ダンまち×FGO ~ 許されよ 我らが罪を~   作:はしゅまる

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かっこいいヘスティアが書きたかった後悔はないです


6話

 

 

「畜生っ!畜生っ!ちくしょおっー!!」 

 

 

僕は叫びながら走る。道行く人々を追い抜いて、周囲の風景を置き去りにし、自分を呼ぶ声すらも背後に押しやって。僕は、夜の街を駆け抜けていく。

 

目から水滴が浮かんでは、後ろへと流れていく。 頭の中を過ぎるのは先程の出来事。

 

 

━━━━━━━━━━

 

「そうだ、アイズ! お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

 

「あの話......?」 

 

 

狼人(ウェアウルフ)の青年が、アイズ・ヴァレンシュタインさんに何かの話を振る。

 

 

「あれだって、昨日帰る途中で逃がした何匹かのミノタウロス! 最後の一匹をお前が5階層で始末しただろ!?そんで、あん時いたトマト共!」

 

 

そんな声が聞こえてきた。

 

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐに集団で逃げ出していった?」

 

 

「それそれ!奇跡みてぇに上層にどんどん上っていきやがって、俺達が追いかけていったやつ!こっちは遠征帰りの途中で疲れていたってのによっ」

 

 

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえ冒険者(ガキども)が!」 

 

 

僕たちのことだ。

 

 

「しかも前衛装備の兎野郎が魔導師の女に庇われててよ!いやぁ笑いもんだったぜ、可哀相なくらい震え上がっちまって腰抜かして、顔を引きつらせながら涙浮かべてやんの!」 

 

 

僕の頭の中は凍りついたかのように動きを止めると同時に身体から熱が冷めていく感覚。

 

 

「ふむぅ?それで、その冒険者達どうしたん? 助かったん?」

 

 

「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」

 

 

「......」

 

 

歯を食いしばる、もう何も聞きたくなくてテーブルに顔を伏せる。

 

 

「それでそいつら、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ! くくっ、腹痛えぇ......!」

 

 

「うわぁ......」

 

 

「アイズ、あれ狙ったんだよな?そうだよな?頼むからそう言ってくれ......!」

 

 

「......そんなこと...ないです」

 

 

話題を振った青年は目元に涙を溜めながら笑いを堪え、他のメンバーは失笑し、別のテーブルで話を聞いている人達は、釣られて出る笑みを必死に嚙み殺す。

 

 

「それにだぜ? その腰抜かしてた兎野郎、なんか叫びながら魔導師の女を置いてどっか行っちまってっ……くくっ!うちの姫様、助けた相手に逃げられてやんのっ!」

 

 

「......くっ」

 

 

「アハハハッ! そりゃ傑作やわぁー! 冒険者も怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!!」

 

 

「ふふっ......ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない......!」

 

 

「......」

 

 

「あぁん、ほら、そんな怖い目しないの! 可愛い顔が台無しだぞー?」 

 

 

どっと笑い声に包まれる【ロキ・ファミリア】の人達。反対に自分のいる場所は大きな穴が開いてしまったかのようで。あちらとこちらで世界が別れたようだった。

 

 

「気持ちは分かりますが落ち着いてください神ヘスティア」

 

 

「わかってるよ...わかっているけど…ロキぃ...!」

 

 

隣から人の話声がするけれど、頭を素通りする。そして彼等はまたにわかに騒ぎ出して。

 

 

「しかしまぁ、久々にあんな情けねえヤツを目にしちまって、胸糞悪くなったな。野郎のくせに、みっともない」

 

 

「......あらぁ~」

 

 

「ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。なぁアイズ?」

 

 

「.......」

 

 

食いしばる力がさらに強くなる。

 

 

「ああいうヤツがいるからよ、俺達の品位が下がるんだよ、勘弁して欲しいぜ」

 

 

「いい加減その口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその冒険者に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」

 

 

「おーおー、流石は誇り高きエルフ様なこって。でもよぉ、そんな救えねぇヤツを擁護して何になるってんだ? それはてめえの失敗をてめえで誤魔化すための、ただの自己満足だろ? 雑魚を雑魚と言って何が悪い」

 

 

「これ、やめえ。ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ」 

 

 

───鮮明に思い出す。

 

 

「アイズはどう思うよ? 自分の目の前で震え上がるだけの情けねえ野郎を。あれが俺達と同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」

 

 

「……あの状況だったら、しょうがなかったと思います」 

 

 

