ダンまち×FGO ~ 許されよ 我らが罪を~   作:はしゅまる

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アルクェイドは予想外すぎて財布から金の音が聞こえた。

(宝具5にしました)


13話

 

「おーい、ベルくーん!」

 

 

「え?」 

 

 

遠くから聞こえてきた自分を呼ぶ声の方に振り向くと、そこには今まで所在のわからなかった神様が、手を振りながら人ごみをかき分けてこちらに駆け寄って来ていた。そして何か大きな箱を背負っている。

 

 

「神様!?今までどちらに?」

 

 

「何ちょっとした用事でね。でも終わったからこれからはまた一緒だぜ」 

 

 

目の前で立ち止まった神様は、詳しくは答えてくれなかったけど、何か事件に巻き込まれたわけじゃないみたいだ。良かったぁ

 

 

「そういえばどうして神様はここに?」

 

 

「なーに、ベル君はきっと『怪物祭』に興味を持つと思ったからね...ベル君のことならお見通しだぞ!いやー、それにしても素晴らしいね!ここに居るだろうと思ったら本当に出くわしちゃうなんて!やっぱりボク達は固く結ばれた絆で繋がってるんだね!ふふふ!」

 

 

神様と顔を合わせなかったのはほんの三日間なのにとても懐かしく感じる。

 

 

「そういえばベル君、トネリコくんは一緒じゃないのかい?」

 

 

「えっと実は...」

 

 

僕は先程の出来事を伝えた。僕の話を聞いた神様は、真剣な顔で手を口につけ考え込んでいる。

 

 

「.........ベル君」

 

 

「はい?」

 

 

「トネリコくんのことだけど、多分僕達じゃ何も解決できないと思う」

 

 

「え」

 

 

その口ぶりだと、トネリコの不調の原因を神様は知っているということなのだろうか。

 

 

「勘違いしないでくれよ、これはあくまでボクの推察だ。それにきっと君と同じだよ、自分自身で答えを出さなくちゃいけない」

 

 

僕と...同じ...。

 

 

「だからって、答えが出るまで放っておけってことじゃないぜ?手を貸してもいいし、一緒に悩んでもいいと思う。まぁ全部トネリコくんが他の人を頼るかどうか次第だけどね」

 

 

君に似て強情だからね、と神様は続ける。

 

 

「そしてトネリコくんが助けを求めた時、君がするべきことは...わかるね?」

 

 

「はい!」

 

 

何がなんでも手を伸ばす。僕の手を掴んでくれるまで、手を掴んでくれたなら、決して離さない。必ず。

 

 

「うん、それでこそベル君だ。だからこれを君に」

 

 

「ッ!?」

 

 

「......どうしたんだい、ベル君?」

 

 

僕は神様の言葉を遮るかのように後ろを振り向いた。返答も忘れ、辺り一体を見回す。なぜなら今、確かに。聞こえたのだ。祭りのざわめきとは違う。切迫じみたような。

 

 

「...悲鳴?」

 

 

そう口からこぼれ落ちた瞬間。

 

 

「モンスターだぁああああああああああああっ!?」

 

 

そんな声が、通りに響き渡る。それと同時に凍り付いたかのように、平和そのものだった大通りは一瞬言葉を無くした。

 

そして、僕は見た。闘技場方面の通りの奥に。白の毛並みを持つ一匹のモンスターが、荒々しく突き進んでくるの。

 

そして僕が見えたということは、他の人も確認したのだろう。絶叫とともに、人の群れは、ばらばらに散っていった。

 

 

「ベ、ベル君...」

 

 

僕は神様の手を取り、1歩後ずさる。全身の毛が逆立ち、汗が一斉に噴き出す感覚は、まるでミノタウロスと遭遇した時に似ている。あのどうしようもない絶望が僕を襲う。

 

そのモンスター、シルバーバックは、僕たちを視界に入れると、理性がないギョロっとした目を、僕に...いや神様に向ける。

 

すると、シルバーバックの口角が上がる。まるで獲物を見つけたと言わんばかりに。

 

 

『グガァ!』

 

 

シルバーバックが、飛びかかってきた。その僕より何倍もあるその巨体で突っ込んでくる。多分狙いは神様、理由は分からない。頭の理解が追いつく前に、神様を抱き抱え横へ跳ぶ。

 

 

