ダンまち×FGO ~ 許されよ 我らが罪を~ 作:はしゅまる
「……ん」
【ヘスティア・ファミリア】の本拠、教会の隠し部屋。
地中に作られているため朝日も鳥の鳴き声も届かないこの場所で、僕は目を覚ました。
まだぼんやりとしたまま、ソファーの上から頭を巡らして、壁に備え付けてある時計を確認する。
(……六時、ぴったし)
今日も起床を定めている時間に起きられた。
朝日が届かないはずなのに時計を確認できたのは、『魔石灯』が天井でぼんやり燐光のごとく輝いているから。地下でありながら部屋は完璧な暗闇に包まれてはいない。周囲を見渡せる程度には肉眼がしっかり機能する。
この『魔石灯』を作り出したヒューマンの技術を、神様は「本当に手先が器用」と言っていた。あの神様達の舌を巻かせるほどなのだから、発明された当時『世紀の大発明』とまで言われた魔石製品のすごさがよくわかる。
ちなみにこの魔石灯は買ったものではなく、トネリコがちょちょいと作ったものだ。
昨日、ステイタスの更新を終えた後、トネリコを呼びに行き僕はソファーに座っていたのだがいつの間にか寝ていたらしい。
結構狭いけどよく眠れたものだ。瞬きを数度繰り返し、顔を洗うために体を起こそうとして……ふと気付く。
シーツ以外に、丸いものが僕の上にもたれるようにして乗っかっている。とても軽い。息苦しくないから全く気にもならなかった。 疑問を感じながらその丸い何かに手を伸ばすと……神様だ。
僕の胸に顔を埋めるようにして眠りこけている。ぎょっとしたけど、すぐに苦笑した。
(寝ぼけちゃった……のかな?)
珍しいこともあるものだと思って、困ったなぁと考える。神様を起こさずソファーを抜け出すのには自信があるけど、なんだか、すごく温かくて抱き心地のいいこの存在を放したくない。最高級な抱き枕を超えた、まさに神作級の抱き枕。
強力な武器やアイテムを確保しているどんな【ファミリア】にも、これ以上のアイテムなんてないって断言する。
神様やっぱりスゴイ。畏れ多くもつい手を回して柔く抱く。ほわん、とした感触。あぁ不味い、本当に抜け出せなくなってしまう。もしこの光景がトネリコに見られたらどんな目で見られるか予想がつく。それは嫌だと抜け出そうとする僕。
「んっ……」
と小さく身じろぎして、赤ん坊のように顔を僕の胸板に擦りつけてきた。 あぁもう可愛い……! などと、心中で悶えまくっていると──「むぎゅ」と神様の双丘が鳴って、僕の上で圧倒的質量のソレが潰れた。
そこからの僕の行動は迅速だった。
神アイテムから劇薬アイテムに変貌した神様を直ちに除去し、場所を入れ替えるように寝かせソファーから脱出した。
(神様が僕を殺しに来るなんて……!)
初めて神様に戦慄を抱いた瞬間だった。あと一秒遅かったら僕の呼吸は止まっていたかもしれない。神様にシーツをかけ僕はいそいそと顔を洗いに行く。
冷静になって考えてみると、僕の馬鹿野郎、神様相手になんちゅーことを。
顔を洗いながら思っていると。
「おはようございます」
「うひゃぁぁ!?!?」
後ろから声をかけられて驚いてしまう。
「ト...トネリコ!?いつからそこに?」
「ついさっきですよ」
「.........」
全く気づけなかった
「起きた時に神ヘスティアの姿が見えないから探してみればベルの所に潜り込んでるなんて...神としての威厳が...」
「あ...あはは...神様も寝ぼけたりしちゃうんだよ」
「.........なんというか純粋ですね…ほんと」
「...え?」
「でもまぁ...ベルもいい思いができてたみたいですし?良かったですね」
「!?!?」
「ふふっ...じゃあ私朝ごはんの準備してきますね、ソファーに座って待っていてください」
どうやらあの激闘(?)を見られていたらしい...恥ずかしい!