───何も出来ずに怖気づいた自分を。

 

 

「何だよ、いい子ちゃんぶっちまって。......じゃあ、質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」

 

 

「......ベート、君、酔ってるの?」

 

 

「うるせえ。ほら、アイズ、選べよ。お前はどっちの雄に尻尾を振って、どっちの雄に滅茶苦茶にされてえんだ?」

 

 

───庇われた情けない自分を。

 

 

「......私は、そんなことを言うベートさんとだけは、嫌です」

 

 

「ふっ、無様だな」

 

 

「黙れババアッ。......じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」

 

 

「......っ」 

 

 

───今度は僕が君を助けると誓ったのに。

 

 

「はっ、そんな筈ねえよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎(・・・・・・・・・・・・・・・・)にお前の隣に立つ資格なんてありはしねえ。他ならないお前がそれを認めねえ」

 

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ(・・・・・・)」 

 

 

椅子を飛ばして、立ち上がり。僕は外へ飛び出した。

 

 

━━━━━━━━━━

現在

 

 

「あああああぁぁぁァァ!」

 

自分が恥ずかしくてみっともなくてあまりに思い上がっていた。笑い種に使われ侮され失笑され挙句の果てには庇われるこんな自分を、消し去ってしまいたいと思った。

 

 

(僕は、馬鹿かっ!!) 

 

 

青年が放った言葉全てが今の僕を体現している。

 

誰かを守るためには!強くなるためには!『何をすればいいのだろうか』じゃない!『何もかもしなければ』、自分は大切な女の子の前に立つことすらできない。

 

殺意を覚えるのは青年でも周囲で馬鹿にしていた他人でもない。何もしていないくせに「きっといつかは」なんて期待していた、愚かな自分に対してだ。

 

 

(悔しい、悔しい、くそっっ!!) 

 

 

青年の言葉を肯定してしまう弱い自分が悔しい。何も言い返すことのできないほど無力な自分が悔しい。彼女の隣に立つ資格を、失ったと思い何もしなかった自分が、堪らなく悔しい。

 

 

「……ッ!......あれは」

 

 

気づけば目の前に迷宮の上に築き上げられた摩天楼施設(バベル)が見えた、腰に着けたナイフを握りしめ、装備もままならないまま、目指すはダンジョン。目指すは高み。僕は闇に屹立する塔に向かってひた走った。

 

 

━━━━━━━━━━

豊饒の女主人 ヘスティアSide

 

 

「ベル(さん)(君)!?」

 

 

ベル君が走ってお店を飛び出して行った。追いかけなくちゃ!

 

 

「シルさんこれ代金です!」

 

 

トネリコくんがシル...君にお金を渡し、席を立つ。

 

 

「あぁン?食い逃げか?」

 

 

「うっわぁ、ミア母ちゃんのところでやらかすなんて......怖いもん知らずやなぁ」

 

 

困惑したざわめきがあちらこちらから燻ぶり始める。

 

...ベル君が立ち去った時、ボクははっきりと見た...その赤い瞳に涙を浮かべてたことをっ...!!

めちゃくちゃ言ってやりたいことがあるけど今は、ベル君だ。覚えとけよロキぃ!

 

 

「行きましょう」

 

 

「うん!」

 

 

と駆け出す

 

 

「待って」

 

 

寸前のところで金髪の長い髪の少女...アイズ・ヴァレンシュタイン君に呼び止められた。

 

 

「アイズたん...どしたん?ってげっ!ドチビなんでここにいるんや!」

 

 

ちっ...見つかってしまった...よし腹を括るか。

 

 

「トネリコくん、ベル君のことは任せた。ここはボクに任せて追いかけてくれ」

 

 

「神ヘスティア...あまり感情的にならないでくださいね」

 

 

「わかっているよ、ちょっと話すだけさ」

 

 

「......はぁ...ちょっと(・・・・)ですよ」

 

 

「あの...えっと」

 

 

ありゃバレてるなこれ...あとヴァレンシュタイン君が言い淀んでいる...決して無視してるわけじゃあないんだよ?

 

 

「......あっ...アイズ・ヴァレンシュタインさん、あの時はベル共々助けていただきありがとうございました。すみませんが失礼します。」シュタッ!

