出す。

 

 

「彼女のことは気にしないでください。それで、どうか頼まれてもらえないでしょうか?私とアーニャ、他のスタッフ達も店の準備で手が離せないのです。これからダンジョンに向かう貴方達には悪いとは思うのですが......」

 

 

どうしようかとトネリコの方を向くと彼女は。

 

 

「届けるだけなら構わないですよ、シルさんにはお世話になってますから」

 

 

「だ、そうです......けどシルさんがお店をさぼっちゃったって、本当なんですか?」

 

 

「さぼる、というのは語弊があります。ここに住まわせてもらっている私達とシルでは、環境が違うので」 

 

 

リューさんから話を聞けば、どうやら休暇扱いらしい。住み込みで働いている目の前の彼女達と異なって、シルさんは毎日働いているわけではないのだと。ミアさんの許可も取っているのだそうだ。

 

要は、シルさんは自宅通いだから、例外的な非番を認められているってことか。それで、シルさんは今回の休暇を利用して『お祭り』に行ったらしくて......。

 

 

「そういえば『怪物祭』ってどういうものなんですか?」

 

 

聞きなれない単語をリューさんに聞く。...名前からして物騒だけど...。

 

 

「初耳ですか? この都市に身を置く者なら知らないということはない筈ですが」

 

 

「実は僕達、オラリオに来たのが結構最近で...。良かったら、教えてくれませんか?」

 

 

「ニャら、ミャーが教えてやるニャ!」 

 

 

僕がそう申し出ると、うつむいていたアーニャさんがずいずいっと僕達の間に割って入った。

 

 

「『怪物祭』は、年に一回開かれる【ガネーシャ・ファミリア】主催のドでかい祭りニャ!闘技場を一日中占領して、ダンジョンから引っ張ってきたモンスターを調教するニャ!」

 

 

「ちょ、調教!?モンスターを?」

 

 

「.........ぇ...」

 

 

驚くような内容を告げられて僕は面食らった。調教って......飼いならすって意味だよね?あの凶暴なモンスターを?

 

 

「別にモンスターを手懐けること自体はおかしいことじゃニャいニャ。お前らだって冒険者ニャら一度は経験したことがある筈だニャ。ぶっ倒したモンスターがむくりと起き上がり、仲間になりたそうな眼差しを送ってくるあの瞬間を......」

 

 

「いえ、あの、一度もないんですけど...」

 

 

どんな眼差しなんだろうと一向に半信半疑でいると、リューさんが口を開く。

 

 

「調教という技術自体は確立されています。素質に依るところもあるようですが、モンスターに自分のことを格上だと認識させることで、従順にさせてしまうのです」

 

 

モンスターを従順に......何だか別世界の話のように聞こえちゃうな。

 

 

「ダンジョンにいるモンスターはタチが悪くて調教をしにくいけど、普通は地上のモンスターを手懐けるもんニャんだけどニャー......【ガネーシャ・ファミリア】の構成員は実力が半端じゃニャいから、ダンジョン育ちのモンスターでも成功させるニャ」

 

 

【ガネーシャ・ファミリア】の名前は僕でも聞いたことがある。その実力は折紙付き。抱える構成員の数もすごいらしい。

 

 

「つまり、モンスターと戦って調教させるまでの流れを、見世物にしてるってことですか?」

 

 

「そういうことニャ。ぶっちゃけるとサーカスみたいなもんニャ」

 

 

ただしかなりハードの、とアーニャさんは最後に付け加えた。やっぱり危険は伴うらしい。

 

 

「ミャー達だって本当は見に行きたいニャ、でも母ちゃんが許してくれねーんだニャ。シルは土産を買ってくるとか言って、笑顔でビシッと敬礼していったけど......財布を店に忘れていくというドジをかましたニャ。シルはうっかり娘ニャー」

 

 

「貴方が言えたことではないと思いますよ、アーニャ」

 

 

「あはは……」 

 

 

まぁ、おおよその事情はわかった。お金がないとお土産が買えなくて苦労するだろうし。シルさんには恩を受けてばっかりだから、早く届けてあげよう。

 

 

「闘技場に繫がる東のメインストリートは既に混雑している筈ですので、まずはそこに向かってください。人波に付いていけば現地には迷わず辿り着けるはずです」

 

 

「シルはさっき出かけたばっかだから、今から急いで行けば追い付ける筈ニャー」

 

 

「わかりました」

 

 

背負っているバックパックは邪魔だろうと言われ預かってもらった。

 

 

「怪物祭か......どんな感じなんだろう、ちょっと見てみたいね?」

 

 

身軽になった僕はシルさんの財布を受け取り、摩天楼(バベル)のそびえる都市の中心のその奥で伸びているだろう東のメインストリートの方角を見つめながら。隣にいるトネリコに喋りかける。

 

 

「.........」

 

 

「トネリコ?」

 

 

反応がない...いや何か様子がおかしい。

 

 

「......ハァ...ハァ」

 

 

「金髪?」「トネリコさん?」

 

 

アーニャさん達の声にも反応しないし、まるで息切れのような音が聞こえる...というより呼吸が荒い...?