そんな爆弾発言を残して行ったトネリコは、エプロンをつけて昨日残ってしまったジャガ丸くんを使って料理している。
トネリコは料理がとても上手だ。なんでも育ててくれた人が料理上手だったらしく、よく教えて貰っていたのだとか。
そんなことを考えている間にマッシュされたジャガ丸くんがあっという間に別の料理へと変化していく。
「......うん.....よし、出来ました」
どうやら完成したみたいだ。
「神ヘスティアを起こしてきてもらっていいでs」
「いやもう起きてるぜ!」
いつの間にか僕の隣に座っていた神様。
「トネリコくんの料理はとても美味しいからね!いい香りがしてきたから飛び起きてきたのさ!」
もちろんベル君の料理も美味しいぜ?と言ってくれる神様。
さっきの事があってちょっと神様に目を向けれないけれど嬉しい言葉だ。ただ僕ではジャガ丸くんで作ったこのスープの味を超えるものは作れないと思う。トネリコはポタージュと言っていた。
本人曰く「潰して調味料を足しただけですよ?」と言っているがもうこれを超える朝ごはんはないと言える。
「では冷めないうちにどうぞ」
「「いただきます!」」
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朝ご飯を食べ終え、僕達は今日のダンジョン攻略の身支度をする。
「じゃあ行きましょうか」
「うん」
トネリコが扉に手をかけた時
「...あー...トネリコくん...ちょっとだけいいかい?」
「...はい?」
神様がトネリコを呼びかける
「...........」
「...........」
部屋を沈黙が支配する
呼び止めたはずの神様が何かを言いたそうにするがなかなか声に出さない。あと僕の方をチラッチラッと見てくる
「ベル、先に行っていてください。すぐに追いつきますから」
「わかった」
僕が居ては話せないことなのだろう
ちょっと気になるけど、なにか話せない理由があるかもしれない。そう思った僕はドアを越えて階段を昇る。
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ヘスティアSide
ベル君が階段を昇る音が聞こえなくなった。
彼には少し申し訳ないけど、ここからの会話はあまり聞かれたくない。
「それで神ヘスティア、なぜ私を呼び止めたのですか?」
彼女が聞いてくる。当然だ。理由もなく呼び止めることなどないのだから
「あー...その...だね」
思わず言い淀む、これを聞くということは、君を疑っていると言っているようなものだ。同じ
「トネリコくん」
「はい」
「昨日5層でイレギュラーが起きてミノタウロスに襲われたと言っていたね?」
「はいその通りです」
「スー...ハー...あまりこういうことを聞きたくはないんだけど、君に
「はい」
「あのようなイレギュラーが発生したのは
「............」
再び沈黙が部屋を支配する。彼女の顔は、やっぱりそのことですか...と言っているように見える。
「確証はありませんが違うと思います。
あのスキルは、その道を歩み始めたものに対して発動するものです。ベルは
「そう...か」
その目は、嘘をついていない。
「正直に話してくれてありがとう、それとほんとにごめん!!ボクは君を疑ってしまった!!」
ボクはドゲザをする。それは東方に伝わる最終奥義。知り合いの神から教えてもらったけど最大限の謝罪をする時にも使うものだとか
「顔をあげてください神ヘスティア、貴女は何も間違ったことをしていないのですから」
「でも...」
「
あの時はほんとにダメかと思いました。と遠い目をしながら呟いている彼女。
「......ベル君じゃないとダメなのかい?」
「...........はい」
「...わかったこの件に関しては終わりだ。ただ昨日も言ったけどボクは君達に死んで欲しくないんだ」
「それが試練だとしても、必要なことだとしても無茶をせず出来れば逃げて帰ってきてほしいと思っている」
「約束して欲しい、必ず二人でボクのところに帰って来るって」
「...はい、約束します。必ず生きて貴女の元に二人で戻ります」
「うん、その言葉が聞けて良かったよ......よし、じゃあ行っておいで。ベル君を待たせてしまってるだろうからね」
「行ってきます」
彼女はドアを越え階段を昇る...音が聞こえなくなったと同時に……。
昨日更新した彼女のステータスを写した紙を見る。
「英雄...か」
トネリコ 《ヴィヴィアン》
Lv.1
力:I50→I60
耐久:I9→I 12
器用:H 100→I110
敏捷:I 30→I 40
魔力:H 150→170
《魔法》【 】
《スキル》
魔力放出
・武器や自身の肉体に
道具作成
・『魔力』を帯びた器具を作成可能。
陣地作成
・自らに有利な陣地を作り上げる。
・上限は1つまで。
・新しい陣地を作った場合、古いものは消去される
■■眼
・あらゆる嘘を見抜き、真実を映す眼。
・常時発動。
■■の■■
・早熟する。
・使命を全うするまで効果持続。
英雄作成
対象■■・■■■■
・ 対象者は早熟する。
・ 対象者を英雄へと導く。
・ 対象者に試練を課す。
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ベルSide
先に教会を出た僕は、昼間とは趣が異なったメインストリートを一人で歩いていた。
朝といってもそれなりに時間が経っているからそれなりに人影がある。露店で商売をしているパルゥムもいれば、僕等と同じ冒険者の人達が徒党を組んで何か話し合っている。
これからダンジョンに向かうのかな?
僕もダンジョンへ潜る装備を身に付けているし、傍から見れば彼等と似たり寄ったりかもしれない。
それにしても気になる。神様が呼び止めるほどだし、なにか大事な話なのだろうか?....うーん僕が無茶をしないよう止めるように釘を刺してる....とか?(だいたい間違っていない)
トネリコが来たら聞いてみy......