 

 

「あっ...」

 

 

素っ気ない対応の速さにすごく悲しそうな顔してるぞヴァレンシュタイン君、......さてと

 

 

「ロキ、ボクが何故ここにいるかって?さっきまでここでボクの大切な眷属達とご飯を食べに来てたからさ!その1人が君たちの酒の肴にされてしまってお店を飛び出して行っちゃって中断になってしまったけどね!!」

 

 

「なんやと...?」

 

 

ごめんよトネリコくん...今ボクはこれ以上ないぐらい怒っているんだ。

 

 

「おいおい大きな声で言ったつもりだけど、聞こえなかったかい?君の眷属が話題に出してたトマト共はボクの大切な眷属(かぞく)だって言ったんだ!」

 

 

『......ッ!?』

 

 

ヘスティアの身体から光が漏れ出し酒場の中だけ時間が止まった感覚に陥る。誰も体を動かせず。立っていたものは跪く。

 

 

「さっきの話を聞いていれば…ミノタウロスが上層に出たのは君たちから逃げたかららしいじゃないか」

 

 

「ああ、いや勘違いしないで欲しい。どうしてミノタウロスを早く倒さなかったんだとか言う気はないぜ?ダンジョンはイレギュラーで満ちている。モンスターが逃げるなんて事例は今まで無かっただろうしね。ダンジョンの中でのことは互いに不干渉だろ?。それに冒険者になって、たった2週間の彼らが5層に行くのも無謀な事だった。それは認めるさ、ただね…」

 

 

「ボクはその時の彼らを笑い話にしたことが許せない」

 

 

より一層光が強くなる。

 

 

「都市最大派閥の一角として君達の築き上げてきた偉業はボクでも知ってる。だからこそ自分達の失態で起こった悲劇を嗤った今の君たちをボクは許せない」

 

 

「彼らは死にかけた(・・・・・)んだ、君たちにとっては取るに足らない相手かもしれないが、駆け出しがミノタウロスと出会って怖気付くことがおかしいかい?必死に生きるために逃げて行き止まりに追い込まれ、死の恐怖に襲われ絶望した彼らがそんなに可笑しいかい!?ヴァレンシュタイン君が間に合ってなかったら2人して死んでたんだ!!」

 

 

誰も何も言わない。いや正確には喋れない。ヘスティアの逆鱗を踏み抜いたことで漏れだした神威(アルカナム)によって。

 

 

「......やめい...ヘスティア(・・・・・)......神威(アルカナム)抑えんかい…ほかの神のなら大丈夫やろうけど元オリュンポス十二神(・・・・・・・・・・)の一柱のお前の神威を受けて(うち)はともかく子供達が何も言えんくなってるわ」

 

 

ロキに咎められ少し落ち着く。

 

 

「......すまないね…ここまで怒ったことなんてないから加減ができないんだ」

 

 

ロキに言われてというのは癪に障るが神威を抑える。

 

 

「......失礼、女神ヘスティア」

 

 

「君達は?」

 

 

ボクの前に小人族(パルゥム)、エルフ、ドワーフが1人ずつ跪く。

 

 

「僕は二つ名を【勇者(ブレイバー)】、真名をフィン・ディムナ、【ロキ・ファミリア】団長をしています。こちらは幹部の」

 

 

「二つ名を【九魔姫(ナイン・ヘル)】、真名はリヴェリア・リヨス・アールヴといいます」

 

 

「儂は二つ名を【重傑(エルガレム)】、真名をガレス・ランドロック」

 

 

「...ボクはヘスティア、【ヘスティア・ファミリア】の主神で炉の女神だ。」

 

 

簡単な自己紹介を行う。

 

 

「まずは立ちなさい。それで何だい?」

 

 

彼らは立ち上がり、ボクの目を見て、

 

 

「女神ヘスティア、うちの団員が貴女の眷属を侮辱し嘲笑ったことをここに謝罪させてほしい。」

 

 

「本当に申し訳なかった」

 

 

小人族くんに続き、他2人も頭を深く下げてくる。

それを見て驚く若い団員と…動ける範囲で頭を下げてくる他のロキの眷属達...こういうのは少しむず痒い...ボクのキャラじゃないのさ。

 

 

「うちも主神(おや)として謝るわ。すまんかった。」

 

 

はぁ...あのロキも頭を下げるなんてね...彼女は眷属を持って本当に変わった。良い方にね。

 

 

「わかった、君達の誠意を受け取ろう。だがそれを言う本当の相手はボクじゃあない」

 

 

「もちろんです。女神ヘスティア、後日改めて貴女の眷属に謝罪するための機会を設けていただきたい。無論贖罪もさせてほしい」

 

 