 

 

「ハァハァハァハァ......」

 

 

「トネリコ!」

 

 

彼女の肩を強く揺さぶり、声をかける。

 

 

「...ぇ...あ...ベル...?」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

「...えっと...何の話でしたっけ?すいません少しボーッとしてました」

 

 

「......今からシルさんにお財布を届けるんだけど...大丈夫?トネリコは休んでた方が...」

 

 

「いえ...大丈夫ですよ。そうでしたねお財布を届けないとでしたね...」

 

 

何が大丈夫なんだよ...大丈夫ならなんでそんな辛そうな顔してるんだよ。

 

 

「...トネリコさん、今のそのようなの状態でダンジョンに行くことはあまりおすすめしません。クラネルさんの言う通り少し休んだ方がいい」

 

 

リューさんも異変を感じたのかトネリコを説得してくれる。

 

 

「ですが...」

 

 

「ここはお店ですが。営業はまだしていないので、ミア母さんに頼めば中で休ませてくれるはずです」

 

 

「...」

 

杖を握りしめ、顔を俯かせるトネリコ。

その状態のままで、ダンジョンに行けばきっと大怪我に繋がってしまう。リューさんもこう言ってるし、ここで休んで欲しい。

 

 

「トネリコはここで休んでて」

 

 

「ベル...」

 

 

「教会の修繕するためにずっと魔法を使ってたでしょ?その疲れがまだ抜けてないんだよ。大丈夫、お財布を届けるだけだからね。あとお土産を少し買ってくるから、ちょっと遅くなるかもだけどそれまでちゃんと休んでて。」

 

 

「...わかり...ました」

 

 

渋々だけど頷いてくれた。

 

 

「えっと...リューさんにアーニャさん、トネリコのことお願いします」

 

 

「はい、元々こちらの用を頼んでいるのでそれぐらいは任せてください」

 

 

「金髪のことはちゃんと見張ってるから早く行くニャー」

 

 

「はい」

 

 

ほんとにいい人達だな。

 

 

「じゃあ行ってきます!」

 

 

何故かそう叫んでしまい、走りながらでもわかるぐらい僕の顔は真っ赤になっていただろう。

 

 

━━━━━━━━━━

 

時刻は朝の九時を回った。多くの冒険者がダンジョンにもぐっていくこの時間帯に、東のメインストリートは大勢の人で賑わっていた。数え切れないほどの店が通りのど真ん中や隅に出店している。

 

メインストリートを進む人の流れを、一つ高い位置から見下ろしている女神がいた。大通りに面する喫茶店の二階。通りを一望できる窓際の席に一人で座っている。長い紺色のローブを羽織り顔を隠している。が、布一枚で彼女の『美』を抑え込むのは不可能であった。その証拠に、店内の視線という視線が彼女のもとに集まっている。

 

『美の女神』フレイヤは、視線を窓の外に向け、静かに時を過ごしていた。

 

 

「……」

 

 

「よぉー、待たせたか?」

 

 

ぎしりと木製の床が軋む音と共に、こちらに近づくふたつの気配。そしてこの前聞いた同郷の神の声が聞こえてきた。

 

 

「いいえ、少し前に来たばかり」

 

 

手を上げ気軽に声をかけてきた神は...ロキはくたびれたシャツとパンツという服装で、どこかだらしない印象を見る者に感じさせながら、漏れかける欠伸を嚙み殺し、涙目のまま、にへっと笑みを作る。

 

 

「なぁ、うちまだ朝飯食ってないんや。ここで頼んでもええか?」

 

 

「お好きなように」

 

 

椅子を引き寄せながらそんなことを言うロキに、フレイヤは微笑を浮かべた。

 

 

「ちょっと疲れてるんじゃない?目に隈があるわよ」

 

 

「オイ、お前はなんでそんなこと突っ込むんやこちとら必死に隠してるっちゅうのに」

 

 

「ふふふ、ごめんなさいね」

 

 

「かーっ、流石美の女神やな...いい性格してるわぁ」

 

 

フレイヤを呼び出したのはロキで、待ち合わせ場所をこの店に指定したのも彼女だ。

 

 