「ッ!!」

 

 

「うわっ」

 

 

勢いに任せ地面を転がる。2転3転と回り、勢いが落ち着いたため片足を地面に立たせ、神様を背中に隠しながらモンスターの方を見る。

 

 

『グウッ...!』

 

 

突撃を躱されたシルバーバックは既にこちらを向いていた。ぎらぎらとした眼光を向けながら、再び、僕達に襲いかかってくる。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

「うえぇ!」

 

 

神様を再び抱き抱え、モンスターの突進を躱す。その勢いは凄まじく後ろの壁へと激突する。それを一瞥し、神様を横抱き...つまりお姫様抱っこをして、逃走する。

 

 

「......すまない、ベル君。ボクはこんな状況なのに、心から幸せを感じてしまっている!」

 

 

「こんな時になにを言ってるんですか神様!?」

 

 

神様の神意が全く読めない!アクシデントに遭って半ば取り乱している僕はとにかく走り続ける。

 

が、すぐに雄叫びが背後から打ち上がる。再びこっちを追いかけてきているだろう。

 

 

「どうして、神様が狙われてるんですか!?」

 

 

「し、知るもんか!?あんなモンスターとは初対面だ!ボクは何もしちゃいない!」 

 

 

そう叫びながら神様は僕の服をぎゅっと握る。こっちが聞きたいというように答えた神様、そして後方から迫る気配は一向に消えない。

 

シルバーバックの目的は神様なのだろう。そうでもなければこんなに僕達だけを追いかけるなんてありえない!もしかしたら誰かに操られてるんじゃないかとさえ思う。。

 

 

(何が起きてるんだ、一体!?)

 

 

答えが出ない疑問を抱えながら、僕は神様を連れ逃げ回っていった。

 

できるだけ人は巻き込みたくない。でも今の僕では、5層より下層に出現するあの化け物を倒せる気がしない。故に、他の冒険者の救援が来るまで逃げ続けなければならない。そんないつ終わるかが分からないこの逃走劇は、全部僕の体力次第ということだ。

 

人が少ない方へと、僕はただ進み続けることしか考えてなかった。

 

だから。

 

 

「ベル君!こっちはダメだ!」

 

 

「えっ!?」

 

 

神様の切羽詰まった声に、はっと意識が戻る。そして道なりの大きなカーブを曲がり切った瞬間、僕はその言葉の意味を悟る。

 

 

「ここは...まさか...」

 

 

細い通り道は終わり、代わりに、雑多としか言いようのない空間が現れる。不規則にできた通路に、数多く存在する上下の階段、それはまるで迷路の構造、その名は。

 

『ダイダロス通り』

 

オラリオに存在するもう一つの迷宮。度重なる区画整理で狂った、広域住宅街。都市の貧民層が住むこの複雑な通りは、一度迷い込んだら、二度と出てこられないとまで言われている。

 

その人工迷宮は今僕がいる場所より低い位置にあった。眼下に広がる光景を前に僕は棒立ちとなる。

 

無茶だ。よりにもよって、こんなところでモンスターと追いかけっこをするなんて。

 

いつ行き止まりに出くわし、追い詰められるかわかったもんじゃない。

 

 

『ガァアアアアァァッ!』

 

 

「っ!?」 

 

 

後ろにシルバーバックが姿を現す。もう前に進むしかないのだ。神様を地面に降ろし、その細い手を引っ張って『ダイダロス通り』に入る。

 

だが、建物を破壊し進んでくるシルバーバックの方が速い。そんな恐怖の鬼ごっこをする僕達をこの通りに住む人々は、見るやいなや、悲鳴をあげ、逃げていき、すぐさま人気が失せた。

 

 

「神様、そこ曲がります!」

 

 

「う、うんっ......!」

 

 

それまで走っていた道を曲がり別の通路へ出る。それを何度も繰り返し、他の径路へ。次の通路ヘと僕は進む方向を変えた。

そして後ろからの気配が消えた。

 

 

(振り切った!?)