と言ってくる小人族くん、空いてるといえばいつでも空いてるしなぁ。

 

 

「日程は君達に合わせるよ。まだ遠征の後処理が残ってるだろう?後でギルドを通して教えてくれればいい」

 

 

「わかりました」

 

 

「あぁそれと、このことを公にするつもりはないぜ」

 

 

「感謝します」

 

 

ならこれで話は終わりだ。と女将くんの方を向く。

 

 

「騒がしくしてすまなかったね女将くん」

 

 

「別にいいさ...それにしてもあんた根性のある女神だね」

 

 

「子供のためならなんだってできるよ、愛する子供がバカにされて怒らない主神はいないだろう?」

 

 

「あっはっはっは!いい女だねぇ!いつでもここに来な、金さえ払えば、美味いもん食わせてやるよ」

 

 

「あぁ、3人でまた来るよ」

 

 

と、ボクもベル君を探すために外に出ようと……

 

 

「待って!...ください」

 

 

デジャブ。出入口の方を向けばアイズ・ヴァレンシュタイン君が行かせないとばかりに佇んでいる。

 

 

「アイズ!何してる!?これ以上迷惑をかけるんじゃ「ごめんなさい」......」

 

 

エルフくんがヴァレンシュタイン君を怒る声が聞こえていたけど、それでもはっきりと聞こえてきた謝罪の声。でもそれを伝えてる相手はエルフくんではなく、ボクだった。

 

 

「...私達のせいで2人を危険な目に遭わせ...ました」

 

 

「今だって...貴方たちを傷つけ...ました」

 

 

「......ごめんなさい」

 

 

なんか怒られる前の子供みたいだ...正直なんだね彼女は...ボクも伝えなきゃいけないことがある。

 

 

「君が謝ることなんてないさ」

 

 

「...でも」

 

 

「ベル君とトネリコくんから君のことは聞いていたよ、君が助けてくれたから自分たちは今生きているんだってね」

 

 

「だから感謝こそすれ、恨むことはないよ」

 

 

「ボクの眷属を救ってくれてありがとう」

 

 

「君はボクたちの恩人だ」

 

 

「いつか2人と会ってあげてくれないかい?2人してちゃんとお礼がしたいって言ってたからね」

 

 

ボクの言葉を聞いてヴァレンシュタイン君は微笑みを浮かべた。と同時に出入口から退いてくれた。よし今度こそベル君を探しに...あっ

 

 

「狼人君」

 

 

「............なんだ」

 

 

「ベル・クラネルは必ず強くなるよ」

 

 

「............」

 

 

その言葉を最後に今度こそボクは酒場を飛び出した。

 

━━━━━━━━━━

ロキ・ファミリアSide

 

 

巨乳黒髪ツインテールの女神が出ていってからも酒場のある一角、ロキ・ファミリアが座る席は静かだった...

 

 

「......ふぅ...あんなにガチギレしたドチビは初めて見たわ」

 

 

ロキが口を開き、呟く様に言う。

ヘスティアと知り合ってから100年と少し、いつも言い合いや取っ組み合いはするがあそこまでの怒りはロキも見たことがなかった。

 

神威が漏れ出す程の怒り、自分も同じ立場だったら同じことをしたかもしれない。いや絶対するわ、とロキは結論に至った。

 

 

「ロキ」

 

 

「なんやフィン?」

 

 

「今回の件は全て我々の不手際が招いたことだ。女神の怒りを買ったにも関わらずこちらの面子まで守ってもらった。だからこそ後日に贖罪として彼らの提案を可能な限り全て呑むがいいかい?」

 

 

と提案するフィンにしぶしぶ答えるロキ。

 

 

「ええで...あのドチビに貸しができたのは確かやしな」

 

 

「ありがとう」

 

 

「それにしても女神が怒るとすごいんだねー」

 

 

「あんたねぇ...」

 

と緊張感のない感想を述べる「女戦士(アマゾネス)」の少女……ティオナ・ヒリュテと、呆れたような視線を送るティオナの姉……ティオネ・ヒリュテ。

 

 

「なんかもう足が動けなくってさ!よくアイズは動けたね」

 

 

「......?普通だったけど」

 

 

「えぇ?」

 

 

アイズとティオナに認識の違いがあると周りは感じた。

 

 

「まぁせやろな」

 

 

「どういうことですか?」

 

 

違いを肯定したロキに質問をしたのは山吹色のエルフ……レフィーヤ・ウィリディス。

 