「ところで、いつになったらその子を紹介してくれるのかしら?」

 

 

「なんや、紹介がいるんか?知っとるやろ」

 

 

「知ってるけど。一応、彼女と私は初対面よ」

 

 

この場所にやって来たのは、ロキとフレイヤを除けばもう一人。剣を携え、ロキを護衛するかのように少し後ろで立っている美しい金髪金眼の少女。アイズ・ヴァレンシュタインだった。

 

 

「んじゃ、ちゃちゃっと紹介するか。うちのアイズや。これで十分やろ?アイズ、こんなやつでも一応神やから、挨拶だけはしとき」

 

 

「......初めまして」

 

 

「ええ...初めまして、アイズ...より『剣姫』と呼んだ方がいいかしら?」

 

 

「うちが名前呼びを許すと思ってんのかこの腐れおっぱい」

 

 

「じゃあ剣姫で呼ぶわね」

 

 

「座ってもええよ」と促され、素直にロキの隣へ腰を下ろす。

 

 

「可愛いわね。ええ、ロキがこの子を大切にする理由、よくわかった」

 

 

フレイヤの瞳とアイズを見る。が、アイズは表情を崩すことなく、ぺこりとお辞儀をした。そんな様子を見せる彼女の姿を見て、フレイヤは思わず微笑みを浮かべる。

 

 

「どうしてここに彼女を連れてきたのか聞いても?」

 

 

「ぬふふふっ!そらお前、せっかくの祭や、この後きっちりアイズたんとのラブラブデートを堪能するんじゃ!」

 

 

下卑た笑みを浮かべるロキ。

 

 

「......ま、それに、遠征も終わって帰ってきたばっかでも放っておくと、またすぐダンジョンにもぐろうとするからなぁ、このお姫様は」

 

 

「......」

 

 

「誰かが気を抜いてやらんと一生休みもせん」

 

 

とロキは隣に手を伸ばし、アイズの頭をぽんぽんと叩く。アイズは自分の非を認めるかのように少しだけ視線を下げて、ロキになされるがままだった。

 

 

「それじゃあ、此処に呼び出した理由をそろそろ教えてくれない?」

 

 

「ん、ちょいと久々に駄弁ろうと思ってなぁ」

 

 

「ふふ、噓ばっかり」

 

 

薄く笑うフレイヤに、ロキもそれまでの態度を変え、ニッと不敵に笑う。それまであった両者の空気ががらっと一変した。

 

運悪く注文を取りにきてしまったお店の従業員は、二柱の神が作り出す圧力感に思わず頰肉を痙攣させ、金縛りに遭ったかのようにその場に立ちつくす。アイズはというと顔色を変えず、真横から静観に徹していた。

 

 

「じゃあ率直に聞くけど。自分何やらかす気や」

 

 

「何を言っているのかしら、ロキ?」

 

 

「とぼけんなや、阿呆」

 

 

動けないでいる男の従業員にフレイヤが微笑むと、彼は目をはっと見開いて、熱病に侵されたかのように赤面。次には背を向けてその場から即退散する。

 

店の中に誰もいなくなり視線を戻すと、ロキはその細い目を猛禽類のように鋭く構えていた。

 

 

「最近動き過ぎやろ、フレイヤ。興味ないとかほざいておった『神の宴』に顔を出すわ、ほかの神の眷属のことを気にしてる時点でなにか企んどるやろが」

 

 

「企むだなんて、そんな人聞きの悪いこと言わないで?」

 

 

「じゃかあしいわ」

 

 

『お前が妙な真似をすると碌なことが起きない』とロキが口にする言葉の端々からそのように告げてくる。こちらに面倒が及ぶようなら叩き潰すぞと、細い瞳は己の意向を明確にしていた。

 

お互いの視線が交差する。が、フレイヤはずっと微笑むままだ。

 

アイズが見守る中、永劫続くかと思われたそんな無言のやり取りは、おもむろに、ロキは脱力する。それまでの雰囲気を霧散させ、確信した口調で声を打つ。

 

 

「そんなに『ベル・クラネル』が気に入ったんか」

 

 

「......」

 

 

美の女神は答えない。ただフードの奥で微笑を湛えるのみ。 だがロキはその笑みを肯定と取った。そして呆れたように長く大きな溜息をつく。

 

 

「はぁ......ドチビも苦労するなぁ...宴であいつの眷属のことを聞き出そうとしたうちに同調したのは、そういうわけっちゅうことか」

 

 

フレイヤの多情……いわゆる男癖の悪さは、神々の中では周知の事実。気に入った異性、いや性別は関係なく下界の子供達を見つければすぐにでもアプローチを行い、その類ない『美』を用いて自分のモノとする。魔性とも言えるその美の牙にかかり彼女の虜となった者は数知れない。 