 

 

迷路のような構造を利用してシルバーバックを引き離した僕は後方を確認する。モンスターの姿はない。撒けたのか、と僕は安堵するが。

 

 

「しまっ!?」 

 

 

聴覚が拾う。何かを蹴るような音と、石材が軋む音。そんな不穏な音が近付いてきたかと思うと、足元の石畳に大きな影が写る。

 

真上、それは完全な死角だった。シルバーバックは、真っ直ぐ落下して来る。

 

 

『ギァアアアアアアアア!』

 

 

「ッ!」「ぁ!?」

 

 

頭上からの奇襲。砕かれた石畳が見る影もない破片となって宙に舞う。顔を振り上げたシルバーバックと正対する格好になった僕は、神様の前に身を乗り出し、帯刀していた。直剣を抜こうと...。

 

 

『ガァオオオオオオオオッ!!』

 

 

それはなんてことは無い。攻撃ではない。ただの威嚇。けれどその咆哮は、僕に植え付けられた恐怖を再び思い出させるのに充分の効果を持っていた。

 

 

「───ぁ......」

 

 

幻視するのは、ミノタウロス。狂牛の雄叫びが鮮明に蘇り、僕の足を竦ませる。

 

僕の行動を容易く強制停止へと追いやった。完璧な、『恐怖』状態。

 

 

『ガアァッ!』 

 

 

眼前の敵は僕に手を伸ばす。頭を握りつぶす気なのだろう。今の僕ではきっと敵わない怪物。絶望の象徴(トラウマ)と被る面影。

 

だからって後ろにいる人を。今、僕が守るしかない大切な存在を。見捨てる訳にはいかない。僕を殺したその次は、神様をその剛腕で握りつぶす。させない。

 

 

そんなことさせるもんか。

 

 

目に炎が灯る。

 

 

手に力が入る。

 

 

助けなきゃ 。

 

 

怖い。

 

 

怖いけど。

 

 

それでも。

 

 

(僕は、『男』だろうが!) 

 

 

なけなしの意地が、僕を突き動かす。

 

 

戦え!

 

 

戦えッ! 

 

 

戦えぇぇぇぇッ!

 

 

「うあああああああっ!」

 

 

ありったけの勇気をこめて腹から声を出す。体の中の恐怖を追い出すように、無理矢理全身を稼働させる。僕は、1度しゃがみこみ、そして剣抜きながら立ち上がる。シルバーバックの手の平を剣で切りつける。

 

 

『グルゥ...』 

 

 

が、シルバーバックは気にした様子はない。なぜなら...。剣が、白い剛毛の前にして刃が通っていないからだ。

 

その事実に僕は、頭が真っ白になった。振り絞った勇気を使って、繰り出した一撃は、無駄になった。勝てない...そう思ってしまった。

 

 

「ベル君ッ!避けろォ!」

 

 

神様の悲痛な声が聞こえた同時に。鎖を垂らす手錠が付いた棍棒のような腕から繰り出されるパンチを、僕は避けられなかった。

 

 

『ガァアアッ!』

 

 

「ぐッ!?」

 

 

僕は、吹き飛ばされた。だが無意識なのか、そのパンチを食らう前に直剣を体の前に出して、盾のように使ったらしい。でもその威力は凄まじく全く威力は緩和されてない。そしてトネリコから貰った直剣は、粉々に砕けてしまった。

 

これは、ほんとにまずい。逃げれない。戦えない。打つ手なし。絶対絶命。

 

 

「...っ...」

 

 

体は痛い。心も半ば折れている。今の僕じゃ、神様を守れない。

 

 

「...神...様」

 

 

「ベル君!」

 

 

だから。

 

 

「に.......げ...て...」

 

 

「ッ...!?」

 

 

神様さえ、逃げてくれれば…助かってくれれば...それでいい。この体でも囮ぐらいにはなるはずだ。そのまま神様が、誰かに助けを求めれば大丈夫。

 

痛みを訴える体を無理やりに動かし、神様の前に再び立つ。

 

神様...貴女との約束を反映にすることを、許してください。

 

貴女達を置いて逝く、僕を許してください。

 

ごめん...トネリコ...。

 

 

「目を閉じて!!」

 

 

そんな声が聞こえて来たと同時に、シルバーバックの顔に何かがぶつかり、それは光を放ち始め、辺り一体に目が潰れるような閃光を発生させる。

 

 

『ギィアアアアァァァァアアッ!!!』

 

 

「うぐぅ...眩しい...」

 

 

「ッ......」

 

 

目を閉じていても、瞼を通して光を感じることができる。こんなものを直視してしまえば失明するんじゃないかと思うぐらいだ。

 