 

「自分の眷属からアイズたんに救われたって聞いてたみたいやし、アイズたんだけには神威向かないようにしたんやろ」

 

 

と答えるロキ。

 

 

「じゃあさ、ロキもあの女神みたいなことできるの?」

 

 

あの跪かせるやつー、と単純な好奇心から聞くティオナ。

 

 

「あれほどのは無理やな」

 

 

ロキは断言した。

 

 

「神は下界では神の力を使えんし、子供たちとなんら変わりない身体で生活しとるからここでの違いはない」

 

 

「けど天界(あっち)では違う」

 

 

「神格が違うんや...ドチビとうちは......あっちの方が上や」

 

 

「あのロキ様、オリュンポス十二神ってなんですか?」

 

 

先程、ロキが言っていた単語を聞くレフィーヤ。

 

 

「あーそれな...説明するのややこしいんやけど」

 

 

「うちら神には神話体系っていう...派閥みたいのがあるんや」

 

 

「うちは北欧神話っちゅうところやけど、その派閥の中で1番の勢力があるのがドチビのいるギリシャ神話や」

 

 

「そんでギリシャ神話の中で上位12柱の神の事をオリュンポス十二神って言うんや。そこにドチビは入ってる」

 

 

ゼウスとヘラもやと話すロキ、「男神ゼウス」「女神ヘラ」この名前を知らないオラリオの民はいないだろう。

かつての世界最強派閥、1000年以上続くオラリオの歴史に寄り添い君臨し続けた伝説。その主神。

 

 

「怒らせちゃいけない(ひと)を怒らせちゃったんだね」

 

 

「ある意味でここにいたのがドチビで良かったわ、あれは善性の中の善性。ヘラだったら末代まで呪われてたで」

 

 

思いがけない名前に名前に青ざめる団員。

 

 

「っかァァ!こんなん飲まんとやってられんわ!ミア母ちゃん、酒ちょーだい!」

 

 

「無いよ」

 

 

「ヘあ?」

 

 

つい素っ頓狂な声が出たロキ。

 

 

「今日はもう、あんたら【ロキ・ファミリア】に出す酒も料理も無いよ。今あるやつ食ったらとっとと出ていきな」

 

 

「な...なんや...と...?」

 

 

「あれだけの騒ぎ起こしておいて追い出されないだけ感謝しな」

 

 

「......ベートを吊るせぇぇ!」

 

 

ロキの八つ当たりを受ける狼人の青年……ベート・ローガ

 

 

「はあ!?ざっけんじゃねえ!っておい!離しやが…ぐぉおおおおおおおおおお!?」

 

 

皆の手で地面に取り押さえられ、縄でぐるぐる巻きにされるベート。

 

 

「何をやってるんだあいつらは...」

 

 

「あはは...あれだけのことがあったのに賑やかなものだ」

 

 

呆れたリヴェリアにそう感想を言うフィン。

 

 

「今回の件は【ロキ・ファミリア】全体の落ち度だ」

 

 

「女神の怒りを買ってしまったにも拘わらずこの程度で済んでいるのは、神ヘスティアが温情のある神だったからだ。だからとはいえお咎めなしは許されない。黄昏の舘に戻り次第全員に罰を与える」

 

 

「そうだな...」

 

 

「それにしてもベル・クラネルか...どんな人物なんだろうね」

 

 

「何...?」

 

 

疑問を投げかけるリヴェリア。

 

 

「神ヘスティアが最後に言った言葉を聞いてから親指の疼きが止まらない」

 

 

「なんだと...?」

 

 

親指の疼き。いわゆる「勘」だが彼のはよく当たる。「第六感」とも言えるそれはその殆どが危機を知らせに来たものであり、【ロキ・ファミリア】がこの「勘」で危機的状況を脱したことは少なくない。だが

 

 

『ベル・クラネルは必ず強くなるよ』

 

 

「ベル・クラネルという者は、危険ということか?」

 

 

「それはわからない...ただベル・クラネルはこれから何かを為す...そんな気がするんだ」

 

 

この時、疼きの意味を理解できるものは誰もいなかった。

 

 

それは、誕生を予感したものということに

 

 




この世界観では、神話体系が存在しています

そして1番神格が強いのはギリシャ神話ということになっています

なぜヘスティアが跪かせたかというと、神威を浴びた結果跪いてしまっただけで意図してやった訳ではありません。

2部第5章のオリュンポスでのワンシーンをイメージしました
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