 

フレイヤが今回目をつけたのは、恐らくヘスティアの眷属のどちらかまたは両方とロキは目をつけた。『神の宴』に足を運んだのは、その2人の所属を突き止めるため。

 

当然のことだが、既に他の神と契約している子供に手を出そうものなら、いや、奪い取ろうものなら間違いなく抗争が起きる。もし喧嘩を売ってしまった【ファミリア】の勢力が強大だった場合、フレイヤは小さくない損害を被って泣きを見ることになるであろう。そこで迂闊な真似は避け、まずは情報収集に走った。ロキはそう推理したのだ。

 

そしてフレイヤはロキの言葉を否定しなかった。

 

 

「ったく、この色ボケ女神が。年中盛りおって、誰だろうがお構いなしか」

 

 

「あら、心外ね。分別くらいあるわよ」

 

 

「抜かせ、男神どもも既に誑かしとるくせに」

 

 

「彼等と繫がっておけば色々便利だもの。何かと融通が利くし」

 

 

かっ、とロキは喉を鳴らし。悪趣味めと吐き捨てる。そんなロキに対し、フレイヤは本当に、ほんの少しだけ、その細い肩をすくめた。 

 

 

「で?」

 

 

「......?」

 

 

「どんなヤツなんや、今度自分の目にとまった『ベル・クラネル』ってのは?いつ見つけた?何が気に入ったんや?」 

 

 

教えろ、とロキは口端を吊り上げる。

 

 

それくらいは言えと要求してくる彼女は神特有の野次馬精神を全開にしていた。言わなければ帰さない、とその目から伝わってくる。

 

 

「......明日会うのでしょう?なら私が言う必要ないと思うけど」

 

 

「それのせいでうちは余計な気を使わされたんや、自分が何思ったかぐらい聞く権利くらいあるやろ」 

 

 

そんな強引な理由を振りかざすロキに、フレイヤは顔を窓側に向け。あたかも過ぎ去った光景を思い出すかのように、フードの奥の瞳が遠い目をした。

 

 

「......強くはないわ。貴方や私のファミリアの子と比べても、今はまだとても頼りない。少しのことで傷付いてしまって、簡単に泣いてしまうような......そんな子」 

 

 

でもね、と言葉が続く。

 

 

「綺麗だったの。透き通っていたその魂は。あの子は私が今まで見たことのない色をしていたわ」 

 

 

だから目を奪われた、見惚れてしまった、そしてその魂の色がどう変わるのかが見たいと。

 

 

誰も気付けないほどの、ほんの微かな熱がソプラノの声に帯びる。

 

 

「見つけたのは本当に偶然。たまたま視界に入ったの」

 

 

当時の光景に思いを巡らせながらフレイヤは言葉を連ねる。その相手との出会いを再現するかのように、窓の外の光景を見下ろす。

 

 

「あの時も、こんな風に......」

 

 

日の光が刺す早朝、西のメインストリート。通りの向こうから、あの少年はこちらへやって来て。

そう、たった今、視界の中を走り抜けていったように。

 

 

「......!」 

 

 

フレイヤの動きが止まる。その視線が、冒険者の防具を纏った白い髪の少年に釘付けとなった。ひしめく人の群れを縫って先へと駆けていく。

 

その足が向かう先は闘技場、つまり怪物祭。周囲の流れに同伴するように少年は進路を取る。徐々に遠のいていく背中を見つめるフレイヤは、ゆっくりと、蠱惑的な笑みを浮かべ。

 

 

「ごめんなさい、ロキ、急用ができたわ」

 

 

「はぁっ?」

 

 

「また今度会いましょう」 

 

 

ぽかんとするロキを置いてフレイヤは席を立った。ローブで全身をしっかり覆い隠し、店を後にする。その場にはロキとアイズだけが残された。

 

 

「何や、アイツ。いきなり立ち上がって」

 

 

怪訝そうな顔を浮かべ、ロキはフレイヤが消えた階段を眺める。と、そこで「ん?」とロキは小首を傾げ。自分の隣を見ると、アイズが外の方角をじっと見つめている。

 

 

「アイズ、どうした?何かあったんか?」

 

 

「......いえ」

 

 

そんな言葉とは裏腹に、アイズは外を見続けた。彼女の金の瞳は、フレイヤの銀の瞳と同じように、見覚えのある白い髪を追っていた。

 




今後の展開を考えていくのがすごく楽しいけど文字に起こすと、綺麗にまとまらなくて苦労する。

弓王が当たって嬉しいはしゅまるからでした
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