 

「2人ともこっちです」

 

 

と、腕を引っ張られる。強い光が収まったのを感じ、目を開け、その人物を見る。そこにいたのは。

 

 

「「トネリコ(くん)!」」

 

 

今は、『豊饒の女主人』にいるはずの彼女だった。

 

 

「閃光玉をぶつけてやりました、しばらく動けないでしょう!その間に身を隠します!」

 

 

そう言いながらトネリコは、僕達の腕を引っ張り、進んだ先に狭い地下道が見えそこへと入る。

 

 

「それで今がどういう状況なのか、教えてください」

 

 

あとこれを飲んでくださいと、青い液体、ポーションを渡される。

いや、それより。

 

 

「君は大丈夫なのかい?ベル君から聞いたが体調が悪いって」

 

 

僕が思った疑問を、代わりに神様が聞いてくれた。

 

 

「少し休んだら、落ち着きましたから大丈夫です。それで状況は?」

 

 

「それが...」

 

 

僕は説明する。急にモンスターが現れ、自分たちを追いかけてくること。理由は分からないが狙いは神様。そして僕では、あいつに勝てないから自らを囮にして神様を誰かに救ってもらおうとしたこと。

 

そこまで話し、トネリコは口を開く。

 

 

「とても言いづらいですが、救助は期待できません」

 

 

「えっ?」

 

 

それはどういう意味なのか、理解できない。いや理解したくない。

 

 

「ここに来るまで、私はほかの冒険者らしき人を見ていない。おそらく人払いされています」

 

 

何者かの手によって、とその言葉は続き。それにここまで来るのに時間がかかるでしょう。と、トネリコは語る。

 

じゃあもう、どうしようもないじゃないか...。隠れ続けることはできない、いずれ視界が回復したモンスターに僕らは蹂躙される。

 

僕の脳内は、絶望に塗りつぶされる。

 

顔を下げて俯いしまう。けど、僕の頬を優しく手で包み込む温かい感触がし、顔を上げられる。目の前には神様がいて。

 

 

「ベル君、諦めるにはまだ早いぜ」

 

 

...えっ?

 

 

「ボクに考えがある」

 

 

そう言った神様は背中に背負っていた。箱を僕の前に出し、開封する。

 

その中には、漆黒の鞘に、収まっている様々な刻印が施された長さ100c程の直剣があった。

 

 

「これは...」

 

 

君の武器だ(・・・・・)

 

 

「え...?」

 

 

「君のために、ボクの親友に打ってもらった」

 

 

僕の...ために...。

 

 

「君の力になりたかった」

 

 

まさか今まで帰ってこなかったのは...。

 

 

「ボクが、君を勝たせてやる。勝たせてみせる」

 

 

「ボクは君を信じてるよ、あんなモンスターより君の方が強いって。そんな君を信じるボクを信じてくれ」

 

 

鼻の先がツンとする。今の僕は泣いているのかもしれない。

 

 

「私もベルを信じてます。必ず勝てるって」

 

 

神様...トネリコ...。

 

 

「さぁ、受け取ってくれ」

 

 

黒い剣を両手で受け取る。その剣からは見た目以上の重量を感じるが、刻まれた刻印が僕に呼応するかのように淡い紫色に発光する。すると、まるで手に馴染むかのように、今まで感じてた重量が程よい重さへと変わる。

 

 

「トネリコくん、今からここでベル君のステイタスを更新するから、終わるまであのモンスターを引き付けておいて欲しい。できるかい?」

 

 

「ええ、やってみせます」

 

 

「トネリコ...」

 

 

正直に言うと、行かないでほしい。僕と同じ駆け出しの彼女ではきっとあのモンスターに太刀打ちすることは難しいと思うし、何かあったら嫌だ。でも...。トネリコの方を見ると彼女と目線がかち合う。

 

 

「ええ......そうです。私のことも信じてください。必ずあなたにバトンを繋ぎます」

 

 

僕を信じてくれる彼女を、僕は信じることにした。

 

 

「...では、行ってきます」

 

 

僕の思ったことが伝わったのか、トネリコは少し微笑み地下道を出ていった。

 

 

「さぁベル君、急ぎでやるぞ」

 

 

「はい!」

 

 

━━━━━━━━━━

トネリコSide

 

 