「...!?」
ばっ!っと振り返った。立ち止まって、自分の背後を見る。
……いやな感じだ。気配とか感じられるほど一端の冒険者じゃないけど……視られてた?
肌を冒されるような感覚。まるで物を値踏みするかのような、普通の人にはとても真似できない、無遠慮過ぎる視線。
一人でカフェテラスの呼び込みを行う店員、路地の角でたむろする獣人の二人組、商店の二階の窓から大通りを見下ろす女の子……広がる景色の中、動くものに何度も視点を移す。ぐるりと周りを見渡しても、不審な影はない。むしろ通りのど真ん中で棒立ちになる僕に奇異の目が集まっていた。
勘違いかな...?
やけに耳にへばりつく心臓の音を聞きながら、ちっとも納得できない顔を浮かべてしまった。
「あの...」
「!」
突然の後ろからの声に、身構えてしまった。周りから見れば大げさだと思われただろう。
声をかけてきたのは僕より少し年上(?)の、ヒューマンの少女だった。服装は白いブラウスと膝下まで丈のある若葉色のジャンパースカートに、その上から長目のサロンエプロン。薄鈍色の髪を後頭部でお団子にまとめ、そこからぴょんと一本の尻尾が垂れている。ポニーテールと言うんだろうか?髪と同色の瞳は純真そうで可愛らしいその少女は僕の挙動に驚いているようだった。
明らかに無害な一般の市民.....なんてことを!?
「ご、ごめんなさいっ! ちょっとびっくりしちゃって……!」
「い、いえ、こちらこそ驚かせてしまって……」
慌てて謝るとあっちも頭を下げてきた。申し訳なさ過ぎる。
「な、何か僕に?」
「あ...はい。これ、落としましたよ」
差し出された手の平に乗っていたのは、紫紺の色をした結晶だった。
「え、あれ? 魔石?」
おかしいな…魔石は昨日全部トネリコに渡して一緒に換金したはずだけど...と腰巾着を見る。僕達はモンスターから得られる魔石を、それぞれが持つこの大の腰巾着の中に回収していた。これもトネリコが作った『魔導具』の1つで、見た目以上に魔石が入る。どれだけ物を入れても一定の重さ以上は感じたことがない。トネリコ凄すぎる。
..... は! 思考を戻そう......冒険者じゃない人が魔石なんか持っている訳ないし......うん、きっと渡し損ねたものが落ちたのだろう。
「すいません。ありがとうございます」
「いえ、お気になさらないでください」
ほわっとする微笑みが返ってきた。僕もつられて笑ってしまう。
「これから、ダンジョンへ行かれるんですか?」
「はい、軽く行ってみようと仲間と決めまして」
「お仲間さんがいらっしゃるんですね」
「はいとても頼りになる人です」
「うふふっ、そうなんですね」
少し話しているうちに初対面の人に対する壁みたいなものを、完璧に取り払われてしまった。
「そうだ!冒険者さん、私実はあの酒場で、働かせて貰っているんですが、今日の晩ご飯をお仲間さんと一緒に召し上がりに来ませんか?」
「......」
急な展開に僕が目を丸くする番だった。
「もしかしてご迷惑だったりしますか?」
少し申し訳なさそうな顔を浮かべる彼女...くっ...それはずるい!
「い...いえそんなことはないんですが…トネ..仲間と相談させてもらってもいいですか?」
「はい!もちろんです!それに...」
と今度は少し意地悪そうな笑みを浮かべて、僕の目の前に顔をすっと寄せてきた。ちょ...近い.....
「もし来てくださったら...
「............ぇ?」
え?ちょっと今なんて?突然の彼女の言葉に思考が停止する。
いや脳内でおじいちゃんがおねショタじゃーー!と叫んでいる
うるさいよ!なんだよおねショタって!いやそれよりえっと...
「ふふっすいません、少しからかっちゃいました。ちゃんとした酒場ですので安心してください」
びっくりした。ほんともう心臓に悪いよ今のは……
「あ...あはは.....えっとじゃあ...そろそろ僕は行きますね」
「はい、お待ちしております冒険者さん」
とびっきりの笑顔で僕を送り出してくれる...なんて人だ。きっと数多の冒険者が彼女の笑顔にやられてきたことだろう。
「あ」
僕は思い出したように後ろを振り返った。
不思議そうに見つめ返してくる店員さんに向かって、言う。
「僕ベル・クラネルって言います。貴方の名前は?」
瞳を僅かに見開いた後、彼女はすぐに微笑んだ。
「シル・フローヴァです。ベルさん」
名前と笑みを、僕等は交わし合った。
次回 戦闘
『魔力』について説明
これはステイタスの魔力とは別の物
精神力や魔素が魔術回路で加工されることで発生する力
簡単に言えば電力みたいな物
トネリコはこの魔力を使って戦っているので詠唱を必要としない