異変が起きたのは、キャットピープルの店員さんから『怪物祭』の詳細を聞いた時だった。

 

急に息苦しくなり、視界はぼやけ始め、一切の音すら聞こえない。

なのに幻視するのは、赤、赤、赤、赤。

 

ベルが強く肩を揺さぶってくれて、その苦しみからは解放された。

 

なんだったんだ...今の。

 

その後、ベルがお使いをしている間、私は『豊饒の女主人』の中で休ませてもらった。いや休んでいたというより。

 

 

「何チンたらしてんだい!開店まで時間ないんだよ!」

 

 

「はいっ!」

 

 

私は開店準備の手伝いをしていた。

ただ休ませて貰うだけなのは、気が引けたため、私から何かを手伝わせて欲しいと頼んだ。

 

少し悩んだ女将さん...ミアさんは、じゃあ掃除でもしてもらおうかと、言ってくれた。

 

そうしてベルが戻ってくるまでの間、手伝いをさせてもらおうと思っていたけど、少し時間が経ち、外が騒がしくなった。その様子は普通ではない。店から顔を出したミアさんは、走ってくる男性に、何があったかと聞けば、闘技場からモンスターが脱走したとの事だ。

 

嫌な予感がする。背中に熱を感じた。これはあの時と同じもの。

 

そう思った私は、置いておいた装備を持って酒場を飛び出す。後ろから呼び止める声が聞こえたけど、振り向かず、手をあげることで答えた。

 

ベルがシルさんにお財布を届けに行った東側のメインストリートに着いた時、周りに人がほとんど居なかった。既に逃げたのだろうか。でも誰もいないのは不自然すぎるし静かすぎる。そしてモンスターの声が聞こえた。聞こえた先は『ダイダロス通り』そこにベルもいると確信していた。

 

きっとこれは試練なのだろう。

彼が乗り越えなくてはいけない。ひとつの壁。

 

私が介入するべきではない。余計な手出しをしてしまっては、試練の横槍を入れては、ダメだと思いつつもベル達を探すために『ダイダロス通り』へと入る、そして見つけ、ベルが壁を乗り越える様子を見守ることに徹しようと思った。けどものすごくピンチだったベル達を見た時、気づけば、閃光玉を投げていた。

 

心の中で、ああやっちゃった、と思いつつも、神ヘスティアとの約束を守れたことにほっとしながら2人の手を引っ張り、地下道を見つけそこに身を隠す。

 

それで、ベルからこの状況を説明してもらったけど、あまりに絶望的なものだ。救援は期待出来ず、自分より一回りも強い相手、ベルの心は、彼の右手に持つ直剣だった物のように、砕け散っている。

 

でも、神ヘスティアは黒い剣と彼女自身の嘘偽りのない言葉で、彼の心に再び炎を灯させた。そしてベルはまた挑もうとしている、新しい力を手にして、なら私も、ベルを信じるんだ。必ずベルなら乗り越えると。そのために。

 

 

『グゥゥッ!!』

 

 

「どうやら閃光玉で片目が失明したようですね」

 

 

私は今、シルバーバックの前にいる。力は負けるだろうし、図体の差も大きい、負ける気しかしない......けど。

 

 

『フーッ!、フーッ!』

 

 

「怒ってますか?怒ってますよね…実は私もです」

 

 

たとえ世界からの試練だとしても、こいつは友達を...家族を傷つけたんだ。その事実は変わらない。私が怒ってもいいはずだ。

 

全身にある魔術回路に『魔力』を流す。体に青白いラインが浮かび上がる。これは私のスキル【魔力放出】の能力。これで私のステータスを底上げする。本来は武器に『魔力』を纏わせるとか、ジャンプやパンチをする時に力を込める一部分の場所に『魔力』を流すのだが。今回は全身にする。

 

初めての試みだからどうなるかは分からないけど。うん、やってやる。私は、シルバーバックを睨みつけ、宣言する。

 

 

「今から私があなたをボッコボコにしてやります。覚悟しろ、この万年発情猿め!」

 

 

『グガァァァッ!!!』

 

 

戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 




この2章が書き終えたらすぐ3章に入りたいけど、トネリコの██眼のおかげでリリの立ち回りをどうするべきか決まらない。ですのでかなりの時間をかけることになるため、更新が更に遅れます。申し訳ありません

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